第2節前半はこちら。
第2節後半はこちら。
①【グループA】イタリア×ウェールズ
■GSで底は見せず、無失点でGS通過
すでに突破を決めているイタリアが第3節に迎えたのはグループステージ通過をまだ決めることが出来ていないウェールズ。片や半ば消化試合、片や運命の決戦となったアンバランスな一戦だった。
保持の主導権を握ったのはイタリア。3試合連続先発となったドンナルンマ、ボヌッチとジョルジーニョを除き大幅にメンバーを入れ替えたこともあり、まずは確かめるようにボールを保持をする。対するウェールズは5-4-1気味。WGが降りることは許容。トップのプレスラインは撤退するというやや慎重な入りとなった。
ウェールズは突破がかかっているのに!と思うかもしれないが、彼らが2位から落ちるにはライバルのスイスの多くの得点での勝利とウェールズの多くの失点での敗北が揃うことが必要。まずは大量失点をつぶすために撤退するという選択も悪くはないだろう。ただ、それにしてもラインは下げすぎ。ウェールズは1つ処理をミスれば即イタリアの得点になる位置まで撤退。これはこれでリスクだと思う。
イタリアはウェールズのWBの前のスペースから前進すると、そこからアーリー気味に逆サイドにクロスを刺す。左から作ることに重点を置いていたことは、逆サイドのIHであるペッシーナが出張にやってくることからもうかがうことが出来る。押し込み続けるイタリアは39分にセットプレーから先制。ヴェラッティのクロスをペッシーナが押し込み先手を取った。
後半のウェールズはプレスを基軸としたラインアップを試みる。イタリアをこれに対して、プレス回避能力の高さを見せて対抗。ジョルジーニョの交わし方とキエーザのボールの引き出し方が特に際立った。ウェールズのプレスを回避するとイタリアは中央をするする進みながら追加点を狙う。
プレスをかわされたウェールズにとってさらなる誤算だったのが52分のアンパドゥの退場。ベルナルデスキをがっちり踏みつけており、ウェールズは苦境に立たされることになる。10人でも全く反撃の機会を得られなかったわけではないウェールズだったが、少なくとも積極的なプレスは店じまい。
イタリアが終盤にトーンダウンしたことと、おそらく逐一確認していたであろう他会場の結果的に無理することはない!と判断したこともあり、試合はそのまま終了。誤算が重なりつつも辛くも2位でしのいだウェールズとGSでは底を見せなかったイタリア。表情は対照的ながらもそろって突破を決めた。
試合結果
イタリア 1-0 ウェールズ
スタディオ・オリンピコ
【得点者】
ITA:39′ ペッシーナ
主審:オビデウ・ハツェガン
②【グループA】スイス×トルコ
■立ち上がりからの殴り合いの代償は・・・
最終節における両チームの狙いは同じ。なるべく多くの得点を奪って相手に勝つことである。2位通過を狙うスイスはウェールズを得失点差で逆転する必要があるし、3位通過を狙うトルコは勝ち点3での得失点差をなるべくプラスに傾けておきたいという思惑がある。
したがって、この試合がオープンになることに両チームとも全く抵抗はなかったといっていいだろう。試合が立ち上がって早々に仕掛け合いを見せる。左サイドに人を集め打開を狙うトルコをあざ笑うかのように先制点を決めたのはスイス。この大会はここまで沈黙を続けてきたセフェロヴィッチが豪快なミドルを突きさし、一歩前に出る。
トルコの攻めは左右対称。左の攻めはCFのユルマズを中心に人を集めるのに対して、逆サイドはウンデルに広いスペース勝負での打開を託す。右サイドに人が集まっても、あまり互いの様子がわからなかった動きをしていたので、このアプローチは正しかったように思う。
対するスイスも押し上げは左サイドから。今日は3バックの左に入ったリカルド・ロドリゲス。攻撃時にはSB可視、同サイドのツバーの攻撃参加を促す。ツバーはほぼWGとして前線を駆け上がっていた。
