どうも。無事にシーズンが終わったので堂々とプレミア全試合見るマンを名乗れます。見たなら当然まとめねばでしょう!それでは行ってみよう。
【1位】マンチェスター・シティ
27勝5分6敗/勝ち点86
■取り戻したチャラさが中盤戦から抜け出し
序盤戦こそ出遅れたものの、年末からの怒涛の13連勝で6位から一気に首位までジャンプアップ。気づいたころには2位のマン・ユナイテッドに負けようが優勝争いには関係がありません的な立ち位置のところまで上り詰めてしまった。
シーズン序盤はリヨンにCLでやられたショックが抜けないのか、守備を考えればロドリとフェルナンジーニョ並べた方がいいんじゃね!?の4-2-3-1で受けを強化にトライしていたが、一向に点が取れなくなってしまった上にトッテナムやレスターにトランジッションでボコられるなど時折めっためたにされていたりもした。
ターニングポイントとなったのはカンセロの重用だろう。カンセロ自身が1人でチームを変えてしまうほどの大車輪の活躍をしたとは思わないが、彼が台頭することによってシティ本来のチャラさに回帰出来たという部分は間違いなく大きかった。純粋な戦力としてもそうだけど、アイコンとして非常に貴重な働きをしたと思う。
そして、そんなチャラさを許容できたのは何と言ってもルベン・ディアスのおかげである。アントニオ以外は全部完封できるくらいの強さを見せ続けた1年で、正直シティと対戦するときは出てこないことを祈る以外の対策はあんまりなかった。
筆者はアーセナルファンであり敗れた時に指摘されやすい『キャプテンシー』なんてものは外からなんてわかるかよ!と思っていたのだが、自身が神がかりつつもいいプレーをした味方に声をかけて鼓舞する姿を見れば、これがキャプテンシーであることもそれがアーセナルにないものであることも残念ながら認めなければならないのである。ストーンズみたいに相棒次第でどうとでもなる選手が大活躍できたのは間違いなくディアスのおかげである。
チャラさに回帰してからのシティは強かった。手を変え品を変えながら『歩く必要がある』という言葉を見事に実践し、リーグを引っ張ってきてCLもファイナルまでやってきたのは指揮官の手腕のおかげというほかない。個性の強いプレミア指揮官の中でもグアルディオラの素材力の高さは随一。抜いておけば面白いリアクションをしてくれる取れ高モンスターなので、個人的にはまだまだシティで見たい。試合中にどれくらい真面目にリージョの話を聞いているかだけは本当のところを教えてほしい。優勝おめでとう!CLはまた頑張って!
MVP:ルベン・ディアス
ザ・キャプテンシー。新加入のディフェンスリーダーは試合の強度が上がると、一気に脆さが出るシティの守備陣を叩きなおした。
他の候補⇒イルカイ・ギュンドアン、エデルソン
【2位】マンチェスター・ユナイテッド
21勝11分6敗/勝ち点74
■献身性を取り戻した前線で立ち返った古き良きユナイテッド
シティよりも深刻な出遅れを見せたのはむしろユナイテッドの方だった。スールシャールのユナイテッドは『古き良きユナイテッド』といつも評している。そのユナイテッドが強い姿を見せるには当然前線からの献身的な守備が不可欠。19-20の終盤戦も前線からのド迫力な守備で多くのビックマッチを制してきた。
序盤戦の低迷はこの献身的な守備を前線が大いにサボり、もろにバックスに負担がいったからである。新加入のカバーニを除けばみんながみんな鈍重な動きで、1stプレスがかからないまま自陣深くまで攻め込まれ、広い範囲を守るのが苦手なCBが慌てて相手を引き倒すみたいなことの連続だった。大量失点で沈んだトッテナム戦がその象徴といえる。
