①クリスタル・パレス【14位】×トッテナム【1位】
■ヒートアップでババを引いたのは…
開幕3連戦を全て1-0で片付け、上々の滑り出しを見せたトッテナム。ケインがようやくここから調子を上げていこうという矢先に今節はソン・フンミンが離脱。ソンの離脱をどうやって補うかがこの試合の最大のポイント。結果はなかなかついてこないが、ヴィエラの元で堅実さを増しているクリスタル・パレスは厄介な相手になりそうである。
ソンが不在の2列目のポジションに入ったのはアリとルーカス。この2人は攻守に極端に内寄りのポジションを取るのが特徴。守備の時に彼らが監視するのは、クリスタルパレスのSBではなくCHである。
顕著なのはトッテナムの左サイド側。完全に大外をレギロンに任せている。その分、ウォードは非常にゆったりとボールを持てる。アイェウの下がる動きに合わせて、ギャラガーが裏のスペースに走る動きを見せていたので、ここにボールが通ればパレスは簡単に好機を作ることができそう。それが通らないということはトッテナム的にはウォードはあえて捨てていたのかもしれないけども。
左サイドに比べれば、トッテナムの右サイドはホイビュアがフォローに回る分、まともに機能していたように思う。しかし、このサイドはクリスタル・パレスのキャストも異なる。ミッチェルはウォードよりもボールを動かせるし、大外には預ければ突破できるザハがいる。エメルソンはこのサイドの守備には苦戦。前半終了間際にはパレスは左サイドからあわや得点という場面までいくが、これはロリスが好セーブ。事なきを得る。
守備と同じくらい深刻だったのはトッテナムの攻撃。ルーカスが序盤に見せた単騎突破以外活路が見えず、中央で偶発的にボールを引っ掛けた時のショートカウンターくらいしか、攻撃のプランが見えない。保持も変に失うよりはちゃんと遠くに捨てることをむしろ優先しているかのよう。そのボールをチャンスにできるソンがいないとなれば、前半にシュートがなかったのもうなづける結果である。
後半は前半と陸続き、それどころかパレスがより押し込んでいるといっていいくらい。前半は距離が遠かったウォードもハーフスペースのギャラガーにパスを通せるくらい高い位置でプレーをできていた。
試合を大きく動かしたのはザハとタンガンガの乱闘。これで試合のテンションが上がったことで、ババを引いたのはトッテナム。タンガンガが2枚目の警告かどうかは見解が分かれるプレーではあるが、そもそもわざわざあそこまで追いかけてファウルすること自体が安易。決していい評価ができるプレーではない。
これで一層押し込むクリスタル・パレス。本職CBがいなくなったスパーズはベン・デイビスをCBに入れて4-3-2で迎え撃つ。だが、そのベン・デイビスがハンドでPKを献上。ゴール前のぎこちなさが目立ち、得点だけが遠かったパレスがついに先制点を手にする。
長年スパーズに苦戦したパレスに勝利を決定づける働きをしたのは新加入のエドゥアール。1stプレーで見事な身のこなしから、先制点をもぎ取ると試合終了間際には追加点。盛大にサポーターにご挨拶をすることになった。
90分間の沈黙を続けたスパーズの攻撃陣とは対照的にワンプレーでセルハーストパークに火をつけたエドゥアール。内容も結果も全てがくっきり明暗が分かれた一戦となった。
試合結果
2021.9.11
プレミアリーグ 第4節
クリスタル・パレス 3-0 トッテナム
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:76′(PK) ザハ, 84′ 90+2′ エドゥアール
主審:ジョナサン・モス
②アーセナル【20位】×ノリッジ【19位】
■上々のデビュー戦となった冨安
レビューはこちら。
3連敗、得失点差マイナス9という地獄のようなスタートを切った両チーム。共に伸び悩んでいるのはまずは得点の部分。両軍3試合合わせて取った得点はノリッジがレスター戦で得たPK1つという状況である。
