チーム情報
監督:スタニスラフ・チェルチェソフ
FIFAランキング:38位
EURO2016⇒GS敗退
W杯2018⇒ベスト8
招集メンバー
GK
1 アントン・シュニン(ディナモ・モスクワ)
12 ユーリ・デュピン(ルビン・カザン)
16 マトヴェイ・サフォノフ(FCクラスノダール)
DF
14 ゲオルギ・ジキヤ(スパルタク・モスクワ)
5 アンドレイ・セミョノフ(アフマト・グロズヌイ)
3 イゴール・ディヴェエフ(CSKAモスクワ)
2 マリオ・フェルナンデス(CSKAモスクワ)
4 ウヤチェスラフ・カラヴァイェフ(ゼニト)
18 ユーリ・ジルコフ(ゼニト)
13 ヒョードル・クドリャショフ(アンタルヤスポル/トルコ)
MF
25 デニス・マカロフ(ルビン・カザン)
21 ダニイル・フォミン(ディナモ・モスクワ)
24 アンドレイ・モストヴォイ(ゼニト)
7 マゴメド・オズドイェフ(ゼニト)
23 ダレル・クズヤエフ(ゼニト)
20 アレクセイ・イオノフ(FCクラスノダール)
11 ロマン・ゾブニン(スパルタク・モスクワ)
8 ドミトリ・バリノフ(ロコモティフ・モスクワ)
26 マクシム・ムキン(ロコモティフ・モスクワ)
19 リファト・ジェマレトディノフ(ロコモティフ・モスクワ)
17 アレクサンドル・ゴロヴィン(モナコ/フランス)
15 アレクセイ・ミランチュク(アタランタ/イタリア)
6 デニス・チェリシェフ(バレンシア/スペイン)
FW
22 アルテム・ジューバ(ゼニト)
9 アレクサンドル・ソボレフ(スパルタク・モスクワ)
10 アントン・ザボロトニー(PFCソチ)
各試合振り返り
GS第1節 ベルギー戦
■隙に付け入る前にゲームセット
Bグループの本命と目されるベルギー。初陣の相手は自国開催の前回のワールドカップで躍進したロシアである。
ボールを握ったのはベルギー。3CBで後方に数的優位を作り、ポゼッションで落ち着きを作る。ただし、そこから先の前進の手段が見えにくいのが難点。特に中盤を使った前進があまり多くなかった。充実したシーズンを過ごし、今大会でも大きな期待を背負っているティーレマンスだが、この試合はあまりうまく入れなかったように見える。
ロシアはとにかく前線のジューバにボールを当てることが最優先。何せでかい。あと、地味に器用で左右に動きながらもボールを収めることができる。彼の周りに1人置くことさえできれば高い位置で前を向ける選手を作ることができる。
そして、彼に長いボールが入ると会場がとても盛り上がる。おそらく、有観客で自国での試合というのは大きいと思う。ちょっとギャグっぽいけど、この手段をうまく味方につけている感はなんか相手からすると厄介な気がする。
保持はできるけど難はあるベルギー。前進の手段があるロシアにとっては十分に付け入るスキがある相手のように思えた。しかし、早々に痛恨のミスからみで失点を喫してしまう。クリアミスをしてしまったセミニョフはこれ以降もアワアワする姿が見受けられ、開幕戦という舞台に浮足立っていた感が否めなかった。
前半のうちに2点目を取って試合の大勢を決めたベルギー。トルカン・アザールのクロスのこぼれをムニエが押し込んで勝ち点3を大きく引き寄せた。
後半は負傷者が両チームに出たこともあり、ややトーンダウンした展開に。そんな中でも絶好調だったのはルカク。インテルでの充実なシーズンをEUROでも開放するようなパフォーマンス。ボールを引き出して良し、ドリブルで進んでも良しと状態の良さをうかがわせた。
逆にまだ時間がかかりそうなのはエデン・アザール。この試合では試運転にとどまったが、彼と負傷のデ・ブライネがどれだけ状態を上げてこれるかがノックアウトラウンドを見据えた伸びしろになってくるだろう。
試合結果
ベルギー 3-0 ロシア
サンクトペテルブルク・スタジアム
【得点者】
BEL:10′ 88′ ルカク, 34′ ムニエ
主審:アントニオ・マテウ・ラオス
GS第2節 フィンランド戦
■2列目の向こう側でのプレーに成功