だが、シーズンが進むとマルシャル以外はみんな真面目に守備をするようになったので、当然チームの調子も戻った。前から相手の攻撃さえ遅らせられればフレッジ、マクトミネイ、マグワイア、リンデロフの中央のカルテッドは非常に強固。相手からすると攻略するのに一苦労だった。
持たされると苦しい展開になりやすかった昨季の課題に対して、大幅な上積みになったのはルーク・ショウ。ビルドアップの局面においても、アタッキングサードにおいてもポジションが非常に的確。相手の捕まえづらい箇所におけるリンクマンとしての機能は抜群でSBとしてはリーグベストといってもいいくらいだった。
逆サイドのワン=ビサカもからっきしだった昨季よりはやや攻撃に加われるようにはなってきたのもいい兆し。それでも引きこもる相手にはマグワイアがドリブルをはじめて切り崩しにかかるととりあえず課題に対する手段は持っていた。
加えて、なんだかんだ前線にパワーがあるのは大きい。カバーニ、ラッシュフォード、グリーンウッドなどはスプリントを繰り返しながら相手のゴールに何度も迫れるし、終盤戦は左のSH起用だったポグバはどのSBに競りかけてもボールがキープできる無双ぶり。地味だし、ちょっとズル感はあるけどとにかく効いていた。チート系押し込みをした後に抜かれるベンチのスールシャールの落ち着きぶりといったら相手ファンからしたら腹が立って仕方ないはずだ。
チャンピオンズリーグのGS敗退は大きなマイナス査定。対策博覧会になっているCLでは劣るが、万全な状態でプレーすれば普通に強い。ここからどう上積みをするかが難しいところだが、コンディションが整えばプレミアで最も安定した成績が期待できるチームだろう。
MVP:ブルーノ・フェルナンデス
パワー&スピードこそ最強!のユナイテッドの前線に唯一残されたファンタジー成分。今年も頼りになりました。
他の候補⇒フレッジ、ハリー・マグワイア
【3位】リバプール
20勝9分9敗/勝ち点69
■CB事情でかけられた足かせ
初のプレミア王者として迎えたシーズンは序盤戦から踏んだり蹴ったりだった。特に悩まされたのは怪我人の多さ。とりわけ、ファン・ダイクが第4節ですでにシーズン絶望の憂き目にあうというのが最大の悲劇。そこからゴメス、マティプなど離脱常連組に加えて、穴埋めに入ったヘンダーソンもファビーニョも怪我をするという始末。
どうしても選手が足りないといって冬に取ったカバクも最終的には負傷。合わせて取ったベン・デイビスはこの原稿を書くにあたって『あれ、本当に獲ったよね?』と調べなおさなければわからなかったくらい、影も形も見えなかった。最終的にはフィリップスとウィリアムスという冬の補強がなかったことになったCBコンビでなんとかCL出場権を死守。CBを祀る神社でクロップが暴れまわったのかなと思ったくらいには今季のリバプールの最終ラインは呪われていた。てか、そんな流れのチームが来季コナテ獲るとか大丈夫なのか。ライプツィヒを何回見てもプレーする試合に巡りえなかったんだけど。
そのCBの層の薄さはチーム全体に波及。ヘンダーソンとファビーニョを中盤で使う機会がグッと減った今季は大きな展開とサイドの崩しにおけるインサイドハーフのフォローの質がグッと低下。トランジッションにスキが出来ることもしばしばで、間延びした中盤が相手のカウンターに起点になることも多かった。
チアゴを軸に据えてみても、後方が脆いのもありハイラインにはチームとして踏み切れない感があったのは歯がゆかった。SBの上がりを抑えながら3トップが狭い幅で決めるサッカーをするならば、チアゴよりもダイレクトにボールを進めるスタイルの方が好ましいだろう。彼自身の問題というよりはスカッドの強度と波長が合わなかった感じがある。あと、ケイタとチェンバレンは相変わらず怪我してました。