どちらかといえば両チームとも苦しんでいるのはストライカーの質というよりはゴールまで迫る機会の創出が出来ていない点である。その点でまず手を打ってきたのはアーセナル。バックラインにホワイト、ラムズデイル等の足元に自信のある選手を起用して相手を押し込む。
3-2-5もしくは2-3-5の形でビルドアップをしたアーセナル。この点で光っていたのは冨安。ホワイトの持ち運びに合わせて高いポジションをとったり、あるいは低い位置でサポートに入ったりなど自在に立ち位置を取り直し、3-2-5と2-3-5の使い分けに貢献していた。連携面ではもちろんまだ向上の余地はあると思うが、冨安の高い状況判断の片鱗は見られたといっていいだろう。
高い位置からの即時奪回でも冨安は貢献。ハイプレスを仕掛けるアーセナルに対して、長いボールでの脱出を試みるノリッジだったが、冨安のところはロングボールでアーセナルの完勝。低い位置に移行する際の周囲との連携しての守備はまだ難があったが、高い位置で回収し、波状攻撃を仕掛ける流れを作り出すことには成功していた。
前半の終盤、やたら縦に早くなった時間帯はノリッジにペースを受け渡したアーセナルだったが、後半に再び丁寧に保持を再開してペースを引き戻す。アーセナルのPA内でのバタバタ感とクルルの攻守に阻まれ無得点が続いていたが、ようやく65分に先制点。ゴールに迫ったペペからのこぼれ球をオーバメヤンが押し込み先制点。苦しむチームに今季初得点をもたらした。
終盤はノリッジに攻め込まれ、最後まで落ち着きない形となったアーセナルだったが今季初勝利は死守。屈辱の逆天王山で最低限の結果を残した。
試合結果
2021.9.11
プレミアリーグ 第4節
アーセナル 1-0 ノリッジ
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:66′ オーバメヤン
主審:マイケル・オリバー
③ブレントフォード【10位】×ブライトン【8位】
■難ありの仕上げで手にした勝利
比較的堅い展開で推移した試合だったと言えるだろう。その要因を生んだのはブレントフォードの方針にある。開幕戦のアーセナル戦こそ、トニーとムベウモの2トップにひたすら当て続けるやり方で強引に前進していったが、徐々にショートパスで落ち着かせながら進むやり方もテストしている。この試合もそのテストを継続している印象だった。
それでも2トップの持ち味が死んでいるわけではない。トニーとムベウモの2トップは背負ってだけではなく、開けたスペースでスピードに乗った状態でも持ち味が生きるコンビ。10分のシーンのように後方からの時間の貯金をもらい、広いスペースを攻略する際にも可能性を感じさせる。2トップの連携も良好で、この部分は自信を持ってプレミアでも通用する部分といってもよさそうである。
一方のブライトンも落ち着いた展開。3-4-1-2の布陣を生かした横幅を使ったボール回しでブレントフォードのプレスをいなしていく。新加入で先発に名を連ねたククレジャは左のWBでデビュー。いい意味で目立つことなく、ブライトンの一員に溶け込んでいた。
ズレを作っていたのはトップ下のトロサール。左右問わずボールサイドのハーフスペースから飛び出す動きで相手のDFを引っ張り中央でFWをフリーにする。ウェルベックとモペイの2人を助けるフリーランからチャンスメイクをしていた。
しかし、両チームとも最終ラインが奮闘。体を当てる局面ではDFのデュエルの精度が光り、両チームは得点につながるチャンスの量を担保することができなかった。
前半の終盤の選手交代を機にフォーメーションを変えたのがブライトン。ブレントフォードが数がやや合わないながらも積極的にプレスに出てくることを利用し、あえて、中央の人数を増員。プレスに来ている部分の人を増やすことで脱出口を見つけて押し込む頻度を高めることに成功する。
