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①【グループB】ベネズエラ×エクアドル
■負ったリスクにかみ合う攻守
コロナウイルスにより大量の離脱者が出る苦しい戦いながらも、前節は5-4-1でコロンビア相手になんとか引き分けたベネズエラ。エクアドルというコロンビアよりはやや与しやすい格の相手でもベネズエラの基本線は撤退型の5-4-1でスペースを消すこと。そして時折、機を見て右サイドからゴンサレスとホセ・マルティネスの攻め上がりを見せることでわずかな反撃の糸口を手繰り寄せるやり方である。
当然、エクアドルもコロンビアと同様にこの5-4-1の攻略をしていくことになる。CHのメンデスが落ちることで最終ラインは十分に人数を確保。そして、前線は2トップ+SHに左サイドバックのストゥピニャンが加わり5トップ化する。逆サイドのSBであるアンヘロ・プレシアードはストゥピニャンに比べればバランスをとる役割である。
ただ、相手の5バックにダメージを与えるという点ではコロンビアの方がスキルが上。同サイド攻略もライン間攻略もサイドチェンジもあらゆる局面でスキルがなかなか追いついてこない。それだけにセットプレーで得た先制点は非常に大きかったことだろう。
ビハインドを背負ったベネズエラは後半頭から一転、高い位置からのプレスに打って出る。当然、失点のリスクは高まる。だが、それでも自陣深い位置からの右サイドからのロングカウンターだけではあまりに得点のチャンスが薄いという判断だろう。よりオープンにし、失点のリスクと引き換えに得点のチャンスを得るという判断だ。
同点のシーンはそれが実った形。CHのカスティーロが出ていけるような状況はローラインブロックからのロングカウンターからは決して生まれなかったゴールといえるだろう。
だが、エクアドルもベネズエラのリスクにうまくつけこむ。交代で入ったプラタの独走で再度勝ち越し、ベネズエラを突き放す。
しかし、最後の最後まで死んでいなかったベネズエラ。エルナンデスの同点ゴールはまさしく魂の一撃。最終盤に訪れたエクアドルの決定機も、前節に引き続き絶好調の守護神ファリニェスがセーブ。取ったリスクに対して攻守がかみ合ったベネズエラ。コロンビアに続き、エクアドルからも勝ち点を奪い取って見せた。
試合結果
ベネズエラ 2-2 エクアドル
エスタディオ・ニウトン・サントス
【得点者】
VEN:50′ カスティージョ, 90+1′ エルナンデス
ECU:39′ プレシアード, 70′ プラタ
主審:ロベルト・トバル
②【グループB】コロンビア×ペルー
■堅実なセンターラインが勝利を呼ぶ
前節は勝ち点3を奪えなかったチーム同士の対戦。ベネズエラの5-4-1の壁を崩せなかったコロンビアにとってはどうしても落としたくない一戦だし、ブラジルにぺしゃんこにされたペルーとしては仕切り直しの再スタートを図りたい試合となる。
試合はトランジッションが少ない丁寧な試合となった。攻めの局面においてやや優勢だったのはペルーの方だろうか。コロンビアのプレスをいなしながら左右にボールを振る。後方低い位置からサイドに振りつつ、狙うのはCHコンビにボールを入れること。
ブラジル相手にはさすがに持ち味を出せなかったが、タピアとジョトゥンの両CHは非常に優秀。短いパスでリズムを整えること、薄いサイドにフィードを飛ばすこと、縦にボールを入れること。いずれもこなすことができる。
特にレフティのジョトゥンは非常に印象的だった。16分の先制点のシーンにおいても、彼のミドルがポストをとらえたことがきっかけだった。ミドルも素晴らしかったが、ジョトゥンが無理なくシュートを撃てる位置まで押し上げられているというのもよかった。ペルーのそれ以前のビルドアップがうまくいっている証左であり、それが結実した先制点といっていいだろう。嵐のような派手な攻撃力はないものの、丁寧に前に進む堅実な攻撃をするチームという印象を持った。
コロンビアのメンバー表で目立ったのはSHに起用されているサパタ。普段は間受けが得意なカルドナを置いているこのポジションに、ダイナミズムと推進力のあるサパタを起用する。狙ったのはより早い展開だろう。それでも、試合全体のテンポがそこまで上がらなかったということを踏まえると、コロンビアペースに転がった試合とはいいがたいだろう。
同点ゴールのシーンではボルハのスピードが活きた場面であり、アスリート能力重視の人選が結果を出さなかったわけではない。だが、トップ下に起用されたカルドナは完全に消えてしまった感。はじめから欲しい位置に立たせると受けられないという典型例のように思えた。スピードを生かした突破もブロックが間に合ってしまう場面では効果が薄く、ペルーを切り崩せるシーンは少なかった。
追いつかれたペルーは後半も丁寧な攻め口でチャンスを堅実に作る。縦パスを入れるCH陣も優秀だが、受けるCFも優秀。ラパドゥーラはポストを受けに降りるタイミングとゴール前に張る場面の使い分けが非常に上手。勝ち越しゴールとなるCKはラパドゥーラのポストをきっかけに前進した場面だった。
センターラインを使った地道な前進で終始コロンビアを苦しめたペルー。見事なリスタートを決めて、大会初勝利を飾った。
試合結果
コロンビア 1-2 ペルー
エスタディオ・オリンピコ・ペドロ・ルドビコ
【得点者】
COL:51′(PK) ボルハ
PER:16′ ペーニャ, 64′ ミナ(OG)
主審:エステバン・オストジッチ
③【グループA】ウルグアイ×チリ
■前半は表裏の使い方の設計の差
