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「8は末広がりって英国でも通用する?」〜アーセナル 個人レビュー2020-21 FW編

ラスト!

目次

【FW】

9 アレクサンドル・ラカゼット

■苦労と結果を両立したシーズン

 苦労人は今シーズンも苦労人だった。昔、アルテタはラカゼットについて『いろいろやらせすぎてしまってゴール前でエネルギーがなくなってしまうぜ!』的なことを言っていたように思うが、今季もガンガンゴールより手前の場面で酷使。あなたに収まらないと中央での起点はなくなってしまうという、期待と絶望が背中合わせみたいな状況で一身に相手を背負いながらボールを収め続けた。

   チームが苦しい時ほど、負担が如実に増していくタイプ。そういうほどゴールから遠い仕事が増えるので、結果が出ないと叩かれやすくなるという理不尽の輪廻のような立ち位置の選手である。

 それでも結果を残した方のシーズンではあるだろう。13得点は一昨年や加入初年度と同じ水準。プレータイムが減ったことを加味すれば時間単位の得点はむしろ増えている。昨シーズンはなかなか点が取れずに苦しんでいたアウェイゲームでも得点を重ね、コンスタントな活躍を見せた。

 冬になってからは中央で起点になれるウーデゴールの加入やスミス=ロウの台頭によって組み立ての負担はいくばくかは減少。コンスタントにプレータイムを得ていた3~4月には得点を重ね続けている。

 活躍の仕方には文句のつけようがない。今のアルテタのアーセナルへの適応度も十分。ベンチからの出場になっても(少なくともあからさまな)不満を見せることは少なく、ライバル選手の得点を祝うことが出来る。心の底から残留してほしい選手ではある。

    とはいえ、オーバメヤンとの大型契約を抱えるアーセナルにとって、ラカゼットとの契約を延長するかは非常にシビアな問題である。9番の呪いを解いた万能型ストライカーは来季も赤いシャツのユニフォームを纏っているのだろうか。

12 ウィリアン

■若手とフルハムのフィルターを外してしまうと・・・

 デビュー戦となった開幕戦のフルハム戦では非常に印象的なパフォーマンスだった。中盤と前線のリンクマンを務めあげ、いきなりの2アシスト。なかなかのご挨拶となった。

    しかし、その後のパフォーマンスはパッとせず。徐々に『フルハムが弱かっただけ・・・?』という疑念をファンは持つようになり、最終的には『やっぱりフルハムが弱かっただけやんけ!』という確信を持つところまで進んでいってしまうほど、パフォーマンスは落ち込んだ。何より当のフルハムが成績でばっちり弱いことを証明するのが切ない。

 全体的なスピードは3割引き、ゴールに向かう積極性は半減、そして敵に回した時はあんなにうざったかったはずの守備での献身性は7割減。まるでジェネリック品と見紛うようなパフォーマンスでファンを落胆させ続けた。

 それでも徐々に改善の兆しは終盤に見えた。例えばレスター戦は運ぶ役割でチームを前に押し上げる部分で貢献できていたし、ウェストブロム戦では今季初となる得点を決めることもできた。そういう意味では少しずつフィットは進んでいったように思う。

 だが、このような若手みたいな『いいところ探し』で済ませていいような年齢でもキャリアでもないだろう。実績十分の即戦力として期待してきた新加入選手なのだから、そんなにいくつも悪い部分に目をつぶることはできない。

 どうやら、去就は不透明な様子。契約の際に争点となっていた3年契約の行方はどうなるのだろうか。

14 ピエール=エメリク・オーバメヤン

■来季はリベンジのシーズン

 アーセナルファンならだれもが喜ぶ壮大なスケールでの契約延長発表だった。エミレーツからライブ配信されたオーバメヤンの契約延長の模様にアーセナルファンは歓喜と安堵を上げたのが2020年の夏のこと。

 あの光景から1年たたずして、アーセナルファンの多くはあの契約を重荷に感じることになっている。パフォーマンスは序盤戦から明らかにおかしかった。動き出しが重く、シュートは低調。周囲が見えておらず、独善的なプレーでロストを繰り返す。

 何より違和感があったのはその表情。うまくいっているときはだれよりも喜び、シュート外した時は頭を抱える激しい喜怒哀楽が一切失われてしまったのは気がかりである。終盤戦になってやや改善傾向ではあるが、太陽のようにチームを照らしていたオーバメヤンが点を決めようとチャンスをフイにしようとまるで無関心な様子なのは単純に心配な気持ちになった。

 プライベートな部分でもイマイチ集中できていない様子。ノースロンドンダービーでは遅刻したせいでベンチ行きという振る舞いで試合前の主人公となった。なお、本戦の主人公はラメラがきっちり主人公を勤め上げたおかげでアーセナルが勝利したけども。

 マラリアにかかったりなど、健康面も足を引っ張ってしまった印象だ。試合に出ても使いべりしない丈夫さも持ち味なのだが、出場と欠場を繰り返すシーズンとなりイマイチ波に乗れなかった。

 とはいえ彼の武器はロングスプリントではなく、オフザボールの駆け引きと決定力の部分。このまま老け込んでさび付くよりも円熟味を増してさらに伸びてほしい部分である。自身にあたえられた役職と勝ち取った契約の正当性を改めて示せるか。オーバメヤンにとっては21-22シーズンはリベンジの1年になる。

