前節分はこちら。
①【グループB】ブラジル×ペルー
■自由度をもたらす2トップ
初戦でベネズエラを粉砕し、好発進を決めたブラジル。続いての対戦は2節目からの登場になるペルーである。ペルーは4試合連続で戦わないといけないローテである上に、初戦がブラジルという踏んだり蹴ったりな日程である。あと、背番号の視認性が悪すぎるので、正直誰が誰だかさっぱりわからない。なので個人がどうとかが全然わからん。ごめんね。
試合は当然立ち上がりからブラジルペース。ベースポジションの4-4-2からあまり大きな変形はないのだが、自由度をもたらしているのは前方の2トップ。ネイマールとガブリエル・バルボーサは上下横に幅広く動ける裁量を与えられている。ブラジルのビルドアップにアクセントをつけるのは彼らである。
特に圧巻なのはネイマール。普通は降りる動きをしてしまうと、ゴールから遠ざかってしまうのだが降りて、攻撃を加速させてゴール前にまで突撃できるのだからさすが。運べる中盤は優秀だが、降りて運んで加速させ自らがPAに突撃できる選手はスーパーである。先制点のシーンは降りたネイマールのスルーから加速。一気にゴールまでこぎつけた。
ペルーは右のSBを上げる3-2-5気味の変形でブラジルに対抗。意外とゆっくりつなぐのが特徴である。攻撃はトップのラパドゥーラへのポストを中心に前進を狙う。しかし、サイドからの前進が停滞。2列目の横スライドをサボらないブラジルの中盤を飛び越すことができず。前進の精度でブラジルとは差があった。
1点リードで迎えた後半。ブラジルはより直線的な攻撃での完結を狙う。途中から4-1-4-1に変更したペルーの中盤をポゼッションで釣れたと判断した際には、DF-MF間に縦パスを入れて一気に加速。後方からCHやSBもフォローに入り、中央を一気に陥れた。
ネイマールは後半も躍動。はっきり言って何にも引き付けつつ自在にファウルを取る姿はやばい。PKこそVARサポートで取り消しされたものの、そのうっ憤を晴らすかのように直後に豪快な得点を決めてみせた。後半のペルーはブラジルに前半以上に気圧されてしまった。開幕戦での惨敗は仕方ないだろう。2試合目以降の巻き返しに期待したい。
試合結果
ブラジル 4-0 ペルー
エスタディオ・ニウトン・サントス
【得点者】
BRA:11′ サンドロ, 67′ ネイマール, 88′ エヴェルトン・リベイロ, 90+2′ リシャルリソン
主審:パトリシオ・ロースタウ
②【グループB】コロンビア×ベネズエラ
■溶かされかけた守備網を塞ぐ最後の砦
コロナウイルスに対して比較的平穏なお付き合いをしているEUROだが、コパアメリカはコロナウイルスにかなり振り回されている感が否めない。というか開催国まで変えるハメになっているのだから当たり前なのだけど。
そんなコパアメリカ出場国の中でもっとも被害を受けているのはベネズエラ代表。開幕直前に10人以上の選手が離脱してしまい、急遽自国から補充メンバーを呼び寄せるという羽目になった。そのせいかそもそも戦力差がえぐい初戦のブラジルには歯が立たなかった。
2戦目のコロンビアも戦力的に差がある相手。ベネズエラは5-4-1で撤退守備を敷く。コロンビアはこのベネズエラのブロックを攻略するというミッションに挑む。コロンビアの大枠は前節と同じ。基本のフォーメーションの4-4-2から左サイドのカルドナが内に絞り、3バック変形という欧州チックな変形で5バック崩しに挑む。
5バックを崩すには溶かすイメージを持てるかが大事!ということを自分はよくレビューで述べる。受け売りだけど。この日のコロンビアは溶かすために必要なことはやっていたと思う。ベネズエラの2列目をコロンビアの最終ラインで引き離す。大外を取って相手の横幅を広げる。そしてサイドに優位を作る。難しそうならば逆サイドに展開。この流れの中で本命のライン間にボールを入れられる際には楔を入れる。この選択は適切でやれることはやっていたように思う。
ただ、エリア内のクロスに対してはそこまでコロンビアが優位をとれなかったこと、そしてベネズエラのGKのファリニェスのセービングが素晴らしかったことなどでなかなか崩すことができない。コロンビアは前節同様、プレーブックに沿ったセットプレーでネットを揺らすが、これはオフサイド。終始相手を支配するがなかなかゴールが遠い。
一方のベネズエラも右サイドのゴンサレスとマルティネスの縦関係という竹やりで挑むも、これはゴールには迫れないのも無理はない威力。終盤は小競り合いに終始した両チーム。ディアスの踏みつけでの退場はややタイミングが合ってしまった感があり不運だったが、無駄にテンションが上がってしまったことは崩すためにプレーをつながなくてはいけないコロンビアにとってはありがたくなかったはずだ。
結局、何とか無失点でしのぐことができたベネズエラ。ゴールは遠いが、なんとかコロンビア相手に勝ち点を取ることができた。
試合結果
コロンビア 0-0 ベネズエラ
エスタディオ・オリンピコ・ペドロ・ルドビコ
主審:エベル・アクイーノ
③【グループA】チリ×ボリビア
■原則を破った先制点で逃げ切り
