MENU
カテゴリー

「8は末広がりって英国でも通用する?」〜アーセナル 個人レビュー2020-21 MF編

続きだ!!

https://note.com/seko_gunners/n/n1470980618d9

目次

【MF】

7 ブカヨ・サカ

■課題と失速はあれど年間MVPの孝行息子

 いわずと知れた孝行息子は今年も奮闘。シーズンを通してみれば彼がMVPという人も多いだろう。終盤戦はトーンダウンしたものの、通年での安定感はチームで一番だった。特にほかの攻撃陣が死んでいた前半戦は獅子奮迅の活躍。アーセナルファンの唯一の希望として躍動。かつてのウィルシャーのように、チームを背負って立つ活躍だった。

 クロスやドリブルなどアタッキングサードにおける精度の高さも魅力。昨季と異なり1列前での起用が中心だったことで、長所であるボールを引き出す部分の良さが多く見られたこともとてもよかった。初めに見た時の感想は『ボールを引き出すの上手だな』だったのでうれしい。

 あえて欠点を述べるのならば数字に残る活躍があまり多くなかったことだろうか。もちろん、チーム自体が不調に陥った影響は大きいとはいえ、ゴールとアシストを足して1桁というのは若干寂しい。特にフィニッシュワークは大きな課題といっていいだろう。勝敗を分けるシチュエーションでのシュート失敗はやや目立っていた。

 もちろん、仕上げの部分に言及するのはそれ以前のところで他の選手よりもはるかに出来がいいから。丈夫さも含めて今後も中心に据えられる選手であることは間違いない。あまり闘志を前面に押し出すタイプではないので、そこをカバーできる選手がチームの顔となれればなおよい。プレー面では中心でも、責任を背負わせまくることには慎重になっていいと思う。まだ若いのだし。

   彼を使う方に関しても注文はある。願わくばバックスで幅を取らせるなどの便利屋的な起用を避けて、連携を熟成させる方向に舵を切りたいところ。特にシェフィールド・ユナイテッド戦で見られたペペの右サイドと組み合わせたトップ下起用あたりは来季もっと見たい組み合わせである。

 ユーロでは怪我無く頑張ってきてね。

8 ダニ・セバージョス

■リスクと見合わない選手に…

 19-20シーズンの終盤は出色の出来だった。長いレンジのパスを活かした展開力と体を張った守備でタックルを決める攻守両面の活躍でファンの心を掴んだ。カソルラやロシツキーのように汗かくテクニシャンが大好きなアーセナルファンが彼に惚れこむのも無理はなかった。彼の残留こそ大きな補強と遅れながらもレンタル延長が決まった時は喜んだものである。

 あれから1年。ローン契約の選手とは思えないくらい感情を前面に出す彼を愛するファンの気持ちは変わらないかもしれない。だが、戦力としての彼を見た時に状況は変わってしまったといわざるを得ない。来季のセバージョスがアーセナルにいないことはシーズン終盤にほ多くの人が覚悟していたことだろう。

 残念だったのは昨季終盤のフィーバーが明らかに一過性で終わってしまったことだ。低い位置からの大きな展開は鳴りを潜め、高い位置までプレスに出ていっては自陣に穴をあけてしまう。CHとしては守備力が水準に達していないことは明らか。象徴的なのがELのノックアウトラウンド。ミスに空転するプレスと非保持における穴であることをはっきりと露呈してしまった。

   その上、攻撃でも上積みをもたらすことが出来ず、取るリスクに対して見合うリターンが得られない選手になってしまった。

 正直言えば昨シーズンの終盤以外は目立った活躍が出来なかった2年間だと思う。それでもこれだけ愛されているのは異例のことだし、アーセナルファンの多くが彼の新天地での活躍を祈っているだろう。お元気で!

11 マルティン・ウーデゴール

■手当てではなく『グレードアップ』

 冬のレンタルといえばアーセナルにとっては苦い思い出の方が多いだろう。近年唯一のヒットであるオーバメヤンを除けば、多くの戦力が空振りに終わった。活躍できないだけならまだしも負傷で棒に振ることの多いこと。デニス・スアレスはほぼいなかったようなものだし、シェルストレームはFA杯でPK戦のPKをたった一本成功させたことがアーセナルでの最大の功績(無論、優勝に貢献したともいえる)である。

 そんな中で今年の冬にやってきたウーデゴールは格が違ったといえるだろう。プレッシャーのかかる高い位置で受けることでラカゼットにかかっていた負担を軽減し、時には低い位置で受けることでボールを前進させる。アタッキングサードにおいては狭い位置でのプレスも苦にせず。左足のミドルも備えており得点能力も上乗せした。

