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「EURO 2020 チーム別まとめ」~フランス代表編~

目次

チーム情報

監督:ディディエ・デシャン
FIFAランキング:2位
EURO2016⇒準優勝
W杯2018⇒優勝

招集メンバー

GK
1 ウーゴ・ロリス(トッテナム/イングランド)
16 スティーブ・マンダンダ(マルセイユ)
23 マイク・メニャン(リール)

DF
18 リュカ・ディーニュ(エヴァートン/イングランド)
24 レオ・デュボワ(リヨン)
21 リュカ・エルナンデス(バイエルン/ドイツ)
3 プレスネル・キンペンベ(パリ・サンジェルマン)
5 クレマン・ラングレ(バルセロナ/スペイン)
25 ジュール・クンデ(セビージャ/スペイン)
2 バンジャマン・パヴァール(バイエルン/ドイツ)
4 ラファエル・ヴァラン(レアル・マドリー/スペイン)
15 クルト・ズマ(チェルシー/イングランド)

MF
13 エンゴロ・カンテ(チェルシー/イングランド)
12 コランタン・トリッソ(バイエルン/ドイツ)
6 ポール・ポグバ(マンチェスター・ユナイテッド/イングランド)
14 アドリアン・ラビオ(ユヴェントス/イタリア)
17 ムサ・シソコ(トッテナム/イングランド)
8 トマ・レマル(アトレティコ・マドリー/スペイン)

FW
22 ウィサム・ベン・イェデル(モナコ)
20 キングスレイ・コマン(バイエルン/ドイツ)
11 ウスマン・デンベレ(バルセロナ/スペイン)
9 オリヴィエ・ジルー(チェルシー/イングランド)
19 カリム・ベンゼマ(レアル・マドリー/スペイン)
7 アントワーヌ・グリーズマン(バルセロナ/スペイン)
26 マルクス・テュラム(ボルシアMG/ドイツ)
10 キリアン・ムバッペ(パリ・サンジェルマン)

各試合振り返り

GS第1節 ドイツ戦

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■虎子を得られなかったドイツ

 グループステージ第1節の目玉カード。圧倒的死のグループであるグループFで優勝候補の本命であるフランスが歴戦の猛者であるドイツと激突する。

 両チームは各国メディアの事前予想通りのスターティングメンバーを並べてきた。唯一異なるのはフランスの3トップの並び方。トップ下にグリーズマンを置く2トップ予想が目立ったが、実際の並びはフラットな3トップ。ドイツの3バックにかみ合わせる?と思ったのだが、右に開いたグリーズマンのマーク対象はリュディガーではなく、このサイドに降りてくるクロース。リュディガーは放置プレイである。

 誰かにボールを持たされて苦しめられるドイツというのは、どこかのワールドカップで見たことがある気はする。だが、メキシコほどフランスがめっちゃ組織立っていたかと言うとそういうわけでもない。例えば、中央の3センターの守備はやや開き気味。ミュラー、ハフェルツなど降りてくるドイツの前線をカンテ1人では潰しきれない場面も目立つ。

 したがって、ドイツも縦にパスを入れる機会さえあれば十分に前進することができた。強いて言えば縦パスの落としを受ける人と、そこから裏抜けする人までセットできれば上出来。だけど、ドイツもそこまでの完成度ではなかった。クラブでの役割を考えるとギュンドアンには1列前に入りたい。もちろん、被カウンターのリスクはあるけど。虎穴に入らずんば虎子を得ずがこの日のドイツのテーマだったように思う。リスクを取らないとフランスから点は取れない。

 フランスの攻撃はグリーズマンがフリーマン化。守備時の右サイドにこだわらず、逆サイドまで顔を出すこともしばしば。人を捕まえる傾向が強くなりがちだったドイツに浮遊するグリーズマンの存在はややこしかった。フランスの狙い目になっていたのはドイツの右サイドの裏。先制点の場面もその裏を突いたリュカの攻撃参加がトリガー。後半もラビオの決定機がこのサイドから生まれるなどフランスの攻めのターゲットにされていた。

