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「引力の恩恵を受ける」~2024.3.9 プレミアリーグ 第28節 アーセナル×ブレントフォード レビュー

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レビュー

左右で異なる対応のブレントフォード

 翌日にはシティとリバプールの直接対決があるため、勝てば2位浮上の確約がされるアーセナル。後ろには中2日でホームにポルトを迎えるCLが控えているということで、非常に難しい日程でのリーグ戦となった。

 立ち上がり、予想通りブレントフォードは高い位置からプレッシャーに来る。特に重要としていたのは3センターがきっちりと噛み合わせて前から潰しに行くこと。CBを追いかける2トップに追従するように前から追いかけにくる。

 ラムズデールが後方に控えるアーセナルとしてはまずはこの初手のプレッシャーをきっちり回避したいところ。安全地帯になったのはSB。後述するが、ブレントフォードのマークの意識は明らかに大外のWGにあったのでWBがこのマークを捨ててSBを捕まえにいくことはない。

 というわけで中央は枚数を合わせているが、サイドは枚数が合わない時があるという状態のブレントフォード。アーセナルはSBが安全にボールを持つことができていた。逆サイドに振りながら3センターに横スライドのプレッシャーをかけていければさらにいい感じではあっただろうが、この辺りはラヤとラムズデールで勝手が違う部分だろう。ただ、ラムズデールはキャッチング後のトランジッション意識が目に見えて改善しており、この辺りはラヤとの競争の相乗効果が見られた部分だった。

 もっとも、アーセナルにSBを安全地帯として使われることはブレントフォードは織り込み済みだったはず。ここでマンツーでいくリスクは取ることができないため、中央で取り切ってカウンターまで移行できればラッキーくらいの感覚だろう。必ず捕まえ切るプレスというよりはいつもとGKが違う分、後ろを突っついたら何か起きないかな?という様子見ベースの立ち合いだったように思う。

 というわけで10分も過ぎれば試合はアーセナルが押し込みながらブレントフォードのブロック守備の攻略に移行することとなった。プレビューで書いた「揺らぎ」がある時間の先制点をアーセナルは奪い取れなかった。

 押し込むアーセナルはサイド攻撃からの攻略をベースにポゼッション。ブレントフォードは左右の守備の対応に差があった。サカのいるアーセナルの右サイドに対してはブレントフォードはジャネルトとルイス-ポッターが2人で監視、逆サイドのトロサールに対して1on1を許容していたのに比べると手厚い対応と言えるだろう。もちろん、サカとトロサールというアーセナルのアタッカー側の資質も噛んでいるだろうが、左のWBのルイス-ポッターがよりアタッカー寄りの選手ということも関連しているかもしれない。

 いずれもしても、アーセナルに左右の攻撃はかなり攻略のしやすさが違った。サカが必ず2枚を引きつける右サイドはホワイトを簡単にフリーにできたし、彼がPA内に向かう動きを見せれば、アンカーのノアゴールもしくはワイドのCBのコリンズのどちらかはホワイトを監視することとなる。ウーデゴールやハヴァーツもボックス付近右寄りをうろうろしているので、ホワイトにどこまでついていくか?ということはブレントフォードの守備陣の匙加減ということになる。まぁ、ブレントフォードはさすがにこういうあたりはうまい。それでもサカに2人持っていかれる右サイドはきつそうだったけども。

フリが効いた先制点のクロス

 右に比べると、アーセナルの左サイドはなかなかズレを作れなかった。さすがにトロサールにはサカほど相手のマークを引き寄せる力はないし、改善傾向がかなりあるとはいえ、右のホワイトに比べればキヴィオルは攻め上がった時にできることはまだまだ少ない。というわけでズレを作るための仕組みも、ズレを生かすための仕組みもこのままだと少し足りないなという感じだった。

 そのため、左サイドは細かいパス交換だけでなく手早くボックス内に放り込んでいくアクションを見せるように。合わせてシュートを打つためのハイクロスというよりはスペースメイクの裏抜けに合わせてブレントフォードの陣形を動かしたいという意図だろう。ブレントフォードのバックスは負傷者の影響からいつもよりも安定感が割引のため、エラーを引き起こすための早仕掛けだったように思う。

 もう1つサイド攻撃の工夫として見られたのは逆サイドからの出張。サカが左のハーフスペースに顔を出して抜け出す動きである。頻度はかなり少なかったが、逆サイドの選手が顔を出してオーバーロードの役割を担うのはそれなりに有効な策である。もちろん、左右の陣形がアンバランスになるので同サイドの攻撃をきっちりとやり切る必要があるのだけども。

 ちなみにIHが逆サイドに出ていく方が陣形的にはカジュアルにオーバーロードを活用できる。だが、現状のアーセナルの得点パターンはクロスに対してCFと逆サイドのIHが飛び込むことで枚数を担保しているので、ボックス内に飛び込む役割をあまり動かしくないということだろう。

 右サイドからの攻撃ではあるが、アーセナルの得点シーンにもこの動きは効いているように思う。ライスのゴールシーンの手前のところ。ウーデゴールが挟まれてPKでは!?と主張している場面は左WGのトロサールが右のハーフスペースの奥に飛び込む場面があった。

