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「EURO 2020 チーム別まとめ」~イタリア代表編~

目次

チーム情報

監督:ロベルト・マンチーニ
FIFAランキング:7位
EURO2016⇒ベスト8
W杯2018⇒予選敗退

招集メンバー

GK
21 ジャンルイジ・ドンナルンマ(ミラン)
26 アレックス・メレト(ナポリ)
1 サルヴァトーレ・シリグ(トリノ)

DF
15 フランチェスコ・アチェルビ(ラツィオ)
23 アレッサンドロ・バストーニ(インテル)
13 エメルソン・パルミエリ(チェルシー)
19 レオナルド・ボヌッチ(ユヴェントス)
3 ジョルジョ・キエッリーニ(ユヴェントス)
2 ジョバンニ・ディ・ロレンツォ(ナポリ)
24 アレッサンドロ・フロレンツィ(PSG/フランス)
4 レオナルド・スピナッツォーラ(ローマ)
25 ラファエル・トロイ(アタランタ)

MF
18 ニコロ・バレッラ(インテル)
16 ブライアン・クリスタンテ(ローマ)
5 マヌエル・ロカテッリ(サッスオーロ)
7 ロレンツォ・ペッレグリーニ(ローマ) ※6/10 負傷離脱
12 ステファノ・センシ(インテル)
6 マルコ・ヴェッラッティ(PSG/フランス)
8 ジョルジーニョ(チェルシー/イングランド)
ガエターノ・​カストロヴィッリ(フィオレンティーナ)※6/10 追加招集

FW
9 アンドレア・ベロッティ(トリノ)
11 ドメニコ・ベラルディ(サッスオーロ)
20 フェデリコ・ベルナルデスキ(ユヴェントス)
14 フェデリコ・キエーザ(ユヴェントス)
17 チーロ・インモービレ(ラツィオ)
10 ロレンツォ・インシーニェ(ナポリ)
22 ジャコモ・ラスパドーリ(サッスオーロ)

各試合振り返り

GS第1節 トルコ戦

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■後半に顕在化した脆さを一網打尽に

 立ち上がりには組み合う様子を見せたトルコ。しかしながら、ミドルゾーンで構えてしまうと最終ラインのコントロールが不安定になってしまうという難点がすぐに露呈。ということで、トルコはひとまず撤退。今大会は保持寄りに傾倒したメンバーで臨んでいるイタリアがトルコを攻略するという構図に落ち着いた。

 中を固めるトルコに対して、イタリアはなかなか解決策を見いだせない。どちらかと言えば兆しがあったのは左サイド。最終ラインの表と裏のそれぞれに顔を出せるインシーニェの存在が大きかった。それに右サイドから斜めに走りこんでくる逆サイドのベラルディのランも効果的だった。

 一方で大外からのクロスの威力は限定的だった。フロレンツィやスピナッツォーラが抉れないでただ上げるだけではニアサイドから跳ね返されるばかりで打開策にはならず。結局はインシーニェに頼む!の様相が強かったイタリアだった。

 イタリアのポゼッションが不完全だったのは即時奪回のフェーズが含まれないからというのもある。加えて、トルコのビルドアップが安定していたからというのも大きい。GKのチャクルを中心にバックラインの精度が高かった。局面の転換を素早く回せずに停滞するイタリア。だが、トルコのカウンターの精度も高くなくゴールに迫ることもできない。

 膠着して迎えた後半、焦れてしまったのかトルコがやや前に出てきたことがイタリアにとって奏功した。前半の立ち上がりと同様、サイドの裏を取り放題になったイタリアがトルコのゴール前に迫る場面が徐々に出てくるように。すると先生は53分。サイドの深い位置までえぐられたトルコはデミラルがクリアしきれずにオウンゴール。続く2点目も同様にサイドを崩してのもの。スピナッツォーラの逆サイドからの走りこみという攻撃的な用兵が効いてインモービレの得点を呼び込んだ場面だった。

