このプレビューは対戦カードの過去の因縁やジンクスを掘り起こして、試合をより一層楽しむための物です。
Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第20節
2021.5.12
川崎フロンターレ(1位/13勝2分0敗/勝ち点41/得点39 失点10)
×
ベガルタ仙台(19位/1勝3分8敗/勝ち点6/得点8 失点25)
@等々力陸上競技場
戦績
直近の対戦成績
直近5年間で川崎が10勝、仙台が1勝、引き分けが3つ。
川崎ホームでの試合
直近10試合で川崎が7勝、引き分けが3つ。
Head-to-head
<Head-to-head>
・川崎はリーグでの仙台戦15試合無敗(W10,D5)
・2年連続の川崎のシーズンダブルは当該カード史上初めて。
・川崎はホームでの公式戦での仙台戦は6連勝中。
・仙台は川崎ホームの公式戦にて無失点で終えたことがない。
川崎はリーグ戦での仙台戦は15戦無敗。最後に敗れたリーグ戦は2013年と8年前までさかのぼる。この試合では78分に決勝点を挙げて川崎を2-1で下したものである。
しかしながら、当該カードは仙台が引き分けで粘ることで、川崎のダブル達成を阻止することもしばしば。そのため、2年連続でのシーズンダブルは記録したことがない。ちなみに、直近2回のシーズンダブルは2020年と2017年であり、川崎はどちらの年もリーグ優勝を達成している。
川崎のホームではさらに川崎有利の傾向は強まる。東日本大震災直後に記録した2011年の勝利が過去22戦で唯一。17戦は川崎が勝利と非常に偏りがある結果になっている。
スカッド情報
【川崎フロンターレ】
・小林悠は広島戦で負傷の模様。
・山村和也は左大腿二頭筋肉離れで3か月の離脱。
・大島僚太も長期離脱中。
【ベガルタ仙台】
・エマヌエル・オッティは左ハムストリングの肉離れで離脱中。
・田中渉は右ハムストリングの肉離れで離脱中。
予想スタメン
Match facts
【川崎フロンターレ】
<川崎のMatch facts>
・引き分け以上でJ1リーグの連続無敗記録に並ぶ。
・ホームゲームは直近12試合無敗(W11,D1)
・降格圏にいるチームとの対戦は直近14試合無敗(W11,D3)
・現状のテーブルでボトムハーフにいるチームとのホームゲームでは失点していない。
・田中碧は2020年9月以来ホームでのリーグ戦でゴールがない。
・レアンドロ・ダミアンはリーグ戦10得点。加入初年度の得点を越えている。
難敵である名古屋連戦、そして直後の大阪遠征を乗り切った川崎。次の仙台戦で引き分け以上で2013年の大宮が記録した21戦連続無敗記録についに並ぶ。得意のホームで快勝を狙いたいところである。
降格圏にいるチームにはめっぽう強く、最後に敗れたのは2018年のG大阪。宮本政権の連勝街道の起点となったあの試合以来、14試合無敗である。今年も現在のボトムハーフである柏、徳島、大分との試合ではホームで無失点と足元をすくわれることはあまりない。
得点の面で気になるのは田中碧。ミドルを積極的に狙うシーンはあるのだが、どうも得点までは結び付かない。逆に好調なのはダミアン。すでに初年度の得点を上回っている。初年度のプレータイムを越えるのも時間の問題で、仙台戦もしくは札幌戦で1000分越えを達成できる見込みだ。
【ベガルタ仙台】
<仙台のMatch facts>
・失点25は横浜FCに次いで多い。
・昨年同時期に比べて勝ち点が5少ない。
・アウェイゲームは直近8試合未勝利(D2,L6)
・今季の公式戦の2つの勝利は共に1-0。
・上原力也が唯一複数得点を挙げている対戦相手が川崎。
・等々力で川崎相手に唯一勝利した際に仙台を率いていたのは手倉森監督。
横浜FCに次いで多い失点が足かせとなり、勝ち点は伸びていない。ようやくホームでの長い未勝利記録に終止符は打ったものの、昨年同時期と比べても勝ち点は5少ない。
今季アウェイのリーグ戦では未勝利。昨年の最終節の清水戦以来勝利がない。カップ戦も含めた今季の勝利は2つだが共に1-0。このジンクスに倣うならば仙台は勝利のためには等々力で未達のクリーンシートを達成する必要がある。