 これに加えて、アーセナルの右サイド攻撃はサカ、ウーデゴール共に縦にドリブルして右足でクロスを上げるシーンがいつもよりも多かった。これによって、得点シーンにおけるブレントフォードのCB、特に中央のアイエルはかなりニア側に意識が引っ張られていたように思う。映像で確認してみると面白いのでぜひ確認してもらえると。

 ハヴァーツがファー側のイェルゲンセンにつっかけたことで、その外を回るライスのマーカーはWBのローアスリウに。これはブレントフォードにとって空中戦で明らかなミスマッチを生む。これが得点につながることになる。

 得点シーンだけ見ると、ホワイトのアシストはなんてことのないファーへのクロスに思える。だが、その場面だけでは見えないニアへの引力を使った虚をつくプレーだった。

 ただし、ブレントフォードは十分にローブロックを正当化するロングボールの威力を見せていたと言っていいだろう。トニー、もしくはウィサへのロングボールに同サイドのIHとWBがセカンドボールを拾いながらさらに攻撃を仕掛けていくというスタンスはかなりアーセナルにとっては跳ね返すのが難しい。いつも通り、ドンパチやりあえるトニーはもちろん、ガブリエウから警告を引き出したウィサも十分な働きを見せていた。攻め上がる機会はアーセナルよりも明らかに少なかったが、一度の威力は十分なものだったと言えるだろう。

 アーセナルはビハインドで圧力を増しつつあるブレントフォードを活かしながら追加点を狙う展開。しかしながら、前半終了間際にミスが出る。ラムズデールがタッチを増やしてしまった分、ウィサのプレスが間に合って失点。ほぼ前半ラストプレーのことだった。

 このミスは正直手痛いものだった。GKがパスワークの中でミスに絡むのはスタイル上許容しなければいけないリスクとは思うが、当該シーンはおそらく蹴り出してしまえば前半が終わっていたシーン。逆にいえば、ウィサを惹きつけてスペースを作り出したとしても、そこから攻め切る時間が与えられないかもしれないのだ。

 それでいえば、ラムズデールがボールを受けた段階でダイレクトに蹴り飛ばさずに足元に置いてしまったことは無意味なリスク。意味づけが薄いリスクによって生み出されて失敗はスタイル上許容しなければいけない失敗とは少しフォルダが違う感じがする。そういう意味で非常にもったいない失点だった。

決め手はやはり右サイド

 迎えた後半も前半と展開は陸続き。アーセナルのボール保持に対して、ブレントフォードがきっちりと跳ね返していくスタートだった。プレス時は中盤をきっちりハメていくブレントフォードだったが、リトリートになると3センターのタスクは横へのスライドにシフトする。そのため、押し込むフェーズではジョルジーニョがFWのプレスバックを受けない限りはフリーになるというのがアーセナルのポゼッションの安定感を支えていた感がある。

 後半も主役は右サイドのアーセナル。前半に比べると、サカを積極的に追い越すアクションを見せるホワイトからブレントフォードの最終ラインを押し下げることが増えていた。もっとも、ブレントフォードの守備においての最重要警戒ポイントはここになっていたので、ポケットを埋める動きはかなり徹底されていたが。サカが裏に抜ける役割を担う時は決めうちでマイナスに速い折り返しを見せていたので、この辺りはスカウティングだったのかもしれない。

 結果的に右の奥を抜ける動きを中心に生み出されたセットプレーからアーセナルはチャンスを作り出す。ヘディングからチャンスを迎えるといういつもの光景を見せたアーセナルだが、ブレントフォードはすんでのところで跳ね返す。

 しかしながら、ブレントフォードも後半は得点の可能性を十分に見せていた。トニーは空いているゴールマウスに長いレンジからあっさりと枠内ミドルを放ったし、セットプレーからもファーのアイエルが空くデザインから決定機を生み出す。だが、いずれもラムズデールがファインセーブ。リーチを生かしたセービングから失点の危機を救ってみせた。

 アーセナルは左サイドにテコ入れ。幅をとれるネルソンとインサイドからサポートできるジンチェンコを投入し、こちらのサイドからも攻撃の活性化を図る。ネルソンがトランジッションの強度も含めてきっちりとゲームに入ることができた。

 しかしながら、この試合の決め手になったのは右サイド。繰り返して行ってきたホワイトの抜け出しがルイス-ポッターを振り切ると、ニアに飛び込んだハヴァーツがゴール。アイエルからすればGKの手前に速いクロスを入れてくるイメージだったのだろう。ニアにロブ性のボールを入れてきたのは虚を突かれたかもしれない。

 アウェイと同じく終盤までもつれたブレントフォードとの一戦はアウェイと同じくハヴァーツのゴールで決着。連勝を伸ばした状態でエティハドへの首位決戦に臨むこととなった。

あとがき

 終盤までもつれるリーグ戦は久しぶりだったし、難易度の高い押し込んでから何ができるか?というところにフォーカスした展開になったが、90分殴り切れるチームになっていることは感じていたのでその点では安心してみることができた。

 オーバーラップを繰り返しての2アシストを決めたホワイトは殊勲。2枚がマークにつくサカの引力の恩恵を受けて、右サイドの攻撃を牽引。これができればポルトとの2ndレグも勝手が違ってくるはずだ。

試合結果

2024.3.10
プレミアリーグ 第28節
アーセナル 2-1 ブレントフォード
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:19‘ ライス, 86’ ハヴァーツ
BRE:45+4′ ウィサ
主審:ロベルト・ジョーンズ

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