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「初手を封じて勢いを止める」~2021.8.13 プレミアリーグ 第1節 ブレントフォード×アーセナル プレビュー

目次

Fixture

プレミアリーグ 第1節
2021.8.13
ブレントフォード
×
アーセナル
@ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム

戦績

過去の対戦成績

図1

 過去1試合の対戦でアーセナルの1勝。

Head-to-head from BBC sport

・トップリーグでの過去の対戦は1947年5月の。アーセナルがブレントフォードを1-0で下している。
・直近の公式戦での対戦は2018年9月のリーグカップ3回戦。ダニー・ウェルベックの2得点とアレクサンドル・ラカゼットの得点で3-1でアーセナルが勝利している。

スカッド情報

【Brentford】

・プレシーズンマッチのバレンシア戦を首の負傷で欠場したイヴァン・トニーは先発復帰見込み。
・新加入のヨアネ・イッサはスカッド入りの見込みだが、ジョシュ・ダシルバとマティアス・イェンセンは欠場予定。

【Arsenal】

・ベン・ホワイト、アルベルト・サンビ・ロコンガ、ヌーノ・タバレスにデビューの可能性。
・トーマス・パーティ、エディ・エンケティア、ガブリエウ・マガリャンイスは9月までは欠場の見込み。

Match facts from BBC sport

Brentford

・プレミアでプレーする50チーム目のクラブ。ロンドン勢としては10チーム目。
・1946-47以来6回目のトップリーグでのシーズン。
・ハルがフルハムを下した08-09の開幕戦以来、初めての昇格初戦の開幕初日のホームでの勝利を達成する可能性。
・ブレントフォード・コミュニティ・スタジアムはプレミアで60個目の本拠地となるスタジアム。アーセナルはここまでの59個中53個で勝利をしている。
・イヴァン・トニーは昨年のチャンピオンシップで33得点で得点王。15-16のニューカッスルで12分だけプレミアでのプレー経験がある。
・トーマス・フランクはプレミア史上2人目のデンマーク人指揮官に。1人目はスウォンジーの指揮官を2012-14まで務めたミカエル・ラウドルップ。

【Arsenal】

・終盤の5連勝にも関わらず、昨季は1977年以来初めてのトップ7入りを逃す。
・昨季、リードしている展開から落とした勝ち点は8。リーズに次いで少ない数字。
・2000年にサンダーランドに1-0で敗れて以来、アウェイでの開幕戦は負けなし。
・勝てば2015年以来初めてのアウェイでのリーグ戦5連勝。
・アレクサンドル・ラカゼットはリーグの開幕初得点を異なる2シーズン(17-18,20-21)で挙げたプレミア史上初めての選手。

予想スタメン

画像3

展望

■ロングボールがどこまで効くか

 ついにプレミア開幕!そして、書き手にとっていつだって一番書きにくいのは開幕戦のプレビューである。ただでさえ書きにくいのに加えて、よりによって情報の少ない昇格組というのはかなりの受難。というわけで推測だらけになるのだけど、限られた情報の中でブレントフォードのことを探っていきたい。

 ブレントフォードの昨季の基本的なフォーメーションは5-3-2,4-3-3,3-4-3など様々な形のようである。しかし、今季のプレシーズンマッチのうち、唯一Googleでスタメン情報が載っているマンチェスター・ユナイテッド戦は4-2-3-1で臨んでいる。

 ここからは昨シーズンを参考にした話なので、今季は全然違ったらごめんなさいの内容。昇格プレーオフで採用した5-3-2はビルドアップの際は5バックが4バックに変形するのが大きな特徴だ。3バックの内、右の2枚がGKを挟むようにして立つ。したがって、特に押し上げの影響を受けるのは左サイドの方。左のWBのカノスはSHのような振る舞いをする。先に挙げたマンチェスター・ユナイテッド戦では実際に4-2-3-1の左のSHはカノスが入っているので、この保持による変形した4バックと比較的近い文脈にあるものかもしれない。

右のWBのローアスリウは左のカノスに比べると調整役。高い位置を取ることもあるが、最終ラインに残りサイドで受ける役割もこなしている。

 基本的には中盤のビルドアップの関与は少ない。特にIHの2枚。降りることもあるから全くといっていいわけではないけど、あまりボールを経由する場所ではない。フリーとなった後方から前線に長いボールを飛ばしていくのが特徴で、中盤が降りる場合はその長いボールの蹴り手をフリーにするための意味合いが強い。中盤が間受けして前にスルスル進んでいくような動きは見られず、2トップにダイレクトにつけるほうが主流だ。

トップのトニーやムベウモはボールを収めるための長いボールを受ける役割を担う。そして中盤はつなぎよりもFWの落としを拾う役割である。ボールを拾った中盤からサイドに展開。ここからクロスを上げてエリア内でフィニッシュというのがブレントフォードの得意な形である。

画像2

 細かいパスワークでの崩しよりもシンプルにサイドに展開して人数をかけてクロスになだれ込むのがメイン。IHはここに飛び込む役割も任されており、トニーという動き出しに優れたエースの質以外にも数で勝負する要素もある。セカンドボールを拾っての波状攻撃もレパートリーの1つ。中盤の選手のミドルの意識は積極的。ある程度阻まれてもエリア内に人数はいるので、こぼれ球でもワンチャンという意識はあるのかもしれない。