圧倒的に試合を支配したとは言えないけども、保持で押し込むことでブレントフォードからさらに攻撃の機会を取り上げることに成功したブライトン。そんな彼らに試合終盤に決勝点が生まれる。積極的なエリアへのアタックが目立ったモデルが潰れたことからチャンスを生み出すと、仕上げたのはトロサール。難易度が高い技ありゴールは、シュート精度が欠点のトロサールが上昇気流に乗るきっかけかもしれない。
フィニッシュの質の高さで終盤に試合を決めたブライトン。開幕からの好調をキープし、上位陣に食らいついていく勝ち点3を手にすることができた。
試合結果
2021.9.11
プレミアリーグ 第4節
ブレントフォード 0-1 ブライトン
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRI:90′ トロサール
主審:グラハム・スコット
④レスター【9位】×マンチェスター・シティ【7位】
■マンチェスター・シティのSBの立ち位置の狙いは
今季、プレミアで最も早い第二ラウンド。コミュニティシールドのリマッチである。そのコミュニティシールドでお披露目された今季序盤戦のシティの旗印であるビルドアップ時のナローな4バックはこの日も健在だった。あの日のやり方ではどうしてこの形を採用したのかがいまいちピンとこなかったのだが、この試合では完成度もそれなりにあがりようやく目的が見えてきた感があった。
ざっくりとした目的としては旋回を前提にしたスペースメイクだろう。わかりやすかったのがシティの左サイドの攻撃。SBであるカンセロが自軍のCBに近い位置に立ち、相手のSHを引き付けるのが1stステップ、そしてWGであるグリーリッシュがSBの付近までフラフラ降りてくるのが2ndステップ。ついてくるのは相手のSBだ。2ndステップで活用するのは1stステップでSHが空けた位置である。
となると当然3rdステップは2ndステップで空いた相手のSBのポジションを使う。この位置にベルナルドが流れ、相手のCBを引き付けられれば、作戦は成功。CBがあけたスペースはベルナルドへのパスと同時に斜めに走りこむグリーリッシュによって攻略される。
要は、通常のポジションよりも一手低い位置にベンチマークを置き、そこに相手を引き付ければ最終的には奥のスペースが空くってイメージだろうか。
しかし、レスターも無抵抗なわけではない。旋回に対応しティーレマンスやンディディは最終ラインを埋めて守り切ることができていた。加えて、シティのこの仕組みの脆弱な部分であるサイドの裏から反撃のカウンターを放つこともできていた。
マンチェスター・シティの厳しいプレスにも縦パスを入れながら応戦。最終ラインも中盤も縦パスに十分にスピードがあるため、前線にボールを届ける機会も少なくなかった。ロングカウンターからヴァーディがネットを揺らした場面はわずかにオフサイド。シティの攻撃のメカニズムは機能していたが、レスターも反撃により得点の匂いはさせていたという状況である。
しかし、先制点をゲットしたのはマンチェスター・シティ。旋回の申し子であるベルナルドがカンセロのミドルのこぼれ球を押し込んでようやくスコアを動かす。レスターはイヘアナチョやルックマンなど交代選手を軸にさらに攻勢に出るが、反撃は叶わず。ベルナルドの1得点を死守したマンチェスター・シティが逃げ切った。
試合結果
2021.9.11
プレミアリーグ 第4節
レスター 0-1 マンチェスター・シティ
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
Man City:62′ ベルナルド
主審:ポール・ティアニー
⑤マンチェスター・ユナイテッド【3位】×ニューカッスル【17位】
■帰還は華々しく
なんといってもこの試合最大のトピックスはクリスティアーノ・ロナウドの帰還だろう。オールド・トラフォードにて二度目のマンチェスター・ユナイテッドのデビュー戦を飾るロナウドはCFにて先発スタートである。
