MENU
カテゴリー

「コパアメリカ2021 チーム別まとめ」~ブラジル代表編~

目次

チーム情報

監督:チッチ
FIFAランキング:3位
W杯2018⇒ベスト8
コパアメリカ2019⇒優勝

招集メンバー

GK
1 Alisson
23 Ederson
12 Wéverton

DF
4 Marquinhos
14 Éder Militão
22 Felipe
3 Thiago Silva
22 Léo Ortiz
16 Renan Lodi
6 Alex Sandro
13 Emerson Royal
2 Danilo

MF
5 Casemiro
15 Fabinho
25 Douglas Luiz
8 Fred
19 Éverton
17 Lucas Paquetá
11 Éverton Ribeiro

FW
10 Neymar
18 Vinícius Júnior
9 Gabriel Jesus
7 Richarlison
20 Roberto Firmino
21 Gabi

各試合振り返り

GS第1節 ベネズエラ戦

画像1

■快勝のブラジルで気になったのは…

 もともと開催予定だったアルゼンチンが感染拡大を防げずに開催を辞退。直前まで開催地が決まらずてんやわんやという、コパアメリカ史上、最もコパアメリカ的な開幕を迎えることになった。急遽代替開催地となったブラジルにこの大会の開催国としてどれだけの思い入れがあるかは不明。だけども、とりあえず開催国であるブラジルがベネズエラとの開幕戦に挑むことになった。

 試合は立ち上がりからくっきりしていた。ブラジルがベネズエラのブロック崩しに挑み続けるモノトーンな前半となった。ブラジルの基本フォーメーションは4-2-3-1。攻撃の際はフレッジとカゼミーロが中盤でコンビを組み、2列目が左からネイマール、パケタ、リシャルリソンという並びになっている。守備の時はネイマールがトップのジェズスと共に前残り。左サイドの守備にはフレッジが持ち前の範囲の広さでカバー。その分、中央はパケタが低い位置を取り、中央の強度低下を防いでいる。

 ブラジルの攻撃時の主体となったのは左サイド。ネイマールが同サイドにいてもお構いなしで高い位置を取るロディが、ベネズエラの5-4-1のバックラインに張る。ベネズエラはCHがCFのプレスを支援する二の矢となっていたため、SHは内で絞り気味。大外は手薄な状態でブラジルに立ち向かう必要があった。

 この左サイドからの攻撃は自由自在。外からクロスで打ち抜いても良し、抉ってラインを下げてベネズエラのDF-MFのライン間のスペースを作るも良し、そして左右に振るも良しである。大外からのクロスをマルキーニョスが叩きこんであっさり先制すると、ブラジルはその後も力の差を見せ続けた。

 特にネイマールはクラブシーンでの好調を継続。大外での攻略だけでなくライン間や逆サイドへの横断も含めて存在感は絶大。ベネズエラはブラジルの左サイドを端に発する歪みに対応することができなかった。後半はややポゼッションで跳ね返しを狙うも、カウンターで返り討ちに合う分収支はマイナスか。

 好調だったブラジルだったが唯一懸念だったのはリシャルリソン。動き出しの周りとの合わなさ、アタッキングサードでの精度、そしてなによりプレーをミスした後の悲壮感はエバートンで苦しんだ今季の姿にダブる部分があった。来季こそ一皮むけて、グッドプレイヤーからワールドクラスにスケールアップを目指したいはず。コパアメリカがきっかけになればいいのだが。

試合結果
ブラジル 3-0 ベネズエラ
マネガリンチャ・スタジアム
【得点者】
BRA:23′ マルキーニョス, 64′(PK) ネイマール, 89′ ガブリエル・バルボサ
主審:エステバン・オストジッチ

GS第2節 ペルー戦

画像2

■自由度をもたらす2トップ

 初戦でベネズエラを粉砕し、好発進を決めたブラジル。続いての対戦は2節目からの登場になるペルーである。ペルーは4試合連続で戦わないといけないローテである上に、初戦がブラジルという踏んだり蹴ったりな日程である。あと、背番号の視認性が悪すぎるので、正直誰が誰だかさっぱりわからない。なので個人がどうとかが全然わからん。ごめんね。

