Fixture
プレミアリーグ 第2節
2021.8.22
アーセナル(17位/0勝0分1敗/勝ち点0/得点0 失点2)
×
チェルシー(2位/1勝0分0敗/勝ち点3/得点3 失点0)
@エミレーツ・スタジアム
戦績
過去の対戦成績
直近5年間の対戦でアーセナルの7勝、チェルシーの4勝、引き分けが5つ。
アーセナルホームでの対戦
アーセナルの4勝、チェルシーの3勝、引き分けが3つ。
Head-to-head from BBC sport
・アーセナルが勝てば2004年以降初めての公式戦でのチェルシー戦4連勝。
・昨季はアーセナルのシーズンダブル。同カード17試合ぶりの連勝を決めている。
・チェルシーは直近14試合の公式戦のアーセナル戦で3勝(D5,L6)のみ。直近3つはいずれも負け。
スカッド情報
【Arsenal】
・ピエール=エメリク・オーバメヤンはコロナウイルスから復帰の予定。しかし、アレクサンドル・ラカゼットとウィリアンは未だ復帰できず。
・マルティン・ウーデゴールはビザの問題で出場は不可。
【Chelsea】
・ロメル・ルカクに2度目のチェルシーでのデビューの可能性。
・クリスティアン・プリシッチはコロナウイルスのため欠場。
・エンゴロ・カンテとハキム・ジエフには復帰の可能性。
Match facts from BBC sport
【Arsenal】
・負ければ3回目のプレミア開幕連敗スタート。
・昨季の公式戦での9敗は1929-30シーズン以来の数字。
・直近10年のホーム開幕戦のうち、5つは負けている。
・ブレントフォード戦での敗戦は、昨季のロンドンダービーの敗戦数に並んだことになる。
・ニコラ・ペペは直近のプレミアでのアーセナルの5ゴールのうち4つを決めている。ラスト3つも彼。
【Chelsea】
・アウェイでの開幕戦は直近20年で3敗のみ。
・無失点を記録すれば11年ぶりの開幕2試合連続クリーンシート。
・トゥヘル就任以降リーグで記録したクリーンシートは12。同時期の他チームに比べて3つ以上多い。
・勝てばアウェイでのロンドンダービー5連勝でトップリーグでのクラブ記録に並ぶ。
予想スタメン
展望
■取り組むべき3つの課題
いつもこのプレビューを読んでくれている人ならわかるかもしれないが、多くの場合はまず相手のチームがどんなやり方をしてくるかを探り、その上でアーセナルがどのように対応するか、どこに注意を向ければいいかの話をする。
だけども、今はそういう話以前の段階だと思う。第一にチェルシーがまだ明らかに底を見せていないことが挙げられる。クリスタル・パレス戦は引き出しの数が問われる試合ではなかったし、おそらくこの試合にはルカクも絡んでくるだろう。あの試合を見て『チェルシーの今季は大外に付けてハーフスペースの折り返しから裏抜けして深さを取るよ!』とは断言できない。
アーセナルがそれに対応できなければ(悲しいことにその可能性はある)、同じことの焼き直しはあるかもしれないが、そこを封じたからといってチェルシーが手詰まりになるとは考えにくい。トゥヘルのチェルシーは試合を進めながら問題点を解決してきたチームである。
第二にアーセナルがそれどころではないからである。開幕戦ではプレスに屈し、やりたいことに対して心が折れてしまったように思えた。もちろん、サッカーは相手があってのことだが、それは自分たちの持ち味と相手のやり方を照らし合わせて最適なものを選ぶべきという意味だろう。まずは自分たちの持ち味がふわふわしている状態では話にならない。
というわけで今季のアーセナルの取り組むべきテーマについて3つに分けて話をしたい。
1. 自陣からのビルドアップとラインを上げること
最初にして最大のテーマである。ルイス⇒ホワイトの今夏のリプレイスは数でいえば入れ替えにあたるが、選手個人のカラーでいえば全く異なるものになる。まず、どちらも足元の技術は高いが、ルイスが対角や前線へのロングフィードを選ぶ手段が多いのに比べて、ホワイトはドリブルで持ち運びつつ、ショートパスで局所的な数的優位を活用するのがうまい。
加えて、ホワイトにはルイスと異なり、エリア内での空中戦耐性が低い。となると、彼をCBに据えるのならば、空中戦の機会はなるべくさけなければならない。
アルテタは対強豪相手にたびたび5-4-1のような形で自陣を固めて結果を出してきた。だが、おそらくそれは通用しないかもしくは強度が下がることは念頭に置いた方がいい。ロングスプリントに長けた前線の選手(例えばエイブラハム)を補強し、自陣撤退からのロングカウンターというアルテタがここまで最も結果を出してきたやり方にシフトすることもこの夏はやろうと思えばできたはず。でもそれはしなかった。もちろん、売りオペがうまくいかなかった事情はあるけど。アルテタ本人が強調しているようにあくまでこの夏のトップターゲットはホワイト。この補強は明らかなベンチマークだと個人的にはとらえている。
なので攻守ともにアーセナルにはモデルチェンジは必要。まず、非保持の場面ではラインを上げる必要がある。ブレントフォード戦もトライしたが、ロングボールで競り負けて失敗した。だが、ラインを上げて中盤との距離がコンパクトだった時間や、ホルダーにチェックがかかっていた時はトニーはなかなかボールを収められなかった。セカンドボールを拾わせないコンパクトな陣形と最終ラインへのプレスでなるべく苦しいボールをあげさせたい。