狙いはサイドだけでなく中央も。トルコのアンカー脇に縦パスを刺すのも前進の手段の1つ。今大会、ここまで厳しいマークを受けてきたジャカやフロイラーはやたらオープンになった一戦でようやく機能したというのはなかなか皮肉な感じである。ってことはより堅い展開が予想されるノックアウトラウンドではまた機能しなくなりそうということでもあるので。
前半のうちに追加点を得て一気にまくしたてるスイス。トルコは後半に1点を返すも、スイスに3点目を決められて試合は終わってしまった感。スイッチを勝手に切るのはトルコの終盤の悪い癖である。攻守に動きなおすことをやめてしまい、サボりまくってしまうモードに突入する。一方のスイスも90分間殴れるガソリンはなし。終盤は偶発的にもたらされた好機にそれぞれが取り組むという最終ラウンドのボクサーのような展開となった。
終盤はスコアは動かず、勝ったのはスイス。他グループの結果次第での3位通過に望みを託すことに。トルコは3戦全敗での敗退となった。
試合結果
スイス 3-1 トルコ
バクー・オリンピック・スタジアム
【得点者】
SWI:6′ セフェロヴィッチ, 26′ 68′ シャキリ
TUR:62′ カフヴェジ
主審:スラブコ・ビンチッチ
③【グループB】フィンランド×ベルギー
■埋められなかったデ・ブライネとのギャップ
すでに突破を決めているベルギーに挑むのは引き分け以上でグループステージの突破が見えてくるフィンランド。ハムデン・パークで起こした奇跡をロシアの地でベルギー相手に起こす必要がある。
当然というべきか試合の主導権を握ったのはベルギー。ポゼッションの局面では悠々とフィンランドを押し込み、じっくりを腰を据えて攻略する構えである。保持の局面ではフィンランドの5-3-2のサイドから攻め込む形。ボールサイドにCH、WB、WG、そしてCFのルカクの4枚が揃うことでサイドを打開するパス交換を行う。ルカクはボールサイドに顔を出す担当。押し込んだ局面では中央に留まるよりもサイドに流れることが多かった。
同サイド攻略、詰まったらサイドチェンジという流れでベルギーの保持は進む。相手のスライドが間に合わないときはサイドのアタッカーの打開のチャンス。WGの個人技を生かす機会である。もちろん期待がかかるのはエデン・アザール。だが、この試合で広いスペースにおいてより存在感があったのは逆サイドのドク。サイドでの1対1においても、カウンターにおいても持ち上がる軽やかさでフィンランドを苦しめる。エデン・アザールより19歳の方が存在感があるというのは少し寂しい。
ベルギーの話をもう少しすれば、全体的にややパスワークに軽さが足りないところ。オランダやスペインのような軽さはない分、切り返しの鋭さやスピードで一撃ずつ威力ある拳で殴っていくイメージ。これが決勝トーナメントでどっちに転がるかはわからない。もっとも、ベルギーはワールドカップの時からこんなイメージだったけど。
フィンランドの攻め上がりは限られた機会においてのみ。直線的にロングカウンターに進む選択はベルギーのCB陣と正面衝突になってしまい厳しい。それよりは、左右に振りながら進んでいく方がベルギーの守備網をかいくぐるチャンスはあった。だが、高い位置からボールサイドに圧縮をかけ、即時奪回を狙うベルギーに対して逆サイドまで脱出する機会を創出することが出来ない。攻めあがれないながらもひとまず前半はベルギーを封じ、後半に望みをつないだ。
後半の頭にはフィンランドは高い位置からの奇襲。敵陣に迫るが、ベルギーのCB陣を越えるもう一崩しを組むことが出来ず、クルトワの牙城を崩すには難しいミドルシュートに終始する。
ベルギーにとってはトランジッションの機会があった方が好都合。前半のブロック崩しに焦れてフィンランドが前に出てきてくれたことにより、好機が転がってきた格好だ。
フィンランドは中央を閉じてひとまずカウンターを対応しようとするが、問題となったのはデ・ブライネ。フィンランドの守備陣にとっては中央を閉じたつもりでも、デ・ブライネにとっては中央をかち割るスペースが空いている。一度目こそ、オフサイドで得点は認められなかったが、先制点後の2回目はこのスルーパスでの中央打開が炸裂する。