ただ、実は一番気になるのは前線。3トップは緩やかにパフォーマンスを落としているのがとても気になる。その中でもエリア内での動きで違いを見せられるサラーは爆発的な加速力が衰える晩年でも活躍は見込める。
だが、組み立てとフィニッシュの両方に絡めたはずのフィルミーノは今季は組み立てに回ったらゴール前に顔を出せず、逆に組み立てに参加した試合は消えがちになるというシーズンに。アタッキングサードのプレースピードも落ち気味なのは気になる。マネも同様でプレッシングの迫力や広範囲に顔が出せる攻撃の持ち味は昨年ほどは感じられなかった。
ジョッタが台頭したのは明るい材料だが彼もまた負傷が多いし、オリギの話は南野が得点した時にしか口にしないようになった。ヒエラルキー的にトップの前線は非常に手が付けにくいセクション。このポジションがどのように編成されるのかは来季、リバプールに個人的に最も注目している点だ。
MVP:モハメド・サラー
爆発的な加速力は鳴りを広めた分、今季はよりストライカー寄り。PA内でのミクロな身のこなしはプレミア1で、メッシみたいな職人になっていくのかなと思う。
他の候補⇒ファビーニョ
【4位】チェルシー
19勝10分9敗/勝ち点67
■巡り巡った大型補強で枝葉を彩りビックイヤーに
補強禁止の処分が解けた昨夏に大型補強を敢行。ようやくそれなりにチームがまとまった19-20シーズンからチームは様変わりした。期待度が高い上にプレミア初挑戦の面々ばかりのニューカマーたちの加入で明らかにランパードはハードなタスクを強いられていたように思う。
懸念の通り、序盤戦は攻撃陣の軸づくりに苦しんだ。ヴェルナーやハフェルツはいきなりはチームにフィットせず、なかなか攻撃の中心が定まらない。そんな中でなんとか見出すことができたジエフも大事な局面で離脱。一時期は首位に立ったものの、結局ランパード政権は冬の間に求心力を失い解任に至った。
途中就任の白羽の矢が立ったのはパリ・サンジェルマンの前指揮官であるトーマス・トゥヘル。不安定だったチームを立て直すべく、早々に3バックにシステムを固定。チアゴ・シウバとメンディを軸に堅い守備をベースにクリーンシートの山を築く。
トゥヘル就任直後は守備で相手を封じることができることはコンスタントにできてはいたが、得点まで手が届かないという状況に陥った。ジルー、エイブラハムはそれぞれポストプレーと機動力という武器を買われ3トップの頂点を務めたものの、どちらも決定的な信頼を得ることができず。シーズンが進むにつれて、出番を減らしていった。
逆に活路を見出したのはクラシカルなCFを置かない形。特に前半戦に苦しんだヴェルナーは後半戦にフォームを上げてきた。得点こそ最後まで感覚が戻らないように見えたが、元々得意な裏抜けに加えて表でのポストプレーが向上。来季に向けて楽しみな要素となった。彼を中心に徐々に3トップも連携がスムーズになってきた終盤戦。ウェストブロムにやたら手を焼いた以外は順調だったといってよかっただろう。
はっきりいって計画性のかけらのない運用ではあるが、結果的に夏の大型補強が巡り巡っていい方向に転がったのは興味深い。ジルーとエイブラハムを除けば、トゥヘルは非常にうまくスカッドを活用したといえそうだ。コバチッチ、プリシッチのワンポイント起用やハドソン=オドイのWBへのコンバートなど、就任直後に植え付けた幹に上手く枝葉を短期間でつけることに成功。このトゥヘルの半年でのチームビルドが9年ぶり2回目のビックイヤーに結び付いたのは間違いない。
MVP: メイソン・マウント
ランパード、トゥヘルの2人の指揮官に共に高いレベルでコミットし、浮き沈みが激しいシーズンの中でハイパフォーマンスでシーズンを駆け抜けた。IHとしてもストライカーとしてもプレーできるマルチ性はトゥヘルのチェルシーの最後の一伸びに大きく貢献した。
他の候補⇒エンゴロ・カンテ
【5位】レスター