 仕上げとしてカウンターからインシーニェが3点目。ここでは前半に強みとなっていたトルコのビルドアップにミスが出てしまった。前に出て不安定になった上、ミスをしたトルコの脆さを一網打尽にしたイタリアが開幕戦を大勝で飾った。

試合結果
トルコ 0-3 イタリア
スタディオ・オリンピコ
【得点者】
ITA:53′ デミラル(OG), 66′ インモービレ, 79′ インシーニェ
主審:ダニー・マッケリー

GS第2節 スイス戦

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■前後半で圧倒した中盤が完勝の源

 両チームとも第1節と比べて大きく方針は変わらなかったように思う。イタリアは最終ラインからゆっくりとつなぎつつ、サイドから相手を押し込む。ハーフスペース付近の裏抜けかもしくは大外からSBがラインを押し下げるように抉る攻勢をかける。立ち上がりはやや右からの攻めが多いという左から攻めがちな前節との傾向の違いはあったが、大枠は同じといっていいだろう。

 一方のスイスも第1節と同様、最終ラインからの縦パスでの前進を試みる。メンバー表だけを見るとジャカが司令塔となり、縦横無尽にパスを供給する役を命じられているように思うかもしれない。だが、組み立てにおけるこのチームのジャカの存在感はあまり大きくない。

 相手のトップのプレスラインが中盤に設定されることが多く、ジャカにマークがつくことが多いこと、そしてプレッシャーを受けた状況でのプレーが不得手であるジャカをフリーにする仕組みを特にスイスが有していないことが大きな要因だと思う。そのため、後方から時間的に余裕があるCBが前線に縦のボールを付けるのが今回のEUROでのスイスだ。

 第1節と似たスタンスで臨んだ両チーム。圧倒的に苦しめられたのはスイスである。イタリアは前線のプレスラインこそそこまで高くないものの、中盤のプレスの仕留め方が秀逸。ロカテッリ、バレッラのボールハント能力は抜群。個々のボールハントでスイスの攻撃はほぼ機能不全に陥っていた。第1節では推進力を発揮して大活躍したエンボロもボールが来なければ話にならない。

 高い位置からのボールハントからの速い攻撃を活かして、イタリアは得点までたどり着く。ベラルディのタメから最後はロカテッリが走りこんでフィニッシュ。内容に見合った先制点を手にする。

 後半のスイスは非保持で高い位置からのプレスを仕掛けることでイタリアの保持をひっくり返すことを狙う。しかし、ここはジョルジーニョを軸にイタリアの後方がロングボール、ショートパスを交えながら回避。10分もしないうちにスイスのプレスは交わされ、イタリアのロングカウンター祭りになってしまった。2点目をロカテッリが再度決めた時点で勝負は決しただろう。残りの時間も3バックを試しつつ、3点目を取ったイタリアの支配下だった。

 前半と後半、それぞれでスイスの狙いを打ち砕いた中盤のトライアングルの活躍でイタリアがノックアウトラウンド進出一番乗りを果たした。

試合結果
イタリア 3-0 スイス
スタディオ・オリンピコ
【得点者】
ITA:26′ 52′ ロカテッリ, 89′ インモービレ
主審:セルゲイ・カラセフ

GS第3節 ウェールズ戦

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■GSで底は見せず、無失点でGS通過

 すでに突破を決めているイタリアが第3節に迎えたのはグループステージ通過をまだ決めることが出来ていないウェールズ。片や半ば消化試合、片や運命の決戦となったアンバランスな一戦だった。

 保持の主導権を握ったのはイタリア。3試合連続先発となったドンナルンマ、ボヌッチとジョルジーニョを除き大幅にメンバーを入れ替えたこともあり、まずは確かめるようにボールを保持をする。対するウェールズは5-4-1気味。WGが降りることは許容。トップのプレスラインは撤退するというやや慎重な入りとなった。