試合はニューカッスルが撤退志向の強い5-4-1でのブロック守備を組む。これをマンチェスター・ユナイテッドが壊せるか否かという構図の序盤戦だ。ニューカッスルのプレス位置は1トップのサン=マクシマンがCHのあたりをフラフラと。全体の重心は低かった。
マンチェスター・ユナイテッドは左サイドを主体に崩しに行こうとするのだが、なかなかに苦戦。5-4-1のブロックは横移動に強く、サイドにボールを運んでもマンチェスター・ユナイテッドはニューカッスルの守備をどかすことができず、そこから先に進むことができない。
サンチョはサイド打開のキーマンだろうが、決定的な働きを見せることが出来ず。まだコンディションは十分ではないのだろう。サイドからは中央にロナウド目掛けた山なりのボールが飛んで来るばかりだった。それでも脅威ではあるのだけど。
逆にニューカッスルは攻撃の道筋は準備されていたように思う。左サイドに置かれたジョエリントンを空中性のターゲットとして、自陣からのロングボールを放り込む。落としを拾ったサン=マクシマンやアルミロンがドリブルで前に進むことが出来るので、カウンターの威力としては十分。機会としてはマンチェスター・ユナイテッドの方が明らかに多いが、ニューカッスルも十分対抗することはできていた。
しかし、先手を取ったのはマンチェスター・ユナイテッド。この日あまり印象的ではなかった右サイドからグリーンウッドが強引に切り込むと、シュートが跳ね返った影響から、ウッドマンがボールをこぼしてしまったところに詰めたのはロナウド。前半終了間際にナンバー7がニューカッスルの守備を攻略して見せた。
後半のニューカッスルはビハインドを背負いながらも撤退。おそらく、前半に見せたカウンターにそれだけ勝算があったということだろう。そして、実際にそのロングカウンターから結果を出す。この局面で輝いたのはアルミロン。ユナイテッドの選手を一気に置き去りにすることでカウンターを発動すると、そのまま敵陣まで一気に駆け上がる。ボールをたくしたサン=マクシマンが最後にマンキージョにアシストを決めて同点。リードを奪われてなお撤退するというやり方が奏功した瞬間だった。
だが、ここはオールド・トラフォード。ましてや英雄帰還のお祭りの日である。ポグバから逆サイドへの展開でニューカッスルの撤退がやや手薄になったところにショウからボールを受けたロナウドがフィニッシュ。この日2点目を獲得する。素早いシュートでウッドマンの股を抜き、格の違いを見せつけた。
内容的にも徐々にニューカッスルは中央のプロテクトが甘くなり、高い位置でポグバが起点になれるように。とどめの3点目はガッツリ空いたバイタルをブルーノ・フェルナンデスがミドルで強襲したところだった。。
ニューカッスルは60分が過ぎると、サン=マクシマンの馬力が低下。彼がカラータイマーが鳴っている状態になると、ニューカッスルは厳しい。最後はリンガードの得点でゴールラッシュの幕を下ろしたマンチェスター・ユナイテッド。ロナウドの復帰を祝う試合で主役を渡すわけにはいかなかった彼らの意地が見せた大勝だった。
試合結果
2021.9.11
プレミアリーグ 第4節
マンチェスター・ユナイテッド 4-1 ニューカッスル
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd: 45+2′ 62′ ロナウド, 80′ フェルナンデス, 90+2′ リンガード
NEW:56′ マンキージョ
主審:アンソニー・テイラー
⑥サウサンプトン【13位】×ウェストハム【2位】
■エースと勝ち点を失う引き分け
どちらかといえばサウサンプトンがオープンで、ウェストハムが手堅いチームというイメージのファンが多いのではないだろうか。異なる趣の両チームの対戦はまずは試合の展開がどう転がるかが見どころだった。
