チーム情報
監督:パウロ・ソウザ
FIFAランキング:21位
EURO2016⇒ベスト8
W杯2018⇒GS敗退
招集メンバー
GK
1 ヴォイチェフ・シュチェスニー(ユヴェントス/イタリア)
22 ウカシュ・ファビアンスキ(ウェスト・ハム/イングランド)
12 ウカシュ・スコルプスキ(ボローニャ/イタリア)
DF
5 ヤン・ベドナレク(サウサンプトン/イングランド)
15 カミル・グリク(ベネヴェント/イタリア)
18 バルトシュ・ベレシュインスキ(サンプドリア/イタリア)
26 ティモテウシュ・プハチ(レフ・ポズナニ)
2 カミル・ピョンツコフスキ(ラコフ・チェンストホバ)
4 トマシュ・ケンジオラ(ディナモ・キエフ/ウクライナ)
13 マチェイ・リブス(ロコモティフ・モスクワ/ロシア)
3 パベル・ダビドビチ(エラス・ヴェローナ/イタリア)
25 ミハウ・ヘリク(バーンズリー/イングランド)
MF
10 グジェゴシュ・クリホビアク(ロコモティフ・モスクワ/ロシア)
20 ピオトル・ジエリンスキ(ナポリ/イタリア)
6 カツペル・コズウォフスキ(ポゴニ・シュチェチン)
8 カロル・リネティ(トリノ/イタリア)
19 プジェミスワフ・フランコフスキ(シカゴ・ファイアー/アメリカ)
17 プジェミスワフ・プワヘタ(ノーリッジ/イングランド)
16 ヤクブ・モダー(ブライトン/イングランド)
21 カミル・ヨジュビアク(ダービー・カウンティ/イングランド)
14 マテウシュ・クリッヒ(リーズ・ユナイテッド/イングランド)
FW
9 ロベルト・レヴァンドフスキ(バイエルン・ミュンヘン/ドイツ)
7 アルカディウシュ・ミリク(マルセイユ/フランス)
23 ダビド・コフナツキ(フォルトゥナ・デュッセルドルフ/ドイツ)
11 カロル・ジビデルスキ(PAOK/ギリシャ)
24 ヤクブ・シビエルチョク(ピアスト・グリヴィツェ)
各試合振り返り
GS第1節 スロバキア戦
■終着点の狙い撃ちでリスクが増加する
立ち上がりからボールを持つのはポーランド。スロバキアはトップも含めてボールよりも自陣側に下がることでバリケードを張る。攻撃時はフリーマン的な役回りとなるハムシーク(みんな昔はハムシクって言ってなかった?)も守備には参加する。
ポーランドのビルドアップはちょっとちぐはぐだった。後方の最終ライン3人+アンカーのクリホヴィアクの4枚でボールを持ちながら組み立てを狙う。しかし、このビルドアップの目的地をぼかしてくるのがスロバキア。SHが後方に下がる6バック的な守り方で最終ラインを埋める。そして、降りる選手には積極的に捕まえに行く。スロバキアは6バックでポーランドの2トップとWBの4枚を監視するので、数としては余る。これならば大エースのレバンドフスキにも複数人かけることはできる。
しかし、スロバキアが狙いどころを定めようと、ポーランドの最終的な目的地はレバンドフスキ。ポーランドは4対6の状況でひたすら個人戦を仕掛けまくる状況に。強いて言えばスロバキアの左サイドのマクの戻りが遅れがちなところを狙い目だった。
だが、これは明らかにポーランドにとってマイナス収支。猪突猛進な個人戦は実ることが少ない。ベクトルを変えたクリヒのアイデアが光った得点シーンを除けば、ポーランドの攻撃は軒並み不発といっていいだろう。むしろ、ボールロスト時はビルドアップのために横に広がった3CBとがら空きのクリホヴィアク周辺にスペースがわらわら。スロバキアがきっちりと反撃を行う隙を与えてしまっていた。アンカーのクリホヴィアクが退場まで追い込まれてしまったのは本人の軽率さに加えて、構造上の欠陥も大いに影響しているだろう。
加えて、撤退守備でも難ありのポーランド。スロバキアの先制点のシーンは2人がかりでマクをサイドに追い込み、かつ背中向きにタッチラインまで追い込んだ。だが、ヨズヴィアクが急に挟み込みを解除したせいでサイドをあっさりと突破。シュチェスニーのオウンゴールを呼んでしまう。
