①マンチェスター・ユナイテッド【2位】×レスター【4位】
■勝って当たり前を苦しんで制する
ファンのグレイザー家への抗議活動により延期になった先週のリバプール戦がスライドした影響で、今週は3試合頑張っていこうぜ!のハードモードとなったマンチェスター・ユナイテッド。しかも、相手は難敵ぞろいというしんどい環境である。アストンビラ戦から中1日で迎えた第2ラウンドはチャンピオンズリーグ出場権争いの真っ最中であるレスターだ。
中1日というのは正直逆立ちしても同じメンバーでは無理。ということで、この日はガラッと選手を入れ替えたスターティングメンバーとなった。両ワイドアタッカーのエランガとトラオレはお初である。ファン・デ・ベ―クがなんとなく余った場所に押し込まれている感じがして切ない。
そんな今季最も手薄な状態のユナイテッドを前にレスターは攻め込む。SHを絞り気味にして、外循環で崩していくのがこの日のレスターのやり方。高い位置に積極的に選手を配置し、ユナイテッドの守備を揺さぶっていく。早速入った先制点は降りるイヘアナチョに簡単にトゥアンゼベがつり出されてしまったところから。空いたスペースの1つずつずらしてファーに送ったこの得点シーンでは両チームの力量差、特にユナイテッドの守備陣の無力さが感じられた。
しかし、ユナイテッドはすぐさま追いつく。得点をもたらしたのはこの中では経験豊富といって差し支えないグリーンウッドの一瞬のひらめき。3人に囲まれても動じないままに得点へとつなげていく様子には凄みすら感じた。
後半も大枠の流れはレスターのままで変わらない。押し込みながらも得点はできず、サウサンプトン戦の嫌な流れを想起させるところだったが、セットプレーからソユンクが決勝点を生み出す。終盤は主力を投入したユナイテッドにやや押し込まれる機会も増えたが何とか逃げ切り。SHにオルブライトンを起用していると、展開や相手のシステムの変化に選手を入れ替えないまま対応できるのはいい。この試合でも劣勢となった終盤にはきっちりと自陣を埋めるべく走り回った。
勝ちは堅い!と思われている中で勝つことの難しさを痛恨していたここ数試合のレスター。この試合ではその難しい価値を見事に手にすることが出来た。
試合結果
マンチェスター・ユナイテッド 1-2 レスター
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:15‘ グリーンウッド
LEI:10’ トーマス, 66‘ ソユンク
主審:クレイグ・ポーソン
②サウサンプトン【17位】×クリスタル・パレス【13位】
■噛み合った攻撃陣が噛み合わない中盤を圧倒
セットプレーから力強く押し込んだベンテケのゴール、サイドからのクロスを巧みなコントロールを経て技ありなシュートまで持って行ったイングス。両軍のストライカーがそれぞれらしいところからの得点を見せつけるところからこの試合は始まった。
両チームの試合の進め方は対照的だった。ボール奪取のところから一気に加速を狙い、ロングカウンターを仕留める推進力勝負に出たクリスタルパレスに対して、サウサンプトンは横幅を使いながらのボール保持で応戦。スタイルの異なる形での組合となった。
どちらかといえば今季のサウサンプトンは急進派のスタイルだったように思うのだが、ここ数試合はゆったりと試合を運ぶこともちらほら。特に以前は絞りながら縦パスの受け手を務めていたSHがきっちり幅を取っている姿は非常に印象的だった。この部分はレドモンドがシーズン後半につれてコンディションを上げてきたのも大きいかもしれない。
その分、サウサンプトンの攻撃において存在感を増したのは両CH。アームストロングとウォード=プラウズのコンビはサウサンプトンが幅を取ることで横に広がったクリスタル・パレス相手のライン間にするすると侵入。得点のシーンにおいても非常に躍動した動きを見せた。
一方のクリスタルパレスは中盤がピリッとしない。同点の場面でやってきたPKの場面ではミリボイェビッチがフォースターにバッチリ止められてしまう。後半にそのミリボイェビッチに代わってアンカーにリーデヴァルドが入ると、中盤はスカスカに。3得点目のシーンはアンカーが防波堤として機能していないことの証左であろう。そりゃリーデヴァルドをアンカーに使ったらそうなるよ。