試合は比較的切り替えが少ない立ち上がりとなった。そう聞くとばっちり守ってカウンターのウェストハムの戦い方が刺さったのかな?と思うかもしれないが、どちらかと言えばこの戦い方を選んだのはサウサンプトンといえそうだ。
普段と異なる4-1-4-1のフォーメーションを選択したサウサンプトンは彼らの方からテンポを落とした展開に対応しているようだった。アンカーの配置によって、普段よりもポゼッションは安定していたので、トランジッションの機会が少なくてもサウサンプトンは順応はできていた。
4-1-4-1の採用にはもう一つメリットがある。それは今季のサウサンプトンの攻めの軸であるSB-SHの関係性に+1を加えられること。エルユヌシとウォード=プラウズがサイドの攻めに加わることで線から三角形に関係性が変わったことも大きかった。
一方でこの形を組むとエリア内の圧力が下がるのが難点。単純に人がいないのも痛いし、エリア内のプレー精度の点でいうとイングスの抜けた穴も大きい。あとはなんだかんだサイドをいい形で破ることができるのはリヴラメントにスペースを与えた時だったりするので、この形が超効いていたかは微妙。ただ、ゆっくりとしたテンポにアジャストするチャレンジとしては十分理解できるものではある。
こういう展開ならウェストハムのロングカウンターが炸裂しそうなものだが、そこはサウサンプトンのバックスが頑張っていた。特に目についたのはサイス。序盤戦は頼りないパフォーマンスが続いていたのだが、この日はまず体を当ててウェストハムの攻撃を遅らせることができていたし、アントニオがサイドに流れた際もついていきつつ、体を寄せ切ることで2列目のアタッカーが飛び越すスペースにクロスを上げさせることを防ぐ。成長を感じられる出来だった。
後半はライスがサイドの高い位置に積極的に出ていく(こちらも今季から強めに意識している部分)など攻撃成分を高めたウェストハムが徐々に押し込んでいく。攻め気が強かった後半戦立ち上がりはロングカウンターの応酬だったが、終盤戦はウェストハムペース。エリア内に迫りながら前半は上がらなかったクロスを上げる場面を段々と増やしていく。
しかしながらゴールを奪うことはできなかったウェストハム。そればかりか終盤には2回目の警告を受けたアントニオが退場。勝ち点2とともに次節のエースの出場権を失うという唇を噛みたくなる結末となってしまった。
試合結果
2021.9.11
プレミアリーグ 第4節
サウサンプトン 0-0 ウェストハム
セント・メリーズ・スタジアム
主審:デビッド・クーテ
⑦ワトフォード【12位】×ウォルバーハンプトン【18位】
■連敗ストップを完勝で決める
トッテナムが開幕3試合全てを1-0で勝利したのとは全くの対照。開幕3試合を全て0-1で敗れてしまったのがウルブスだ。開幕戦勝利後、連敗となってしまった昇格組のワトフォードの本拠地であるヴィカレッジ・ロードに乗り込んでの一戦となる。
試合はウルブスがゆったりとボールを持つ展開になっていた。3バックがピッチいっぱいに広がりながら、ボールを回すウルブス。対するワトフォードはウルブスの保持に対して深追いすることはなく、ボールを持たれることを許容していた。
ワトフォードが割と簡単にラインを下げることでウルブスはかなり楽に保持を進められたように思う。とりわけ、4-1-4-1ゆえに大外のケアは甘く、セメドやマルサウはプレッシャーのかからない状態でボールを受けることができた。加えて、ネベス、モウチーニョ、コーディなどが積極的にサイドチェンジを敢行。ワトフォードを押し込みながら進めていく。
ゆったりとした展開でも目の前の相手をちぎれるくらいトラオレは調子がいいし、トリンコンはむしろこれくらいのペースの方がやりやすそう。ワトフォードのゾーンの切れ目に顔を出しながら、間受けからのドリブルで前進に貢献した。
ワトフォードは場所を守る意識が高い守備の配置の割には人の移動にひっぱられやすいのが懸念。その上、ホルダーにプレッシャーをかけないこともしばしばなので、ウルブスは難しいことをしなくても前進は出来てしまっていた。