    冬のレンタル補強が手当てではなく明らかなグレードアップになった例はウーデゴール以外にはあまり思いつかない。強いて懸念を挙げるとすれば、やや球離れが悪く全体が押し下げられている時間帯においてはカウンターの狩りどころになるくらい。初挑戦となるプレミアの舞台と低迷するアーセナルという難しい環境でのチャレンジとなったが、素晴らしい適応能力を見せてくれた。

 もちろん、アーセナルとしては来季も戦力として迎えたい選手ではあるが、安くはない移籍金が立ちはだかる上に、レンタル元のレアルマドリーにおいての監督交代でクラブ内での序列が大幅に変わる可能性もある。過度な期待をせず、吉報を待つこととするしかない。

18 トーマス・パーティ

■ベルは自ら鳴らす

 アーセナルの夏のデッドラインデーはまさに狂喜乱舞のお祭りだった。大本命と目されたアウアーを取り逃がし、途方に暮れるアーセナルファンに舞い降りた大物。最終日のビックディールは一貫してトーマス獲得を主張し続けていたThe AFC Bellという謎のソースが一夜にして信憑性の高いアカウントになりあがった瞬間でもあった。

 だが、その到着時の盛り上がりと比べるとやや寂しいシーズンになってしまったのは確かだろう。ポグバと真っ向から渡り合ったマンチェスター・ユナイテッド戦ではオールド・トラフォードでの久々の勝利に大きく貢献したが、この序盤の一戦がおそらく今シーズンのハイライトだった。

   時折見せる1つ飛ばしのパスやノーステップでのサイドチェンジなどワールドクラスの片鱗を感じさせる部分も見られた。一方で、簡単なパスミスで被カウンターの起点になったり、一向に枠に飛ばないミドルなどファンをやきもきさせる部分もあった。

 何より驚いたのは怪我の多さ。アトレティコ時代はほぼ怪我しなかったんじゃなかったのかよ。とツッコミを入れたくなるくらい復帰と離脱を繰り返す1年。アルテタに高体連感がほとばしっていたノースロンドンダービーを見ると復帰を急かした可能性もあるけども。今季のアーセナルで数少ない負傷に泣かされた選手になってしまった。

 ベルのお告げと共に文字通り『鳴り物入り』で加入したトーマスだが、まだそのインパクトを上回ることができていない。デッドラインデーの喧騒以上のド派手なベルを今後鳴らすことが出来るかはトーマス本人にかかっている部分だ。

25 モハメド・エルネニー

■夢の劇場の再現はなるか

 放出候補から一転、まさかの開幕戦で先発に抜擢されると序盤戦は絶好調。フィットに苦しむ他のCHを尻目にレギュラーの座を掴むと、トーマスと共にオールド・トラフォードで躍動。久しぶりの勝利の立役者となったことで、半ば戦力外扱いだった自らへの視線を変えて見せた。

 なによりもポジティブだったのはボールを受けた後の前を向く積極性の部分。これまでのエルネニーはプレッシャーが早い相手には何よりもバックパスを優先してしまい、中盤から前に進むルートを切り拓くことが出来なかった。それだけに対面の相手を交わして時間を作り、縦パスでそれを前に送るマンチェスター・ユナイテッド戦での活躍は衝撃的だった。

 しかし、徐々にパフォーマンスはトーンダウン。ビルドアップにおける積極性やトーマスやジャカと比べるとパスレンジやスピードが足りないなど、どうしてもスケール不足に悩まされる部分は否めなかった。

 それでも終盤に守備でチームを引き締めるために走り回ることが出来るのはたくましかったし、攻撃時におけるフリーランの精度は向上したシーズン。エルネニーのフリーランがスペースを作り、得点につながることもあったほどだ。

 もちろん、コンスタントな活躍や少ない出場時間できっちり仕事をすることも大事なことである。ただ個人的には夢の劇場、オールド・トラフォードでアーセナルファンに見せたあの日のエルネニーをもう一度見てみたいところ。潤滑油ではなくチームの中心として再び輝くことはできるだろうか。

28 ジョー・ウィロック

■プチブレイクも懸念が解消されたわけではない

 今年こそは飛躍のシーズン!と期待する人も多かったシーズン前だが、またしてもアーセナルにおいてはブレイクのシーズンとはならなかった。

 基本的には帯に短し襷に長しというのが苦戦の理由だろう。トップ下としては狭いスペースでのボールスキルに不安。ボールを受けてもスラローム状のドリブルで敵も味方も『どこに向かうんだ?』と見守るだけのシュールなシーンが誕生していた。