今年のユアスタで得点を挙げた上原はリーグ戦で唯一複数得点をあ下ている相手が川崎。しかし、磐田時代も含めて通算5戦5敗と勝ち点を持ち帰れたことはない。仙台が等々力で唯一勝ち星を挙げた経験のある手倉森監督の下、アップセットを狙いたいところだ。
展望
■安定は少々増したが・・・
前回対戦は前半で川崎が大量得点を挙げたことであっさりと決着。仙台にとって問題となったのはプレスの耐性。定まらなかったバックラインが川崎のプレッシングの強度に耐えられず、自陣での脱出が難しい状態になった。
その時期に比べれば徐々にメンバーは固定出来た分、落ち着きは見られたように思う。CBの吉野、平岡やCHの上原、松下のセンターラインを固定することでコンビネーションの不安という部分は取り除かれたといっていいだろう。
センターラインで言うと、前回対戦で負傷してしまった関口の復帰は大きい。降りて受けるタスクをこなしつつ、自らもボールと同じく縦に運んでいく形を行うことで、各ゾーンにおける仙台の攻撃における数を担保することができる。
ユアスタでの川崎戦で印象的だったのは上原力也のトップ下起用だが、このコンセプトも関口のトップ下起用と似ている。前線からのプレッシングに加えて、ゴール前にも組み立てにも顔を出せるダイナミズムは今の仙台にとって必要な部分。これが現状できるのは関口か上原のどちらかではないだろうか。
仙台の縦方向の移動においてサイドで重要な役割を果たしているのが蜂須賀。関口と同じく、高い位置取りのタイミングが秀逸で、サイドチェンジの受け手になったり攻撃の中押しのところで特に有用な存在になる。特に右サイドから上げるGKに向かうクロスは脅威だ。
同じSBを主戦場としている中でもよりファイナルサードで効いてくるのが真瀬。最後の攻略の局面である大外のトライアングルは、彼のオフザボールの動きがエンドになりエリアに迫ることもしばしば。仙台としてはここからラストパスを送りたいところだろう。
前回対戦からの上積みといえるのは加藤。パンチ力のあるフィニッシュワークで主に内側に入り込んだときに輝く存在である。全体を押し上げられて外にSB、内側にSHが入り込める形が今の仙台の理想といえるだろう。
一方で前進におけるズルのなさという課題は健在。浦和戦は特にこの課題が顕著に表れた展開。スピードアップしながら敵陣に迫るような前進のキッカケをそもそもつかむことができない。3人以上がリンクしながら前を向く選手を作り、相手の守備ブロックを出し抜いて前進する機会は限定的で、個人でそれを生み出せる選手もいない。
浦和戦では後半に交代で入ったマルティノスがその推進力を担保した部分はある。だが、周囲との連携の要素が薄いことや、独力で攻撃を完結させるほどフィニッシュワークに迫力がないこと、そして守備における規律面でチームにコミットしきれないなど副次的なマイナス要素も少なくはない。どうやってボールを運ぶ要素を担保するのかは難しい選択になる。
■仙台のスタメン選びの注目点は
守備に目を向けると前半で見られた過度なボールのないサイドからのスライドがなくなったのは好印象。一方でボール周辺の圧力は不十分。ニアのスペースが空いてしまう状況が頻発している。
他の試合と比べると浦和戦は相手に持たせていく要素が強かったのか、序盤を除けばプレスを控えながら自陣で構える場面もあった。一方で札幌戦のように速い展開になった試合では高い位置からのプレッシングに行くことも珍しくはない。
ただ、バックラインが高い位置からボールを狩りに行くことが得意なわけではなく、タイミングが遅れて突っ込んでいってしまうことでカードトラブルに陥ってしまう展開もしばしば。したがって、川崎の得意な早い展開は避けたいはずで、前節のG大阪のようにある程度スローダウンさせて川崎と向き合いたいはずである。
仙台の人選は難しい。中2日という制限もある中で予想も困難だったが、見どころを以下の3つに絞った。
1. マルティノスの出場があるのか。
2. トップ下を置くのか?そして人選は?