どちらかといえばカウンター志向のチームゆえに、ワトフォードはカウンターに出る際はチャンス。なのだが、ボールを奪っての1つ目のパスがどうしても決まらず。攻撃の機会を有効活用できない。デニスとサールの両ワイドのアタッカーを活かしたい気持ちは感じるのだが、その画を具現化できずに苦しんでいるようだった。その上、ウルブスはカウンターに出たら出たで十分戦えるチーム。早い展開になっても戦える相手に対して、自分たちの展開が作れず苦しむワトフォードだった。
後半もややワトフォードが盛り返した感があるが、依然ウルブスの優位は動かない。ワトフォードがネベスとモウチーニョにプレッシャーをかけられないためにウルブスは呼吸が出来ている状態を維持できていた。
そんな中で先制点はラッキーな形で。クロスボールの対応をシエルラルタが誤り、ウルブスが1点を手にする。その後も攻め気が切れないウルブスは交代で入ったポデンスが右サイドからチャンスを作ると、決めたのは新加入のファン・ヒチャン。試合を決定づける2点目は新加入FWのお祝いゴールとなった。
ラッキーな形で試合の展開が動いたのは否めないが、90分を通してみればウルブスの勝利は妥当。あらゆる局面でワトフォードを上回る完勝で、開幕からの連敗を止めた。
試合結果
2021.9.11
プレミアリーグ 第4節
ワトフォード 0-2 ウォルバーハンプトン
ヴィカレッジ・ロード
【得点者】
WOL:74′ シエルラルタ(OG) 83′ ヒチャン
主審:ピーター・バンクス
⑧チェルシー【4位】×アストンビラ【11位】
■アストンビラの3つの誤算
前節はアンフィールドから10人に勝ち点を持ち帰ったチェルシー。内容と結果が伴う序盤戦で好調な滑り出しを決めている。ホームに迎えたアストンビラに対しても支配的に試合を進める。
チェルシーの3バックに対して、アストンビラのプレス隊は2トップ。チェルシーはGKも絡めてのビルドアップもできるので、数的優位は十分。アストンビラ側もそれは織り込み済みで2トップは無理にボールを取りに行こうという姿勢を見せず、中盤へのパスコースをケアしながらの守備になっていた。
その分、アストンビラが狙いを定めていたのは中盤。ボールを受けたところへの厳しいチェックを欠かさないアストンビラにチェルシーの中盤は苦戦。とりわけ、明らかに適応できなかったのがこの試合がデビュー戦となったサウール。ボールを受けてからのプレーの判断までが遅く、アストンビラの中盤のボールの狩りどころに。アストンビラはショートカウンターからチャンスを作っていった。
調子よくチェルシーに対する防衛策を張っていたアストンビラだったが、誤算が2つ。まず1つ目はそのサウールの相方の存在だ。取りどころに定め、窒息しそうになっているサウールにコバチッチがヘルプにいく。コバチッチは密集からのボール運びで中盤の守備を無効化すると、前線のルカクにピンポイントでパスを届ける。マルティネスの代役を任されたスティアーにはルカクの相手はやや重荷だったか。ルカクはあっさりとこれを沈めて先制点に。
ボールの取りどころを追い込み、アストンビラがカウンターのチャンスを得られそうだった形をコバチッチが一人で反転。アストンビラはオセロを一枚置いただけで盤面の優劣を一気にひっくり返された気持ちになったに違いない。
もう1つのアストンビラの誤算はメンディ。アストンビラはカウンターのチャンスは作れていたし、それをゴールゲッターのワトキンスに届けることもできていた。その上で、ワトキンスのプレーセレクトも悪くはなかった。だが、それを上回ったのがメンディ。長い手足に驚異的な反応スピードであらゆるシュートをセーブ。この日の存在感は圧巻で、このパフォーマンスが続くならば、世界最高のGK候補に彼の名前を挙げない人はいなくなるかもしれない。
