チーム情報
監督:ステファン・タルコビッチ
FIFAランキング:36位
EURO2016⇒ベスト16
W杯2018⇒予選敗退
招集メンバー
GK
1 マルティン・ドゥブラフカ(ニューカッスル/イングランド)
23 マレク・ロダーク(フラム/イングランド)
12 ドゥシャン・クチャク(レヒア・グダニスク/ポーランド)
DF
14 ミラン・シュクリニアル(インテル/イタリア)
5 リュボミール・シャトカ(レフ・ポズナニ/ポーランド)
15 トマーシュ・フボチャン(オモニア・ニコシア/キプロス)
16 ダーヴィド・ハンツコ(スパルタ・プラハ/チェコ)
24 マルティン・コスツェルニーク(スロヴァン・リベレツ/チェコ)
2 ペテル・ペカリーク(ヘルタ・ベルリン/ドイツ)
3 デニス・ヴァヴロ(ウエスカ/スペイン)
4 マルティン・ヴァリエント(マジョルカ/スペイン)
MF
17 マレク・ハムシク(IFKヨーテボリ/スウェーデン)
7 ウラジミール・ヴァイス(スロヴァン・ブラティスラヴァ)
6 ヤーン・グレグシュ(ミネソタ・ユナイテッド/アメリカ)
13 パトリク・フロショフスキー(ヘンク/ベルギー)
25 ヤクブ・フロマダ(スラヴィア・プラハ/チェコ)
20 ローベルト・マク(フェレンツヴァーロシュ/ハンガリー)
10 トマーシュ・ススロフ(フローニンゲン/オランダ)
8 オンドレイ・ドゥダ(ケルン/ドイツ)
11 ラースロー・ベーネス(アウクスブルク/ドイツ)
18 ルカーシュ・ハラスリン(サッスオーロ/イタリア)
19 ユライ・クツカ(パルマ/イタリア)
22 スタニスラフ・ロボツカ(ナポリ/イタリア)
FW
21 ミハル・ジュリシュ(オモニア・ニコシア/キプロス)
26 イヴァン・シュランツ(ヤブロネツ/チェコ)
9 ロベルト・ボジェニーク(フェイエノールト/オランダ)
各試合振り返り
GS第1節 ポーランド戦
■終着点の狙い撃ちでリスクが増加する
立ち上がりからボールを持つのはポーランド。スロバキアはトップも含めてボールよりも自陣側に下がることでバリケードを張る。攻撃時はフリーマン的な役回りとなるハムシーク(みんな昔はハムシクって言ってなかった?)も守備には参加する。
ポーランドのビルドアップはちょっとちぐはぐだった。後方の最終ライン3人+アンカーのクリホヴィアクの4枚でボールを持ちながら組み立てを狙う。しかし、このビルドアップの目的地をぼかしてくるのがスロバキア。SHが後方に下がる6バック的な守り方で最終ラインを埋める。そして、降りる選手には積極的に捕まえに行く。スロバキアは6バックでポーランドの2トップとWBの4枚を監視するので、数としては余る。これならば大エースのレバンドフスキにも複数人かけることはできる。
しかし、スロバキアが狙いどころを定めようと、ポーランドの最終的な目的地はレバンドフスキ。ポーランドは4対6の状況でひたすら個人戦を仕掛けまくる状況に。強いて言えばスロバキアの左サイドのマクの戻りが遅れがちなところを狙い目だった。
だが、これは明らかにポーランドにとってマイナス収支。猪突猛進な個人戦は実ることが少ない。ベクトルを変えたクリヒのアイデアが光った得点シーンを除けば、ポーランドの攻撃は軒並み不発といっていいだろう。むしろ、ボールロスト時はビルドアップのために横に広がった3CBとがら空きのクリホヴィアク周辺にスペースがわらわら。スロバキアがきっちりと反撃を行う隙を与えてしまっていた。アンカーのクリホヴィアクが退場まで追い込まれてしまったのは本人の軽率さに加えて、構造上の欠陥も大いに影響しているだろう。
加えて、撤退守備でも難ありのポーランド。スロバキアの先制点のシーンは2人がかりでマクをサイドに追い込み、かつ背中向きにタッチラインまで追い込んだ。だが、ヨズヴィアクが急に挟み込みを解除したせいでサイドをあっさりと突破。シュチェスニーのオウンゴールを呼んでしまう。
退場者を出すとより苦しくなったポーランド。押し込まれ続けるとセットプレーからシュクリニアルに決勝点を決められて万事休す。攻守の機能不全や退場者とポーランドにとっては踏んだり蹴ったりな第1節になってしまった。