20勝6分12敗/勝ち点66
■最後の最後で武器を欠いて痛手も充実のシーズン
強豪チームが右往左往する展開の中で、継続して上位をキープし続けていたレスター。昨シーズンの終盤に失った勢いを感じさせない順調な滑り出しだった。何といっても特筆すべきは安定感である。シーズンを通してみても、3試合連続で勝利を逃したことは一度もなし。マンチェスター・シティ相手に5得点での大勝など、時折見せる爆発力を併せ持つのも魅力の1つだが、まず彼らを象徴する要素としては安定感が先に来るだろう。主力が引き抜かれてもなお序盤戦から問題なく力を発揮できるのはブレンダン・ロジャースの哲学が浸透しているからに他ならない。
安定感をもたらしているのはあらゆる局面に対応できるスカッドである。保持、非保持、カウンター、被カウンターの4局面において大きな弱点がなく、攻撃がジリ貧なチームは簡単にからめとられてしまう。とりわけ際立ったのは万能性が高い中盤。ンディディなどお馴染みの面々も活躍したが、とりわけ圧倒的だったのはティーレマンス。創造性だけでなく、強さも兼ね備えたベルギー人MFはシーズンを通して中盤の柱であり続けた。
一方で昨シーズンの終盤にチームの足を引っ張り続けた怪我人事情には引き続き悩まされることになった。バーンズ、ジャスティンのような試合を追うごとにクオリティが上がっていく新進気鋭の若手選手たちがシーズン後半を棒に振ってしまったのはチームにとっては大きな痛手だった。昨季、大怪我を追ってしまったリカルド・ペレイラもなかなかコンディションが整わず、サイドバックがシーズンを通して定まらなかったのは連携面を含めてもしんどい部分だった。
それでも後半戦に勝ち点を大きく落とさなかった前半戦は鳴かず飛ばずだったイヘアナチョの覚醒があったからだ。3月のバーンリー戦の得点を皮切りにラスト12試合で11得点と大爆発。クロスからのチャンスメイクも行い、まさしくチームの救世主になった。
しかし、最後の最後で持ち味だった安定感を欠いてしまったのは大きかった。チェルシー、トッテナムというロンドン勢への連敗よりも、相手が10人で試合の大半を過ごしたサウサンプトン戦と今季ワーストレベルで無気力なパフォーマンスをしてしまったニューカッスル戦の2つで勝ち切れなかったことが大きく響いて、2年連続でCL出場権は指の間をすり抜けてしまう。
だが、後ろ向きなことばかりではない。チーム初のFA杯制覇で久しぶりのタイトルはチームにもたらされた。シュマイケルがオーナーをピッチに呼び寄せて共にトロフィーを掲げて祝うシーンは間違いなく今季のプレミアを彩るワンシーン。チームの雰囲気の良さを表すもので、中立のファンで心を打たれた人も非常に多かった。
他クラブからのオファーが噂されるロジャーズ監督もCL出場権を逸したことがむしろ自らの残留の気持ちを強くしているよう。こういったチームを取り巻く空気がシーズンにおける安定感につながるんだろうという部分がオフザピッチで垣間見え、非常に好感度の高いチームだった。
MVP:ユーリ・ティーレマンス
安定感をもたらす中盤の柱としてでなく、マディソンやバーンズが通年稼働できないことを受けてチャンスメーカーとしても負荷の高い動き。攻守に次元を1つ上げたシーズンだった。
他の候補⇒カスパー・シュマイケル、ウェスレイ・フォファナ、ジェレミー・ヴァーディ
【6位】ウェストハム
19勝8分11敗/勝ち点65
■魔の序盤戦凌いでジャンプアップ
何といっても大きかったのはシーズン序盤を無事に乗り切ったことだろう。7節までにアーセナル、レスター、トッテナム、マンチェスター・シティ、リバプールと当たるという超過酷な序盤戦。なんてことだよ日程くん。チームとして力があっても負けに引っ張られて雰囲気が重くなるケースは死ぬほど見てきたから、正直、今季はモイーズが解任第1号じゃないか?と予想していたのだが、その目利きは的外れだったといわざるを得ない。