 ウェールズは突破がかかっているのに!と思うかもしれないが、彼らが2位から落ちるにはライバルのスイスの多くの得点での勝利とウェールズの多くの失点での敗北が揃うことが必要。まずは大量失点をつぶすために撤退するという選択も悪くはないだろう。ただ、それにしてもラインは下げすぎ。ウェールズは1つ処理をミスれば即イタリアの得点になる位置まで撤退。これはこれでリスクだと思う。

 イタリアはウェールズのWBの前のスペースから前進すると、そこからアーリー気味に逆サイドにクロスを刺す。左から作ることに重点を置いていたことは、逆サイドのIHであるペッシーナが出張にやってくることからもうかがうことが出来る。押し込み続けるイタリアは39分にセットプレーから先制。ヴェラッティのクロスをペッシーナが押し込み先手を取った。

 後半のウェールズはプレスを基軸としたラインアップを試みる。イタリアをこれに対して、プレス回避能力の高さを見せて対抗。ジョルジーニョの交わし方とキエーザのボールの引き出し方が特に際立った。ウェールズのプレスを回避するとイタリアは中央をするする進みながら追加点を狙う。

 プレスをかわされたウェールズにとってさらなる誤算だったのが52分のアンパドゥの退場。ベルナルデスキをがっちり踏みつけており、ウェールズは苦境に立たされることになる。10人でも全く反撃の機会を得られなかったわけではないウェールズだったが、少なくとも積極的なプレスは店じまい。

 イタリアが終盤にトーンダウンしたことと、おそらく逐一確認していたであろう他会場の結果的に無理することはない!と判断したこともあり、試合はそのまま終了。誤算が重なりつつも辛くも2位でしのいだウェールズとGSでは底を見せなかったイタリア。表情は対照的ながらもそろって突破を決めた。

試合結果
イタリア 1-0 ウェールズ
スタディオ・オリンピコ
【得点者】
ITA:39′ ペッシーナ
主審:オビデウ・ハツェガン

Round 16 オーストリア戦

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■持たざる者のイタリア対策で水際に追い詰める

 第1節に不在だったヴェラッティが先発復帰した以外はいつものメンバーに戻したイタリア。おそらくこちらはグループステージと似たスタイル。

 それに対してオーストリアはシステムと人員配置で比較的スタイルが変わりやすいチーム。オーストリアのポイントはまずはバックスの枚数、そしてアラバをどこに置くかの2点となる。オーストリアの選択は4-3-3、そしてアラバは左サイドバックに置くという形である。

 アラバをサイドバックに置くというのはオーストリアにとっては『ガンガン攻めよう!』のサイン。左サイドに起点を作り、彼のクロスからチャンスを作りたいという意志である。

 オーストリアはこの試合で非常によくイタリア対策を練っていたと思う。グループステージで見せたイタリアの強みは中盤のプレッシングである。このプレッシングを地道に外すことをオーストリアは選んだ。オーストリアはSBをWG裏に配置する。そしてIHのザビッツァーとシュラーガーの2人を左右に動かしながらヴェラッティとバレッラの2人を横に揺さぶる。イタリアのWGを越えた位置に立つSB、内外に大きく動くIHをイタリアのIHにすべて押し付けることによって、イタリアのプレッシングを回避することに成功した。

 もっともイタリアの守備視点で本来気になるのは、高い位置を取るSBのところとCBのスピード不足である。だが、オーストリアサイドの立ち位置で見れば、SBの裏を取れるアタッカーもイタリアのCBをぶっちぎれるCFもいない。オーストリアが取ったやり方は、イタリアの弱みを突くのではなく強みを歪ませること。イタリアの弱みを突くアタッカーを持たざる者の対策といえるだろう。

 それでもCBを2枚に設定したこと、そして配球役からアラバを外し、より敵陣深い位置でプレーさせる選択をしたのは勇敢といえるだろう。その分、グリーリッチュがアンカーとして最終ラインの枚数調整に入ることでなんとかアラバを押し上げた。