デ・ブライネの間にあったギャップを埋められなかったフィンランド。ロシアの地でベルギーを攻勢を防ぎきることが出来ず、他会場の結果を祈る3位でグループステージを終えた。
試合結果
フィンランド 0-2 ベルギー
サンクトペテルブルク・スタジアム
【得点者】
BEL:74′ フラデツキー(OG) 81′ ルカク
主審:フェリックス・ブリヒ
④【グループB】ロシア×デンマーク
■宿ってしまったんだから仕方がない
本拠地パルケンでの2節で連敗を重ねてしまったデンマーク。それでもめぐりあわせで言えば突破の可能性は残っている状況。ここまで後押しをしてくれている大観衆、そしてエリクセン。気を落とせるようなシチュエーションではないのは逆転突破に向けた救いだったはずだ。
そんな敵地に乗り込んだロシアは今日も元気にジューバ大作戦。いつもに比べるとやや左に傾きながらボールを収めて前進を狙う。ロシアの前進はこのジューバ大作戦とゴロビンを軸としたドリブルに寄るロングカウンター。長いボールとドリブルでの陣地回復でデンマークのゴールを目指す。
一方のデンマークはやや右偏重。クリステンセンが時には右のSBに入るようにして右サイドを押し上げたこともあり、右サイドは割と人が密集。入れ替わり立ち替わりで選手が飛び出してくるデンマークの右サイドはロシアにとって対応がしにくかっただろう。
時間が進む中で目立つようになったのはデンマークが入れる中央への楔。30分付近くらいから中にダイレクトに縦パスを刺すシーンが目立った。そして、ロシアはややそのパスへの対応が甘かった。ロシアはその代償をきっちり払うことになる。間受けの旗手となったのはダムスゴー。そのダムスゴーがライン間で前を向くと右足を一閃。GKが一歩も反応できない虚を突かれたタイミングでデンマークが先制する。
後半も均衡した展開だったが、ミスが出たのはロシア。バックパスをこの日振るわなかったポウルセンにプレゼント。この大会の彼のセレブレーションにはどうしてもグッときてしまう。
後半のロシアはジューバ大作戦の効果がだいぶ薄れていた。デンマークはここに2人守備者をつけるようになっていたし、そもそもジューバへのロシアのロングボールの位置がずれるようになってきた。そのためにロシアはソボレクを投入し、ツインタワー作戦に移行。その結果、なんとなくプレッシャーは分散。押し込んだところでドリブルを仕掛けたゴロビンがきっかけでPKを獲得。試合をわからないところまで引き戻す。
しかし、ここからのデンマークにはもう太刀打ちする術はなかったように思う。なんというか完全に宿ってしまった。79分のクリステンセンのゴールとかはもうなんか言葉もない。勝つって知っていても『すげぇ』って言ってしまうような得点だった。宿ってしまってはもうロシアとしては正直できることはない。でも宿ってしまったものは仕方ないし、ここに宿るべきだったし、俺も宿ってほしかった。
スタンドの思いを投影したかのようなゴールラッシュですべてをひっくり返す逆転突破を果たしたデンマーク。勢いを持ったアンダードッグとしてノックアウトラウンドに殴り込みだ。
試合結果
ロシア 1-4 デンマーク
パルケン・スタディオン
【得点者】
RUS:70′ ジューバ
DEN:38′ ダムスゴー, 59′ ポウルセン, 79′ クリステンセン, 82′ メーレ
主審:クレマン・トゥルパン
⑤【グループC】ウクライナ×オーストリア
■らしくない試合運びの大きすぎる代償
勝てば突破、負ければ3位で待機という運命を決めるグループCの大一番である。やや有利な状況にあるのはウクライナ。総得点で有利な分、引き分けでもオーストリアを上回ることが出来るという状況である。
というわけでより死に物狂いで臨まなくてはいけなかったのはオーストリア。この大会のオーストリアは、アラバを中央に置いた3バックを基本線として、終盤の得点が必要となった時間帯にはアラバを左サイドに解放し、クロスをバシバシ上げさせるという二段構えだった。
だが、この試合では頭からアラバを左サイドで起用。加えて、これまでの試合ではあまり見られなかった高い位置からのプレッシングを解禁し、立ち上がりからウクライナに奇襲をかけた。