 後半のドイツはその右サイドの保持を整備。WBのキミッヒがSHやIHのあたりに浮遊することでフランスの守備の基準を乱す。前半に指摘したカンテ周辺の過負荷をさらに増やすこと、そしてニャブリーの決定機のように前線に顔を出しながらレーンを入れ替えるなどチャンス創出に貢献。もちろん裏を狙われるリスクはあるけど、虎子を得るには仕方ない。

 だが、後方を支えるギンターの負傷から徐々にドイツのリスクが顕在化。後半はキミッヒの裏狙いに専念したフランスが逆に決定機を生み続ける展開になる。追加点こそ得られなかったものの、後半もフランスには多くの好機はあった。

 ドイツは後半の終盤に失速。間で受けられるハフェルツを下げてヴェルナー、サネというスピードスターコンピを投入したことが裏目になった。前線はミュラーと誰がリンクするかという部分がドイツの今後の伸びしろのように思う。結局大一番はフランスの勝利に。ドイツは2節、3節にプレッシャーがかかる苦しい状況を迎えることになった。

試合結果
フランス 1-0 ドイツ
フースバル・アレナ・ミュンヘン
【得点者】
FRA:20′ フンメルス(OG)
主審:デル・セーロ・グランデ

GS第2節 ハンガリー戦

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■下さなかったファイティングポーズ

 80分まで粘ったものの、難敵のポルトガルに屈してしまったハンガリー。1試合目同様に満員で埋まったプスカシュ・アレナで迎えるのはW杯王者のフランスである。

 ポルトガル戦でも立ち上がりから引きこもることなく、勇猛果敢に前に出ていったハンガリー。WBは今節も高い位置から相手を追い回す。ハンガリーが狙いを定めたのはフランスの右サイド。このサイドの裏を積極的に狙うことでハンガリーはボール奪取から素早く縦に。フランスは早々に右のSBのパヴァールが警告を受けると、このサイドでは劣勢になる。ハンガリーが付け入るスキは十分にあった。

 立ち上がりは面食らったフランスだが、10分踏ん張ると徐々にペースを取り戻す。5-3-2のブロックに対して、WBの手前のスペースを積極的に使う。そして3センターの幅を広げてライン間に楔を入れるための駆け引きをする。

一度前線にボールが入るとさすがの貫禄。ハンガリーがWBを高い位置まであげる守備をする分、ムバッペ、ベンゼマ、グリーズマンと同人数で対応しなければいけない機会が増えてしまう。

 特に斜めの動きを駆使することで受け渡しの動きを増やす。特にグリーズマンがオフザボールでギャップをサポートするのが上手かった。ベンゼマもムバッペもこういう動きは得意。前線勝負に持ち込めればやはり力の差は感じる内容だった。

 サイドでもプレスでだいぶ足を使わされたハンガリー。おそらく、終盤まで足は持たないので何とか前半に点を取りたかったはず。それが実ったのが前半追加タイム。立ち上がりから狙ったフランスの右サイドをロングカウンターから攻略したカウンターだった。

 パヴァール、ヴァランの対応が軽くなってしまったフランスに対して、最後に得点を決めたのはWBのフィオラ。単騎でロングカウンターを完結できる力がないハンガリーにとってはWBが高い位置でカウンターに参加できるかが重要。高い位置を取り続け、ファイティングポーズを下ろさなかったハンガリーの粘りが先制点につながった。

 後半も前半と同じく攻め続けるフランス。前半の自由度がさらに上がったように見えたし、ポグバはよりサイドに流れるようになった。しかし、ハンガリーは後半もファイティングポーズを下げない。いざとなれば狙うのはフランスの右。フランスは業を煮やしたキンペンベがこちらまで飛んでくることもしばしばだった。

 そんな中で次に点を取ったのはフランス。ロリスのパントキックから相手を出し抜いたムバッペからの後方支援のグリーズマンがゴール。前線でシンプル勝負という機会を得ることができたフランスが質の高さで同点に追いつく。

 このまま押し切りたいフランス。ジルー、デンベレなど押し込んだ前提で機能するメンバーを次々と送り込む。しかし、前線の機動力が下がったことでハンガリーが最も嫌な斜めの動きが減少。さらにはプレスにも出にくいメンツなので、普通に保持ができるハンガリーに最後10分で体力差を利かせることができず。

