交代に動いたジレンマ、動けないジレンマ
ウェストハムの中盤は3センターの形。アンカーをソーチェクとしてIHにウォード=プラウズとパケタがトッテナムのCHについていく。
トッテナムの先制点はまさしくそれを利用した形だった。CHに釣られるパケタの背後に侵入したウドジェを起点に大外のヴェルナーが加速。縦突破からマイナスの折り返しをジョンソンが仕留める。トッテナムとしては初手の攻撃の形から先制点を導いた格好になる。
以降もトッテナムのこの攻略の形はテンプレ化。左右のMF-DFのライン間のハーフスペースに起点を作り、大外にボールを預けて縦突破からマイナスの折り返しでチャンスを作っていく。
ウェストハムは少しずつパケタが位置を調整することでライン間のクローズに成功。少しずつカウンターを打てるようになる。すると、セットプレーから同点ゴールをゲット。GK付近にまとわりつき隊の一員であったズマがヘディングを沈めて追いつく。やや劣勢気味な展開の中で試合を振り出しに戻す。
以降も試合の論点は同じ。ライン間に縦パスを通したいトッテナムとそれを防いでカウンターに移行したいウェストハム。試合が進むにつれてウェストハムはライン間のクローズとカウンターの起点として中盤からの加速に成功。ペースを引き戻す。チャンス構築はセットプレーがメイン。先制点に近い高い弾道を中心にトッテナムのDF陣を苦しめるボールを入れていく。
局面での体のぶつけ合いも増えて、非常にタフな流れに。時間の経過とともに試合は見ごたえのあるデュエルが目立つ展開となった。
後半の入りは前半の入りと同じくウェストハムはプレスに色気を見せたスタート。前半と異なったのはこの強気の姿勢が刺さったことである。ハイプレスからカウンターを発動し、一気にゴールを陥れに行く。ベンタンクールのパスミスは致命的なものであったが、ヴィカーリオがチームを救ってみせた。同点ゴールと似たセットプレーからの決定機を作るなど、ウェストハムが攻め立てる立ち上がりに。
一方のトッテナムもすぐに反撃。ゴールにかなり近い決定機を作るなど、試合は両軍のゴール前で油断ができない展開となった。より悪い失い方でピンチを招いていたのはトッテナムの方。だが、ファン・デ・フェンとヴィカーリオの冷静な対応で事なきを得ていた。
60分台はジリジリとトッテナムがペースを引き寄せる時間帯。ソンとジョンソンはもう一歩相手を剥がせればというところまで行けるように。サイド攻撃では右を軸にクロスをあげていく。交代選手が流れを変えそうな展開の中で、サールの投入でポロ以外にも飛び出す選手を作るなど、ポステコグルーは采配で変化をつける。テコ入れの方向性は右サイドからの崩しにフォーカス。ウェストハムのカウンターの運び屋であるクドゥスの位置を下げるという牽制の意味合いもトッテナムにはあったかもしれない。
ウェストハムはカウンターでの前線の個人のキープへの依存度が高まっていく。アントニオ、クドゥス、ボーウェンは代えにくくなっていたし、中盤はアルバレスが出場停止でパフォーマンスがよくないフィリップスしかいない。モイーズは試合の流れを変える一手を見つけられずにいた。
押し切りたいトッテナムだが、2列目と前線の交代選手がピリッとせず。足元で受けたがるクルゼフスキ、リシャルリソンが流れに乗ることができず、いなくなったスターターを恋しく思ってしまう出来だった。
終盤には互いに決定機を生むなどいかにも局面での対人勝負の色が濃かったこの試合らしい終盤戦に。だが、どちらもゴールを生むことができないまま試合は終了。前半の1ゴールずつの引き分けで幕を閉じた。
ひとこと
交代選手で動けないジレンマを抱えたウェストハムと動いたジレンマを抱えたトッテナムという感じの後半となった。
試合結果
2024.4.2
プレミアリーグ 第31節
ウェストハム 1-1 トッテナム
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:19′ ズマ
TOT:5′ ジョンソン
主審:ジョン・ブルックス