 試合は当然立ち上がりからブラジルペース。ベースポジションの4-4-2からあまり大きな変形はないのだが、自由度をもたらしているのは前方の2トップ。ネイマールとガブリエル・バルボーサは上下横に幅広く動ける裁量を与えられている。ブラジルのビルドアップにアクセントをつけるのは彼らである。

 特に圧巻なのはネイマール。普通は降りる動きをしてしまうと、ゴールから遠ざかってしまうのだが降りて、攻撃を加速させてゴール前にまで突撃できるのだからさすが。運べる中盤は優秀だが、降りて運んで加速させ自らがPAに突撃できる選手はスーパーである。先制点のシーンは降りたネイマールのスルーから加速。一気にゴールまでこぎつけた。

 ペルーは右のSBを上げる3-2-5気味の変形でブラジルに対抗。意外とゆっくりつなぐのが特徴である。攻撃はトップのラパドゥーラへのポストを中心に前進を狙う。しかし、サイドからの前進が停滞。2列目の横スライドをサボらないブラジルの中盤を飛び越すことができず。前進の精度でブラジルとは差があった。

 1点リードで迎えた後半。ブラジルはより直線的な攻撃での完結を狙う。途中から4-1-4-1に変更したペルーの中盤をポゼッションで釣れたと判断した際には、DF-MF間に縦パスを入れて一気に加速。後方からCHやSBもフォローに入り、中央を一気に陥れた。

 ネイマールは後半も躍動。はっきり言って何にも引き付けつつ自在にファウルを取る姿はやばい。PKこそVARサポートで取り消しされたものの、そのうっ憤を晴らすかのように直後に豪快な得点を決めてみせた。後半のペルーはブラジルに前半以上に気圧されてしまった。開幕戦での惨敗は仕方ないだろう。2試合目以降の巻き返しに期待したい。

試合結果
ブラジル 4-0 ペルー
エスタディオ・ニウトン・サントス
【得点者】
BRA:11′ サンドロ, 67′ ネイマール, 88′ エヴェルトン・リベイロ, 90+2′ リシャルリソン
主審:パトリシオ・ロースタウ

GS第4節 コロンビア戦

画像3

■再び遺恨を残した一戦に

 全勝のままグループリーグをひた走るブラジル。今節の相手はグループステージで最大のライバルになりそうなコロンビア。そのコロンビアはベネズエラ、ペルーに勝てずにやや苦しみ気味。4位通過のレギュラーションに救われて問題なくグループステージは突破すると思うが、なんとか復調の兆しを掴みたいところである。

 共に4-4-2のミラーゲーム気味になったこの一戦。コロンビアが苦しんだのは目の前の相手のプレッシングである。立ち上がりからコロンビアはマッチアップ相手の厳しいチェックに晒され、中盤でのボールロストで危ない場面を繰り返すことになった。

 コロンビアとしてはどこで剥がすか、あるいは剥がすためのスペースをどう作るかが重要な要素となっている。少しでもブラジルを引き出して、コンパクトな陣形を敷くことを防ぎたいところ。だが、低い位置でのつなぎはロストのリスクになる。

 そういった難しいバランス感覚が実ったのは先制点の場面。もちろん、ルイス・ディアスのアクロバティックなゴールが一番の主役であることに疑いの余地はない。しかし、ブラジルのプレッシャーの外側でコロンビアが大きな展開ができたことで、余裕をもってクロスを上げる時間を作れたのも事実。押し引きが上手く実ったコロンビアだった。

 先制点以降はこういった駆け引きは取らず、ロングボールに徹する安全第一の作戦を敷くコロンビア。ブラジルは左サイドの2トップ脇にフレッジを流しながらボールを前進させる。ブラジルの攻撃の目的は結局ネイマールに前を向かせることになるのだが、そのための左サイドでの循環である。