はじめ2節こそ敗れたものの、ウルブス、レスター(モイーズはコロナウイルスでいなかったけど)を退けてチームを踏みとどまり、2勝2分3敗とこの序盤戦をしのぎ切る。ここからは強かった。連敗は4月に喫した2連敗の1回のみ。レスターと同じく抜群の安定感で常に上位をキープし続けた。
5バックを軸とした後方に人数をかけるスタイルを成り立ったのは大きかった。高さがあるDFラインは自陣を固めた時の強度は十分。後ろ重心になってしまいやすいという問題も、エースのアントニオが解消。パワー、スピード共に十分なエースにとっては充実のシーズンになった。今季のルベン・ディアスを上からぺしゃんこにしたプレミア唯一のFWである。
冬に加入したリンガードもチームの押し上げに貢献。前からのプレッシングを活性化し、アントニオ不在時にラインを上げる方法が見つかりにくかったチームに新しい要素をもたらした。
時折、キャラを思い出したかのように気が抜けた試合をしてしまうのが玉に瑕。フラフラと前に出ていってはホルダーを自由にした挙句、間に裏にと好き放題ボールを通される試合がたまにあった。特にノースロンドン勢との対戦は出入りが多い試合で、3点差を追いついたトッテナム戦や逆に3点差を追いつかれたアーセナル戦など『2-0は危険なスコア』に謎の一石を投じる存在でもあった。それでも彼らより上の順位でロンドンナンバー2の座を死守したのはお見事。充実したシーズンとなった。
MVP:デクラン・ライス
ネクスト・フェライニことソーチェクを横に従え、シーズン終盤まではほぼフル稼働。主将として強固なセンターライン形成に貢献した。
他の候補⇒トマシュ・ソーチェク、マイケル・アントニオ
【7位】トッテナム
18勝8分12敗/勝ち点62
■『定説』は実らず
サッカー界には監督に関する定説が多い。『監督交代をしたチェルシーのCLは買い』とか『レジェンドガチャは地獄の始まり』とか。『2年目のモウリーニョはガチ』というのも定説の1つだろう。まさしく、今季のスパーズを取り巻く状況である。
シーズン序盤は好調だった。マンチェスター勢をボコボコにし、ノースロンドンダービーでも何もできないアーセナルを完全に黙らせた。12節まではわずかに1敗。もはや円熟期に達するといっていいケインとソンの連携は向かうところ敵なし。ケインの組み立てへの負荷がきついと見るや、エンドンベレをトップ下において高い位置での組み立てへの負荷をケインから取り除いてあげる攻撃面でのモウリーニョのアプローチも悪くなかったといえるだろう。
だが、13節のリバプール戦での敗戦から風向きは変化。とりわけ『2年目はガチ』というのを守備陣が体現できないのは痛かった。クロス対応を中心に軽いプレーを連発。サンチェス、ダイアーの軽率さは日常茶飯事で、それに引っ張られるようにアルデルワイレルドのプレー強度も低下。サイドでは糸が切れてしまいやすい右のオーリエと、ソンとの息が合わないオーバーラップで左に穴を開けまくるレギロンも十分なパフォーマンスを見せられたとはいいがたい。
あれよあれよという間に順位をリーグ戦では徐々に下げていき、CL出場はいつの間にか遠い目標に。ELでは監督交代で勢いに乗るディナモ・ザグレブに逆転負け。自分たちはカップ戦決勝前にモウリーニョを解任しておきながら、その勢いを活かせなかったという含めて何とも皮肉なシーズンだった。
CL準優勝という快進撃のシーズン以降、スタジアム建設費用とお付き合いしなければいけない中でチーム再構築ではなく現有スカッドの維持と強化の道を選んだトッテナム。モウリーニョ招聘も短期的な結果の維持を見据えてのことだろう。その結果の2季連続のCL出場権逸。ベイルのレンタルをしてまで得たものがカンファレンスリーグの出場権とレベルの低いノースロンドンでの覇権程度では何の慰めにもならないだろう。
