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「制限付きを利用する」~2021.5.22 J1 第15節 川崎フロンターレ×横浜FC BBC風オカルトプレビュー

目次

Fixture

明治安田生命 J1リーグ 第15節
2021.5.22
川崎フロンターレ(1位/14勝3分0敗/勝ち点45/得点43 失点12)
×
横浜FC(20位/1勝3分10敗/勝ち点6/得点10 失点36)
@等々力陸上競技場

戦績

直近の対戦成績

図1

 直近10試合で川崎が10勝。

川崎ホームでの試合

図2

 直近10試合で川崎が7勝、横浜FCが1勝、引き分けが2つ。

Head-to-head

<Head-to-head>
・川崎にとって横浜FCはJ1チームの中でもっとも勝率が高いチーム。
・川崎は公式戦における横浜FC戦10連勝中。
・J1での対戦の4試合においての合計スコアは川崎の15-3。
・横浜FCの唯一のリーグでの川崎戦勝利は等々力でのもの。

 前回のプレビューで『札幌は2番目に勝率が高い相手』と紹介したが、今回の横浜FCはそれを超えるリーグでもっとも相性がいい相手。勝率は驚異の80%超えである。

 特に直近は10連勝中。J1での対戦は大差がついており、近年は両チームの力関係の変化により、その戦績はより顕著になってきた印象だ。しかし、横浜FCが唯一勝利を挙げた川崎戦は今回と同じ等々力でのものである。

スカッド情報

【川崎フロンターレ】

・大島僚太は長期離脱中。
・山村和也は練習に合流済み。

【横浜FC】

・マギーニョは契約条項によって出場不可。
・齋藤功佑は脱臼により欠場。

予想スタメン

画像3

Match facts

【川崎フロンターレ】

<川崎のMatch facts>
・リーグ戦22試合連続無敗継続中。
・直近3試合で3得点を挙げた試合がない。
・ホームでのリーグ戦は直近14戦で13勝。
・直近15試合で前半での失点は一度だけ。
・谷口彰悟はキャリアにおいてホームゲームでの退場がない。
・三笘薫が得点を決めれば自身初のリーグ戦4試合連続得点。

 札幌を下し、リーグの無敗記録は22に伸びることとなった。ただ、目下絶好調かといわれるとそういうわけではない。ここ3試合は鬼木フロンターレの『ノルマ』といわれている1試合3得点は未達。今季2回目の3戦連続3得点以上がない状態。ちなみに、前回の3戦連続でのノルマ未達の後は浦和相手に5得点を挙げている。4連戦の頭だが絶好調のホームで勢いをつけることができるか。

 得点が振り切れなくても安定しているのは前半から崩れるパターンが少ないから。福岡戦でのサロモンソン以外は直近15試合で前半の失点がない。このサロモンソンは直接FKだったので、オープンプレーから等々力でネットを揺らした敵チームの選手は未だに大久保嘉人ただ一人である。

 先日、代表が発表された。谷口はクリーンさが魅力。大きいスペースを守るというリスクの高さと隣り合わせながらも今季ここまで警告はわずかに1枚。同じく代表に選ばれた三笘にとっては五輪生き残りをかけた1か月になる。自身初のJ1での4試合連続得点を決めて、本戦に向けてのアピールを進めたいところだ。

【横浜FC】

<横浜FCのMatch facts>
・直近2試合のリーグ戦で負けなし。
・失点36はリーグ最多。
・今季、トップハーフ相手の試合は全敗。
・大分と並んで今季ここまで最多の28人をリーグ戦で起用している。
渡邉千真は川崎戦で通算9得点。鹿島、鳥栖に次いで多い。
・今季、クリーンシートを達成した2試合はいずれもCBに高橋秀人とハン・ホガンを起用したもの。

 リーグ戦最下位という苦境で、早川監督への政権交代を行い、巻き返しを図る横浜FC。課題となっているのはリーグ唯一30点台を記録している失点の部分である。

 ルヴァンカップの浦和戦こそ敗れたものの、リーグ戦は直近2試合は負けなし。負けなければ2020年8月の3連勝以来の3試合負けなし。勢いがついた状態で今季勝ち点どころか得点もあげられないトップハーフのアウェイゲームに挑むことになる。

 課題となっている失点においてはハン・ホガンと高橋秀人のCBコンビになってからやや安定するように。彼らを中心とした守備陣が踏ん張り、川崎キラーとして名高い渡邉千真で仕留める形でなんとか勝ち点を持ち帰りたいはずだ。

展望

■前を向く人をどう作るか

 今シーズンの横浜FCのフォーメーションは4-4-2が大半、たまに5-3-2という様子である。多くの場合でここまで採用されているのは4-4-2。保持の局面においては昨シーズンよりも可変性はだいぶ落ち着いている印象を受けた。CHが保持の中心という指針は大きくは変わらず、安永と手塚などパスセンスが高い彼らが前を向いてボールを持つ時間が増えることで可能性が広がっていく形である。

 外を使った形もパターンとして有しており、相手の前線をバックラインで引き付けつつ、大外をとれたら彼らとしては理想的である。

画像4

 一方で可変の要素が減った分、ズレはできにくくなった印象。噛み合わされたフォーメーションはもちろん、後方に構えられるような保持をされると後ろから前進がしにくい。勝ち点は取ることができた湘南や清水相手にも前進の部分では苦しんでいると見るのが妥当。サイドできっちり蓋をされると一向に前に進めないU字循環になってしまう。

