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「Catch up 日本代表」~2024.6.6 アメリカ・メキシコ・カナダW杯 アジア2次予選 グループB 第5節 ミャンマー×日本

目次

レビュー

2つの課題と2つの得点を手にした前半

 すでに予選突破を決めている日本。ミャンマーとのアウェイゲームでは宣言通り攻撃的な3バックの試験運用を頭から行うスタートとなった。ミャンマーの非保持は5-4-1。1トップのマウン・マウン・ルインがアンカーロールの守田を基準として、そのほかの9人は自陣にきっちり引く仕組みとなった。

 日本は自陣からのショートパスで切り崩しにいく。3バックは自由にボールを持つことができる。彼らにはプレッシャーのかかる距離にマーカーもいないし、パスコースの制限がかかっていない。よって、ワイドのCBが持ち上がりWBにボールをつけることで攻撃を仕掛けていく。

 このメカニズムが明確に機能したのが左サイド。CHが縦関係となった恩恵を受けて左サイドに存分に顔を出す旗手はシャドーの鎌田と均質的な役割。ワイドの中村が大外でボールを持つと、鎌田と旗手は大外の奥に流れたり、よりインサイドのレーンで裏を取ったり、横でサポートに入ったりなどの多様な役割をこなす。日本の初手はこの左サイドから奥行きを作り、そこからの折り返しで小川をターゲットにしてクロスや遅れて入ってくる守田のミドルのためのスペースを創出することだった。

 さらにこの左サイドの攻撃を活性化したのは大外の中村。単に大外で相手をピン留めするだけでなく、自身が奥で受けるためのオフザボールの駆け引きができるのが彼の魅力。動的な局面では一気に背後をとってシュートコースに入り込むことができる。前川からのクイックリスタートによるカウンターもそうだし、先制点の場面もそう。ミャンマーの帰陣が間に合わない時には背後を狙うアクションを増やしてゴールを自身で陥れることで中村は価値を示した。

 日本はこの大外の中村を囮としてインサイドにガンガン鎌田や旗手に入れることができればいいのだが、明確に中央を破ることができたのは最後の橋岡→小川の縦パスくらい。それでもダメと言い切れないのは先制点以降も左サイドで中村が手前と背後の駆け引きを繰り返しながらギャップを作っていたから。2点目の堂安のゴールも伊藤と結託した中村が作り出したスペースを起点に攻め切ったものだった。

 一方の右サイドはやや苦戦気味。まず、構造的には旗手と同じ役割をする人が単純に右にはいない。やや小川が右に流れることもあったが、左サイドから攻め切ることができるので小川はボックスできっちりと場所を取ることの優先度が高そうな盤面。

 また、左偏重の攻め筋の分、橋岡が伊藤よりも低い位置を取ることが多め。さらには堂安はマイペースにインサイドに残る。よって、大外の縦レーンをサポート少なめでなんとかしなければいけない菅原には非常にハードな状況が用意されたと言えるだろう。伊東純也ならこの状況でもなんとかしたのかもしれないけども。

 この右サイドの攻め手の調整には試行錯誤が行われた。最後の方には橋岡が大外レーンを追い越すことでギャップを作ること自体には成功したが、カウンター対応で無類の強さを発揮していた守田や左の伊藤がその分のポジション調整をしていたかは怪しいので、死なば諸共の解決策とも取れる。

 2点リードでやる必要があるかはわからないけども、攻撃的な3バックで存在感を示しておきたい橋岡にとっては石にかじりついてでも何か成果を残したい状況だったというのは理解できる。なお、ルートンでのCB起用でも課題だった対人でのカウンター対応は残念ながら90分を通じて怪しさを残すこととなった。

 右サイドの攻め筋構築のためのバランス調整とインサイドを除くアクションが抑えめだったこと。2つの課題と2点のリードを手にして日本はハーフタイムを迎えることとなった。

遊びの要素の低下と機能性がでた右サイド

 後半、日本の選手交代は2枚。旗手と代わって入った川村は旗手と同じくシャドーとCHの二役を鎌田とシェアできるかのテストだろう。堂安と代わった鈴木はより大外との関係性改善を求められるタイプの修正のように思えた入れ替えだった。

 この結果、日本の左右の攻め筋は均質的になった。右サイドは橋岡がやや上がり目のポジションを取りつつ、ハーフスペース周辺で鈴木が縦パスを引き取って菅原を押し上げる。一方の左は川村がスムーズな列上げでの存在感発揮に苦戦している感もあった。

 選手交代で鎌田が退いたことで日本のポジション的な遊びの要素はさらに低下。川村からすれば大外に行ってこい型の前田がいて、前にはCH適性が少ない中村が登場したことでよりハードな状況を迎えることとなった。

 逆に右サイドは仕組みが整理されたことで機能性がもたらされた感があった。橋岡と鈴木のタッグにより、WBは明らかに高い位置を取りやすくなった。その恩恵を受けた相馬がクロスから小川に2つのゴールをきっかけを与えることとなった。

 日本の最後の選手交代は板倉。守田に代わって中央に残る方のCHとして登場する。この日の日本は微調整を挟みつつ、攻撃的な3-4-2-1の中でこの選手たちが何ができるかを観察する日だったように見えた。

 終了間際の小川はハットトリックのチャンスを逃してしまったが、代わりに中村が5点目を奪うことで試合は終焉。3-4-2-1でのテスト色が強い一戦を締め括った。

ひとこと

 消化試合をきっちりテストに使ったなという一戦。後半は特にメンバーがチグハグな場面もあったが、このオプション自体が本大会では点をとりにいくスクランブルなフォーメーションでのスポット起用を前提としたものと仮定すれば、ある程度なったなりのメンバーでこの仕組みができないと困ると思われるので、そういう部分でもいいテストになったかもしれない。

試合結果

2024.6.6
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
アジア2次予選 グループB 第5節
ミャンマー 0-5 日本
トゥウンナ・スタジアム
【得点者】
JPN:17′ 90+3′ 中村敬斗, 34′ 堂安律, 75′ 83′ 小川航基
主審:マシェド・アルシャムラニ

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