選手の特性と試合の流れをうまくかみ合わせたサウサンプトンが最後までかみ合うことがなかったクリスタル・パレス相手に完勝した。
試合結果
サウサンプトン 3-1 クリスタルパレス
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:20’ 75‘ イングス, 48’ アダムス
CRY:2‘ ベンテケ
主審:アンディ・マドレー
③チェルシー【4位】×アーセナル【9位】
■完遂も物足りないプランA
順位表的に力が上なのはチェルシー、そして今季の目標的にもモチベーションがあるのはチェルシー。したがって、多くのサポーターはチェルシーの勝利を予想していた試合であろう。
しかしながらアーセナルは抵抗を見せた。具体的にチェルシーに対して、攻守の仕掛けを施した。攻撃においてはサカとウーデゴールの縦関係がポイントである。シャドーでCBをつり出しつつ後方にスペースを作り、スピードに乏しいチェルシーのバックスに裏抜け勝負を挑もうというコンセプトである。
だが、シャドーのウーデゴールはスピードタイプではなくズマを千切れるわけではないし、WBのサカの対面はスピード豊かなチルウェル。これではミスマッチを作るのは難しい。したがって、アーセナルはビルドアップ時にウーデゴールがサカより低い位置まで下がり、ズマからチルウェルにマークを受け渡せる。その結果、ズマと対陣したサカが高い位置にスライドし、スピード勝負を挑めるという構図だ。1対1だけでは作るのが難しいミスマッチを2対2で作るというアイデアはとてもよかった。
守備面においてもズマを狙い撃ちしたアーセナル。逆サイドのアスピリクエタには簡単に持ち上がらせたのに対して、ズマが持った際には高い位置で構えてミスを誘発するように網を狭めていく。得点シーンでジョルジーニョのミスを誘発したのは逆サイドのスミス=ロウ。彼がスライドしてまで、ズマの保持は集中的にチームとして咎める狙いがあったようである。
アーセナルは撤退守備においてもかなり奮闘を見せたのは確かだが、一方でチェルシーには勝つチャンスがより多くもたらされていたのも事実。アルテタはプランAで押し切ることが出来た試合だが、仮に10分に抜け出したハフェルツが得点を決めることが出来ていたら、その先はどうなっていたのかは気になるところである。
アーセナルが今季チェルシーにダブルを達成したことは喜ばしいことなのは間違いないが、ではこの勝利が来季にどこまでつながるかは個人的には微妙なところではないかと思っている。アルテタの能力的な課題であるプランBに移行するところまで試合展開的にアルテタが追い詰められなかったこと、そしてプランAを完遂するにもまだ荒いところがあったこと(ビルドアップ体制や守備の受け渡しなど)、最後はこの試合のプランAを完遂したところで来季勝ち点がどれくらい積めるか?というところである。
特に最後の部分は気になるところで、昨季は専制守備+素早い脱出+決定力までが3点セットになっており、これが多くの強豪を倒すに至った要素であった。ただ、この試合では専制守備はともかく、自陣からの脱出から敵陣に迫った決定機は皆無。この試合では測れなかった決定力も今季通してみれば昨季終盤ほどの上積みはない。今季の課題となっている得点機会の創出の部分には手つかずのまま、チェルシーが手放した勝利を掴むことが出来たというのが現状だろう。
CL出場権がかかっているのならば、わざわざこんな口うるさいことを言わないのだが、すでにこのチームの目標は来季に向いている。それくらい厳しく見積もらなくては、現状のプレミアで上位争いをすることはかなわないはず。残り2試合も勝利は最低限で、内容にもこだわる必要がある。
試合結果
チェルシー 0-1 アーセナル
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
ARS:16′ スミス=ロウ
主審:アンドレ・マリナー
④アストンビラ【11位】×エバートン【8位】
■残り2試合、キャプテンはどこまでチームを引き上げるか?