第1節となったベルギー戦ではとにかくジューバへの放り込みを敢行しまくったロシア。この試合のロシアはベルギー戦と比べると前進の際のジューバへの放り込みは自重。サイドからその分丁寧に前進する。3-1-5-1というやや変わった布陣はサイドからの前進とジューバ周辺に人を集めるという2つの狙いの詰め合わせだ。
左はゴロビン、右はマリオ・フェルナンデスを中心に突破を狙うロシア。攻撃に傾倒した3-1-5-1ならばボールサイドとエリア内に人を両方配置することが可能である。サイド突破からジューバへのハイボールは仕上げに使うイメージ。そして、そのこぼれ球を拾うために2列目の人員も確保している形。ジューバの競り合いがシュートではなく、落としを優先していることからも、この傾向は伺うことが出来るだろう。
対するフィンランドはデンマーク戦と同じく速い攻撃で反撃。ロシアの2列目の5枚をスピードに乗った状態で超えることが出来ればチャンスを作ることはそこまで難しくはない。むしろ、フィンランドはデンマーク戦よりも簡単にチャンスを作ることが出来ていた。
特にロシアが手を焼いたのはそのデンマーク戦で得点を決めたポーヤンパロ。抜け出しのスキルが高く、あわや先制点という場面では冷や汗をかいたロシアサポーターも少なくないはずだ。
ロシアの被カウンター時の対応は脆弱さが覆い隠せず。スロバキアにめちゃめちゃにされたポーランドくらいには中盤にスペースがあった。ポーランドと違って攻め手がまだ機能していたのは救いである。
自陣の広大なスペースを犠牲にしても点が欲しいロシア。マリオ・フェルナンデス負傷後はジューバへの楔から中央でのパス交換をメインの手段に切り替え。そうなると狭いスペースを攻略するための細かいスキルが要求されることになる。それにこたえて見せたのがミランチェク。ジューバの落としから細かいタッチで相手をいなすと、狙いすました左足でゴールの隅に正確に押し込んだ。
前半終了間際にリードしたロシア。後半のテーマは「5」をフィンランドに越えられるリスクをどうとるか?である。初めはWBをやや下げることで対応してみたものの、アンカー周辺のスペースをカバーできる人員が増えたわけではなく、フィンランドの攻撃をスローダウンさせられたわけではないのであまり効果はなかった。
その後、作戦変更に至ったロシア。最終的な結論はフィンランドにボールを持たせてしまうことだった。2列目の位置をそもそも下げてしまうことによって、フィンランドがスピード感をもって列を越えることを防ぐことに成功する。
手を焼きながらも最後は2列目よりあちら側でフィンランドをプレーさせることに成功したロシア。フィンランドを下し、グループ2位通過の有力候補に躍り出ることになった。
試合結果
フィンランド 0-1 ロシア
サンクトペテルブルク・スタジアム
【得点者】
RUS:45+2′ ミランチェク
主審:ダニー・マッケリー
GS第3節 デンマーク戦
■宿ってしまったんだから仕方がない
本拠地パルケンでの2節で連敗を重ねてしまったデンマーク。それでもめぐりあわせで言えば突破の可能性は残っている状況。ここまで後押しをしてくれている大観衆、そしてエリクセン。気を落とせるようなシチュエーションではないのは逆転突破に向けた救いだったはずだ。
そんな敵地に乗り込んだロシアは今日も元気にジューバ大作戦。いつもに比べるとやや左に傾きながらボールを収めて前進を狙う。ロシアの前進はこのジューバ大作戦とゴロビンを軸としたドリブルに寄るロングカウンター。長いボールとドリブルでの陣地回復でデンマークのゴールを目指す。
一方のデンマークはやや右偏重。クリステンセンが時には右のSBに入るようにして右サイドを押し上げたこともあり、右サイドは割と人が密集。入れ替わり立ち替わりで選手が飛び出してくるデンマークの右サイドはロシアにとって対応がしにくかっただろう。