 対するイタリアはカウンタージャンキー。3トップに加えて、両SBが後ろから素早く攻撃のフォローに入ることで厚みを持たせていた。オーストリアの4バックというやり方が悪い方に出たのはこのイタリアの大外攻撃に対抗する部分。スピナッツォーラが大外アタックを仕掛けてくることで、ラインを下げられるうえに全体の重心を右側に引っ張られる状況が発生する。

 その結果、スピナッツォーラと逆サイドのバレッラが攻めあがる位置のバイタルでミドルを打つ隙ができるようになる。アラバがここをケアするようになり、徐々に対応できるようになったけど。

 後半、イタリアはWGのプレスバックを課すこと、そしてIHがより待ち構えて守備をする変更を加える。これにより徐々にイタリアにペースが流れるように。ただ、60分を過ぎると試合はどちらの手からも離れた展開の中で偶発的に互いにチャンスを迎えるようになった。その中でオーストリアが先制点に手をかけた。惜しくもオフサイド判定となったが、これはアラバを高い位置を置くという選択が呼んだものといえそうである。

 スコアレスのまま延長に入った試合で得点を手にしたのはイタリア。先制点の形は先に示した左の大外でオーストリアを引っ張っておきながらの逆サイドの動き。絞るアラバに対して、さらに大外で構えたキエーザがもう1枚構えていたのが重要。ライマーの戻りが間に合わなかったオーストリアを破り、貴重な先制点を奪った。内側でアラバを釣るように走ったペッシーナが黒子として優秀だった。

 追い上げるオーストリアは終盤に盛り返すも、決定的な2点目を得たイタリアに追いつくことはできず。水際まで追い込まれたイタリアだったがなんとか苦戦の末にオーストリアを撃破。敗れはしたが、グループステージから上積みを見せたオーストリアの健闘が光った。

試合結果
イタリア 2-1(EX) オーストリア
ウェンブリー・スタジアム
【得点者】
ITA:95′ キエーザ, 105′ ペッシーナ
AUT:114′ カライジッチ
主審:アンソニー・テイラー

Quarter-final ベルギー戦

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■カウンターを殴り返せるポゼッション

 『事実上の決勝戦』という看板もちらほらあった両チームの対戦。ベスト8に進出したチームのうち、ここまでの試合で全勝しているのはこの2チームだけである。

 立ち上がりから両チームの色はハッキリしていた。保持の時間帯が多かったのはイタリアの方。保持のイタリア、カウンターのベルギーという形で両チームの攻め手は明確だった。イタリアの4-3-3での保持に対してベルギーの3バックはWBが低い位置を取ることを選択。WBは最終ラインに入り横幅を取って守ることでイタリアの保持を撤退気味に受け止める選択をした。

 撤退の選択肢をベルギーが取ることができたのは、ロングカウンターというわかりやすい武器があったから。むしろ、被カウンターにおけるバックスの強度というのはわかりやすいイタリアの課題でもある。ベルギーの撤退+ロングカウンターというのはその課題を十分に突き付けることができる選択だった。

 実際にルカクが右サイドに流れるところから発動したロングカウンターは威力が十分。イタリアが積極的に高い位置を取るイタリアの左サイドの裏に付け込んだカウンターでベルギーはフィニッシュまでたどり着くことができた。

 この構図の試合の場合、保持側が攻めあぐねながらカウンターで沈むパターンはあるあるである。実際にベルギーのカウンターの一撃は重い。ドンナルンマが驚異的なセービングをしていなかったら先制していたいたのはおそらくベルギーの方だっただろう。

 だが、ベルギーがカウンターでイタリアを殴ったように、イタリアもまたベルギーをポゼッションで殴ったのがこの試合だった。ベルギーは3トップを前に残し、後方を5-2という形で受ける。イタリアでまず動いたのはIH。ヴェラッティとバレッラは比較的外側で受けることが多かった。

 イタリアのWGが外に張り、ベルギーのWBをピン止めしているため、こうなるとイタリアのIHに出ていかなくてはいけないのはベルギーのCH。ここを引っ張り出して中央を手薄にすることでイタリアの攻撃は始まる。ここにWGやSBのオーバーラップが絡んでくることでサイドを崩しきる。

