フロンターレでやっている企画をアーセナルに移行してみた。やってみよう!
GK
1 ベルント・レノ
■課題改善傾向も全体的なパフォーマンスは据え置き
毎年、お世話になっている頼れる守護神。もちろん、今年もたくさんお世話になった。レノの課題とされている足元も徐々に改善されており、今までよりはアーセナルも積極的にGKを活用したビルドアップを展開できるようになったシーズンだった。ビルドアップを含めても平均水準が高く、欠点の少ない頼れるGKである。
だが、これまでのシーズンに比べると20-21はやや寂しいパフォーマンスになったのは事実だろう。少し目に付くのは判断を伴うミスの多さ。バーンリー戦のウッドのゴールは保持における税金と取れなくもないが、ウルブス戦のような飛び出しの判断のミスや、エバートン戦のトンネルなどビルドアップ系とは異なる部分でのミスが目につくのは正直気になる部分ではある。
だが、チームが苦しい時に責任を口にするなど人間性は抜群。やや大人しい部分はあるものの、今のアーセナルの経験豊富とは言えないバックラインを支える大きな柱であることは事実。そのため去就は流動的なのは一抹の寂しさを覚える。GKはそもそもどこが手を挙げるんだろう?という状態ではあるが、ドンナルンマが動き出せばミランとかもあるのだろうか。いずれにしても噂されているオナナの加入が実現すれば、慰留するのは難しいだろう。
13 アレックス・ルナールソン
■1つのミスで信頼度が・・・
2ndGKとして加入した今季は今季はELのグループステージ4試合、そしてEFLカップのシティ戦で先発。レノがエリア外でハンドして退場したウルブス戦のリリーフの15分間を除けば、日本で合法に見られない試合ばかり出場していた。
おそらくアルテタの評価を決定づけてしまったのは敗れたシティ戦で見せたキャッチミスだろう。ELも含めて出場した試合のパフォーマンスの満足度が高ければ冬にライアンを獲得することはなかったように思う。厳しいけどGKというポジションを物語っている感じ。
去就についても悩ましい部分が多い。単純に今季のアーセナルはGKの入れ替えの噂が非常に多い。なんなら総とっかえの可能性まであるといえるだろう。現時点ではアーセナルの残留の確率が最も高いのはこのルナールソンである。なんとなくだけど、そんな気はする。
ただ、今のアーセナルは基本的にはHG枠がカツカツのチームなので、そんなスカッドの中で3rdGKに非HG枠の選手を据えるのか?といわれると微妙なところ。どの位置づけにするかの現状では非常に悩ましい選手である。
33 マット・ライアン
■『晴れ舞台』はなしも、安定感はあった
情報ダダ洩れ、値切られ、高値掴まされという移籍市場三重苦でおなじみのアーセナルにとってはライアンの獲得は近年まれにみるファンとメディアを出し抜いた案件となった。何の前触れもなく、突然の獲得発表。まさかのサイレント移籍で冬に電撃加入した。ちなみにめっちゃ老け顔だけど、レノの方が1カ月だけ年上である。
ルナールソンが不安定なパフォーマンスを見せた後だったこともあり、プレミア経験豊富な2ndGKの到来はファンからはだいぶ歓迎された。数カ月前までブライトンの正守護神を務めていたライアンは実際に出場した試合においても安定感のあるセービングをベースに最後方で存在感を見せた。
だが、なんか運に恵まれない試合が多かった。デビュー戦となったアストンビラ戦では開始早々に最終ラインの連係ミスから決定的なピンチを迎えて失点。これでそのまま敗戦となった。次の試合となったフルハム戦では『まぁ・・・確かに当たってはいるけど・・・』なPKを今季のアーセナルファンの宿敵だったクレイグ・ポーソンに獲られてしまい、またしても勝てなかった。
さらに近年2ndGKの晴れ舞台であるFA杯も1月に早々に終了ということで、もう1つのリーグ戦であるニューカッスル戦の勝利がなければそのまま勝ちなしでアーセナルを去るところだった。
借りパクできると思ったのだが、契約が1年残っていたようで帰っていってしまった。シンプルにもう1年いてほしい。
【DF】
2 エクトル・ベジェリン
■オピニオンでは明らかなリーダーだが
強みは見せることが出来たとは思う。例えばエリアに入り込む際のオフザボールの動きは支配的なサッカーを体現するのに必要な要素。あるいは速い攻撃における後方からのサポートの速さも上手で攻撃に厚みを加えることもできていた。ビルドアップでは1列前にボールを引き出す役割を最もうまくこなしていたのは彼だと思う。
ただ、それを差し引いても目をつぶれないほど攻守でノッキングを起こしていたのも確かではある。特に守備の部分。カウンターの対応の軽さ、対人の脆さ、そして空中戦の弱さなど相手の守備の狙い目となってしまっていたことがまずは大きい。
