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「準備を台無しにする」~2021.8.18 天皇杯 4回戦 川崎フロンターレ×清水エスパルス BBC風オカルトプレビュー

 このプレビューは対戦カードの過去の因縁やジンクスを掘り起こして、試合をより一層楽しむための物です。

目次

Fixture

天皇杯 4回戦
2021.8.18
川崎フロンターレ(J1/1位/19勝5分0敗)
×
清水エスパルス(J1/14位/5勝9分10敗)
@IAIスタジアム日本平

戦績

近年の対戦成績

図1

 直近5年間の11回の対戦で川崎の8勝、引き分けが3回。

清水ホームでの対戦成績

図1

 直近10回の対戦で清水の1勝、川崎の7勝、引き分けが2回。

Head-to-Head

<Head-to-Head>
・直近12試合の公式戦で川崎は清水に負けなし(W9,D3)
・直近18試合の公式戦の清水戦で川崎はいずれも複数得点を挙げている。
・天皇杯での直近の対戦は2017年の4回戦。森本貴幸のハットトリックで川崎が清水を下している。
・天皇杯における日本平での清水×川崎はこれが初めて。

 苦戦を強いられながら川崎が勝利を手にした今季前半戦の対戦。苦しい記憶も少なくない日本平で勝利を掴み、川崎は対清水戦の無敗を12、連続複数得点試合を18まで伸ばした。近年は負けていない非常に分がいい相手といえるだろう。

 天皇杯での対戦は4年ぶり。当時も今回と同じ4回戦での対決で、等々力で森本のハットトリックで4対1と川崎が快勝。ちなみにこの試合はCHコンビが板倉とエドゥアルド・ネットというなかなかな組み合わせだった。

 天皇杯での日本平でのこのカードは今回が初めて。2001年12月に清水が川崎を準決勝で下した試合は神戸で行われていたようで、天皇杯での通算成績は1勝1敗での今回が3回目の対戦。ちなみにカップ戦での日本平の対戦は2015年のグループステージが唯一。後半に森谷とエウシーニョの右サイドコンビの2得点で清水に勝利を収めている。

スカッド情報

【川崎フロンターレ】

・大島僚太、塚川孝輝は離脱中。

【清水エスパルス】

・鈴木義宜は頭蓋骨骨折で欠場。
・エウシーニョは左内転筋肉離れで離脱中。
・中村慶太は左膝内側側副靭帯の損傷で欠場見込み。
・カルリーニョス・ジュニオは全治6週間の離脱中。

スタメン予想

画像4

Match Facts

【川崎フロンターレ】

<川崎のMatch Facts>
・公式戦40試合連続無敗中(W31,D9)
・リーグ前節の柏戦では公式戦39試合ぶりに無得点。
・ここ2試合の天皇杯はいずれも先制されている。
・延長戦までもつれた天皇杯は直近8戦で7勝。。
・直近2大会の敗退はいずれも3-2。3点取られたところから2点追いついている。
・レアンドロ・ダミアンは国内カップ戦直近7試合の出場で得点がない。

 直近の柏戦ではおよそ10カ月のぶりの公式戦の無得点ということでやや停滞ムードがあるのは否めない川崎。しかしながら無敗記録は40まで伸びており、依然として倒しにくいチームであることは確かだろう。

 天皇杯でも苦戦は続いている。今年の2試合は長野、千葉と下位カテゴリーのチームにいずれも先制を許す苦しい展開。それでも、粘り強さは健在。特に天皇杯では延長まで持ち込んだ成績は抜群。8戦で7勝を挙げており、120分勝負は避けたいものの得意な舞台ではある。PK戦も天皇杯では4連勝中。22人連続でPK成功は継続中。最後に外したのは10年前の谷口博之である。(追記:長野戦の遠野の失敗とルヴァンカップ決勝の車屋の失敗が抜けていたのでいろいろ間違ってます。ごめんね)

 入りが悪いのはもはやおなじみの川崎の天皇杯。負けパターンは序盤の不調に歯止めが効かない場合だ。直近2回の敗退はいずれも3失点から盛り返すも届かない形である。国内カップ戦ではなかなか輝けないダミアンにもそろそろ得点が欲しいところだが、出番はあるだろうか?