 最後まで粘り切ったハンガリー。90分間下ろさなかったファイティングポーズが実り、満員のスタンドと共に勝ち点1を祝うことができた。

試合結果
ハンガリー 1-1 フランス
プスカシュ・アレナ
【得点者】
HUN:45+2′ フィオラ
FRA:66′ グリーズマン
主審:マイケル・オリバー

GS第3節 ポルトガル戦

画像3

■やりたい放題の両軍エース

 グループBの結果を受けてまずはフランスがグループ突破を一足先に確定。ポルトガルもドイツがしっかり勝てばほぼほぼ問題なしという状況。結局ドイツがふらふらしたせいで危なかったけどね。

 看板だけ見ればビックなカードだけど、両チームとも手堅く実を取りに言った試合だと思う。ポルトガルの目下の課題はドイツにぺしゃんこにされた5レーンをどう封鎖するか。その答えは片方のWGを早い段階でDFラインに下げることであった。特に献身的なプレスバックを見せたのは右のベルナルド・シウバ。この役割が彼でいいのかというのは言いっこなしでお願いしたい。

 したがって撤退型の5-4-1をメインに据えたこの試合のポルトガル。撤退し、自陣のスペースを埋めることを優先をした。前進の手段はお馴染みのロングカウンター。一辺倒だとあまりに単調なのだけど、うまくそれを解消していたのがレナト・サンチェス。球持ちがよく、フランスの中盤に当たり負けがしない中盤は前進の推進力をもたらすことができる。

 フランスは左はIHのカンテ、右はWGのグリーズマンが高い位置までプレスをかけにいく。パリでもそうなんだけど、こういう時に意外と前線に残されずにしっかりSHの位置まで下がることが多いムバッペ。前残りさせた方がいいんじゃないかというのは素人考えなのだろうか。攻撃の部分を見るとムバッペの左からの裏抜けに比重を置いていた。単純だけど効く。面白くないけど効く。シンプルに点が取れる形ほど正義である。

 狙い目はハッキリ、だが工夫は多くなく、ジリっとした展開になったこの試合。試合を左右したのは要所に現れたPK。まずはロリスが偶発的とはいえ相手選手をガッツリパンチ。先制点を許す。

 ビハインドのフランスはポルトガルの5バックを縦に割るイメージで。前半のPK奪取のシーンや、後半の逆転ゴールはポルトガルのバックスが整う前にベンゼマで攻略しきってしまうというフランスのやり方が実ったシーンだ。

 しかし、フランスがベンゼマならポルトガルにはロナウドがいる。後半、左サイドからカットインのチャンスを得ると、クンデがハンド。これはなんかもうどう見てもハンド!これで得点をまた伸ばしたロナウド。PKを決めるなんて当たり前と思うかもしれないが、直前にスペインの試合を見ている自分には口が裂けても『PKは簡単』となどと易々といえることはない。

 この同点ゴールで火が付いたフランス。失点に絡んだクンデは高い位置まで出ていってビルドアップの列越えを手助け。CBでも割と行動範囲は広いイメージだけど、SBだと輪をかけて動き回っていた。攻撃面では頼りになることは間違いない。

 しかし、ポグバのミドルをパトリシオに防がれるなどフランスは失点直後は反撃に出た。しかし、70分過ぎると両チームともにトーンダウン。他会場の経過を把握したのかわからないが試合のテンションがグッと下がった。

 試合を引き分けに終わらせることが大方合意した両チーム。ロナウドとベンゼマが音頭を取って前にボールを進めないという協定を無言で結ぶ。1人で急に相手をぶち抜いたコマン以外は言うことを聞いていた。多分コマンはあとで2人にボコボコにされたと思う。色んな意味でまさに最初から最後までロナウドとベンゼマ祭りだった。

 何はともあれ、何とかGS突破を決めたフランスとポルトガル。だが、ノックアウトラウンドは初戦からイングランド、ベルギーというハードな組み合わせ。負荷の高いグループステージを過ごしてきた両チームはいきなりぶつかる強豪相手にどのようなパフォーマンスで臨むのだろうか。

試合結果
ポルトガル 2-2 フランス
プスカシュ・アレナ
【得点者】
POR:31′(PK) 60′(PK) ロナウド
FRA:45+2′(PK) 47′ ベンゼマ
主審:アントニオ・マテウ・ラオス