試合結果
ポーランド 1-2 スロバキア
サンクトペテルブルク・スタジアム
【得点者】
POL:46′ リネティ
SVK:18′ シュチェスニー(OG), 69′ シュクリニアル
主審:オビデウ・ハツェガン
GS第2節 スウェーデン戦
■2試合連続のクリーンシート。塩漬け+PKで王手
スロバキアにとってはまたとないグループ突破の大チャンス。初戦でポーランドを下したことにより、グループの本命であるスペインと戦う前に決勝トーナメント進出の権利を得る可能性が出てきたのである。
しかし、この日のスロバキアは苦戦した。それもそのはず。スロバキアの今節の相手はスウェーデン。彼らの思想はとりあえずリトリートして守備のブロックを組むことが最優先。自らスペースを明け渡すようなポゼッションをしてしまい、スロバキアに反撃の機会を与えてくれたポーランドとは異なる。
スペイン戦と異なり、スウェーデンはまずは高い位置からスロバキアの攻撃を止めにかかる。しかし、それは取り切るためではなくあくまでテンポを遅らせるため。その後のリトリート時のゾーンDFを安定して迎えるためにまずは初手でスロバキアを止める。ポーランド戦はボールを奪取して即座に加速できたことで攻撃機会を得ることができたスロバキア。この試合ではそもそも初手で封じられる。スウェーデンの望むペースでリトリートすることでスロバキアは保持時のチャンスの芽を摘み取られてしまった。
スペイン戦よりもボール保持の時間が増えたスウェーデン。絞るフォルスベリとシンメトリーにイサクが変形する形で3トップに変形する。その分、LSBのアウグスティンソンが高い位置を取る。後方は残りのDFラインが3枚。もはやEUROでは親の顔より見ているお馴染みの3-2-5変形である。
スロバキアはこれに対して選手の質を重視したマークを敢行。楔が入るフォルスベリとイサクのところをまず重点的に守る。特に警戒を強めたのはフォルスベリ。SHのコッセルニークを低い位置まで下げてフォルスベリについていかせることに。スロバキアもスウェーデン同様、全体の重心を下げながら対応。攻守の切り替えが少ない展開となった。
ドゥダ、ハムシークが前を向く状況を作りたいスロバキアだが、後半も展開は変わらず。スロバキアは保持においての起点を作れないまま時間を過ごすことになる。
しかし、スウェーデンの方は徐々に活路を見出していく。前半に比べてスロバキアのDF-MFのライン間がコンパクトさを維持できなかったこと、そしてフォルスベリへのマークが甘くなってきたことで段々と押し込む時間が長くなってくる。
フォルスベリがフリーになったことでラインの裏と逆サイドへの横断を使いながら徐々にスウェーデンがペースを握りだす。押し込んだ状態を作ったことで先制点を得たスロバキア。PK奪取は押し込んだ状況が続いたからこそだろう。これをフォルスベリが決めて先行する。
その後、反撃に転じるスロバキアだが結局スウェーデンをこじ開けることができず。未だにオープンプレーでは得点も失点もないスウェーデン。手堅い守備と1つのPKでスロバキアに代わりグループEの突破に向けて有力なポジションに躍り出た。
試合結果
スウェーデン 1-0 スロバキア
サンクトペテルブルク・スタジアム
【得点者】
SWE:77′(PK) フォルスベリ
主審:ダニエル・シーベルト
GS第3節 スペイン戦
■女神が微笑んだゴールラッシュ
未勝利で突破が決まらないまま最終節を迎えてしまったスペイン。立ちはだかる圧倒的な得点力不足というお題。これに対してどのように解決策を見出すか。これが自分たちより上にいるスロバキアを退けるためのキーになるのはだれの目から見ても明らかだ。
無論、得点までの過程はそこまで悪いわけではない。この試合では左の大外を起点としてモラタや右のサラビアが入り込む動きでゴールに迫る。左の大外を取る役割をWGのモレノにやらせるのはちょっと不思議だったけど、相変わらずPA内の動き出しまでは元気であることを証明していた。