退場者を出すとより苦しくなったポーランド。押し込まれ続けるとセットプレーからシュクリニアルに決勝点を決められて万事休す。攻守の機能不全や退場者とポーランドにとっては踏んだり蹴ったりな第1節になってしまった。
試合結果
ポーランド 1-2 スロバキア
サンクトペテルブルク・スタジアム
【得点者】
POL:46′ リネティ
SVK:18′ シュチェスニー(OG), 69′ シュクリニアル
主審:オビデウ・ハツェガン
GS第2節 スペイン戦
■対照的な両ストライカーの仕事
共に初戦を勝利で飾れなかったチーム同士の一戦。特にグループEの本命と目されていたスペインにとってはこの試合は是が非でも勝たなければいけない大一番だ。
スペインは第1節から1枚の入れ替え。右のWGをフェラン・トーレスからよりストライカー的なアルベルト・モレノに変更。逆サイドのダニ・オルモもワイドアタッカーというよりはストライカー気質が強い選手。3トップはナロー気味にエリア内を主な仕事場とする。したがって、大外は別の選手がカバーする2-3-5的な形で攻めに入るスペイン。
ちょっと不思議だったのは大外で張る役割と後方からサポートする役割の棲み分け。IHとSBが入れ替えながらやっていた印象だ。ジョレンテとコケの右サイドが入れ替えながらやっているのはわかるけど、アルバは大外を駆け上がりまくればいいのでは?と思ってしまった。最終盤はさすがに固定していたけども。
それでもサイドにおけるラインの上下動からエリア内への速いクロスまでのパターンは悪くなかったスペイン。特にモラタの抜け出しに合わせるパターンは非常にきれい。前節足りなかった前線のオフザボールの動きは明らかにこの試合で上積みが見られた部分である。ただ、とにかくシュートが決まらない。前後半通してPKも含めてシュートの外し方博覧会みたいになっていたのは切ない。先制点の場面を除けばそもそも枠に飛ばないシーンが多すぎる。サッカーが得点を競うスポーツでなければこのスペインは強いかもしれない。
そういった部分ではポーランドは対照的だった。スペインに対して大きな展開が決まり、薄いサイドを作ることさえできればシュートまで持って行けるポテンシャルは示した。だが、そこに至るまでのメカニズムが整備されていない。ワンチャンスで同点に追いついたレバンドフスキにモラタほどの決定機があればなぁと思ってしまう。
チャンスはあったが、フィニッシュが刺さらなかったスペインと届ければ一刺しするストライカーに届けることができなかったポーランド。後半の荒くて雑なプレーの応酬は、両チームのうまくいかなさが伝わってくるようだった。スペイン代表なのに、プレミアリーグみたいになっていたよ。交代選手が上手く試合に入れなかったスペインを見ると『まぁ、スタメンは妥当っちゃ妥当なのかな・・・』と思ってしまうのが切ない。
そういう意味では引き分けはこの試合の内容を反映したものとしてはしっくりくる。共に最終節に突破の可能性は残したものの、明るく前を向ける出来ではないことは確かである。
試合結果
スペイン 1-1 ポーランド
エスタディオ・ラ・カルトゥーハ
【得点者】
ESP:25′ モラタ
POL:54′ レバンドフスキ
主審:ダニエレ・オルサト
GS第3節 スウェーデン戦
■大エースたる所以は見られたが…
勝ち点4を稼ぎすでに突破が決まっている首位のスウェーデン。迎えるのは最下位ながらも勝てば自力突破が可能であるポーランドである。
勝たなければいけないポーランドの立ち上がりは慎重だった。ゆったりとしたボール回し、そしてレバンドフスキ目掛けたロングボール、そしてそのこぼれ球を押し上げた2列目が拾うという泥臭いやり方だった。
しかし、その慎重な姿勢は早々に崩される。イサクのポストからワンツー気味にシュートコースを作ったフォルスベリが先制パンチ。スウェーデンが先制したのは開始わずか2分のことだった。
というわけでスウェーデンは早速得意な4-4-2での塹壕戦をスタート。ポーランドはスロバキアやスペインに比べば前線のクロスに合わせる能力は高かった。それでもスウェーデンの牙城を崩すのはハードモード。時折、アクシデンタルにカウンターのチャンスがポーランドに転がってくることもあったのだが、スムーズに縦に急ぐスキルが足りていない様子だった。