 特にストロングだったのは左サイド。カットインできるインシーニェと大外は全て賄えるスピナッツォーラをヴェラッティが操る。おそらくティーレマンスは目が回るほど忙しかったはず。さらには逆サイドに展開された場合にはベルギーのCHはスライドしなければいけない。いくらヴィツェルとティーレマンスが優秀とはいえ、2枚で横幅を賄うのはほぼ無理である。

 イタリアの2得点はいずれも持ち味が出たもの。ポゼッションで高い位置まで持ち込み、即時奪回でのショートカウンターから仕留めたのが1点目。そして、2点目は釣りだしたティーレマンスが空けたスペースにインシーニェがカットインして決めきった。ベルギーは3人前に残すならば、少なくとも殴り合いには勝たねばならなかったが、前半から後手を踏むことになった。

 ベルギーは速攻では破壊力が十分のルカクとデ・ブライネが遅攻では不発。オフザボールの動きが少なく、イタリアをうまく乱すことができない。というわけで暴れ馬のドクが全てを担うことに。狭いスペースでのタッチがよくなってきたエデン・アザールが負傷していなければもう少しやりようはあったかもしれない。

 しかし、ドクの突破からPKで1点返して以降は沈黙したベルギー。ドクの守り方に徐々に慣れてきたディ・ロレンツォや細かく立ち位置を変えながらカバーにいそしむイタリアにはさすがにDNAを感じた。大会随一のハードパンチャーであるベルギーを後半は封じたイタリア。負傷し、大会絶望となったスピナッツォーラの分までてっぺんまで駆け上がりたいところだろう。

試合結果
ベルギー 1-2 イタリア
フースバル・アレナ・ミュンヘン
【得点者】
BEL:45+2‘(PK) ルカク
ITA:31‘ バレッラ, 44’ インシーニェ
主審:スラブコ・ビンチッチ

Semi-final スペイン戦

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■対策を跳ね返した先のドンナルンマで決勝進出

 レビューはこちら。

 より確固たるスタイルで今大会を勝ち上がってきたスペインだったが、この試合ではガッツリイタリア対策を行っていた。最も特徴的だったのはここまで重用してきたモラタを外し、CFにダニ・オルモを起用したことである。

 これによって今までのボール保持でゆったりした展開ではなく、高い位置からの即時奪回と縦に早い攻撃が主体に。オールコートマンツー気味の守備は、キエッリーニとドンナルンマという捨て所を作る。彼らにもたせつつ、他の箇所を塞ぐことでイタリアに停滞感を持たせるのが狙いだった。

 さすがだったのは時間が経つと共にイタリアは慣れ始めたこと。キエッリーニは徐々にボールを持ち運ぶトライをし始めるように。もちろん不得手ではあるタイプの動きだろうが、やってみるのは大事である。これによって同サイドの縦方向にズレができやすくなる。広いスペースでインシーニェが受けることが出来ればカウンターは十分発動することが出来る。

 イタリアはスペインの対策に対して細かい修正を入れるのがうまかった。左サイドの脱出のスキームを作るためにキエッリーニが持ち運びをし始めたのも1つ、降りてスイッチを入れるパスを出せるダニ・オルモにボヌッチが厳しくついていくようになったりなど。大枠の中でも細かい調整で、徐々にスペインペースだった試合をイーブンに持ってくる。

 後半のイタリアはインモービレが躍動。カウンターの運び屋であるインシーニェの先の手順にいるインモービレが機能することで、後半のイタリアは徐々にカウンターの精度を上げていく。そして先制点を得たのはキエーザ。中央で起点を靴ったインモービレのその先を担当していたキエーザが仕上げを行い、先制点を得る。

 すぐさまスペインはモラタを投入。ダニ・オルモとの縦関係を使いDFラインを押し下げる。同点ゴールはこの2人のコンビネーションから。オルモのタメに抜け出したモラタが同点ゴールを決める。