19 二コラ・ペペ

■フィーバーではなく上積みに

 まるでチームの調子と連動しているかのようなシーズンだった。2年目となった今季も初年度と同じくスローリーなシーズンイン。ボールの流れを止めてしまったり、守備で穴になったりなど。同ポジションでウィリアンを重用したこともあり、出番は非常に限られていた。

 さらにことを悪くしたのは11月のリーズ戦での蛮行による一発退場。うまくいかないフラストレーションからアリオスキに突っかかり、試合をさらに難しくしてしまう。これによりファンからは相当厳しい意見も出た。

 風向きが変わったのは年明け。ウィリアンの調子が上がらないのと入れ替わるように徐々にプレー機会を使うようになると結果もついてくるように。特に際立ったのはELでの活躍。対戦相手に格の違いを見せつけながらチーム内得点王。ふがいない試合においても決定的な働きを見せてチームを牽引した。

 その流れはリーグ戦にも波及。終盤戦は怒涛のパフォーマンスで最終節には10得点に乗せるなど後半のチームのMVP候補の1人といっていいだろう。特に改善が見られたのはゴール前の斜めに入り込む動き。従来は大外に張って1対1を仕掛けるチャンスメイカーの域を出なかったが、周囲との連携で斜めのランに合わせたパスでフィニッシュで絡めるように。

 また、逆サイドのクロスに対しての積極的な飛び込みも生きるようになった。得点増にはオフザボールの動きの改善と周囲との連携の向上が材料として挙げられる。

 WGを育てるのがうまいというのはアルテタの加入前の評判だった。ようやくペペを題材としてその評判が実現しようとしている。今季の活躍が一時のフィーバーで終わらないことを願いたい。今季終盤の怒涛のパフォーマンスが下地となり、来季はさらなる大輪の花を咲かせることをファンは期待しているはずだ。

24 リース・ネルソン

■限られたプレー機会でのインパクトは…

 ウィロックと同じく覚醒が期待されたシーズンだったが、ほぼノーインパクトで1年間を終えてしまった印象。リーグ戦の出場機会は大幅に限られてしまい、はっきり言ってこれでは評価のしようがない状況。

 もっとも、限られた機会での出場時のインパクトを考えると、出場時間がもらえないことは飲み込まざるを得ないパフォーマンスだろう。噂になっているウィリアンの放出が実現したり、ペペのANCによる不在期間などで来季の出番がスライドしてくる可能性もありえなくはないが、現状ではなかなか序列を大きく変えるのは難しい状況ではある。

 長く活躍を待っている選手だけに結果を出してほしいのはやまやまなのだけど。

30 エディ・エンケティア

■武器が定まらずあがらない序列

 シーズンの序盤は上々の滑り出しだった。ウォーミングアップで不仲がささやかれたセバージョスからのアシストを受けて、ウェストハム戦で決勝点を決めた際には今季の躍進に胸を膨らませるファンも多かったはずだ。

 だが、そこからは目立ったパフォーマンスを見せることが出来なかったシーズンに。ラカゼットほど組み立てで貢献できず、オーバメヤンほどはアタッキングサードでの駆け引きでの持ち味はない。どちらもワールドクラスのストライカーを向こうに回しての話なので当たり前といえば当たり前なのだけど。

    それでもなかなかこれという持ち味が出てこないと序列が上がらないのは仕方ないところ。守備はエネルギッシュではあるが、タイミングやプレスのスイッチ役として機能していたわけではないので、武器になるとまでは正直言うのは難しい。スタメン出場したエバートン戦など時折輝くパフォーマンスは見せるのだが、継続して序列を上げるまでには至らなかった。

 ピッチ外の状況においてもバログンが契約延長を行ったことはエンケティア個人で見ればあまり喜ばしくはないことだろう。クラブは契約延長をしたそうだが、あくまで売却前提という噂もあり、本人との交渉にもあまり進展が見られない様子。それにしてもなんと去就が流動的な若手の多いこと。

35 ガブリエル・マルティネッリ

■焦らず課題を潰していきたい

 2季目のシーズンも一定の成果は残したといっていいだろう。ファンから愛されるのは闘志あふれるプレーと献身的な攻守の貢献だ。交代選手がどこか淡白なプレーをしがちなアーセナルにとっては、途中からチームにエネルギーを注入できる貴重な存在として重宝した。

 終盤は左サイドを主戦場としてレギュラーとしての出場機会も大外からのアシストも決めて、徐々にチームにフィットしてきた様子を見せた。細かいプレーや狭い局面でのプレーはあまり得意としておらず、これからの伸びしろにはなるが、終盤戦のプレーには光が見えたように思う。

 小さい負傷が多く、確固たる立場をどうしても確立できないのはもどかしい部分ではある。コンディショニングに細心の注意が必要で、1シーズンを通してまとまったプレー時間を得た時の耐性は未知数だ。

 それでも彼にかかる期待は大きいはず。ブラジル4部からの加入当初は将来への投資とみられていたことを考えれば、ステップアップは順調。通年戦える体を作りながらも今は一つずつの課題をつぶしていけばいい段階だ。期待は大きいが焦らずに見守りたいところである。

   おしまい!

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