保持においてはよりシビア。多くのチームは最終ラインに強度の高いプレスをかけられたときには前線への逃げ場がある。例えばキャルバート=ルーウィンのような高さもそうだし、ヴェルナーやヴァーディのようなスピードもそう。アーセナルにはそういう逃げ場になれるFWはいない。空中戦は強くないし、抜け出しの鋭さで勝負するタイプもいない。なのでより自陣からのつなぎからは逃げることが出来ないスカッドである。
ブレントフォード戦で気になったのはマリがとにかく運べずに効果的なパスを供給できないこと、そしてGK⇒SBへのフィードが通りにくいことである。単純なスキルの問題なのか、あるいは受け手の立ち位置の問題なのか、それとも受けた後の設計がないからチャレンジできないのかはわからないが、これも必ず取り組まないといけない。
特にGK⇒SBへのフィードが通るようになり、相手のWGのプレスを回避できるようになれば、だいぶ中央の高い位置で受けられる可能性は広がる。レノはそもそもそういう足元で見せるタイプのプレイヤーではないかもしれないが、メンディやシュマイケルが普通にやっているのを見ると、絶対後天的に伸ばせる部分だと思う。ここは全力で取り組んでほしい部分である。
2. サイドでの攻撃
ブレントフォード戦の悪い時間帯はとにかく重心が下がってしまい、サイドに渡すのが早すぎた。ティアニーは目の前の相手を2人抜かなければクロスを上げられない状況でボールを渡されることもしばしばであった。
まず整理したいのはティアニーにボールが渡る状況である。目の前にいる敵は何人か、そしてどの高さで受けているかでクロス一辺倒にしてもだいぶ見方は変わる。苦し紛れのハイクロスを上げてばかりいるようではだめだし、ライナーやグラウンダーのクロスまで持ち込めていれば得点の可能性は広がる。
加えて、クロスを受けるほうも準備が必要だ。ブレントフォード戦ではWGのマルティネッリが早々にエリア内に入り枚数を揃えたが、ティアニーに選択肢を与えられるような受け方が出来ず、ゴール前で立ち止まってしまうことが多かった。マイナスにあえて入ったり、クロスに入るタイミングを他の選手とずらすことでティアニーにもう少し選択肢を与えたい。
加えて、大外のティアニーをフリに使う部分も必要だ。大外に開く選手がいるということは相手は横に広がるということ。したがって同サイドのハーフスペースは空きやすい。チェルシーは5バックだから埋められるかもしれないけど。どちらにしても孤立しがちなティアニーをサポートできるMFが欲しい。有力候補は2列目のスミス・ロウかCHのロコンガだろう。ティアニーで下げたスペースを内側に旋回しながら活用できる選手が理想である。
また、右サイドも大外でペペが2人に囲まれているような状態でもったいない。こちらもハーフスペースを活用できなければコンディションのいいペペが持ち味を出せずに死んでいくのを指をくわえてみているだけである。こちらのサイドももちろん人数をかけて崩したいが、ペペを内側に入れるためにSBを外に回すと攻守のバランスが崩れるという考えならば、ペペをCF起用するのも一考である。
ラカゼット、オーバメヤンの出場が不透明な状況でバログンやマルティネッリと異なる手段を持っておくのは悪くないだろう。ブレントフォード戦でも短時間試した形だが、縦方向に抜けながら空いたスペースに入ってくる動きは悪くなかった。
いずれにせよサイドの崩しが今のチームの遅攻の軸なのは間違いないので、その部分をどうお膳立てするか。そして攻守のバランスをどう維持するかがキーになってくるだろう。
3. 被カウンター対応
これは正直、完全に何とかするのは無理である。フェルナンジーニョとディアスがいたって、バランスがおかしければ成り立たないのは開幕戦を見ても明らか。加えてアーセナルにはフェルナンジーニョもディアスもおらず、すがることのできる個はいない。
加えて、攻撃には人数をかけないと成立しなそうで、得点を取るにはある程度攻撃に人数のバランスが傾くことは目をつぶらないといけない状況である。もちろん、ガブリエウが復帰すればマリよりは明らかに対人は期待できるが、それでも完璧に守り切るのは無理だろう。
したがって、これは繰り返しになるが、ボールの出所にチェックをかけるしかない。ハイプレスをなるべく長い時間かけ続けること。そして、カウンターを食らったときはなるべく外に誘導しながらコースを切ること。アーセナルのバックスはたまにこの優先順位が無茶苦茶になり、内側にカットインを誘発するような立ち方をするときはある。相手の攻撃を助けるのではなく、味方が戻る時間を稼ぐ。ぶち抜かれたら仕方ないけど、できることはやらないといけない。
以上である。正直、これをやったところで勝てるかはわからない。チェルシー相手に90分プレスを効かせ続けることはほぼ不可能といっていいだろう。でも、このチームが週末に勝つために何を用意していたか、どうやって勝利に手を伸ばしているのかをファンは見たいのだと思う。
ホワイトの獲得という道筋を経たなら、ラインを上げて攻撃の機会と保持の時間を増やさなければいけないのは明らかである。チェルシーはまだコンディション的にも完全ではない。彼らが90分間ハイプレスを仕掛け続けられることもないはずだ。
はっきり言って有利なのはチェルシー。アーセナルは劣勢だ。でもそれが勝利に手を伸ばすことをやめていい理由にはならない。何をしに、どこへ行きたいのか。アルテタと選手たちにとってはそれを指し示すロンドンダービーにしなければいけないのだ。