 ブラジルはネイマールがカットインする状況までは作ることができていたが、それ以降はコロンビアの守備はかなり整備されていた印象。同サイドや中央を締め、逆サイドに流すという比較的被害の少ない選択肢に誘導していたように見えた。割とネイマール以外の選手たちは裏を狙う傾向があったので、近めで受ける選択肢をネイマールが作りにくかったのもあるだろう。いつもに比べればややドリブル開始時に上手く絡めとられた印象を受けた。HTにフィルミーノを入れたのも中央にボールの預けどころを作るためともいえるだろう。後半半ばのチャンスシーンはフィルミーノがいたからこその物といえるだろう。

 それでも粘っていたコロンビアにとっては同点シーンは不運だった。偶発的に審判に当たったボールのせいで楽に左サイドに展開されてしまったことで、簡単にクロスを上げさせることにつながっていた。これまではうまく封じていた攻撃パターンなだけに悔やまれる部分。とはいえ、ボール保持チームが変わっていないのだから、審判の運用は正しいは正しいのだけど。ゴールが認められるまでコロンビアはおよそ6分間の抗議をしたが実らなかった。

 その抗議で長引いた後半追加タイムがブラジルの逆転弾を呼ぶのだから難儀なものである。ラストプレーでは圧倒的フリーだったカゼミーロがCKでニアに入り込み決勝弾を決める。コロンビアにとってはこの上ない悔しい敗戦。大一番をモノにできなかった上にブラジルとの遺恨を残す結果となった。

試合結果
ブラジル 2-1 コロンビア
エスタディオ・ニウトン・サントス
【得点者】
BRA:77′ フィルミーノ, 90+10′ カゼミーロ
COL:14′ ディアス
主審:ネストル・ピターナ

GS第5節 エクアドル戦

画像4

■ペルーに苦しみ、ペルーに助けられる

 ペルーに追いつかれたことで一転窮地に陥ったエクアドル。最終節でブラジル相手に勝ち点を奪わなければ、敗退の可能性もある緊張感のある試合となった。

 エクアドルは立ち上がりはブラジルをきっちりリスペクト。SHが自陣深くまで下がる6バック的な振る舞いも見られる。トップのラインも低い状態で自陣で構えるスタンスだ。

それに対してブラジルはエリアの外からのアプローチが多め。CHのファビーニョとドウグラス・ルイスはブロックの中で受けるよりも、外からポンポン放り込むことで組み立てに挑む。CBに運べるマルキーニョスがいることもこのやり方の後押しになる。エクアドルが自陣寄りにシフトする分、ブラジルは後方の選手に前後に移動の自由を許していた。

 左右の深い位置まで運べる状態は作れるので、押し込んでカウンターの危険性は少ない。しかしながら、なかなかブロックを崩すのも難しいブラジルであった。

時間が経つと戦況に徐々に変化が出てくるようになった。エクアドルのプレスの位置が高くなるようになってきたのである。理由として考えられるのはブラジルの長いボールの攻撃の精度がイマイチだからだろう。ネイマールと同じようにガブリエル・バルボサにも縦横無尽に移動する自由は与えられていた。しかしながらネイマールがいない分、長いボールでのカウンターでの威力は割引だった。

 長いボールでの脅威が薄いということで、エクアドルは躊躇なく前からプレスにいくことができたということだろう。ということで、押し込むという優位も失ってしまったブラジル。試合は互角な展開に徐々に流れていく。

 困ったときに頼りになるものはセットプレー、そしてレアル・マドリー。というわけでブラジルの先制点をCKからこじ開けたのはミリトンである。今夏も各所の国際大会で猛威を振るっているレアル・マドリーのDNAだが、コパアメリカでも相変わらず脅威である。

 勝ち点は必須なエクアドルは後半の立ち上がりから一気に攻めに出る。立ち上がりの押し込む時間帯においてどうしても点が欲しかったはず。特に体を張るのが目立っていたのがエネル・バレンシア。寄せにも屈さないフィジカルで狭い位置を打開するためのキープを見せる。同点ゴールも彼のアシストから。交代出場のメナがポストプレーからの裏抜けを叩きこんだ。