Round 16 スイス戦

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■『嵐』を乗り越えた勝利

 まだEURO2020は終わってはいないが、ここまでの中での謎采配No.1は今のところはこのスイス戦におけるデシャンの臨み方である。これまでのフランスからの変更点は最終ラインの枚数を増やしたこと。ラングレを最終ラインに置き、3CBでスイスに挑むことになった。

 3バックにしたことが最悪だったというわけではない。そういうやり方もあるだろう。相手を引き込むことができればムバッペを中心にロングカウンターに転じることができる。フランスにとって問題だったのはラインを下げてからの攻撃の手段ではなく、守備においてラインを下げることのとらえ方である。

 フランスは前の形は3-2。グリーズマンは3トップの右ではなく、インサイドハーフの左に入る形。これだとスイスの3-2のビルドアップとは噛み合わない。噛み合わないなら噛み合わないで仕方ない部分もあるだろう。

だが、後ろに重いチームでやっていけないのは、後から慌てて出ていった挙句、交わされ運ばれること。スイスのホルダーに対してフランスが後追いでプレスに行くと、一番近くのスイスの選手が空いたままに。まるでスイスにポゼッションの道筋を締めているかのようなフランスのプレスだった。特に大きく縦に進められるジャカの存在はフランスにとっては厄介だった。

 フランスはCBを増やして高い位置からのチェイスを整備するわけでもなければ、エリア内での跳ね返しの強度が上がったわけでもない。単純にローラインに晒される機会が増え、その分ピンチが増えただけ。セフェロヴィッチの先制点は理に適ったスイスの崩しが機能したことが要因である。

 4バックに移行後のフランスは攻撃面で苦戦。フランスは左サイドから作りたさが見えたものの、フィニッシャーのムバッペも左で構えるという矛盾に苦しむようだった。同サイドを崩しきれるほど整備はされていないし、右サイドに展開した後の手薄さも否めない。リカルド・ロドリゲスのPKを止められたことが唯一フランスにとってポジティブなトピックスだった。

 保持の局面で苦しむフランスを救ったのは好調を維持し続ける2人のタレント。特にベンゼマの同点ゴールは圧巻。なんだそれは。見たことのないトラップから得点までつなげてしまうエースの貫禄をこれ以上ない形で示したシーンだった。これで勢いに乗るベンゼマは直後に逆転ゴール。これで一気に流れはフランスに。ポグバのスーパーゴールが決まった時はさすがに勝負は決まったとする向きが多かった。

 しかし、クロアチア同様、フランスの守備も根本が解決したわけではない。地道につなぐ部分がぶれなかったスイスは『ベンゼマの嵐』を過ぎ去った後に、再度ペースを握る。自陣からのつなぎで右サイドにつないだスイスはムバプのクロスから再びセフェロヴィッチ。組み立ての局面でも絶大な存在感を見せたエースの一撃で1点差に迫る。

 その後もフランスのプレスを交わし攻撃に転じるスイス。すると、後半追加タイムにその時はやってくる。ジャカのグラウンダーの縦パスは直前にオフサイドで得点を取り消されたガヴラノヴィッチの元に。キンペンベを交わし、今度は正真正銘の得点を生み出して見せた。この期に及んでジャカへのマークが甘くなったのは痛恨だろう。あそこで寄せないのならば、シソコは投入された意味が分かっていないといわれても仕方がない。

 コマンのシュートがポストを叩くなど90分のラストプレーまで見どころ満載だったこの試合。延長戦でも互いに好機を生む。個のフランスとつなぎのスイスというそれぞれの形からシュートまで持ち込むも、決定打には欠けたまま試合は大会初のPK戦に。

 本戦ではPKストップを決めたロリスだったが、完全にスイスに動きを研究されていた感が否めない。むしろ、読まれた部分に対応しようとして4本目はタイミングが合わなくなってしまうなど、スイスのシュートが枠からそれることをフランスは祈るしかなかった。その中で試合を決めたのはフランスの5本目。不調が目立つうえに、終盤は足を引きずっていたムバッペのシュートが止められるというこの日のフランスを象徴する形で試合は決着。

 結果だけ見れば大波乱。だが、試合を通して地道に相手を剥がしてゴールに向かっていたのはスイスの方。『嵐』を乗り越えた掴んだPK戦での勝利は彼らのポテンシャルの大きさをまざまざを世界に見せつけるものだった。