【清水エスパルス】

<清水のMatch Facts>
・公式戦直近4試合勝ちなし。
・ホームゲームは直近3試合勝ちがない。
・天皇杯でJ1相手に勝利したのは2019年を除けば2014年までさかのぼる。
・今季の天皇杯の得点は全て後半に挙げたもの。
・突破すればロティーナ監督の天皇杯最高成績タイ。
・得点王のチアゴ・サンタナを除くとチーム内で最も多くのゴールを決めているのは原輝綺と片山瑛一。

 川崎戦での敗戦からホームゲームは3試合連続で勝ちなし。公式戦での最後の勝利は天皇杯の3回戦。盛岡を2-1で下した以来である。そういう意味ではやや勢いは下火といえるだろうか。リーグ戦を見る限りは内容はそこまで悪くないように思えたけど。

 天皇杯の成績を見てみると準決勝に進出した2019年を除けば、J1勢に勝利したのはFC東京に勝った2014年にさかのぼることになる。何とか後半まで粘り、サンタナ、片山、原などエリア内に得点できる選手たちにボールをつなげたいところ。日本では国内カップ戦で成果を出していないロティーナに上位進出をプレゼントするには1か月前にホームで勝てなかった相手を下さなければならない。

展望

■松岡加入で多様化した攻撃

 リーグ戦での対戦から1か月。天皇杯に舞台を移し両チームは再び日本平で対戦することになる。たかが1か月だが、されど1か月。両チームの状況はあの時とはそれぞれの事情で変わっている。

 清水はチームとしてのやり方を成熟させるために手段を工夫した印象である。キーとなったのはもちろん、今夏屈指の大型補強といっていい松岡大起。彼をCHを据えたことでボールの循環の方向に変化が見られる。

 これまではSHに入った片山がビルドアップで詰まりそうになった時の人数の調整役を引き受けていた。しかしながら、松岡が中央に入り、人数調整役は彼にシフト。CHとして中央で上下動しながらボールを引き出し、チームの心臓としての働きをする。相方となるCH(河井、宮本など)とは縦に角度を付けながらお互いにパスコースを作る。

 これまではチームの中であまり頻度の高いルートではなかった中央からのボール運びが松岡の登場で一気にスムーズになったように見える。松岡は守備においても単体でカウンターを遅らせることが出来る無理が効く選手だ。あっという間に清水の攻守の中心的な存在になったといっていいだろう。

 中央でのパスワークが増えたことでGKの権田のパスワークの参加頻度も増加。CBが開き、権田を挟むように立ち、松岡がそこからボールを受けるという並びになり、ひし形あるいはもう1人のCHも加えた五角形でボールを回していく。

 こうなるとSBの低い位置での仕事はだいぶ減るし、SHの前進への手助けの必要性も減る。したがって、松岡の登場に伴い片山をSBにおいて、2列目をより攻撃的な人選にすることが可能になった。

 中央に起点を作ることが出来たおかげでその先の攻撃のバリエーションも増えた。サンタナや鈴木への縦パスも頻度が増えたし、SHの後藤や西澤も絞りながら受けることで、縦の受け手を増やしつつ、SBのオーバーラップを促していた。

 外を回って攻撃に参加するのはSBの片山や原。1か月前までは原が高い位置に出ていきクロスを上げる状況からすべてを逆算しなければどうしようもなかったけど、今はそこまで攻撃はモノトーンではない。保持の局面も非保持の局面も静的に制御しながらというのがロティーナのコンセプトだが、そのコンセプト実現のための手段を新たに準備したことで、攻撃のルートが増えた印象を受ける。ただし、この試合ではその松岡は鳥栖で出場していたためプレーは不可。中心選手を欠いた清水が明日の試合にどういうスタンスで臨むかは気になるところだ。

 一方で試合全体で保持の局面を増やすという部分の実現は現状では模索中の域。大きな理由はプレスがハマらないからである。清水のリーグ戦、ここ数試合の相手は川崎、横浜FM、G大阪。前者2チームは相手が4バックであるものの、プレス耐性が強く、中盤のプレスでバンバンひっかけるということにはならなかった。G大阪は3バックゆえに清水の2トップが先導役となるプレスがハマりにくく、プレスのためのバランスを見つけることが出来なかった。