 守備的な交代で早めに攻撃的な選手を下げてしまったイタリアはここから苦しくなった。だが、スペインも延長戦では交代選手がアクセントになり切れずもう一押しが効かない展開に。結局PKまでもつれた試合はドンナルンマがウナイ・シモンに力の差を見せつけるセービングで勝利。

 終盤までしびれる大会のベストバウトを制し、まずはイタリアは決勝トーナメント進出を決めた。

試合結果
スペイン 1-1(PK:2-4) イタリア
ウェンブリー・スタジアム
【得点者】
ESP:80′ モラタ
ITA:60′ キエーザ
主審:フェリックス・ブリヒ

Final イングランド戦

マッチレビュー

大会総括

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■古きを知り、新しきを知るマンチーニ・アズーリ

 優勝おめでとう!新生アズーリは負けなしで大会を駆け抜けて53年ぶり2回目のEURO優勝である。パチパチ。新生といわれるには理由がある。このイタリア代表はCBとGKで守り、ワンチャンスをモノにする代表ではない。ボールを保持し、押し込み、崩して点を獲る代表である。そして、中盤から前の選手と共に堅牢な守備網を敷く。CBやGKはその上に鎮座するものである。

 まず目を引いたのは戦力豊富な中盤。他のポジションに比べて絶対的なレギュラーにはやや悩んだかもしれないがバレッラ、ヴェラッティ、クリスタンテ、ペッセッラ、ロカテッリなどタイプは違えど攻守に汗をかけるタレントたちが揃っている。これだけ数がいれば120分の試合を続けても簡単に質が落ちることはない。

 攻撃の核となったのは左サイド。インシーニェとスピナッツォーラの縦関係は大会随一の破壊力であった。香車型WBで最強のスピナッツォーラの大けがでコンビが解体されてしまったのは残念。それでもインシーニェはエメルソンと共に左サイドで奮闘し続けた。逆サイドのキエーザも試合を重ねることにアタッキングサードにおける決定的な仕事を増やし存在感を高めていった。

    大会全体の開幕戦となったのトルコ戦から強さとしぶとさのハイブリットであれよあれよいう間に決勝を制してしまったようにも見えるが、特に決勝トーナメントは楽な試合が1つもなかった。

    オーストリアには持ち味であるハイプレスを外されて前進を許したし、ベルギーには1つ目のビックチャンスを作られた。ドンナルンマが止めていなければ結果は変わっていたかもしれない。その試合に向けて特殊な策を講じたスペインとイングランドにも手を焼かされた。最後の2戦は特に激戦。どちらのチームにも前半は特に苦戦を強いられた。

 だが、どちらの試合も後半に巻き返すことが出来た。目を見張るのはキエッリーニとボヌッチの足して70歳のCBコンビ。試合が後半に進むにつれ、決定的なDFや得点でチームをピンチから救い、チャンスを得点に結びつけた。特にキエッリーニはボールを押し付けられたスペイン戦でもなんとかしようと持ち運びに奮闘。もちろん下手である。でも、打開するためには何でもやるという姿勢が好感を持てる。

    キエッリーニとボヌッチはイタリアの伝統的な強度を有するDFでありながら、モダンなスタイルにトライし続ける気概を持っているクラック。まさしく、旧来のDFの堅さにモダンな要素を上乗せしたマンチーニ・アズーリの象徴となる存在として優勝に大きく貢献した。とにかく優勝おめでとう!

頑張った人⇒ジャンルイジ・ドンナルンマ
 決定的なミスをしても平気な顔をして手を上げる姿からは、ミランのゴールマウスを16歳で守った男としての風格が漂う。足元こそ現代では並以下だろうが、セービングに関しては疑いの余地なし。特にPK戦においては相手の駆け引きに動じず、ぎりぎりまで動かない状態からの俊敏なセーブ動作で、キッカーに大きなプレッシャーを与えた。2戦連続でPK戦を制した彼は今大会のMVPにふさわしい。

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