加えて、攻撃面でもクロスの精度は物足りない。レノと同じくシーズン終盤は改善した部分はあるが、サイドからのクロスが主体の今のアーセナルにとっては武器といえる水準にはなっていないのが現状だ。
オピニオンリーダーとしての立ち位置としての信頼度は相変わらずピカイチ。SL騒動の際のアクションもファンに寄り添ったものだったし、アーセナルの選手であることがどういうことかを最も深く理解している選手なのではないのかな?と思っている。
ただ、プレーがついてこない。サッカー選手である以上、ピッチで存在感を出してこそのオピニオンリーダーという部分はあるので、そこは難しい。ただ、ベジェリンはそういう部分で稀有な選手。カルチャーを体現できる選手である。
というわけで退団の噂もちらほらと。正直、自分はベジェリンが好きなので寂しいが、ここでお別れとなったらそれは仕方ないのだろう。来季はどこでどのユニフォームに袖を通しているかわからないが、どのユニを纏おうと活躍を願うばかりだ。
3 キーラン・ティアニー
■バックラインの大きな武器ではあるが
キャプテンシー不足というアーセナルの課題は自分がファンになった2000年代終盤から長いこと言われ続けている。今のアーセナルのキャプテンシーがどこにあるか?と問われれば、自分は『両サイドバック』と答えるだろう。右がベジェリンならば、左はティアニーである。
5バックなら3バックの左、そしてWB。4バックならSBとシステムに寄らずアーセナルの左後方の1stチョイスは彼の物である。今季も気合の入った半袖とオーバーラップでチームに気合を注入し続けた。アーセナルにとって欠かせない選手の1人なのは間違いない。返す返す、彼が万全の状態でビジャレアルとの一戦を迎えられなかったのが悔やまれる。
ただ、パフォーマンスではややチームに引っ張られた部分も否めない。どちらかというとタスクを限定することで持ち味を発揮するタイプ。機を見たオーバーラップからの大外、もしくはそれよりやや内側に入ってクロスを上げることでチャンスメイクが出来る選手である。
一方で細かいパス交換やポジショニングの妙で勝負するわけではない。なので、周りが彼を使うタイプではないときは持ち味が消えてしまう時もある。ビルドアップでの機能不全を解消する心配りをするタイプでもない。したがって、ティアニーに気持ちよくプレーさせる土壌をチーム側が整えられなかった部分も大きい。
加えて、クロスの精度も今季はやや物足りなかったか。もちろん、どんぐりの背比べ感のある右のクロスよりは明らかにクオリティは上だが、決定的な働きの割合はもう少し挙げたいところである。
そして最も気になるのは加入前からの懸念だった負傷の多さ。正直、今季くらい使い詰めてしまうとどう考えても明らかに怪我するので、プレータイム管理である程度予防を考えるしかないと思う。今のチームの大きな持ち味の1つなのは間違いない。サイド攻撃にどう入れ込んでいくかをもう少し突き詰めたいのと、どうにかもう使う側が少し負荷を軽くして来季に臨みたい。
6 ガブリエウ・マガリャンイス
■素質は見せたがトーンダウンは否めない
開幕戦でスタメンデビュー&得点を決めるなど、チームにフィットするスピードは早かった。空中戦の強さとスピードを兼ね備えており、その武器はプレミアで通用することを序盤戦から証明し続けた。
だが、シーズンが進行していくと徐々にパフォーマンスはトーンダウン。段々と粗が見えるようになってくる。攻撃においてはノープレッシャーなら縦パスを刺すこともできる。だが、プレスをかけられると途端にできることが減ってしまうのが難点。同サイドでのビルドアップの連携も向上せず、なんとなく外に出しては詰まらせるの繰り返し。時にはハイプレスに完全に屈してしまうこともあった。
守備面ではプレーのキャンセルが効かない部分が大きかった。動けてしまう分、止まれずにファウルを犯してしまうことがしばしば。その結果、退場やPKを招いてしまうことも。出ていく部分は持ち味なので、あまりここに鎖をかけたくはないところ。だが、終盤戦で気にならなかったかといえばうそになってしまう。
どこまで影響しているかはわからないが、パフォーマンスの低下とCovid-19感染のタイミングが比較的はリンクする。仮に病気によるパフォーマンスの低下を引き起こしているようならば、これはもうどうしようもないところ。特にボールハントの部分は、自分が思っているよりも一歩が遅いことに起因する可能性はある。
ポテンシャルは確かだ。クオリティも十分、それだけに明確な課題を潰し、来季はDFリーダーとして君臨し、通年で絶対的なパフォーマンスを見せてほしい。
15 エインスリー・メイトランド=ナイルズ
■レンタルでプレータイムを確保も課題は残存