 かといってCHとしては守備の強度と組み立て能力に不満がある。したがって今季のアーセナルの基本布陣となった4-2-3-1で置き所がないというのが正直なところだ。したがって、IH兼シャドーという1.5人分のタスクをぶん投げて、試合のクローザーとして使うのが現状では最適な起用法といえるだろう。ただ、この役割の必要性が出てくるのは今のアーセナルでは限定的である。

 というわけで冬にニューカッスルにレンタル移籍。ここで終盤で必ずゴールを決めるワンダーボーイとしてプチブレイクを果たす。得点力という点でいえばアーセナルの中盤に足りない部分なので非常に魅力的なのだが、ニューカッスルのような割り切った自由な役割を与えられる余裕はアーセナルにはないし、レンタル前の懸念が解決したから調子を上げたわけではないというのも難しい。

 来季のアーセナルに居場所があるかどうかは微妙なところ。シーズン後半で挙げた市場価値を見て売り時と判断する人もいれば、その得点力をアーセナルに生かしてほしいと考えるファンもいるだろう。ウィロックの未来はアーセナルにあるのだろうか。

32 エミール・スミス=ロウ

■唯一無二の救世主

 2020年末にアーセナルに現れた救世主。未勝利試合が続く中、大幅にメンバーを入れ替えたビックロンドンダービーでのいきなりのスタメン抜擢を受けると、その試合で大活躍。瞬く間にアーセナルファンの心を掴み、一気に序列を上げた。

 チームが上向きになった要因は彼1人だけでなく、明らかにモチベーションを取り戻したチーム全体の動きが格段に良くなったことが第一ではある。とはいえ、スミス=ロウのスキルは別格であり、シーズン後半のアーセナルを牽引した1人といっていいだろう。

 能力において特筆すべき部分は受け手としても出し手としても高い水準でプレーができる点。特に出した後に再び受け手として一歩先に向かうポジションを取る動きに長けており、ボールをゴールに方向づけるプレーがうまい。例えば、左サイドで起用された際は、今季は不調だったオーバメヤンが昨季得意としていた旋回で斜め方向に進む動きが出来ていた。

 周りの選手の動きを活かすのもうまく、マッチアップ相手のプレー傾向や選択を利用して逆を突くような動きをするのもうまい。攻撃ではパスもドリブルも得意としており、万能型で穴が少ない選手といえる。

 やや気になるのは得点力、そして怪我の耐性の低さだろう。使い詰めすると負傷のリスクは高まるタイプなうえに、復帰後のアイドリングに少し時間がかかる印象だ。フルでトップチームに帯同するのは来季が初めてになる。シーズンを通してのコンディションを本人やチームがどこまでできるかがさらなる飛躍のカギとなる。

 いろいろつらつら書いてきたが、現状のアーセナルにとって唯一無二の存在であることに疑いの余地はなし。21-22はさらなる飛躍のシーズンとしてアーセナルをガンガン引っ張っていってもらいたい。

34 グラニト・ジャカ

■鉄人の心の中は

 アーセナルを代表する鉄人は今年も健在だった。加入が遅くなり出遅れたセバージョスやトーマス、ごねるトレイラなど中盤の人が揃わなかった序盤からスタメンを張り続け、今年も無事に30試合以上出場。時にはSBまでやらされることもあり、なかなかの便利屋ぶりを発揮しなきゃいけないシーズンとなった。

 バーンリー戦では癇癪を起してしまったものの、シーズンを通してのパフォーマンスの安定感はチームでも随一。昨シーズンに比べてもパフォーマンスの波は少なく、チームの中核を担うことが出来たシーズンといっていいだろう。

 チームとしての形が出来ない組み立てにおいてはその左足は大きな武器。長いレンジを使えるキックでルイスと共に深い位置からのゲームメイクに大いに貢献した。

また、特筆すべきはそのパスのスピード。アーセナルの全体的なパスのスピードが遅さは特にビックマッチにおいて顕著だ。チーム全体のパススピードがジャカを水準としたものになれば、攻撃もいくばくかスムーズになるはずである。そういう意味では最低限はこれくらい!というボーダーを示した選手でもあった。

 報道から察するに、本人はアーセナルを離れることを希望しているよう。その真意は図りかねるが、残念ながらアーセナルファンとしては思い当たる節がないといっては嘘になるだろう。常々主張していた通り、本人だけでなく家族にも向けられた数多くの中傷に悩んでいたことはここに改めて書くまでもないことだ。それが移籍を志望する原因かは全くわからないけども。

 彼にとって、アーセナルは今どのような存在なのだろうか。アーセナルとジャカの関係が終わってしまったとしても、自分の胸にジャカへの思いはおそらく残ることになるはず。ジャカにとってもアーセナルとそのファンがポジティブな意味で心に残ってくれればいいと祈るばかりである。

つづく!

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次