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「冨安、アーセナル来るってよ」~アーセナルの現状と冨安に期待されること

 移籍期限最終日であるデッドラインデーに冨安健洋のアーセナル加入が決まりました。すでに女子チームの方には岩渕真奈が加入しており、日本人が男女ともにアーセナルに所属していることになります。代表屈指の実力者2人がアーセナルにやってきてくれたことは日本人としてもアーセナルファンとしても非常に喜ばしいです。

 稲本潤一、宮市亮、そして浅野拓磨に続いて男子チームとしては4人目のアーセナルの日本人選手。正直、これまでの3人はアーセナルでのインパクトを残せたとは言えませんが、冨安にはこれまでと異なりアーセナルでの大きな功績を残せる可能性があると思っています。

    この記事では冨安の加入でアーセナルを見る!と思っている人向けに、冨安に期待されることや今のアーセナルのチーム状況を説明していきたいと思います。

目次

チーム状況

苦しむかつての強豪

 アーセナルといえば名門というイメージを持つ人も多いはずです。チャンピオンズリーグの常連だったり、プレミアでの無敗優勝を果たしたり。赤いユニフォームは栄光とともに歩んできたという印象の人も多いかもしれません。

 しかしながら、近年は非常に苦しんでいます。2017年に19シーズンぶりにCLの出場権を逃すと、そこから5年連続で欧州最高峰の舞台に立てていません。昨季は8位でフィニッシュ。ELやECLなどその他の欧州カップ戦の出場権も逃し、今季は25年ぶりに欧州カップ戦がないシーズンになります。

 なぜ、こういう苦境になったのか?については割愛します。ざっくりいうとフロントの取り組みがあれもこれもうまくいかなかったことが大きいです。気になる人は下の記事を見てください。現監督のミケル・アルテタ就任前に書いた記事です。ややこしめです。

 今季も苦しんでいます。開幕戦で昇格組のブレントフォードに敗れるとそこからチェルシー、マンチェスター・シティと手も足も出ずに完敗。3試合を終えて無得点で最下位に沈んでいます。

 主力に負傷者や病欠が多くいたことを加味すれば、流石に今の順位のままでシーズンを進めていくのは考えにくいとは思います。ですが、チームの雰囲気は重く、一度うまくいかなくなると下を向いてしまう選手が多いのも事実です。

   代表ウィーク明けから結果を出し続けなければ、今まで以上に監督のアルテタへのプレッシャーは強まるはずです。途中就任3季目のOB監督は解任の重圧とも闘わなければいけません。

試合に出れるのか?

そういう次元の話じゃない

 日本人選手が有名クラブに移籍したときによく話題になるのが『そんな大きいクラブに所属して出場機会を得られるのか?』という点です。特に来年の冬に迎えるカタールW杯を考えれば、日本代表の主力選手が出番がないまま幽閉されてしまうのを心配する声があっても無理はありません。

 ですが、今回は個人的には杞憂だと思います。少なくとも、全く出場機会がなくアーセナルを去ることはあり得ないと思います。アーセナルは開幕3試合で非常にひどいパフォーマンスでした。とりわけ、右のサイドバックを勤めた選手たちの出来は壊滅的で、アーセナルファンにとっては誰の目にも右のSBは明らかな補強ポイントでした。

 右のサイドバックとしてはセドリック・ソアレス、カラム・チェンバース、エインスリー・メイトランド=ナイルズという3選手と争うことになると思いますが、三者三様の問題を抱えています。このポジションにおいてはフィットしてしまえば即レギュラーになってもおかしくありません。チームの戦力と冨安の能力を照らし合わせると右のサイドバックが彼が出番を得られる最も有力なポジションでしょう。

 日本代表としてはCBでプレーしている冨安。もちろん、CBとしてもプレーするチャンスはあると思います。おそらく、今季の主軸で考えているであろうガブリエウ・マガリャンイスやベン・ホワイトの2人よりは優先度は低いとは思いますが、彼らどちらかが怪我をした時、もしくは3バックを採用した時はCBとしてプレーする可能性が高くなります。

 また、ベン・ホワイトは冨安と同じく多くのポジションをこなせるマルチ性が魅力で、今夏加入したばかりの彼が他のポジションに固定されることがあれば、4バックでも冨安にCBとしての期待は高まります。

 その他のCBであるロブ・ホールディングやパブロ・マリは今季非常に苦しんでおり、思うようなパフォーマンスを出せてません。特に左のCBの控えであるマリはスピード、判断、そしてパワーのいずれの面でもプレミアリーグの水準から見ると見劣りしています。ガブリエウが負傷で出遅れ、プレータイムを得たマリのパフォーマンスは満足できないものです。

 よって、代表では左のCBを務めることが多い冨安にはこのポジションでの起用も期待されます。ですが、アルテタはこれまで左利きのCBを左に据えることが多かったです。しかし、それはビルドアップを重視してのため。ボローニャで左足の技術に大きな進歩が見られたと評される冨安にとっては左CBでのプレーを除外する理由にはならないと思います。

    いずれのポジションにおいても、相対的なクオリティで冨安は十分勝負ができるレベルのスカッドだと思います。仮に監督交代でメンバー選びの方針が変わっても、出場機会が大きく減ることは想定しにくいと思っています。(逆に言えばそれくらいアーセナルの今の右サイドはひどいです)