試合結果
フランス 3-3(PK:4-5) スイス
ブカレスト・ナショナル・アレナ
【得点者】
FRA:57′ 59′ ベンゼマ, 75′ ポグバ
SWI:15′ 81′ セフェロヴィッチ, 90′ ガヴラノヴィッチ
主審:アンドレス・ラパッリーニ

大会総括

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■届かない懐刀と不可解な5バック

死の組爆死三銃士の2人目。ご愛敬レベルではない本当になにやってんだよみたいな話が大会後に出てくるのはもう相変わらずなので放っておいていいと思う。多分、ワールドカップも優勝したから表に出てこないだけで、クソみたいな内紛を起こしながら勝っていると思うので、今大会のそういう話はうまくいかなかった原因とかにはあんまり関係ないんじゃないかな。ただ、ラビオの母ちゃんだけはマジでどうにかした方がよさげである。

 グループステージはそんなに悪くはなかったと思う。1戦目となったドイツ戦では攻め切ることに苦心するドイツに対して、カウンターからの反撃で応戦。機動力にかけるドイツのバックス相手にミスマッチを作り、ドイツの攻め手である右サイドを裏返すことで主導権を握っていた。

 続くハンガリー戦での引き分けは確かに想定外だっただろうが、ベンゼマとグリーズマンの斜め方向のランからハンガリーのブロックを崩す場面は作れていた。ハンガリーに追いつかれる要因となったSBの裏は確かにフランスの弱みではあるが、正直代表チームならこれくらいの穴はどこかしらにはあるだろうなという感想である。

 やはり決定的におかしかったのはスイス戦だろう。5バックで守ったのは100歩譲ってハンガリー戦で脆さを見せた右サイドのケアと踏まえれば理解はできる。ハンガリー戦ではLCBのキンペンベが右まで出てきていたから中央にラングレをおいてそのカバー役をさせたかったのだろう。

問題は前線からのプレスの約束事である。1枚ずつ高い位置から追い回すが、周りがついてこないので出てきた選手が空けたスペースにスイスは縦パスを入れればいいだけ。フランスはこれでスイスに前進を許しゴール前に迫られるということの繰り返しをしていただけのように見えた。まるでスイスに『ここに通せば前に進めますよ』という道しるべを作っていたかのようなプレスのかけ方をしていた。スイスは繋ぐだけで自動でチャンスが作れていた。

人につくことを大事にするのならばそもそも前の数が合う3-4-3気味にすればいいのに、グリーズマンを後ろ気味にスタートすることで前線からのズレを自ら作る配置も理解に苦しむ。デシャンのスイス戦のスターターの人選と戦術はEURO全体を見てもワーストレベルといっていいだろう。

 ただ、それでも多少の失点の不利は跳ね返せる地力はあるチーム。実際、スイス戦でもそうだったようにベンゼマは自身が招集された価値を見せ続けた大会だった。一方で誤算だったのはムバッペ。不調なのは目に見えて明らかだが、意地でもデシャンは外さなかったので彼のロングカウンターと心中するつもりだったのだろう。スイス戦も引いても何とかしてくれる彼の存在が後ろ重心を正当化してくれると考えたのかもしれない。

 だが、抜け出せど抜け出せどシュートは決まらない。しかし、前線の機動力を落とす基準型のCFであるジルーの起用は今のフランスには箸にも棒にもかからないことはハンガリー戦ですでに分かっていたので、前線はスペースメイクのためにフリーランをし続けるしかなかった。止まったら死ぬのが今大会のフランスである。

カウンターというのは確かにフランスの武器なのだが、あまりに頼りすぎてしまった感。懐刀を抜くのがうまくいったのはドイツ戦くらいで、懐刀ばかりをなりふり構わず振りかざしても当たらなかったのが今大会のフランスという印象である。

 心中したムバッペの不発と不可解な5バックの採用が招いたよもやの早期敗退だった。

頑張った選手⇒カリム・ベンゼマ
 この人もすごいし、この人なしでワールドカップを取ったフランスもすごい。スイス戦の神トラップは間違いなく大会ベストゴール。意味不明すぎる。

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