元々、シーズン前から退団報道は出ていた記憶がある。それをアルテタが慰留。今季もSBを両サイドに駆け回ってもらおう!という算段だったのだろう。しかし、本人はCHとしてのプレーを希望しているという話もあってか、冬にレンタルでウェストブロムに旅立って行った。
そのウェストブロムでは本人が希望していたとされるCH、とりわけIHにてプレーをすることが多かった。確かにレンタル先ではプレータイムを伸ばすという目的は遂行できた。シーズンの最後の最後まで後半戦の主力としてコンスタントにスタメンに名を連ね続けていた。
一方でアーセナルで化けるための準備をすることが出来たか?といわれると難しいところ。アーセナルの中盤にごたわるのだとしたらボールスキルがもう少し欲しいところだろう。相変わらず細かいところの粗が目立ってしまっていた。その上、その細かいところの改善を促すサッカーをウェストブロムはそもそも行っていない。
本人のプレータイム、希望ポジションを考えるとアーセナルで飛躍するイメージがどうしても湧いてこない。ただ、この年齢の選手をいつまでも便利屋で置いておくのは難しいと思う。現実的に引き留めは困難だろう。
16 ロブ・ホールディング
■成長がスケールを決める
DF陣の中では最多のプレータイムを記録。今季最もアーセナルの最終ラインで試合に出た選手である。まず、大きな怪我をせずにシーズンを終えられたというのは良かった。大怪我をして以降は割と丈夫な印象がある。
で、肝心のプレーの内容なのだが、単位は取れたというのが妥当な評価ではないだろうか。昨シーズン同様、彼にできることはやっていた。引いた時のクロスの跳ね返しなど、相手がラインを揺さぶってこないとき、そしてエリア内にタスクが限定されるときは彼は一流のDFである。
だが一方でサイドに引っ張り出される状況や、ポジションを取り直す必要が出てきたりなど動かされてしまうと一気に弱点を露呈してしまう。
ボール運びはそこそこ。時には持ち上がって縦に刺すチャレンジをしたり、サイドチェンジにトライしたりなど何かをしようとはしていた。
したがって、DFリーダーとして1人立ちした!とは言えないが、全体的に頑張っていたとはいえる。ただ、正直なところ、頑張っていたで済ませてしまうとこのチームがこの順位に収束してしまうのは納得。みんなできることをやりました!で終わらせていたら、ビルドアップもこの程度になってしまうし、これくらいは失点してしまうだろうなと思う。彼も彼以外のDFも『できることをやる』から外に踏み出して成長しなくてはいけない時期に来ている。
できること以外ももっとトライする。できることはもっと精度を高める。CBは来季の補強でお金をかけられるポジションではないと思う。現有戦力が、とりわけホールティングとガブリエウがどこまで手を広げられるかでポテンシャルが決まってくるはず。スケールの伸びしろを背負う1年として今年こそはDFリーダーとして本格化を期待したいところだ。
17 セドリック・ソアレス
■懸念が膨らむ終盤戦
4年契約兄弟の兄貴の方。正直、この契約期間は契約を結んだその日から失敗ではないのか?といい続けてきた。その懸念がシーズン終盤に形になってしまった印象だ。
中盤戦までは悪くはなかった。絶対的なレギュラーでこそないものの、左右のバックアップをそつなくこなしている印象はあった。しかし、主戦場となる右サイドではレギュラーだったベジェリンと同じくクロスの精度の低さを露呈。守備面での対人スキルも大きな差がないことを踏まえると、アタッキングサードにおける侵入がうまいベジェリンを優先するのは理解できる。
したがって、ここで勝負できる!という色が薄いのがセドリックの悩みといえる。もちろん、左サイドでのマルチな部分はある程度は評価ができる。特にミドルゾーンで内に切り込んで逆サイドに展開するパスはティアニーのレパートリーにはない部分である。セドリックの一番の武器を聞かれたら自分ならばここを挙げる。
だが、左サイドでは組み立てにおける貢献が割引。ビルドアップでも詰まるし、大外で押し下げて深さを取る動きもできない。
その結果、終盤では全く出番が回ってこなくなってしまった。山場でティアニーが離脱するも、代役で使われたのはジャカ。逆サイドではチェンバースとベジェリンがプレータイムを分け合い、アピールするチャンスすらもらえなかった。
仮にコンディションを落としていたのだとしたら評価が変わる可能性もあるが、戦術的な判断なのだとしたらここから先に好転する未来は想像しにくい。今年で30歳。残り契約はあと3年ある。頑張って活躍してくださいという以外にかける言葉が出てこない。
21 カラム・チェンバース
■クロッサーとしての可能性は感じた