時間が進む中で目立つようになったのはデンマークが入れる中央への楔。30分付近くらいから中にダイレクトに縦パスを刺すシーンが目立った。そして、ロシアはややそのパスへの対応が甘かった。ロシアはその代償をきっちり払うことになる。間受けの旗手となったのはダムスゴー。そのダムスゴーがライン間で前を向くと右足を一閃。GKが一歩も反応できない虚を突かれたタイミングでデンマークが先制する。
後半も均衡した展開だったが、ミスが出たのはロシア。バックパスをこの日振るわなかったポウルセンにプレゼント。この大会の彼のセレブレーションにはどうしてもグッときてしまう。
後半のロシアはジューバ大作戦の効果がだいぶ薄れていた。デンマークはここに2人守備者をつけるようになっていたし、そもそもジューバへのロシアのロングボールの位置がずれるようになってきた。そのためにロシアはソボレクを投入し、ツインタワー作戦に移行。その結果、なんとなくプレッシャーは分散。押し込んだところでドリブルを仕掛けたゴロビンがきっかけでPKを獲得。試合をわからないところまで引き戻す。
しかし、ここからのデンマークにはもう太刀打ちする術はなかったように思う。なんというか完全に宿ってしまった。79分のクリステンセンのゴールとかはもうなんか言葉もない。勝つって知っていても『すげぇ』って言ってしまうような得点だった。宿ってしまってはもうロシアとしては正直できることはない。でも宿ってしまったものは仕方ないし、ここに宿るべきだったし、俺も宿ってほしかった。
スタンドの思いを投影したかのようなゴールラッシュですべてをひっくり返す逆転突破を果たしたデンマーク。勢いを持ったアンダードッグとしてノックアウトラウンドに殴り込みだ。
試合結果
ロシア 1-4 デンマーク
パルケン・スタディオン
【得点者】
RUS:70′ ジューバ
DEN:38′ ダムスゴー, 59′ ポウルセン, 79′ クリステンセン, 82′ メーレ
主審:クレマン・トゥルパン
大会総括
■大作戦だけでは・・・・
攻撃の手段どうするねん!?みたいな国もある中で、俺たちのジューバ大作戦という確固たる攻撃の手段を持っていたのはいいことだとは思う。問題はあまりにジューバへの放り込みに攻撃が傾倒しすぎてしまったことだろう。『行くよー』『あいよー』って感じでガンガン放り込んでいたので、なんというかどうしても単調になりやすかった。
もう1つの問題はジューバに当てたとしても、彼1人ではそのままフィニッシュに持って行けないし、キープもできないということ。基本的には競り合って落ちたボールを拾ってくれる人までセットで考えないといけないので、押し下げられた展開ではまるで機能しないという難点があった。
PA内まで相手を押し込み、ジューバの周りに人をわらわら置くことが出来たフィンランド戦ではその点をうまく生かしきれたと思う。しかしながら、デンマーク相手には通用しなかったし、ベルギーになんてもってのほか。ジューバ一辺倒で反撃に転じることが出来る相手ではなかった。ゴロビンのドリブルで運ぶ形をもう少し整備した方がいいのかもしれない。
加えて、守備の脆さも顕在化。押し切ることが出来たフィンランド戦すら、トランジッションの際の広大なスペース管理は甘く、好機を作られていた。突破がかかったデンマーク戦ではブロック守備における間受けの対応が最後まで決まらず、主導権を握られる要因に。
致命的なミスからの失点の多さも短期決戦では致命的。ベルギー戦ではクリアミスが、デンマーク戦ではバックパスミスがそれぞれ失点に直結しており、そのまま敗れてしまっている。
内容も詰めの甘さもベスト16に残るには少々厳しかった印象。ロシアホームの試合ではジューバ大作戦は盛り上がるので楽しそうではあるが、攻守ともに新しい柱を探さねばいけないタイミングに来ているのかもしれない。
頑張った選手→アレクサンドル・ゴロビン
稲妻のような輝きを見せた3年前のW杯ほどのインパクトは残せなかったが、それでもジューバ大作戦以外の手段は彼にしか示せなかったように思う。どうやら今季は怪我に多いに苦しんだシーズンになったよう。25歳とまだまだ若いので、21-22はロシアの地で見せたスピードを存分に生かしてほしいところだ。