 その後は互角の戦いが続いた両チーム。勝たなければ自力突破はないエクアドルだが、どうしてもその1点を手に入れることができなかった。しかし、他会場でペルーがベネズエラを下したおかげでエクアドルは無事にノックアウトラウンド進出。ペルーに苦しめられて、ペルーに救われたグループステージとなったエクアドルだった。

試合結果
ブラジル 1-1 エクアドル
エスタディオ・オリンピコ・ペドロ・ルドビコ
【得点者】
BRA:37′ ミリトン
ECU:52′ メナ
主審:ロベルト・トバル

Quarter-final チリ戦

画像5

■10人でなお高い壁

 絶対王者ブラジルに挑戦するのはA組4位のチリ。グループステージではそこまで仕上がってる感じではなかったが、ノックアウトラウンドではさすがに上積みがあったように思えた。5-3-2のコンパクトなブロックを敷くことでブラジルを迎え撃つチリ。ローラインで待ち受けることでブラジルを跳ね返す場面もあれば、高い位置からプレスに出ていくことも。どちらにしても陣形の間延びは防がれており、コンパクトな状況でブラジルのポゼッションを苦しめていた。

 ブラジルはネイマールがラインを落ちながら運ぶことで攻撃を前に進めてチャンスメイクをここまでしてきた。しかしながらこの試合ではチリのコンパクトな守備に対して、ネイマールが降りて受けるスペースがない。したがって、ブラジルの前進は超絶スーパーなつなぎが通らないと難しかった。例えばゲームメイカー型FWのフィルミーノの縦パスとか、サイドでの崩しとか。いずれもハードなパスを通すことでチリのプレスのつなぎ目を何とか破っていった形でゴールに迫るのである。

 チリの攻撃は速攻では2トップが主体。ライン間で前を向くサンチェスからラインの後ろ側を取るラストパスが出てくるか、より体を張ることができるバルガスが入れ替わるようにして裏を狙うかである。

 ゆっくりと迫る場合はWBを使ったサイドチェンジが主体。特に狙っていたのは相手のSBが裏を開けて飛び出してくること。特にブラジルの左のSBであるロディのところを狙い撃ち。食いつかせて裏を取ることで前進はできていた。だが、決定機にかけるブラジル。最後の防波堤である強力なCBコンビを越える術がない。

 ジリジリした展開を解決して見せたのは後半早々の出来事。交代選手の貢献により均衡が破れた。勝利の立役者はルーカス・パケタ。チリのDFにヒビを入れることはできていた前半だったが、後半はパケタとネイマールのコンビでチリを中央からこじ開ける。

 後半早々に得点をえたブラジルに予期しないトラブルがあったのはこの直後。ジェズスの一発退場で10人に。チリに押し込まれる展開になりながら、何とかしのぎ切る。チリは高さのあるプレアトンを入れたことで多少引いているブラジルを脅かすことはできてはいたが、好機は数えるほどだった。より目立ったのはブラジルの堅牢さ。そして数的不利な状況によるネイマールのボールをキープする力である。多分、チリからしたらめっちゃめんどくさいだろう。キープからのファウルを量産し、チリが一方的に攻撃する状況を作らせない。

 4-4ブロックの堅さとネイマールが作り出した時間のおかげで10人のまま逃げ切ったブラジル。チリはグループステージとか異なる完成度まで仕上げてきたように思えたが、相手の壁は高かった。

試合結果
ブラジル 1-0 チリ
エスタディオ・ニウトン・サントス
【得点者】
BRA:46′ パケタ
主審:パトリシオ・ロースタウ

Semi-final ペルー戦

画像6

■頻度なんて不要

 これまで、ブラジルと対峙してきた多くのチームと同じくペルーもある程度引きながらブラジルの攻撃を受け止める様相だった。したがって、ブラジルがペルーが敷いた5-4-1ブロックにどのように挑むかという部分が見どころになる。