結果としては敗れたアストンビラだったが、非常にいいパフォーマンスだったように思う。特に印象的だったのは中盤3人のパフォーマンス。とりわけ際立っていたのはマッギン。フォロワーさん曰く『連戦になればなるほど輝きを増す』とのことなので、9月の怒涛の代表3連戦すら彼には追い風なのだろう。あらゆるボールを刈り取り、サウールに苦い思いをさせまくっていた。
ラムジーも早い段階での警告で尻込みするかと思ったが、その後もタフなマークでチェルシーの面々を苦しめていたし、ドウグラス・ルイスはいうまでもない安定感。中盤は盤石で、この日不在のブエンディアの穴を埋めて有り余るパフォーマンスだった。
逆に残念だったのは2失点目の場面だろう。ミングスはルカクとのマッチアップに燃えていたし、ある程度はやれていたと思うのだが、この2失点目のシーンでのバックパスは軽率の一言に尽きる。フィジカルにも恵まれ、足元のスキルも十分なのだが、やや自信過剰すぎるきらいがあるのがミングス。この大一番で彼の悪い癖が出てしまったことがアストンビラにとってはこの試合3つ目の誤算だったといえるかもしれない。
試合結果
2021.9.11
プレミアリーグ 第4節
チェルシー 3-0 アストンビラ
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:15′ 90+3′ ルカク, 49′ コバチッチ
主審:スチュアート・アットウィル
⑨リーズ【15位】×リバプール【5位】
■緩まず、荒れずの90分
攻守の切り替えが早く、アグレッシブなスタイルで人気を博した昨季の昇格組のリーズ。中立のファンも多いチームが昨季開幕戦として対戦したのがリバプールだった。
この日も昨年の開幕戦のようなリーズとリバプールの撃ち合いだった。互いの攻撃のターンがどんどん切り替わっていくアグレッシブなゲーム。
そんな中で気になったのがチアゴの先発起用。トランジッション合戦になった際のリバプールの面々では少し見劣りする部分もある。もちろん、リバプールならば試合を落ち着かせて寝かせることもできるだろうが、この日のリバプールにはそんなつもりはなかったように見えた。それに特に守備面においてややアラが見えたので、彼を起用した意図は個人的には見えにくかった。
ただ、組み合いに付き合ったリバプールがうまくいってなかったわけではない。むしろ、リーズを上回っていたと言えるだろう。特に効いていたのは両CBのフィード。これまでの試合でもそうだったが、ファン・ダイクの帰還は守備面だけでなく、攻撃面でも非常に大きな影響を与えている。大きく正確なフィードのおかげで相手のチームは狭く狭く守ることができない。
リーズは今季からプレス隊であるバンフォードのサポートとして、IHのロドリゴを早めにフォローに行かせるシーンが目立っており、CBのケアには昨季以上にケアしている。だが、それでも彼らにショートカウンターでボールを引っ掛けるシーンは数多くは訪れなかった。
先制点もCBが非常に効いていた場面。ただし、ファン・ダイクではなく、マティプの方である。逆サイドから大きな展開を引き取ったことで1stプレスラインを超えたマティプ。今季、ここまで好調なリバプールの右サイドの連携に自陣深い位置から混ざる事で、アウトナンバーを作ることに成功。彼の持ち上がりが先制点を呼び込んだといっていいだろう。その後のオフサイドでゴールが取り消しになったシーンもマティプは攻撃参加で貢献。リバプールの攻撃のアクセントとして効いていた。
30分を過ぎるとややリーズはトーンダウン。馬力の部分でリバプールが渡り合える上に、大きくサイドに振られる機会が多いことでダメージがいつもより早めに溜まっていたのかもしれない。序盤は効いていた、トランジッションから素早く裏のバンフォードに狙う形も時間の経過とともに見られなくなってくる。
