スタメンはこちら
付け焼刃だがクリスタルパレスの予習を試合前に少しした。1か月ほど前のニューカッスル戦を前半だけ。メンバーはアーセナル戦と全く同じだった。
【予習の感想】
・攻撃はサイド主体。
・両サイドハーフへの依存度の高さ。・最終局面での迫力不足。
アーセナル戦と同じメンバーといったが、並びはやや異なっていた。4-2-3-1のような形で、ザハとタウンゼントが左右のサイドハーフ。トップ下兼セカンドストライカーとしてマッカーサーが入っていた。攻撃はサイドハーフを経由することがほとんどだったこの試合。攻撃のほとんどは両サイド起点、特にザハへの依存度は高かった。
右サイドのタウンゼントがPA浅めからアーリー気味にゴールに向かうクロスを主体とするのに対して、左のザハは縦横無尽!あらゆる局面で相手にデュエルを挑んでいた。外にいるときは相手を引き付けながら中に入り込み、ファン・アーンホルトがオーバーラップするスペースを作り出していた。
懸念だったのはPAでの迫力不足。アイェウ1枚では迫力に欠けるため、トップ下に加えてCMFかSBが飛び込まないとチャンスを作るのは難しそうだった。ここが得点力不足で苦しんでいる理由かも。ちなみにこの試合は相手が絶不調のニューカッスルということもあり、パレスの支配率は62%でボールを保持するのに苦しむ様子はそこまで見られなかった。
【前半】
全てはベジェリン次第
さて、話はアーセナル戦へ。似たフォーメーションでスタートした両チーム。非保持はともに4-4-2。先述したようにパレスはこの試合はザハをトップに、マッカーサーをサイドに置いた形だ。
アーセナルを対戦相手として考えたときに厄介なのはどの部分か?と問われたら、前線の強力なユニットと答える人が最も多いだろう。ラカゼットはハイパフォーマンスを続けているし、オーバメヤンは点を取る。エジルは前節で今季ベストの活躍を見せた。前線のメンバーはのらせると厄介なのは間違いない。
パレスがとった4-4-2の特徴は1stプレスの役割を担う2トップが、アーセナルの最終ラインに強くチェックに行かないこと。おかげで最終ラインからのビルドアップは圧倒的にアーセナルが数的優位。2CMF+2CBの4人で2トップと対峙する形だ。
その代わりにパレスが封鎖したのはMF-DF間のスペース。最終ラインはPA前でラインを下げずに踏ん張り、MFのラインが相手の持ち上がりに対してDFとの間を圧縮し迎撃。最近のアーセナルはエジルやイウォビが間のスペースで受けることでスイッチが入ることが多い。このスペースを消すのが、パレスのプランだっただろう。
ライン間を圧縮され、イウォビやエジルが生きるスペースは封鎖された。ちなみにこの2人が最終ライン付近まで降りてきたこともあった。その際はパレスのCMFが追いかけてきて、自陣に侵入してきたら捕まえるという形で対応していた。イウォビもエジルも降りてくれば、自由にはなれるものの、結局1枚剥がさなければ、危険なエリアには侵入できない。その上、前線の受け手の枚数は1枚減っていたので、パスも通しにくい。降りてきたのはあまり効果がないように見えた。
そんなこんなで間でエジルとイウォビが受けれない!という状況が発生する。今季の序盤はずっとそんな感じだったけどね!そんな時のアーセナルはSBによる前進が主体だった。高い位置を取ったSBにボールを当てて、折り返した中のスペースからの前進。今季序盤のアーセナルが頻繁にやっていたやつである。
昔の画像の使いまわしなので、メンバーが若干異なるのはご容赦いただきたい。
しかしこの日のアーセナルは序盤戦の伝家の宝刀を抜いても、なお問題が。1つ目は左サイドバックのジャカ。本職ではないジャカでは前進は難しい。スピードはそんなにないし、ボールを持ちながら突破するのも得意ではない。
それでもベジェリンはいる。しかしここで立ちはだかったもう一つの問題は、ベジェリンと対面するマッカーサーだ。ボールが渡る段階でベジェリンにすでに完全に寄せ切り選択肢を奪う。ベジェリンがたまらずボールを最終ラインに戻すと、このバックパスがキーとなりパレスの2トップのプレスが始まる。マッカーサーは防波堤になり、アーセナルの右サイドからの侵入を食い止めることで、アーセナルは前進に苦しむこととなった。その結果、苦し紛れに狭いスペースに縦パスを入れてロストを繰り返すことになる。