順延していた19節がこの位置に入ったことで、前回対戦から12日ぶりに顔を合わせることとなった両チーム。12日前はトランジッション合戦の様相を呈していたが、この試合のアストンビラはどちらかといえば落ち着いていたように思う。
高い位置からのプレッシングは前回対戦時と変えず、ボールを奪い取った後のゆっくりとしたビルドアップと幅を取りながら相手を押し込みつつ、厚みのある攻撃を狙う。落ち着いたビルドアップも高い位置からのプレッシングもどちらかといえば、今季のアストンビラには足りない要素であり、若干キャラ変感を感じる試合でもあった。
エバートンは前回対戦とは大きく変わらずトランジッションに強みを振った形。特に運び役としてのリシャルリソンの役割は優秀で、エースのキャルバート=ルーウィンがビルドアップに奔走した結果、最終局面に関わりづらくなっていたウェストハム戦の反省点が生かされている部分といえるだろう。
一方で目についたのは保持の局面におけるCH2人の停滞具合。アランとドゥクレは共に優秀だが、この試合においては遅攻におけるボールの出しどころに非常に困っていた印象を受けた。片方がもう片方をサポートする様子もそこまでは見られず、ドゥクレのドリブル突撃以外はあまり可能性を感じなかった。ゴメスが入ってからはだいぶ息が吹き返したけど。
この試合で最も大きなトピックスはグリーリッシュの復帰だろう。1人でアストンビラを別次元に押し上げることが可能なキャプテンの復帰はチームにとってこの上ない朗報。この試合では決定的な働きに至るまでにはいかなかったが、アストンビラはトッテナムとチェルシーという欧州カップ戦出場権を争うチームとの対戦を残している。ロンドンの両雄は渋い顔でこの復帰の姿を見守っていたはずだ。
試合結果
アストンビラ 0-0 エバートン
ヴィラ・パーク
主審:マーティン・アトキンソン
⑤マンチェスター・ユナイテッド【2位】×リバプール【6位】
■鋭いリバプール、カムバック
地獄の中1日明けの2セット目。若手主体だったレスター戦と異なり、多くのメンバーにとってはアストンビラ戦以来の中3日のスタメンでリバプールとの試合に臨むことになった。
そんなユナイテッドは立ち上がりから積極的なプレッシングをかけてリバプールのポゼッションを阻害していく。リバプールは立ち上がりこそアリソンがやらかしかけたが、基本的には中盤にチアゴとファビーニョが揃っていることもあり、プレスの耐性は上々。ユナイテッドのプレッシングをいなすことができていた。
しかし、先制点はマンチェスター・ユナイテッド。ワン=ビサカの持ちあがりからブルーノ・フェルナンデスがオウンゴールを誘発するシュートで先制する。ユナイテッドは先制後も左はポグバの間受けを活かした形、右はラッシュフォードのスピードを活かした形で攻め込んでいく。
リバプールもすぐさま反撃に。アレクサンダー=アーノルドの積極的な持ち上がりが加速をさせると、押し込む展開からジョッタが同点ゴールを呼び込む。さらに前半終了間際に勝ち越しゴールまで決めて前半で試合をひっくり返す。
後半頭からリバプールは圧をかけ続けてユナイテッドのビルドアップ隊を牽制。立ち上がりに入ったリバプールの3点目はルーク・ショウの持ち運びを引っかけたところから。この試合のリバプールのカウンターはここ数試合にないくらいスムーズでボールカットからシュートまでが非常に無駄なく行われていた。
だが、ラッシュフォードを得意な左サイドに移したことにつながった2点目を取ったところからユナイテッドは巻き返す。ルーク・ショウにとっては持ち運び2点目の起点に。失点のリベンジをしてみせた。
押し込む展開に同点の胸が膨らむユナイテッドだったが、リバプールが追加点を仕留める。4点目の得点は3点目と同じく相手のドリブルをカットしたところから。今度は突っ込んでロストしてしまったのはマティッチ。隙の無いカウンターを再び炸裂されたリバプールが試合を決める。流れを持っていかれる部分もあったが、強みのポジトラでシャープさを見せたリバプールがユナイテッドをねじ伏せた。
試合結果
マンチェスター・ユナイテッド 2-4 リバプール