 これまでのブラジルは割とネイマールが自由に動き回るところに、周りのメンバーが合わせるような形が多かった。だが、この試合においては比較的配置から決めていった感じがする。大外を担当するのが左サイドはSBのロディ、右はSHのエヴェルトンである。ちょっとアシメ。

 その分左のSHであるリシャルリソンはトップの位置まで絞って入り込んでくる。これまでのブラジルは縦方向に動き回るネイマールを基準に破壊していくイメージだった。これにパケタが加わったコンビネーションで崩したのがチリ戦である。ペルー戦のアプローチはこの動き回る人数を増やすことで、中央で上下動する乱数を増やし、ペルーのブロックを中央からかち割ろうというものだったように思う。ネイマールに加えてリシャルリソン、フレッジ、パケタが上下動を繰り返す役である。

 それでもチャンスクリエイトの頻度は物足りなかった。ペルーは押し込まれてしまい、プレスでもビルドアップでも頼みの綱という部分は作り切れなかったが、それでもブラジルがチャンスを作りまくる!という感じではなかった。

 そんな中で頻度が足りなくても質があればいい!としてしまう男が。もちろんネイマールである。彼が4人を引き付けることでブラジルは一気に課題を解決。チリ戦と同じくパケタが叩き込み、先制点を挙げる。なんて理不尽な。

 後半、意を決したペルーは4バックに移行。徐々に前に出ていけるように。勇気を出してつなぐ意識を見せたペルーに対して、ブラジルは中盤のスペースの間延びが目立つように。ペルーはスペースさえあればビルドアップで前進できることはここまでの大会で証明してきているのだが、ブラジル相手にもその姿を見ることが出来た。

 攻撃を受ける機会が増えてきてしまったブラジルは攻撃面でCHっぽいふるまいをしていたパケタを守備においてもCHとして起用し、4-5-1で迎え撃つ。この変更でブラジルは落ち着いてペルーの攻撃を受けることが出来るようになったと思う。

    終盤はペルーも4-5-1にしたが、この一手は活性化にはつながらず。前のラウンドと同じくパケタの先制点を守り切ったブラジルがペルーの挑戦を退けて決勝に駒を進めることになった。

試合結果
ブラジル 1-0 ペルー
エスタディオ・ニウトン・サントス
【得点者】
BRA:34′ パケタ
主審:ロベルト・トバル

Final アルゼンチン戦

画像7

■的中したスカローニ采配が呼んだメッシの初タイトル

 ラウンドが深まるにつれ真剣さが増していくのが決勝トーナメント。当たり前の話なのだが、コパアメリカは中でもその色が濃いコンペティションのように思える。その決勝戦がブラジル×アルゼンチンとなればその緊張感も最高に高まるというのは当然の流れといえるだろう。

 試合は共に非常に慎重な入りとなった。相手に強引にプレスをかけに行くことはせず、自陣に穴をあけないことを優先し、とにかく失敗を避けていく形。共にネイマールとメッシという絶対的なスイッチの入れどころがあるが、そこにボールが入った時だけはファウル覚悟で全力で取り囲む。実況の倉敷さんは『コパの決勝は世界一レフェリングが難しい』というのもあながち間違いではないだろう。初手でカードを出してしまうと止まらなくなってしまう。

 スローリーな展開がベース、速くなりそうになるとファウルで止める。この展開が続く両チームの中で変化をもたらしたのはアルゼンチンのこの試合の用兵である。ラウタロ・マルティネスやゴンサレスなどここまでスカローニが重用してきた選手たちは献身的ではあるものの、広いスペースで対面のDFを出し抜いてから独力でゴールを沈めるタイプではない。

 出し手として効くメッシが封じられた以上、ゴンサレスの先発を回避したのは正解だったと思う。代わりに入ったディ・マリアはまさしく広いスペースで独力で勝負できるタレント。貴重な先制点を奪ったのも彼の仕事。対面のロディの対応があまりにお粗末だったとは言え、アバウトなボールでも広いスペースからゴールを陥れることが出来るディ・マリアを先発で使ったコンセプトが効いた場面だった。