 プレスをかけていてもデメリットが大きいと判断すれば、ラインを下げるのが清水のやり方。ただし、川崎や横浜FMのような攻撃後の即時奪回を意識するチームに対しては、ラインを下げてしまうと陣形を整えるための時間を与えてもらえないことが多い。

 そうした時間のない状況のつなぎに対応できるほど、まだ清水にはプレッシングの耐性はない。特に最終ラインは少ない保持の時間で脱出できるほどのスキルはまだない。加えて、カウンターでもダメなわけではない。2列目に機動力の高い選手が多いこともあり、ロングカウンターで無理が出来る陣容であることも多い。片山の高さを生かしたサイドへのロングボールなど、逃がしてもマイボールを続けられる方法もある。

 ただ、本当のところでいうと持ちたいだろうし、制御するためのロティーナだと思う。一部の選手が起用できない中でそのチャレンジを川崎相手にどこまでするか?が戦い方のポイントになりそう。勝利のためには割り切りも必要だろうが、前進のためには自分たちがどこまでできたかを測るための一戦にもなりそうだ。

■スライドの遅さにIHで付け込む

 川崎としてまずはしっかりとプレスの心を折ることが大事。リーグ戦直近で対戦した柏に比べると割り切ってプレスバックする頻度は高い印象である。柏戦ではローラインに抑え込んでも攻略はできなかったが、清水という相手を考えても、今のチームで抱える課題を考えても、押し込んだ相手を崩すことはトライしていかなければいけないと思う。

 基本的には1か月前の日本平と同じくライン間を支配すること。相手のCH-SB-SH-CBの中に入ることで起点を作り、そこから裏に抜けることでその四角形を歪め、広がったらまた間を使いの繰り返しで相手の陣形を壊していきたい。

画像4

 特に清水はDFにおいて1人が動かされた後の対応がスムーズではないチーム。例えばハーフスペースの裏抜け対応へのスライドでのヘルプとか、相手のSHが降りる動きに合わせてSBがついていった時の大外のスペースとか。相手の陣形を歪ませるためには安全第一で取り組んだ柏戦よりも、相手の中央からハーフスペース付近のライン間で前を向くための内側での楔を使った前進にトライすることが重要である。

 最近の川崎はIHがどこで崩すかを指し示すことが多いので、IHが描いている画に沿って崩しをデザインしたいところ。彼らが抜け出したところから陣形は歪むし、彼らが飛び込むところにはシュートの好機がある。前回の対戦で決定的な役割を果たしたのも大島と脇坂という両IH。そして柏戦で最もシュートの意欲が高かったのは旗手。三笘後の川崎ではIHが得点に関して決定的な働きをこなさなければいけない傾向が強まっているように思う。ACLで爆発した橘田やストライカーながらIH起用もある遠野も含め、つなぎや崩しだけでなく、仕上げもこなして日本平の再現を狙いたい。

 またクロスに関しては大外でSBの小林を使ったミスマッチを使うのも1つの手。宮城で全体の陣形を川崎の左側に寄せることが出来る時間帯は特に効果が期待できそう。限られた時間帯でも得点を取りに行くオプションとしては面白いはず。ファーの小林へのクロスの落としに中盤が走りこんでいく形はイメージできる。

 守備においてはクロスが要警戒。清水は中の高さはある分、クロスを上げられたらだるいチームでもある。サイドの選手もさぼることなくクロスに飛び込むので数は揃いやすい。クロスを上げるサイドのSH-SBは縦関係をよく入れ替えながら攻撃を仕上げてくるので、川崎としては個々のマークの受け渡しをしっかりしておきたい。

 カウンターを見くびるわけではないが、やはり清水が保持の局面を制御するまでの課題をあぶりだす戦いの方が川崎にとってはいいと思う。プレスの心を折り押し込む、そして最終ラインに時間を与えずに保持の陣形を整わせない。相手がどこまでできるかを図りたいのならば、こちらは用意してきたものを取り上げて割り切らせる。準備してきたものを出させないことから始めるのがいいだろう。

参考
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)

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