監督人事も含めて未だ不透明な来季の体制。今にかけたチームの次の一手はまだ見えてこない。
MVP:ハリー・ケイン
やっぱり、ケインあってのソンくんですからね。
他の候補⇒ソン・フンミン
【8位】アーセナル
18勝7分13敗/勝ち点61
■無気力なピッチの現状は・・・
序盤戦の展望はむしろ明るいものだった。出遅れるマンチェスター勢や再構築に挑むチェルシーに比べれば、昨季の流れで戦えるアルテタのアーセナルはむしろ強みがあったといえるし、開幕数試合の完成度はリーグでも十分健闘できるレベルだったといっていいだろう。
だが、数少ないチャンスを仕留めてきた攻撃陣が波に乗れず。とりわけのオーバメヤンの不調はシーズンを通して目を覆いたくなるほど。チームが上昇気流に乗れず、8節のアストンビラ戦で何もできないまま敗れると、そこからチームは7試合連続の未勝利ロードに突入。内容もそれに見合ったもので、高さに特徴のあるバーンリーを相手にしてハイクロスを上げまくっては『惜しかった』と言ってのけるアルテタを見て絶望したのをよく覚えている。
それに比べれば後半戦は持ち直した方だろう。一時期は15位に沈みながらも、どこかしらで区切ればシーズン後半は3位というダメな年の箱根駅伝の駒澤大学みたいな成績を残したシーズンになった。
苦手な相手がハッキリした1年でもあり、13敗中10敗はシーズンダブル絡み。とりわけアストンビラ、ウォルバーハンプトンというミッドランズ勢とリバプール、エバートンというマージーサイド勢には全く歯が立たなかった。贔屓チームとしては残念だが、トッテナムと並んで今季のプレミアの大きな失望といえるだろう。トッテナムの小さなトロフィーがノースロンドンの覇権なら、アーセナルのそれはチェルシー相手のダブルである。
アルテタの未熟さを感じる一年でもあった。大きな課題となるのはターンオーバーの不得意さ。プランAの立案とそれを実行する術は長けているが、それをターンオーバーしながらチームの中に広げたり、プランAが崩れてしまった時の立て直しには疑問が残る。
彼をバックアップする体制も不可解だ。要職を次々解雇した状況でピッチ外にも高負荷を強いたフロントのアプローチはハッキリ言って時代遅れだと思う。トップチームへの就任が初めての指揮官を据えるならば、むしろ必要なのは彼をピッチの中に集中させるようにするサポートだろう。『情報を外に流してチームをうまくいかなくしようとしているものがいる』とアルテタが未勝利期間に述べたように、チームとして一枚岩になり切れなかったシーズンだった。
時折、ピッチの中で見られる無気力さは今のアーセナルをまるっと体現したものだ。問われるべきは選手たちのメンタリティだけでなく、アルテタの下で戦い抜くというフロントの準備は本当にできていたのか?という部分。FA杯のトロフィーと共に希望に満ち溢れた昨季の最後とは裏腹に、疑問が残る1年になってしまった。
MVP:ブカヨ・サカ
寂しいチームでスミス=ロウと共に奮闘。EURO頑張ってね。ケガしないでね。
【9位】リーズ
18勝5分15敗/勝ち点59
■今年の『昇格枠』、真骨頂を見せた対シティ
ビエルサのプレミア襲来という大きな話題性に見合うシーズンになったといっていいだろう。毎年1枠は誕生する昇格組からの躍進枠は今年はリーズであった。開幕戦からリバプールとド派手が打ち合いをかましてプレミアファンに挨拶を済ませ、攻守にアグレッシブなスタイルで魅了した。