 劣勢となったブラジルは後半にネイマールをIHで起用する。めっちゃ奇策っぽいのだが、コンセプトはどこまで行ってもネイマールにボールを触ってもらうこと。そういう意味では合点がいくし、実際に効果もあった。

 降りてボールを触るネイマールに対して、アルゼンチンの最終ラインから捕まえに出ていくと数が足りなくなってしまう。そしてそうなるとフレッジ⇒フィルミーノの交代で前線のアタッカーを追加した効果が出てくる。内に絞る分、余る大外にリシャルリソン。この大外のリシャルリソンパターンからブラジルが攻め立てるシーンが続く。

 しかし、これにアルゼンチンはすぐさま数合わせで対応。交代で5バック化にして数の論理で大外が余らないようにした。

    受ける選択肢をとり、跳ね返しに徹するアルゼンチン。ただ、ブラジルもネイマールの位置を下げた分、被カウンター対応はスカスカに。メッシとディ・マリアを軸にカウンターから独走を食らう場面もあった。特に最終盤のメッシの決定機は絶対にこれで決まったと思ったファンも多いだろう。逆に決まらなかったことでブラジルに押せ押せの雰囲気が流れる。

 だが、これをアルゼンチンのバックラインがシャットアウト。マルティネスを中心に5バックの堅牢な守備をブラジルは最後まで崩すことが出来なかった。

 優勝したアルゼンチンではついにメッシは代表レベルでの初のメジャータイトル。いや、ほんと良かった。このタイトルを引っ提げてワールドアップに再度チャレンジするメッシは熱い。コパアメリカの最終戦はブラジル×アルゼンチンの看板に偽りのない大激戦となった。

大会総括

画像8

サポートキャストの確立は急務

 残念。優勝はなりませんでした。とはいえ決勝トーナメントまでの道のりは危なげなかった。ベネズエラに3-0、ペルーに4-0の2試合で実質決まりだっただろう。

 想像通り、ネイマールは絶好調でひとたびボールを受けると、ゴールまで易々と運んでしまう。本当は降りて受けるストライカーというのは全然怖さを感じないものなんだけど、降りて運んで危ない位置までスルスル入り込んでしまうので、ボールを受け渡すこと自体が危険という事態になっていた。バスケットのドリブルみたいに簡単にファウルもらうのとかは笑ってしまう。10人になって苦しかったチリ戦とかは普通にキープしまくりながら時間稼ぎと陣地回復をしまくっており、チリをいらだたせまくっていた。

 だが、開幕2戦に比べるとそのあとの試合はやや苦しんだように思う。コロンビアとの乱戦は何とか制したが、グループステージの最終節以降は複数得点はなしというのは少し寂しい。問題となったのはネイマールのサポートキャストの不在。ノックアウトラウンドでチームと救ったパケタとは中央をこじ開けるコンビネーションはできていたが、それ以外の選手たちとはうまくハーモニーを奏でることができなかった。

 特にふがいなかったのはプレミア勢。ジェズスは不要なファウルでチリ戦でチームを敗退の危機に晒し、リシャルリソンはクラブシーンでの負傷をそのまま引きずり、決定的な仕事ができずに苦しみ続けた。フィルミーノは彼ら2人よりはよくやったかもしれないが、輝いたとは言えないだろう。

 サイドアタッカーの面々もネイマールとつながれたかと言えば難しく、攻撃のスイッチも崩しもややネイマールに依存しすぎな嫌いはあった。CHとCBを軸とした強固なブロックを有しているだけに決勝でのロディの軽率なミスから優勝を逃してしまったのは非常に残念。逆に言えば、1つのミスをリカバリーできないほど攻撃陣が苦しんでいたということ。大エースのサポートキャストの確立がワールドカップに向けた火急の課題といえそうだ。

頑張った選手⇒ネイマール
 いやぁ、マジでめっちゃうまい。すごい。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次