中盤に入ったブスケッツもタクト役を十分にこなしていたしコンディションは充分。IHは無駄に下がらず高い位置で取る分攻撃に厚みは出ていた。この部分はややスロバキアのケアは甘かった。自陣に引く割りには間に通されるし、ホルダーを簡単に離す場面も見られた。
ただ、スペインが決定機に頭を抱える状況は変わらず。ややアクシデンタルな形で得られたPKはドゥブラーフカがストップ。モラタはまたしても頭を抱えることになった。ちなみにスペインはこれで5連続PK失敗らしい。
しかし、得点力不足は意外な形で解決することに。シャトカのパスミスで得たシュート機会をサラビアがポストに当てると、この処理をドゥブラーフカが誤りオウンゴールに。痛恨の処理ミスでスペインに先行を許す。
こうなると勢いが出るスペイン。WGの左右を入れ替えたスペインはモレノが右に抜け出すとセットプレーで残っていたラポルトにアシスト。前半のうちに追加点を得る。
後半のスロバキアは中盤のチェイシングを強化し、奪回後、即座にCB間の前線の裏にパスを出すなど狙いはだいぶ整理された印象だった。しかし、点が入ったのはスペイン。左で作って右で決めるというこの日のお決まりの流れから3点目を奪取。これで勝負あり。やや女神がほほ笑んだ感もあったが、今大会最大の得点差で得点力不足のイメージを払拭したスペインがノックアウトラウンド進出を決めていた。
試合結果
スロバキア 0-5 スペイン
エスタディオ・ラ・カルトゥーハ
【得点者】
ESP:30′ ドゥブラーフカ(OG), 45+3′ ラポルト, 56′ サラビア, 67′ フェラン・トーレス, 71′ クツカ(OG)
主審:ビョルン・カイペルス
大会総括
■明確な攻撃の核と90分の耐久度が不足
第1節のポーランド戦は相手を引き込みながらカウンターで反撃。自陣深くまで戻る撤退守備とロングカウンターのコンボでポーランドの空洞化している中盤に対して、主導権を握る。加えて、サイドからマクが独力の突破を見せることでポーランドの守備網を破壊。シュクリニアルのヘッドで勝ち越し点を得て、初戦を完勝でスタートして見せた。
結果的に今大会の3位通過となるチームのボーダーは勝ち点4だった。つまり、この段階でスロバキアは突破にリーチをかけたことにことになる。しかし、ここからがうまくいかなかった。続く、スウェーデンはポーランドと異なり、ブロック守備の雄。ポーランド戦で見られた守備の粗を自らさらけ出してくれるチームではない。
攻めあぐねつつトランジッションが少ないというスウェーデン沼に引き込まれてしまった感のあるスロバキア。守備の部分ではライン間を圧縮することでスウェーデンの攻撃の手段を封じることで、前半は互角に渡り合っていた。しかしながら、徐々にライン間が空いてくるとフォルスベリが仕事ができるように。攻め込まれる隙を作ってしまうとPKから失点を喫してしまう。攻撃では結局スロバキアは敵陣を攻め落とすことができなかった。
最後のスペイン戦ではPKストップで相手の出鼻をくじくところまではうまくいったものの、ドゥブラーフカのミスから失点を喫すると、そこからなし崩し的に失点を重ねてしまってしまいゲームオーバー。第1節で王手をかけたグループステージ突破の夢は途絶えてしまった。
ブロック守備を組むことはできるが、スウェーデン戦のように90分は持たない。攻撃の部分では明確な武器を持っておらず、ポーランドくらいスカスカなチームでなければ敵陣に迫るのは非常に難しい。チームの核であるハムシクも後半になるとパフォーマンスがグッと低下。中心人物としてチームの攻撃を牽引することができなかった。
そもそもチーム力的にグループステージの突破は苦しかったようにも思うが、ポーランド戦でリーチをかけるところまで行っただけに少々悔やまれる。しかし、より出場国枠が狭まるワールドカップ出場権を取るためにはチーム力の底上げができないと難しいだろう。
頑張った人⇒ミラン・シュクリニアル
ハムシクに代わる大きな柱が代表には必要なはず。ポジションは異なるが、新しいスロバキアの柱として中核を担うことを期待したいところ。