画像5

 そうなると狙うのはCFへの長いボール。クレーベのフィジカルを活かしたロングボールもパターンの1つ。彼が先発の場合はSHが内側に絞る動きを多くするので、チームとして長いボールを拾おうという意識が増える。ただ、クレーベを除けば闇雲に放り込んだとしても跳ね返されてしまうので、クレーベ以外のFWはスペースに入り込んで前を向く状況を作る必要がある。

 まとめると横浜FCの攻撃のパターンは
1.  外循環で大外orハーフスペースを取り前を向く選手を作る。
2. ライン間への長いフィードorクレーベへのポストで前を向く選手を作る。

 の2つである。

 いわば高い位置で前を向く選手を作るのがボール。前さえ向ければスピードがあるアタッカー陣は脅威。こういう状況が作れるという前提のもとに立てば、鹿島や川崎というような相手にも相性は悪くないスタイルである。

■好都合な状況を作るには制限が

 守備の局面においてはまずCBは動きたくないという意向が見てうかがえる。高橋秀人は読みは一級品だが、スピードやパワーで勝負するタイプではないし、相棒のハン・ホガンもエリア内で強みを発揮するタイプ。彼らにいろんなものを処理させるというよりは、仕事を限定する方向性だ。

 そのため、バックスの4枚の幅はPAを中心に狭くなる。したがって、ローラインで幅を使って守る場合はSHのリトリート、もしくは5-3-2へのシステム変更で枚数を確保することが必須。それが出来ない場合は大外のスペースはぽっかり空くことが多い。

 前からのプレッシングはあまり激しいチームではない。4-4-2で川崎と対峙するときはアンカー役へのマークをどうするか?がまず第一関門になると思うが、恐らく2トップが受け渡しながら交互にアンカーをケアするのではないか。前からの守備は誘導してのパスコースの制限はそこまで見られず、ライン間の距離も広いという課題もある。

 奪い取る位置は当然高いに越したことはないが、指摘した通り松尾やジャーメインなど(本当はマギーニョも)脚力はある選手はいるので、ロングカウンターになっても問題はない。撤退守備の5-3-2がある程度許容できるのはこの部分による。むしろ、問題なのは前を向く機会の方をどう作るかの方なので、相手が前がかりになっている状況はおいしい部分もある。

 問題となるのは前線とバックスのクオリティである。遅攻でのビルドアップではズレを作りにくいが、前を向けさえすればチャンスクリエイトの力はある。かつ速い攻撃が苦手ではないとなると、打ち合いを辞さないスタイルが一番チャンスを量産できそうなのだが、バックスの耐久力と前線の決定力がそこまで高くないことを考えると、トータルでは打ち合いの分がいいとは言い切れない。

 よって、相手の攻撃をスローダウンさせつつ、こちらの攻撃がスピードアップをさせるのが理想。制限付きの状態で、どのように前を向く選手を作るのかという難しいマネジメントに挑むことになる。

■奥行きとファーサイドのミスマッチで崩す

 川崎目線で言えば、この試合に勝つという部分でフォーカスするならば早い展開。スピードでちぎって前半のうちに勝負を決めるという今季の必勝パターンだろう。レジェンド総出演の昨年の等々力での対戦時のように相手のスローなペースに飲み込まれてしまうよりは、速い展開でおいていってしまう方が今季の川崎の強みは前に出やすい。先日、横浜FCと対峙した鹿島はチャンスを作られながらも、強度で殴り勝った感がある。あのイメージ。川崎としては仙台戦や札幌戦の前半など、直近で言えばあまりテンポが上がらない試合もあるので、いうほど簡単ではないのだけども。

 ただ、ここ数試合の文脈を見るとゆっくりとした攻撃も視野に入れているのかなと思う。特に横浜FCはライン間が広い状態になってしまうことが多いので、テンポ自体が上がらなくてもスイッチの入れどころから加速していければ攻略は可能だと思う。

 押し込んだ状態や5-3-2の形相手に使えそうなのは結果が欲しい小塚×長谷川のコンビネーション。人がいるのは幅方向なので縦の面を割る方向の攻撃の選択肢は有用ではないだろうか。

 仕上げのクロスにおいては、FWをファーに競りかける形を使いたい。横浜FCは横幅を狭く守る分、ファーにずれると身長的にミスマッチな形を比較的作りやすい。スペースに入ってくる形も当然有効で、横浜FCのブロックを外⇒外の関係で崩していきたい。

 こういった横浜FCの狙いどころになる部分は守備ブロックの強度がやや落ちることを守るための制限を端に発生している。制限がつくところを川崎としては狙いたい。

画像6

 守備において気を付けたいのは前を向くきっかけになるところ。特に大外の家長の裏とシミッチの脇でクレーベの落としを拾う選手たちのケア。

画像7

 IHとSBがこのエリアをどう棲み分けてカバーしていくのかがポイントになりそう。1つ加速を許すと連鎖的に前に進む横浜FCの攻撃の根源を断ち、2戦連続の完封勝利を狙いたいところだ。

【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)

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