後半になるとリーズは再び盛り返しはするが、依然としてリバプールが優位。トランジッションの局面からマネとジョッタがチャンスを作ると、その流れのCKからファビーニョが追加点。試合を決める。
ただ、リバプールにとっては勝ってなお手痛い一戦。エリオットの大怪我は今季好調だっただけに残念である。軽傷を祈りたい。
だが、その後の両チームのプロフェッショナルなリアクションは非常に目を見張るもの。過度にヒートアップすることもなく、流し過ぎることもなく、黙々と互いに勝利を目指していた。バンフォードとアリソンの接触など、ややピリッとする場面もあったが、互いにすぐ手を取り合いながら立ち上がるなどとてもクールなリアクション。
両チームにとって飲み込むのが難しい試合になったのは確かだろうが、彼らはできることをやった。エリオットが再びピッチに立つ時が1日でも早くくることを祈っている。
試合結果
2021.9.12
プレミアリーグ 第4節
リーズ 0-3 リバプール
エランド・ロード
【得点者】
LIV:20′ サラー, 50′ ファビーニョ, 90+2′ マネ
主審:クレイグ・ポーソン
⑩エバートン【6位】×バーンリー【16位】
■6分で一気に仕留める
この試合のエバートンはいつもと異なる3-4-3を採用。今シーズン初めての3バックでのスタートとなった。おそらく、狙いはバーンリーの4-4-2と噛み合わせをズラして時間を作ろうというところだろう。
しかしながら、このやり方はあまり効かなかった。というのも、バーンリーがそういう配置的な要素と関係なく、高い位置からプレッシングに来たからである。噛み合わせとか気にせずに人に向かってプレスにくるバーンリーにエバートンは苦戦。脱出することができずに前に進めない時間が続いてしまう。
むしろ、この両チームの噛み合わせのズレをうまく使っていたのはバーンリーの方。エバートンが噛み合わせのズレからプレスをうまくかけられないのを利用し、バーンリーは長い展開から安定した保持を見せていた。相変わらずフラフラするのが上手いマクニールは、同サイドのテイラーのオーバーラップの手助けを借りながら中盤からエリア内にクロスを上げてチャンスを創出していた。
非保持では相手を捕まえられず、保持では相手に捕まり苦戦するエバートン。それでもなんとかCFに入ったリシャルリソンのポストプレーや裏抜けでズレを作るなど抵抗の姿勢は見せていく。
前半終了間際には少々エバートンにペースは流れたものの、もっさりした展開は依然としてバーンリーが得意とするところ。後半早々にセットプレーのセカンドチャンスを生かし、ベン・ミーが先制点をゲットする。これでバーンリーはCFよりもCBの得点の方が多いチームになった。
なんとなく展開に飲まれやすい印象があるエバートン。この悪い流れを変えられないかなと思ったが、バーンリー同様にセットプレーから追いついてみせる。得点を決めたのは同じくCBのキーン。開幕戦から失点につながるミスを重ねているCBが得点面で嬉しい貢献を果たした。
ここから一気にエバートンは畳み掛けていく。中盤の競り合いから転がったゴールをタウンゼントがミドルで撃ち抜くと、その直後には中央をぱっくり割ったグレイの裏抜けから一気に追加点まで。同点弾から3点目までわずか6分間の出来事だった。3得点目はガバガバ。それでも中央のパスコースを見つけたドゥクレは褒めたいところである。
最後はゴメスやイウォビの投入で保持にて落ち着かせるポイントを作り逃げ切ったエバートン。これで今季すでに逆転勝ちは2回目。もっさりとしたバーンリーのペースに巻き込まれずに、なんとか得点でペースを壊すことに成功した。
試合結果
2021.9.13
プレミアリーグ 第4節
エバートン 3-1 バーンリー
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:60′ キーン, 65′ タウンゼント, 66′ グレイ
BUR:53′ ミー
主審:アンドレ・マリナー
おしまいじゃ!