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:10’ フェルナンデス, 68‘ ラッシュフォード
LIV:34’ ジョタ, 45+3′ 47′ フィルミーノ, 90′ サラー
主審:アンソニー・テイラー
⑥ニューカッスル【15位】×マンチェスター・シティ【1位】
■意識はサポートよりも内へ
チェルシーに敗れて以降、マジック対象チームであるマンチェスター・ユナイテッドが中1日で計3試合をこなすという鬼日程に陥ったため、試合をする前に優勝が決まってしまったマンチェスター・シティ。この試合ではホームのニューカッスルが王者を迎えての入場となった。
試合内容も優勢だったのは王者。立ち上がりはカンセロが絞って1列前に入るシーンがあったが、徐々に試合が進むにつれてカンセロは左の大外を賄うように。残りの3枚のDFで2トップに数的優位を確保、かつ両ワイドのDFはサイドの攻撃の案内人となり、同サイドにパスを入れる役割だ。
中央ではロドリがアンカーの位置で、ギュンドアンとベルナルドがインサイドへ。インサイドハーフの2人の意識はサイドの手助けよりもPA内に入っていく方に向いていた。右のベルナルドの方は大外に流れることもあったが、周りとのパワーバランスを考慮しつつ、サイドに過剰に人をかけることはしなかった。その分、PA内の迫力は明らかでガンガン攻め込むことになった。3-1-4-2のような形でPAにおける破壊力を示した格好である。
点がたくさん入った試合ではあったが、終始リードしていたのはシティ。一時は逆転はされたが、キャリア初のハットトリックを達成したフェラン・トーレスがすぐにゴールを叩き込みあっさり再逆転まで向かう。
ニューカッスルはサン=マクシマンの単騎を中心にロドリ周辺を狙い撃ち、実際に得点を重ねていたのだから特に攻撃面では文句をつけることが出来ない。無粋なタラればをいうのであればPKを決めておけばということになるんだろうけども。
ニューカッスルの問題はサン=マクシマンの電池切れ以降の迫力の低下。動きが落ちた70分以降はかなり厳しい出来に。来季以降の彼らの課題はサン=マクシマン不在時にどのように推進力を出していけるかという部分になるだろう。
試合結果
ニューカッスル 3-4 マンチェスター・シティ
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:25′ クラフト, 45+6′ ジョエリントン, 62′ ウィロック
Man City:39′ カンセロ, 42′ 64′ 66′ トーレス
主審:ケビン・フレンド
⑦バーンリー【14位】×リーズ【10位】
■三度成功したビエルサの奥の手
ビエルサのリーズは一貫して4-1-4-1。交代選手も含め試合中に並びを変えることはほとんどなく、シーズンを通してこの初期ポジションの並びを大きく破壊するようなフォーメーションの変更はあまり見られなかった。
ただし、例外はある。それがこの日見せた3-3-3-1の並び。自分の記憶に間違いがなければ今季これがスタートから採用されるのは3回目。そしていずれもこの日のバーンリーのように4-4-2の相手だったはず。そして、そのうちの1回はホームでのバーンリー戦だったはずである。
この3-3-3-1の特徴としては自動的に4-4-2の間に人が立つような構造になることが挙げられる。リーズの3-3-3-1は中盤の3が外に開くことが多く、前方と後方に対して斜め方向のパスコースを確保することも特徴の1つといえるだろう。後方では定常的に数的優位が確保されており、ボールの持ち運びは担保されている状況である。
リーズの戦い方はサイドの大外から相手のCB-SB-CH-SHの四角形の中に入り込み、ここで前を向く選手を作ること。それが難しければ、後方からサイドチェンジを促し逆サイドからもう一度この形を作ることである。リーズは大外⇒大外のサイドチェンジを積極的に使いながら、やり直しつつバーンリーのゴールに迫る。サイドチェンジの精度こそ、そこまで確かなものではないが、やり直しを阻害する要素がほぼないため、試行回数は容易に重ねることが出来たリーズ。クリヒが先制点を得てなお、リーズの勢いはなかなか止まらなかった。