しかし、間にスペースがない以上後ろから切り崩すしか選択肢はない!というわけでアーセナルの前進はベジェリンと一蓮托生。なんとかベジェリンがマッカーサーを剥がしたプレーは23分に決定機につながった。パレスの守備陣が若干対応が遅れたところを見ると、あそこはマッカーサーが何とかするのが役割だったように見受けられる。34分に前進がうまくいったのも、ベジェリンがマッカーサーを剥がしてから。ニューカッスル戦と同じ構成メンバーでもザハを前線において、マッカーサーをサイドに置いた意図は、彼を起点にベジェリンを抑え込むことにあるかもしれない。
普段このnoteを読んでる方なら私がベジェリンをあきらめない会において精力的に啓蒙活動をしていることはご存じだろうが、そんな私が贔屓目に見なくても、この試合の前進のキーマンはベジェリンだった。
パレスもパレスで前進に苦しんでいた。アイェウへのロングボールはほとんど収まらなかったので、前進がセカンドボール奪取とザハ頼みになっていた。あんまり再現性があったようには見えない。それでも決定機を作れたのはやはりザハとタウンゼントによる部分が大きい、パレスに比べれば守備時の中盤のスライドがルーズなアーセナルの隙をついて決定機を作る。14分のシーンはザハが空けたスペースにマッカーサーが飛び込むことで、大外でザハがフリーになった形。序盤のザハのエリアへのドリブル侵入はムスタフィがうまく飛び出して対応したが、この場面ではベジェリンとムスタフィの受け渡しがうまくいかなかった。その次の15分の決定機は普通にめっちゃうまかった。アーセナルがやりたい奴だった。
お互い決定機は少ないながらも、切り替えが早く見てて飽きないゲームだった。そんな中失点は突然に。ムスタフィが痛恨のPK献上。パレスにホーム初ゴールをプレゼントし、前節のPK失敗したミリボイェビッチにジレンマをしっかり払拭させるチャンスを与える。どれだけたくさんのものを与えるのか。実質慈善団体といっても差し支えないレベルの贈り物の多さである。
つらいタイミングで失点してしまったアーセナル。ビハインドで後半を迎える。
【後半】
いつも通りの逆転、いつもと違う逆転後
ベジェリンが今年1番の勢いで重要なタスクを担っているのに、負傷で交代するとか聞いてません。困ったぜ。
後半のアーセナルの変化は両SHが外に張る意識を強めたこと。これによって中のスペースを使い始めたのはゲンドゥージ。ほんの少しではあるが、アーセナルは押し返し始める。
そこから逆転まではあっという間。ジャカのビューティフルなFKを『アシスト』したのはトレイラ。見事で寄せからファウルを獲得した。
ゴールを決めたジャカがお膳立てに回ったのが2点目のシーン。ラカゼット、手で触ってるかなぁ?オーバメヤンが足裏で押し込めるのはさすがだなと。
ここから圧力を強めてきたのはクリスタルパレス。レスター戦と異なるのは試合を仕上げる前にエジルを下げたことだ。この日のエジルはパフォーマンはよかったわけではないが、ボールの落ち着かせどころとカウンターの起点はなくなってしまった。こういう時に前線の収めどころになるのはラカゼットのはずなのだが、今日は調子がイマイチ。少ないタッチでのパスもいつもの精度は見えなかった。
ラカゼットのパスミスから生まれてしまったのがパレスに2本目のPKが与えられたシーンだ。
失った時点では4対4のカウンター。そのあとの局面でいえば、セルロートをムスタフィが止められなかったのが痛い。最後は試合前から恐れていたアーセナルファンも多かったであろうザハとジャカのマッチアップから、パレスにPKが与えられる。レノはコースを読んでいたけど、ミリボイェビッチのPKが鋭かった。前半のPKで悪いイメージを払拭させちゃうから。。
同点の勢いそのままに前がかりになるパレスに対して、アーセナルは反撃の糸口を見いだせず。受け手となるラカゼットは不調、速いスプリントでボールを前に進められるベジェリンとオーバメヤンはピッチにはいない。出し手となるエジルもいないし、長いボールが蹴れるジャカはサイドバックに追いやられている。それでも88分のジャカのクロスは悪くなかったけど。少し伸びる軌道で合わせにくかったかもしれない。
余談だけど同点直後のセルハーストパークの雰囲気はすごかった。この雰囲気はやりにくいだろうなぁ。。
というわけで引き分けで終わり!連勝ストップ!