共にワールドカップ常連国である両チームの好カード。ウルグアイは4-4-2、チリはスリーセンターのイメージが個人的には強いのだが、それをやや外すようなフォーメーションで試合に臨む。
ウルグアイのスタメンは5-2-3という形だろうか。3バックで臨んだチリのWBをひとまず嚙合わせる形。中央でのサイドチェンジを制限し、同サイドに圧縮する。ウルグアイはCHを同サイドに押し寄せて同サイド攻略に挑む。だが、なかなか決め手となる一崩しが刺さらず苦戦する。
一方のチリもサイド攻略狙い。ターゲットとしたのはウルグアイの左サイド。先ほど、ウルグアイはチリのWBとかみ合わせるように布陣を組んだといったが、チリは3-4-1-2のような形で中央は2トップ。しかも、2トップは横移動が多いということでウルグアイは特定のマークマンをつけにくかった。人は余っているが、その分受け渡しの責任感も薄まったウルグアイ。それを利用したチリはバルガスとブレアトンの2トップで最終ラインを引き出す動きを見せる。
チリで特に効いていたのがバルガス。彼が引いて受けることがビニャが空けた最終ラインの穴をフリーランで走りこむという動きを誘発。チリはこのサイドから押し下げる。得点シーンではブレアトンの受けに合わせてバルガスが抜ける形。バルガスにとっては2トップの相棒がパスの出し手ということでやり切る!という心持ちになったのがよかったかもしれない。角度のないところからシュートを突き刺し、先制弾を奪う。
共にサイド攻撃を志したが、裏を使うことを前提に設計されている分、チリの方がウルグアイよりも精度が高かったように見える。後半のウルグアイはその精度の差を割り切ったように見えた。表のスペースからアーリー気味にクロスを上げることによって、高さのないチリの最終ラインに苦しい対応を迫り続ける。
前半は根性でなんとかしていたチリの中盤より前の選手も徐々にサイドまで出ていけなくなるように。豊富な運動量が目立っていたビダルとバルガスの2人が負傷交代したのは偶然ではないかもしれない。チリは5-3-2に変更し、中盤がサイドに出ていきやすいように手当したものの、押し込まれる展開はなかなか覆らない。両者の負傷交代と話は前後するが、押し込まれた状況からCKでウルグアイに同点ゴールを決められる。
ただ、ウルグアイも最後のところの精度が十分ではなかった上、プレス時に前に出ていくことでショートパスでのつなぎが上手いチリの前進を手助けしたように思う。終盤は共に攻めの機会はあったものの、こじ開けることはできず。試合は1-1の痛み分けで終わった。
試合結果
ウルグアイ 1-1 チリ
パンタナル・アリーナ
【得点者】
URU:66′ ビダル(OG)
CHI:26′ バルガス
主審:ラファエル・クラウス
④【グループA】アルゼンチン×パラグアイ
■アグエロ型でもスイッチ役は・・・
前線のメンバーをガラッと変えてパラグアイ戦に臨む決断をしたアルゼンチン。アグエロ、ディ・マリア、ゴメス、パレデスをラウタロ・マルティネス、ゴンサレス、デ・パウル、ロ・チェルソから入れ替えればある程度カラーが変わるのは当然のことといえるだろう。
それにしても大幅にカラーは変わったように思う。特に前線。今までは前でラウタロとゴンサレスが大きく動きながら早い展開を誘発する。今回のゴメスとディ・マリアの2人はむしろ低い位置までボールを引き出して、自らと共にボールを運ぶ。トップに残るアグエロも基準点になるタイプ。つまり、前で走る選手がいない分、後ろが重くなりやすく前線は孤立しやすいという難点を抱えやすい。ゆっくりと確実に後ろからボールを運ぶ必要はある。
パラグアイも当然それをわかっていたのだろう。4-4-2気味に受ける守備を選択したが、なるべく中盤の手前で食い止めるようなプレーが多かった。中盤が戻る時間を稼ぐなら、DFラインから出ていくリスクも取る。とにかくバイタルで前を向かせる状況だけは避けたいところ。
それでもメッシにはライン間で前を向く状況を作られてしまう。大きな展開を頻発するラウタロ型でも、少しずつ前進するアグエロ型でも、スイッチを入れるのはメッシである。この試合でも彼のドリブルで徐々に前に進む。押し込んだ後の崩しはこの日のアルゼンチンのクオリティは高かった。メッシだけでなく、ディ・マリアもタメを作れるため、崩しのバリエーションはラウタロ型より増えた印象だ。
得点シーンにおいてもディ・マリアの緩急に合わせたゴメスの動き出しがきっかけに。2人を引き付けてディ・マリアのカットインのスペースを作ったメッシもさすがである。相手を引き付ける重力がある選手だ。
後半は一転保持の時間が増えたパラグアイ。前節同様跳ね返しまくりのアルゼンチンの守備陣に大分手を焼いていた。唯一可能性があったのはスペースに上げるクロス、そしてホルダーを追い越した選手を使う相手のラインを下げながらのクロス。左SBのアルサメンディアのオーバーラップを使った形は少しはアルゼンチンの重心を脅かせることができていた。
ただし、それでも十分な決定機とは言えず。アルゼンチンが4-3-3にシフトしてからは、中盤で跳ね返しまくりクロスの前に撃退する前半のパラグアイとダブるやり方でパラグアイにプレッシャーをかけるように。
結局最後までパラグアイにおいしい思いをさせなかったアルゼンチン。水際守備の強度は今日も健在。クリーンシートでの勝利を決めた。
試合結果
アルゼンチン 1-0 パラグアイ
マネガリンチャ・スタジアム
【得点者】
ARG:10′ ゴメス
主審:ヘスス・ヴァレンズエラ
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おしまい!