バーンリーは戦う意気込みこそ見られはしたが、相手を捕まえられずにズルズル後退してしまう上に、保持では人を捕まえられてしまいほぼ呼吸ができない状態に。後半頭にフィジカル主体の展開で状況をやや引き寄せたものの、リーズに2点目が入ってしまうと万事休す。息を吹き返してしまったリーズに飲み込まれる形で失点を重ねていった。
同じく3-3-3-1が使われた前半戦のバーンリー戦やサウサンプトン戦のように、無失点での快勝となったリーズ。相手との力関係やフォーメーションを見極めた奥の手システムは今回も見事に機能した。
試合結果
バーンリー 0-4 リーズ
ターフ・ムーア
【得点者】
LEE:44′ クリヒ, 60′ ハリソン, 77′ 79′ ロドリゴ
主審:グラハム・スコット
⑧サウサンプトン【17位】×フルハム【18位】
■可視化された断絶
順位的には17位と18位というシックスポインターになりそうな試合だが、残念ながら両者の間には来季のプレミア残留とチャンピオンシップへの降格が共に決定しているという大きな断絶がある。
共に似た陣形、似た形でのビルドアップを行う両チーム。具体的には4バックのうち、片側のSBを高い位置に上げて(フルハムは左のアイナ、サウサンプトンは右のウォーカー=ピータースが高い位置を担当することが多かった)相手のプレス隊2枚に対して、1人を余らせる状況を作っている。
違ったのはそこから先のクオリティの部分。特にプレス耐性だ。フルハムが前節のバーンリー戦同様に、相手のプレスに苦しみ続ける状況から逃れられずにいるのをよそに、サウサンプトンは悠々とそのプレスから脱出する。特にCHのアームストロングとウォード=プラウズへのフルハムへのプレッシングが弱まっていたのがサウサンプトンにとっては幸運。確実にボールを運び、前線に届ける役割をこなせる彼ら2人がフリーになりやすい状況を活かし、サウサンプトンの方が押し込む機会を得る。この日の得点においても、彼らがボールを運ぶことできっちり攻撃を中押しし、美しい崩しからのフィニッシュを迎えることができていた。
貴重な若い戦力が得点を決めたのは両チームにとって明るい材料。サウサンプトンでは途中交代のテラが、フルハムでは先発に抜擢されたカルバーリョがそれぞれスコアラーに名を連ねた。共に勝敗に大きくかかわるゴールにはならなかったが、喜び溢れるゴール時の表情と仲間とそれを祝いあう様子は見ていてほほえましかった。
個人の内容は明るい材料はあったが、チームとしての完成度はサウサンプトンの完勝。順位は近くても断絶はある。順位表に嘘はなしと感じられる結果に終わった試合だった。
試合結果
サウサンプトン 3-1 フルハム
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:27′ アダムス, 60′ テラ, 82′ ウォルコット
FUL:75′ カルバーリョ
主審:クレイグ・ポーソン
⑨ブライトン【16位】×ウェストハム【5位】
■膠着の打開は交代選手から
欧州カップ戦出場権獲得を目指すウェストハム。CL出場権は厳しくなってきたが、何とか上位陣に食いついていきたいところ。
だが、この試合では好機を作り続けたとはいいがたい。特に撤退するブライトンの守備に対して苦戦。スピードアップしたカウンター以外の手段においてはなかなか解を見出すことができない。サイドの崩しも停滞気味でなかなかブライトンに対してダメージを与えられるクロスを上げることができない。
対するブライトンの崩しもそこまでうまくいっていたとは言えなかった。FWの2人のオフザボールの動きは相変わらずワールドクラスで、外に流れて深さを作り、相手を押し下げるところまではいっていた。一方で、ゴールを脅かすという意味ではこちらももう一味足りない状況に。ただ、サイドの崩しという観点で言えばウェストハムよりもブライトンの方がスムーズにいっていた。