3. CHのカラーは?
難はあるが独力で運べるマルティノスを使うかどうかは微妙なところ。ちなみに4-4-2で挑む場合は、川崎のアンカーをどうケアするかが悩ましい。前回はマルティノスをトップに使ったが、その状態では正直高い貢献度の前線からの守備に期待するのは難しい。
トップ下には連続スタメンになるができれば上原か関口を起用したいところ。ズルができない仙台において、サボらずに水を運ぶ人は間違いなく必要だろう。
上原をトップ下に置く際に合わせて考えないといけないのはCHの人選。CBが本職の選手を1列前に置くのか、あるいは新加入のフォギーニョを使うかどうかは気になるところ。中盤でサイズや強度の部分で後手を踏まないチョイスをしてくる可能性はあるはずだ。
ただそうなると、その分仙台の保持の部分での不安は増す方向性。全てを網羅するのは難しいのが現状の中で、どうバランスを意図的に傾けていくかが問われる90分になりそうだ。
■小塚で新境地開拓はできるか
川崎が保持で狙いたいのはG大阪戦と同じくハーフスペース+大外の連携で壊すこと。ハーフスペースに立つ選手へのアプローチは遅れがちな仙台に対して、先手を打ってボールを循環させて、むしろ出てきた選手のスペースを使いたいところ。
大外に3人を並べるやり方も効果的で、SBをピン止めできた状況で同サイドを縦に進むやり方は同サイドのクローズが苦手な仙台にとっては効く部分だ。
予想スタメンには知念を入れた。彼にはPA内の仕事はもちろんだが、特に仙台のバックラインで人についていきやすいという習性を利用してほしいところ。行動範囲を広げつつ、ポストを決めてインサイドハーフが上がって入りこむスペースメイクができれば、他のFWに対しての勝負できる部分が増えるはずである。
仙台に対しては基本的にはテンポを上げて攻守に粗をあぶりだすやり方が効果的なように思う。要は今季ここまで川崎が得意としてきたやり方である。ただ、個人的にはリーグ戦は一山超えて、ここからACLに向けてもう一度チームの幅広げていくフェーズにあるのではないだろうか。
日程的には中盤より前は積極的にメンバーを入れ替えるタイミングなのかと思う。特に中盤は田中、旗手、脇坂、シミッチへの依存度が上がっているので、この部分での台頭する選手が欲しいところ。強度と精度のタンデムで勝負できる遠野や橘田、アンカー塚川スタートでのゲームメイクなどチェックしておきたい部分は多い。
特に気になるのは小塚。ここまでのIHのタスクである2人分走るというタスクには明らかに不向き。おそらく途中出場ですら、このタスクをこなせるかは微妙なところだろう。家長に温存の可能性があるこの試合において、小塚主体としてのテンポでの崩しを試すことができれば川崎としては大きいはず。大島を組み込む将来を見据えても、テンポを落としつつゴールに迫ることを両立する形を描いてみてもいいように思う。個人的には前半にその形を試し、難しいならば交代でギアを上げる二段構えがベストか。
対策を跳ね返して強くなっていく部分ももちろんだが、主体的にテンポを調整しつつ違うソリューションがあるのかどうかは必要も必要。むしろ、そうでなければ小塚を獲得はしないはずだろう。再構築で幅を広げる一戦になればいいが。
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)