 守備の局面では高い位置から人基準で追い回すパターンと受けるパターンの2種類がある。追いかける場合は前線から。前線はボールを持っていない時もホルダーに死角から近づき、ボールホルダーをつっついてショートカウンターのチャンスを生み出すこともできる。プレーオフのボーンマス戦ではこの流れで相手の退場者を誘発している。

 追いかけまわすときは完全に人基準。相手に前を向いて受けることを許さない影を踏むようなチェイスで相手の中盤をひっかけてショートカウンターに移行することを狙っている。ローラインで受けるときは中盤がボールサイドにスライドし、逆サイドに展開させるのを許さない形。同サイドで密集させてからめとる算段である。IHはここでも大忙しだ。

 一方、カウンター対応はやや甘い場合がある。昇格プレーオフの準決勝のボーンマス戦での2ndレグでは、トータルスコアで1点差のビハインドとはいえ、6分くらいに自軍のCKからハーフコートラインがオフサイドとなるカウンターを食らい、あっけなく先制点を奪われていた。正直、一発勝負でやってはいけない類のミスだったので、よく勝ち上がったなという試合だった。

 これに限らず、自分たちのスピードで戻れなかったときの脆さは要所要所で感じられるし、プレミアレベルだと後方が広いスペースを対応するには怪しい部分がある。今季の目玉補強の内の1つはセルティックから取ってきたCBのアイエル。プレシーズンには先発をしていなさそうなので、この試合に間に合うかはわからないが彼がまずCBとしてプレミアで計算できる存在かが重要だ。

 ほかに補強で力を入れたのはIH。チェルシーからパート=ハリス、ミッティランからオンエカなど運動量豊富で守備に奔走しつつ、エリア内に走りこめる人材なのだろうと推測する。トニー、ムベウモ、昨季終盤は負傷で不在だったダ・シルバなどの既存の主力に加えて、新戦力がどこまで早くプレミアに適応できるのかは大きなファクターになりそうだ。

■初手への対応が試金石

 アーセナルのプレシーズンはそこまでファンがポジティブになれるものではなかった。まず、新加入選手を見てみるとホワイト、ロコンガ、タバレスはいずれもプレシーズンから好調なよう。アーセナルに即フィットできる可能性のあるポテンシャルを秘めていることを楽しみではある。

 だが、移籍市場においてはINもOUTもそのほかはなかなか進まない。アーセナルとしてはおそらく第2GKは必須。それ以外は売却次第といったところなのだろう。トップチームでOUTが決まったのはゲンドゥージ&サリバくらい。本人がチームを離れたがっている感満載のトレイラやコラシナツは売却先の有力な噂がなかなか上がってこないし、それぞれ事情が違うにせよウィリアン、ネルソン、ウィロック、メイトランド=ナイルズ、エンケティア、ベジェリン、ホールディング、レノ、ラカゼットあたりは契約延長交渉も含めて進展が見えてこない。現有戦力絡みの去就でポジティブなのはスミス・ロウの契約延長くらいのものだ。

 加えてピッチの中でも昨季の課題はすぐには解決が難しそう。得点機会の創出こそが最大のテーマだと思うが、今季も後ろが重くなりやすい問題は健在。CB,CHを後方に、SBを軸にサイドから押し上げていきたいところだが、SBが高い位置を取れずにWGが孤立するパターンがしばしば。左は大外からオーバメヤンがクロスを上げる形を模索するみたいな感じになっていて、結構しんどい。中盤の高い位置でのサポートは思わずほしくなったので、プレシーズンでアウアーやマディソンを欲しがる人が出てくるのはよくわかる。SBが低い分、CHが高い位置を取る頻度が増えた気がするので、ジャカやロコンガに高い位置での貢献を求めているのかもしれない。

 そしてSB裏のカウンター対応も悩みの種。マリにせよ、ホールディングにせよ、スピードで振られるとしんどい。SBをあげての攻撃が詰まると、サイドのレーンは相手のカウンターの電車道である。加えてプレシーズンではセットプレーの弱さもぬぐえない。ダビド・ルイスの退団もあり、クロス攻勢への耐久度は怪しい部分がある。

 開幕戦で早速問われそうなのはCBコンビ。おそらくマリとホワイトがスタメンになると思うが、この2人とトニー、ムベウモとの力関係がまずは大事になってくる。長いボールを断ち切ることが出来れば、ブレントフォードはそもそも人数をかけたエリア内の攻撃に移行することが出来ない。

    逆にエリアになだれ込む動きに対応が出来なければ一気にブレントフォードペースに。さらにビルドアップで脱出が出来なければ昇格組の彼らに波状攻撃を受ける可能性すら否定できない。まずはロングボール対応で優位に立ち、ブレントフォードの攻撃の初手を摘みたいところである。スピードに難はあれど、高さを加味すればラインを上げるチャレンジもあり。チェルシー戦とトッテナム戦で異なったライン設定にも注目したい。

 昇格組に勢いに乗せないためにもFWとエリアに飛び込んでくる中盤にはあまり仕事をさせたくないところ。プレミアの貫禄を見せられるかどうかが開幕戦の大きなポイントになりそう。斬新なアカデミーの使い方など、昇格組の中でも異彩を放つブレントフォードは非常に楽しみなチームではあるが、初戦は大人しくしておいてほしいものだ。

【参考】
https://www.bbc.com/sport/football/premier-league

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