前半に比べれば後半はオープンな状態に。それでも終盤まで膠着が続いていた両チーム。流れを変えたのは交代選手だった。先制したブライトンで決定的な仕事をしたのはタウ。19節以来の出場となった南アフリカ人選手によって、ウェルベックにアシストがもたらされた。
そして、ウェストハムに同点ゴールをもたらしたのはベンラーマ。エリア外から狙い済ました一撃はウェストハムに水際で勝ち点1を持たらすものになった。
試合結果
ブライトン 1-1 ウェストハム
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRI:84′ ウェルベック
WHU:87′ ベンラーマ
主審:アンドレ・マリナー
⑩クリスタル・パレス【13位】×アストンビラ【11位】
■苦手な局面からの逆転劇
立ち上がりから押し込んでいたのはアストンビラ。序盤戦は手早い攻撃、そして手早い撤退という形から手堅いチームという印象だった。が、ここ数試合は保持から押し込むやり方に注力しているように見える。それに伴って頑張っているのはハイプレス。敵陣での積極性はシーズン終盤にかけて増したように思う。
加えて、後方からのフィードも◎。ミングスの欠場でこの部分は割引ではないかなと思ったけども、クリスタル・パレスへのライン間へのフィードは彼がいなくとも刺さっていた。立ち上がりから保持で波状攻撃を仕掛けられている間に先制までこぎつけたアストンビラ。ベンテケに同点弾を食らっても、即座に反撃。PA内の処理が甘くなったところをエル・ガジが詰めて勝ち越す。
保持で押し込むクオリティで言えば、アストンビラに分があったように見えたが、後半にクリスタル・パレスは持ち直す。引き込んだ状態で人につく形を作り出すアストンビラの守備を打開したのはザハとエゼのコートジボワールコンビ。左サイドに狙いを定め、パス交換で作ったスペースからドリブルで進撃する。
後半は苦手な保持でアストンビラを押し込んだクリスタル・パレス。得意のロングカウンターから同点まで追いつくと、決勝点となった3点目は1点目をアシストしたミッチェルが仕留める。苦手な局面からの逆転劇を見せたクリスタル・パレス。前半の綱渡りな戦いを見事に後半に巻き返して見せた。
試合結果
クリスタル・パレス 3-2 アストンビラ
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:32′ ベンテケ, 76′ ザハ, 84′ ミッチェル
AVL:17′ マッギン, 34′ エル・ガジ
主審:デビッド・クーテ
⑪トッテナム【7位】×ウォルバーハンプトン【12位】
■連携難対決の決め手になったホイビュア
前半から攻め立てていたのはホームのトッテナム。中軸を担っていたのは左サイドのソン。トッテナムは左サイドにおいてソンを中心に1on1の局面を作り出す。だが、サイドで勝負する状況は作れているものの、そこから一歩先に踏み込む段階で苦労をしていたトッテナム。理由としては同サイドとのレギロンとの連携がかみ合わないことが大きかった。静⇒動に移行するフェーズがほぼソンのドリブルに頼っていたので、この部分でレギロンのオーバーラップを効果的に使えれば、もう少し違ったのではないかなと思う。
一方のウルブスも前節良好な縦関係を築いたヌーリとポデンスのコンビが解体されてしまったこともあり、単騎突破色の強いスタイルに逆戻りしてしまった。なんか残念である。ギブス=ホワイトも頑張ってはいたけども、どことなくトラオレに頼る雰囲気になってしまった感は否めない。ちなみにファビオ・シルバはやはりサイドに流れてラインと駆け引きする方がやりやすそう。ジョゼとの同時起用の方がハマっていたように思う。
共に単騎突破による破壊力対決っぽくなってきたところで違いを見せたのがホイビュア。真ん中をパスでかち割って、GKと直接対決の場面を作ってしまえばその先をどうこうする必要なんてないでしょ!!といわんばかりのお膳立てを決めて見せた。
ホイビュアは2点目にも前方のスペースの飛び込みで今度はスコアラーに。この場面ではレギロンの攻め上がりも効果的に使えており、時間と共に連携が向上したことをうかがわせたゴールシーンでもあった。