マンマーク成分が強い守備と、大きな展開とホルダーを追い越しまくる攻撃のスタイルは唯一無二。その哲学は簡単には覆ることなく、少数精鋭で突き進んでいく姿はまさしくビエルサ流といえるチームだった。ただし、正直リーグの中では選手の層が厚いチームではないので、いい日は『最高!』だけど、ダメな日は『今日はおしまい』ととっとと店じまいしてしまうことも。めちゃめちゃその日の出目が大事なチームであった。
そういうチームならばマンマークで歯が立ちにくそうな強豪相手には簡単につぶされてしまうのだろう!と思いがちなのだが、実はマンチェスター・ユナイテッドと共に、今季マンチェスター・シティに負けていないチームでもある。
とりわけホームでシティに打ち勝った試合はセンセーショナル。10人で逆転勝ちしたエンタメ要素だけでなく、マンマーク受け渡しをPA内に矮小化し、数的不利を打ち消した内容には見どころ満点。プレミアらしい劇的な展開と、グアルディオラ×ビエルサらしい盤面の駆け引きを両立した好ゲームだった。もし、今季のベストバウトを選べ!といわれたら自分はこの試合を挙げる。
少数精鋭、マルチロールの多いスカッド、そしてハーフタイム前の早々な選手交代などビエルサらしさはシーズンを通して感じることができた。リーズの好調の要因を挙げるとしたら実質代替不可のバンフォードをシーズンを通して欠かなかったことだろう。得点源としてだけでなく、1stDFとしても替えが効かない存在だった。マルチロールとしてチームを引っ張ったダラスと共に彼らのシーズンを通しての活躍がビエルサ政権1年目を成功に導いたといえそうだ。
前半戦のMVP:パトリック・バンフォード
たまに漂う哀愁がたまらない。ジェズスが『悲』なら、バンフォードは『哀』って感じ。
他の候補⇒スチュアート・ダラス、カルビン・フィリップス
【10位】エバートン
17勝8分13敗/勝ち点59
■『今年は違う』は証明できず
シーズン序盤戦は絶好調だった。ハメス、ドゥクレ、アランなどの新戦力をガンガン前面に押し出した攻撃的なサッカーはプレミアファンの多くを魅了。『今年のエバートンこそ本物ではないか?』と色めきだった。
だが、その声がしぼむのは早かった。そもそも敵陣に押し込んで保持する局面以外の質にはシーズン当初から疑問があった。好調だった攻撃陣の中で、速い展開で活きるリシャルリソンが今一つ波に乗れず。試合が進むにつれてサイドチェンジ専用機のようになってしまったハメスは、サイドチェンジの受け手であるディーニュが欠場してからはなかなかインパクトを残すことができなかった。
それよりも大きな問題だったのは非保持の局面だろう。ブロック守備はスカスカでどこを閉じてどこに誘導したいのかが見えてこない。シーズン序盤は保持で何もできなかったマンチェスター・ユナイテッドにガンガンポゼッションでぶん殴られていたのを見た時は結構やばいなと思った。
マンマークで行ってこいをしたチェルシー戦や、とにかく2列目はめっちゃリトリート!という策がハマったアーセナル戦など、部分部分では守備の策がハマった試合があった。だが、シーズンを通してみるとすっとこどっこい成分は多め。レスターとウェストハムに水をあけられたのはハマる展開の種類が少なく、安定感をもった試合運びとは無縁だったから。欧州カップ出場権がかかっている中で、すでに降格が決まっているシェフィールド・ユナイテッド相手に敗れる姿は今季の彼らを象徴している。
割と人件費で無理している感があるし、アンチェロッティという指揮官も今を見据えたもの。今背伸びをしている感で言えばノースロンドン勢と同じくまずい状況にあるチームである。旗頭であるアンチェロッティを失った今、次の一手にファンもやきもきしているはずだ。
MVP:ドミニク・キャルバート=ルーウィン
ポストよし、フィニッシュよしで大覚醒。跳躍力では他の追随を許さずにシーズン通して相手守備陣の脅威になった。
あと半分は次ね。