ウクライナはドローでOKな分、少し構える姿勢だったのだろう。確かにカウンターに打って出ることが出来る前線のメンバーではあるし、オーストリアの左サイドはアラバとザビッツァーが上がり目なポジションを取る。この裏はカウンターの狙い目としてなりえただろう。実際にカウンターによる進撃は散発的ではあるが見られた。
しかし、守備時にWGを下げないウクライナの非保持の方針はやや受けに回った状況でも継続。これが保持でサイドに人をかけるオーストリアとの相性が悪かった。深い位置に押し込まれるとCKなどのセットプレーの機会を多く得ることに。これが先制点につながる。バウムガルトナーの先制点で不利だったオーストリアは状況をひっくり返す。
ビハインドで迎えた後半。シェフチェンコは前半にあまりいいところがなかった中心選手であるマリノフスキを下げるショック療法的な交代を実施、さらにはプレス強化で前に出てくる機会を増やす。だが、威勢がよかったのは立ち上がりだけ。60分過ぎからはチャンスが作れずに停滞するように。アルナウトビッチがロングカウンターをとっとと仕留めていれば試合の決着はもっと早く着いたはずである。
終盤は意外と持つことが出来るオーストリアに時間を使われウクライナは敗戦。シェフチェンコは受けに回った序盤にマリノフスキの交代というらしくない試合運びのツケをまんまと払わされる羽目になった。
試合結果
ウクライナ 0-1 オーストリア
ブカレスト・ナショナル・アレナ
【得点者】
AUS:21′ バウムガルトナー
主審:ジュネイト・チャキル
⑥【グループC】北マケドニア×オランダ
■英雄のラストダンス
北マケドニアのレジェンドの門出となる試合である。英雄・パンデフのラストゲーム。オランダ代表は彼のラストゲームにメモリアルなユニフォームを用意する粋な計らいで花道を彩った。
首位通過が決まっているオランダだが『ターンオーバーしすぎると体がなまる』という考えがOBにあるみたいなことを実況が言っていた。それに従ったかはわからないが、ターンオーバーは最小限。数人を入れ替えた程度のメンバー構成である。
コンペティション的には意味合いが薄い一戦だが、互いの持ち味はどう考えても攻撃。それを活かすために互いにアグレッシブなスタンスの組み合いとなる。北マケドニアも前進の機会さえあれば十分にオランダを苦しめることができる。立ち上がりから逆サイドにボールを振り、そこから縦に裏抜けするなどオランダのハイライン攻略に奮闘。わずかなタイミングでオフサイドになったパンデフの得点は『なんか認めてやれよ!』と思ったけど、そういうものではないので仕方がない。
オランダに効く攻撃を仕掛ける北マケドニアだが、攻めに打って出ることができればオランダは大会でも屈指の存在である。縦に推進する際の持ち味は完全に北マケドニアの上位互換。ブリントを中心としてワイドや裏への展開、そして後方からサポートする中盤の馬力などはさすが。フィニッシュワーク付近でやや息切れ感がある北マケドニアに格の違いを見せた格好だ。
オフサイドでパンデフに得点されることを回避したオランダに比べると北マケドニアはラインコントロールも怪しい部分がある。抜け出しで相手を捕まえられないことでカウンターをもろに受けることになる。というわけでオランダに先制点が出るのは当然だった。デパイの得点を皮切りにがっちり3得点。いずれもオランダらしい持ち味が出た得点だった。
68分にパンデフが交代するとスタジアムは彼の労力をねぎらう空気一色に。20年もの間、北マケドニアを引っ張ってきた大黒柱のラストゲームは完敗。しかし、この大きな舞台を代表引退の一戦に選ぶことができるまで北マケドニアが大きくなったのはまがいもなく彼の功績だ。英雄はヨハン・クライフ・アレナで確かな歴史を刻み、北マケドニア代表のキャリアを終えた。
試合結果
北マケドニア 0-3 オランダ
ヨハン・クライフ・アレナ
【得点者】
NED:24′ デパイ, 51′ 58′ ワイナルドゥム
主審:イシュトバーン・コヴァチ
続きはこっち。
第3節後半