ウルブスは雨あられのように浴びせられる枠内シュートをことごとくパトリシオが止めるも、反撃に転じることはできず。連携難を解消したスパーズがウルブスをねじ伏せた。
試合結果
トッテナム 2-0 ウォルバーハンプトン
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:45′ ソン, 62′ ホイビュア
主審:マーティン・アトキンソン
⑫ウェスト・ブロムヴィッチ・アルビオン【19位】×リバプール【6位】
■大きすぎる3ポイントは歴史の1ページと共に
保持に振り切った感のある中盤、積極的なオーバーラップを見せるSBを活用する幅を使った攻撃、立ち上がりから見せたハイプレス。リバプールはこの試合を序盤で決めてしまいたいように見えた。このやり方をどの試合でもできないのはバックスの耐久力に拠るところにあると思っている。だが、ウェストブロム相手ならば、何とか押し切れるという判断なのだろう。
だが、目論見とは裏腹にこの試合のリバプールの支配力は怪しい部分もあった。特に狙い撃ちにされたのはウィリアムスがCBを務める左サイド。ロバートソンが留守にするとこのサイドはもろく、フーロンとフィリップスの縦関係でいとも簡単にぶっ壊すことができた。ロブソン=カヌの先制点もこの形からだ。いいことなのか悪いことなのかわからないが、アレクサンダー=アーノルドがDFリーダーとして君臨する試合を今季見るとは思わなかった。
前半のうちにサラーのゴールで追いついたリバプール。だが、彼らがCL権を得るために必須なのは3ポイント。後半はより攻撃にバランスを傾けながら、ゴールに向かう。当然その分、ウェストブロムに与えるチャンスも多かった。ウェストブロムがおそらく来季を見据えてレンタル中のディアーニュを起用しなかったのはリバプールにとって幸運だったはずだ。
だが、そうしたこの試合をめぐる云々をぶっ壊すドラマが試合のラストに待っていた。誰もが驚いたアリソンのゴールで奇跡の3ポイントを持ち帰ることに成功したリバプール。CLの出場権獲得に向けた一気に視界が開けた劇的なゴールは間違いなく20-21のプレミアの歴史の1ページとなるものだった。
試合結果
ウェスト・ブロムヴィッチ・アルビオン 1-2 リバプール
ザ・ホーソンズ
【得点者】
WBA:15′ ロブソン=カヌ
LIV:33′ サラー, 90+5′ アリソン
主審:マイク・ディーン
⑬エバートン【8位】×シェフィールド・ユナイテッド【20位】
■取れなかった重さ
EL出場権獲得の可能性を残しているエバートン。立ち上がりから攻め立てて得点を狙いに行く。しかしながら、前に積極的にいけばいくほど後ろがもろくなるのが今のエバートンである。
その後ろをついて先制点を得たのはシェフィールド・ユナイテッド。しかも、きれいに崩してのものである。左からのロビンソンのカットインにフリーズしてしまったエバートン。マイナスのコースに出しそうなタイミングで裏に動いたジェビソンとホルダーのロビンソンの意図があったことが奏功した。
巻き返しを図りたいエバートンだが、雨が強くなったことが頭を悩ませる。滑りやすいピッチでのボール回しに悪戦苦闘。攻め込むどころか、自陣でのバックパスをさらわれあわや追加点という状況を作られてしまう。ボール回しにおいても後ろ重心なのは悩みの種で、重要なエリアに行けず結局はキャルバート=ルーウィンの高さ頼みになってしまう。
アランとドゥクレの後方でのボール回しが前への推進力を生まないという課題はここ数試合と同じなのだが、ハメスが落ちてきても特に変化はなかったため、前線の動きが重たかったのも一因といえそう。オフサイド、なかったもんね。あれだけ裏に引っ張る動きがなければ、後ろに重くなるのは至極当然ともいえる。
終盤まで重さの抜けなかったエバートン。後半にシグルズソンを投入し、攻撃的な形にシフトするも、最後までシェフィールド・ユナイテッドに好機を作られる状況は変わらなかった。最下位相手に痛い敗戦を喫してしまった。
試合結果
エバートン 0-1 シェフィールド・ユナイテッド
グディソン・パーク
【得点者】
SHU:7′ ジェビソン
主審:ジョナサン・モス
おしまいじゃ!