 以上のことから加入の時点で冨安の想定される序列は右のSBのレギュラー、及び第3CB(3バック採用ならレギュラー)ではないでしょうか。

期待されるプレー

ビルドアップへの貢献

 アルテタ政権での失望の大きさはなんといってもビルドアップの拙さにあるでしょう。グアルティオラという世界屈指のボール保持の仕込み役の元で薫陶を受けたアルテタにはビルドアップの仕組みづくりを期待する向きも多かったはずです。

 就任当初こそアーセナルに珍しい偽サイドバックなどを採用し、スムーズなビルドアップを見せたものの、段々と仕組み作りは崩壊しています。現状では就任3年目の現状でも確固たるビルドアップのスキームを確立できていません。

 したがって、最終ラインにおいては個人のスキルが求められています。本来はビルドアップは仕組みと技術に両輪で回るものだと思うのですが、仕組みが成熟していないのでどうしても個のスキルの重要度は高まります。ロングフィードが武器だったダビド・ルイス(今夏退団)が存在感を示したように、ホワイトとともに冨安には最終ラインからボールを運びながらチームを前に進める役割が期待されています。

 チームとしての仕組みが見えない部分も大きいので、彼らにはチームがどういうボールの動かし方をするのかのディレクションも求められるでしょう。SB起用ならば、CBのサポートとして低い位置でボールを受けつつ、パス交換やドリブルで高い位置を取るプレーができればチームの大きな助けになると思います。

高い位置でのインターセプト

 ここ数年のアルテタで悪くなかったのは対強豪との戦績です。元々ヴェンゲルの晩年から悪かった強豪対決においては割と結果を残しています。昨季はチェルシーに対するダブルや、長年鬼門になっていたオールド・トラフォードでの勝利などアーセナルが苦しんでいた相手に対して大きな成果を収めてきました。

 そういった大仕事を達成した際の特徴はローラインの5-4-1をベースにロングカウンターを軸にワンチャンスをモノにするというのは戦い方でした。それを成り立たせてきたのはバックラインの空中戦の強度。とりわけ退団したダビド・ルイスの貢献度は高いものでした。

 今夏、ルイスの退団に伴い獲得した選手はそういった身体能力の強さで勝負するタイプではなくボール保持の局面で強みのあるベン・ホワイトでした。従って、最終ラインがPA内に引きこもる事態が増えれば、失点は昨季以上に嵩むことになります。そのためには高い位置でボールを奪うことが重要になるはずです。

 さらにプレミアのアタッカーはスピードが豊かです。スピードが持ち味の冨安だとしても、前を向かせる機会が多ければ苦しむことになるでしょう。従って、ボールを受けるところに体を寄せてスピードに乗る前に決着をつけたいです。

    中盤のフォローも含めて高い位置まで出ていって、攻撃につなげる役割も求められています。アーセナルの攻撃は機会が少ないことも大きな難点。高い位置で食い止めて相手の攻撃に歯止めをかける守備の改善はもちろん、そこから攻撃につながる働きも冨安には期待されます。

大外でのプレー

 無得点というのがアーセナルが抱える最も大きな苦しみです。これまで対強豪に結果を出していたのは、少ないチャンスをFWが活かしてきたからというのが大きいです。しかし、看板スコアラーであるオーバメヤンの不調や機能不全の攻撃において組み立てに忙殺されるラカゼットはクラブを一身に背負う得点力は発揮できていません。

 そんな中でスコアラーとして期待が高まるのは右のWGを主戦場とするニコラ・ぺぺです。加入2年目となる昨季の後半から徐々にコンディションが向上しています。ELではチーム内での得点王に輝き、プレミアリーグでは最終節のハットトリックで2桁得点を達成しました。

 彼をスコアラーとして活用するならば、ゴールの前でプレーする機会を与えないといけません。理想的にはPAの角あたりで受けて1人をかわし、切り込んでのシュートみたいなシーンを増やしたいです。

 だが、現状ではその状況を作るのとは程遠い環境です。チームとしての押し上げが効かず、大外に追いやられている上に、サポートがなく2人を常に背負いながらプレーする形ばかり。そんな中でも突破をしたりなどプレシーズンから彼自身のコンディションは上々なのです。だからこそファンとしては歯痒いのです。

 正直、日本代表でしか冨安のプレーを見る機会がない自分にとっては冨安が大外で高い位置を取るイメージはないのですが、賢く自分に求められた役割にストイックなイメージがあるのも確かです。必要とあればそのスキルも磨ける選手だと思ってます。

 ぺぺが内側でプレーするには大外から彼をフォローする存在が必要です。ぺぺにアーセナルのスコアラーを託すための一端は冨安が握っているといっても過言ではないでしょう。

 以上。はっきりいってアーセナルは苦しい状況です。冨安はビッククラブへチャレンジする日本人というよりは、名門復活のためチームを救いにやってきた希望です。欧州カップ戦獲得への復権の切り札になれば、日本人不毛の地であるアーセナルで確固たる実績を残す第一人者となることも大いに考えられるでしょう。

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