今季のリーグ戦初出場は27節まで待たねばならなかった。対空性能を買われてSBで起用されたバーンリー戦でのパフォーマンスが及第点とされたのだろう。そこからはベジェリンとプレータイムを半分に割るようになった。どちらかといえばプレータイムはチェンバースの方が多かったので、レギュラーはこちらといっても差し支えはないだろう。
思わぬ才能を見せたのはアタッキングサードにおける攻撃の質のところ。とりわけクロスの精度は他のライバルよりも2,3枚は上手。球質も含めて、これまでのSBよりも得点が期待できるクロッサーとしての片鱗を見せたことがレギュラーの確保に大きくつながったように思う。
だが、当然課題もある。というかなければ27節まで出番がないはずがない。1つはビルドアップの貢献度。ラインを越えるための手助けはほとんどできない。ボールを敵陣に運ぶということに関しては、ほかの選手が時間を作ってくれるのを待つ以外の選択肢がないのが現状だ。少なくともアルテタのやり方における最終ラインのビルドアップの貢献度には達していないように思う。
加えて守備の部分でも不安はある。特に相手と正対したシチュエーションではファウルがどうしてもかさみやすい、対空性能は申し分ないが、平面でのデュエルには不安がある。
HG枠を考えても残留の公算は強い。ホールディングと同じく、スケールアップをして新しい引き出しを開ける必要がある選手だと思う。
22 パブロ・マリ
■持ち味を強みにする必要がある
4年契約兄弟の弟。スピード不足は明らかだが、カバーリングの読みの良さとミドルキックを備える左足というわかりやすい武器がある。ガブリエウの離脱もあり、左利きを左CBに置きたいアルテタとしては重宝する部分はあっただろう。セドリックよりはコンスタントにプレーをすることが出来ていた。
だが、中身に関しては正直厳しい部分を指摘せざるを得ない。スピードがないのは加入前から明らかにわかっていたことなので目をつぶるとしても、試合の中で明らかに集中が切れる瞬間がある。FWだったら少しサボっても一瞬で仕事をすればいいのだろう。だが、マリはDF。しかも持ち味がカバーリングとビルドアップなのだとしたら常に周りに気を遣わなければいけないはず。
なので、この欠点とマリのそもそもの持ち味のかけ合わせがすこぶる悪い。カバーリングに入らなかったり、ビルドアップでパスを出した後に受け直しのパスコースを作らなかったりなど、本来の持ち味に蓋をしてしまっている印象だ。潜在的に絡んでいる失点があまりにも多い。
スピードが足りていないというハンデは受け入れるとして、持ち味を90分出すための準備をきちんと行うことが彼の目下の課題。90分間できている試合もあるだけにシンプルにもったいない。ガブリエウに比べれば左足の精度はいいだけに、まずは武器を武器として生かすための準備をして試合に臨んでほしい。
23 ダビド・ルイス
■愛に溢れる別れ
ビルドアップに特徴のある選手の少ないバックラインにおいて、彼のロングフィードはその空気を一変させる大きな武器である。特に右サイドでの起用時は積極的な持ち上がりが多く見られ、長短のパスの起点として優秀な働きを見せていた。
確かに競り合いに一歩遅れたり、先に体を入れられた相手をひっかけてしまうシーンが増えてきたのは間違いない。ただ、それに目をつぶってでも多彩なキックと持ち上がりによる攻撃参加は魅力的。特にビルドアップに詰まるシーンが多かった終盤戦には、怪我で離脱した彼を恋しくなったファンが数多くいたことだろう。
それだけに契約を更新できなかったのは残念だ。もっとも、契約を見送るフロントの判断は理解できる部分もある。明らかに週2試合のペースでプレーするのはもう難しい体になっている。強行して連続起用すれば怪我に直面することは避けられない。
それならばむしろ、彼を恋しい気持ちで見送ることが出来ることを喜ぶべきかもしれない。近年はチーム成績もあり、チームとの関係が悪化して去る選手も少なくない。彼のスピーチがロッカールームで拍手を呼んだり、SNSで別れを惜しむ声が数多く上がる状況で、次のステップに進むことが出来るのは本人にとってうれしいことであるはずだ。
自分は昔から彼がお気に入りの選手だった。喜びも悲しみも常にまっすぐに表現していて、フットボールをプレーすることで湧き上がる感情を全て伝えてくれたように思う。まだチェルシー所属だった時代、チームメイトのラミレスが子供を連れてきた時に共にサッカーに興じ、同僚の子供がゴールを決めた時に自分のことのように喜ぶ姿に自分は心を掴まれた。
恐らく、どこでも愛される男だろう。熱い性格ゆえに衝突するときもあるかもしれないが、きっと分かり合えるはずだ。アーセナルとはここでお別れになるが、違うチームでもサッカーする喜びにあふれるプレーで自分を魅了してくれることを楽しみに再会の日を待ちたい。
つづく!