レバンドフスキをうまく使えないポーランドを尻目に、イサクを使ってラインの駆け引きをするのは問題なくできていたスウェーデン。機会は少ないが、DFラインとの勝負で優勢に立つことは多かった。
ビハインドのポーランドは後半に3-1-4-2に変更。前線の受け手とプレスの強化を行うことで、より前の圧力を高めるやり方である。しかし、このやり方は初戦のスロバキア戦で見せた被カウンター対応がスカスカの形。当然、スウェーデンにカウンターの機会を与えるようになる。
このきっかけを活かしたのは途中出場のクルゼフスキ。コロナウイルスで合流が遅れたメジャー大会の初舞台において、見事なカウンターを発動。フィジカルを活かしてフォルスベリのお膳立てをした。
しかし、カウンターを完結させる個の力なら大エースのレバンドフスキも負けていない。強引な1点目は2人のDFの間からGKの届かないところに叩きこむミラクルショット。ポーランドは選手交代でWBにアタッカーを動員。突破力を強化すると、クロスを再びレバンドフスキが叩きこみ同点に追いついた。文字通りの大エース。
だが、最後に試合を決めたのはスウェーデンの方。再びカウンターからのクルゼフスキ。今度は後ろから走りこむクラーソンを使い、後半追加タイムに勝ち越し。奇跡の逆転を願うポーランドサポーターを地獄に叩き落した。
レバンドフスキの孤軍奮闘が目立った3戦だったが、最終節に敗れてポーランドは敗退。スウェーデンの強固なDFブロックとフォルスベリ、クルゼフスキの2人のテクニシャンにグループステージ突破を断たれてしまった。
試合結果
スウェーデン 3-2 ポーランド
サンクトペテルブルク・スタジアム
【得点者】
SWE:2′ 59′ フォルスベリ, 90+4′ クラーソン
POL:61′ 84′ レバンドフスキ
主審:マイケル・オリバー
大会総括
■丁寧なつなぎがエースの負荷を増やす
孤軍奮闘のレバンドフスキが国際大会ではお馴染みの光景となっているポーランド。おそらくなのだが、今大会の後ろから丁寧につなごうとするトライは少しでも大エースの負荷を減らすためのものではないだろうか。
だが、これは逆効果だったように思う。後方の選手が横幅をとって広がり、少しずつ受けながら進んでいくのだけど、初期位置以外に特に工夫がない。例えば、相手を引き付けるように降りたりとか、降りた選手と入れ替わるように前に入ったりとか。そういう動きが出てこない。
で、結局最後の目的地はレバンドフスキということがバレている。なので、結局はレバンドフスキにボールを入れるのだが、カウンターに軸足を置いているときよりもつなぐ分窮屈な状態でエースに渡すことになる。したがって、よりプレーしづらい状態になっていた。
しかも、ロストすると、後方には無駄に広がった陣形が残されている。中盤はスカスカでカウンターの対応で相手の選手を止めることが全くできない。これが全て悪い方向に転んだのが第1節のスロバキア戦。攻めあぐねた挙句、被カウンターでスカスカの陣形に攻め込まれるという流れを繰り返すポーランド。過負荷だったアンカーのクリホヴィアクが退場するのは当然といっていいだろう。
それでも意地を見せるのが大エースたる所以である。レバンドフスキ様。スペイン戦では大量の決定機を作っては逃すモラタを尻目に、ワンチャンスを沈めてドローに持ち込んで見せた。続く、スウェーデン戦でも孤軍奮闘は継続。特にカウンターから2人のDFの間からミドルで打ち抜いた1点目は圧巻であった。
だが、レバンドフスキへの依存度はメジャートーナメントを経るごとに増していっている。それと反比例するように、組織の強度は攻守に下がっていっている印象。エース頼みの組織を改善しない限りは、ワールドカップにおいても苦戦が予想される。なんとか打開の一手を見出したいところなのだが。
頑張った選手⇒ロベルト・レバンドフスキ
大エースは大エース。チームは丁寧にボールをつなごうとしていたが、それはそれとしてとっととボールを出してくれた方が楽という悲しい結論が3試合で導き出されてしまった感がある。