立ち上がりから攻めていたのはチリ。攻めるときの人数調整は中央でアンカーが降りてくる形である。最近はSBをCB化するか、もしくはWG化するかで人数調整をするチームが多い気がする。だが、チリは中央で人数を増やし、サイドを押し上げるやり方。というか中央での調整するからこそのアンカー採用なんだろうなとも思う。
したがって、大外は両サイドともSBが担当することが多かったチリ。逆に両WGは内に絞ることがタスクを担っていた。右はCFのバルガスとWGのメネセスがレーンを入れ替えることもしばしば。左のWGのブレアトンは独力でも重戦車的な突撃してくる感じである。
これに対してボリビアは守備の人数対応に追われることに。バルガスをCB2人で挟み、そのほかの場所はマンツー。WGをSBで監視する。チリのSBが上がってきたら、ボリビアはSHを下げて対応。相手のトップの人数によって4-6人で人数を調整していくイメージである。
この原則が破られてしまったのが10分のチリのカウンター。帰陣が遅れたボリビアの守備陣に対して、カウンターで襲い掛かったチリ。最後はブレアトンが決めて先制に成功する。
ビハインドに陥ったボリビア。保持においては結構時間をかけるタイプ。内側に絞るアルセを軸に内側に入れるパターンと、裏を狙うパターンの両にらみでチリのブロック攻略を狙う。チリはこれに対して内を閉じたポジショニングで迎え撃つ。無理にプレスに行かずに、網を張って迎え撃つスタイルである。ひっかけてからのカウンターを視野にボリビアの保持に反撃する。
特に後半はライン間をコンパクトにしたチリ。ボリビアは徐々にライン間で捕まってカウンターを食らうきっかけとなるボールロストが増えてきた。かといって外にボールを回すと、チリは今度は同サイドに圧縮するように内を切る。こうなるとボリビアは素早いサイドチェンジが出来ない。
両チームともラインの表でも裏でも駆け引きはできるチームである。ライン間にボールを入れたり、後ろ向きに相手を背走させたりなど、DFラインを動かせるアプローチまではできていた。しかしながら、そこからシュートの状況を作る部分の丁寧さには欠けていたように思う。特にビハインドのボリビアにとってなかなか追いつくきっかけがつかめずに苦しい状況になった。
最終的には6バックまでの変形も視野に入れつつ逃げ切ったチリ。ボリビアは序盤の失点が大きく響く結果となってしまった。
試合結果
チリ 1-0 ボリビア
パンタナル・アリーナ
【得点者】
CHI:9′ ブレアトン
主審:ヘスス・ヒル・マンサーノ
④【グループA】アルゼンチン×ウルグアイ
■王様は王様らしく
2戦目からの登場になったウルグアイ。おなじみの4-4-2をこの試合でも採用。就任15年目のタバレス監督と、スアレスとカバーニの2トップは依然健在である。
ビルドアップにおいては2-3-5の変形をするウルグアイ。2CBに対してCHが段差上にポジションとりながら角度をつける。ウルグアイの前線は中央密集が基本線。スアレス、カバーニを中心に中央にわらわら人が集まる形はワールドカップと同じくウルグアイのトレードマークである。
一方のアルゼンチンは正反対のアプローチといっていいだろう。あまり強引に押し込むことはせず、ピッチを幅広く使いつつ、カウンターで仕留めることを狙う。前線は斜めの動きを数多く取り入れたオフザボール勝負。広いスペースを縦横無尽に動き回るアタッカーでかく乱する。
ボールの持ち運び役はメッシ。中盤に降りてきたメッシがボールを受けると、それに合わせて動き出した前線のアタッカーをメッシが使うという流れである。このアルゼンチン代表は自分が見てきた中では最もメッシがやりやすそうなアルゼンチン代表だなと感じた。周りの人がちゃんとメッシを王様に仕立て上げられるというか。派手さはないけど、堅実で泥のように走るアルゼンチンの方が大概めんどくさいのである。そんなアルゼンチンは王様であるメッシのショートコーナーから先制。アンカーのギド・ロドリゲスにとっては嬉しい代表初ゴールとなった。
アルゼンチンの強みをもう1つ挙げるとしたら守備の堅さである。押し込まれた状態での跳ね返しにあまりストレスを感じないチームのように見える。サイドアタッカーもきっちり自陣まで下がる。守備においてもめんどくさいことをサボらない。
後半はコレアでプレス強化、ディ・マリアで運び強化と控え選手を軸に部分的に交代で強化を図るアルゼンチン。たまにドリブル一辺倒で急ぎすぎていると感じたら、デ・パウルが落ち着かせる。最強ではないけど堅実である。
一方のウルグアイは定点攻撃はできていたが、いかんせんポジションチェンジが少なくやや攻撃が硬直気味だった。大外から相手を外した状態でクロスを入れられたのは70分手前の決定機くらい。以降は押し込む時間こそ増えるものの、決定的な得点機会を得ることもできなかった。
堅実なアルゼンチンが前半のリードを活かして逃げ切り。先行を許すとめんどくさいチームであることをよく知らしめた一戦だった。
試合結果
アルゼンチン 1-0 ウルグアイ
マネガリンチャ・スタジアム
【得点者】
ARG:13′ ロドリゲス
主審:ウィルトン・サンパイオ
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