まとめ
タフだったね。パレス。終盤はやはり体力面で差を感じたし、特に2列目の守備の規律が特にしっかりしていた。早々と変わってしまったけど、マッカーサーはいい仕事をしたと思うし、ホジソンがベジェリンの食い止めを意図的にやったのだとしたらうまくいったといっていいだろう。ザハも厄介だし、ベンテケはいなくてよかったという気持ちしかない。とはいえ流れの中での得点は今日も0。課題はこのあたりだろう。決定機はあったが、チャンスメイクの頻度はそこまで多くないだけに、ザハ以外の前線の決定力の低さはチーム浮上のカギになりそうだ。
厄介なタイミングで厄介な相手と当たってしまったアーセナル。13日間で5試合の3つ目の試合である。どういう試合の組み方してんだよ。。レスター戦日曜にやれよ。。
そんなこんなもあり疲労の色は濃いように見えた。昨年ほどELではターンオーバーせず。ポルトガル遠征にに主力も帯同させた。エジルを下げる判断は仕方ないのかもしれないが、両SBのレギュラー不在でエジル、オーバメヤンを下げてしまえばもう一度勝ち越しにするのは難易度が高いと言わざるを得ない。単純な入れ替え以外の点でウェルベックとラムジー投入の効果が見えにくかったのも残念だ。特に前線でのプレスが良くなったわけでもないし。これだけの要素が重なれば『後半のアーセナル』が鳴りを潜めたのもやむを得ない。むしろ一度はよく逆転したというべきか。
あとは組み立ての部分でもう少し工夫は欲しかった。アーセナルの2CBと2ボランチに対して、相手は2枚しかプレスに来てないわけで。SBが高い位置を取れなくなってるのも相まって、前の方は人が少ないとなると、前線の個のクオリティ頼みになってしまう。人が多いならそういう部分で持ち上がりなりポジション取りとかで駆け引きが欲しかった。ホールディングとかゲンドゥージとかは後半は結構いろいろやってたかなと思ったけど。
トレイラを入れたりとかチェフ→レノに代えたりとか、そういう足元のスキルを単に上げる入れ替えだけではビルドアップは改善しないのでは?っていう個人的に普段から気にしていた部分は出てきてしまったのかなと。もう少し仕組みの部分でエメリにはいろいろやってほしいですね。4対2でボール回せてOK!ではなく相手の4-4ブロックから人を引っ張り出すような手法とかも見たい。
ムスタフィとか右ハーフスペース持ち上がって、内や外にさばけたら、もっと重要度が高まるのかなと。この試合はミスが目立つ展開になったけど、一昨年や昨年のシーズン後半に比べれば、コンディションは悪くないはずなので。もっといろいろエメリは彼にはやらせて欲しいなと思う。
あとはジャカ。せっかく左サイドに置くなら、もう少しいろいろやっても面白そう。少し浮けるように内側に絞るとか。偽SB的な中盤のタスクを持たせると、あそこでジャカを使う意味ももっと出てくるかもなと。
レスター戦では「評価保留」としたけど、この試合でもここで起用する謎はイマイチ解けず。ストッパーとしてなら優秀なソクラティスがいる。あえて理由をつけるなら、プレッシャーのかけづらい位置からロングキックを飛ばしてほしかったのか知れない。しかし、パレスの陣形は縦には狭いが横には広かったので、あまりサイドチェンジが有効な場面はなかったし、同サイド縦のオーバメヤンにもあまりパスは通らなかった。縦のユニットとしても及第点は与えづらい。前がイウォビだったらできることの幅も少しは広がったかもしれないけど。偽SBというか、単に本職じゃない人がSBタスクをやってるだけのように見えた。
ただ、チェルシー戦後の8試合の評価で言えば7勝1分とかなり頑張った感じ。5勝2分1敗くらいでOKかな?と思ってたので、想定よりも勝ち点は取れた感じがする。次はいよいよ正念場である。
試合結果
プレミアリーグ 第10節
クリスタルパレス2-2アーセナル
セルハースト・パーク
得点者
CRY: 45+1′(PK), 83′(PK) ミリボイェビッチ
ARS: 51′ ジャカ, 56′ オーバメヤン
主審:マーティン・アトキンソン