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「『ナンバー3』が左右する展開」~2021.4.29 UEFA Europe League Semi-final 1st leg ビジャレアル×アーセナル プレビュー

目次

Fixture

UEFA Europe League Semi-final 1st leg
2021.4.29
ビジャレアル×アーセナル
@エスタディオ・デ・ラ・セラミカ

Match facts from BBC Sport

・両チームの対戦は欧州コンペティションで5回目。過去の4回はチャンピオンズリーグの05-06の準決勝と、08-09の準々決勝。ビジャレアルはこの4回でアーセナルに勝ったことがない。(D2,L2)
・ただし、アウェイの2試合ではアーセナルはビジャレアルを下したことがなくいずれもドロー。
・アーセナルはインターナショナルフェアーズカップ時代を含めて欧州カップ戦の準決勝進出は10回目。直近4年のELで3回目の準決勝進出を決めている。
・アーセナルは直近9回の欧州大会の準決勝の1stレグにおいて1敗のみ(W5,D3)。しかし、その敗れた1回はアウェイでの試合。09-09のCLでのマンチェスター・ユナイテッド戦。
・ウナイ・エメリは6回目のEL準決勝進出で、2番目に多い監督よりも倍以上。アーセナル時代の18-19を含めて4回のファイナル進出を決めている。
・ニコラ・ペペは今季のELで9得点(4G,5A)に関与しており、最多タイ。準々決勝においても両レグで得点を決めている。
・ジェラール・モレノは今季先発したELの6試合のすべてで得点に関与(6G,2A)

予想スタメン

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展望

主軸がハッキリの攻撃、フェーズで基準が変わる守備

 ビジャレアルの保持はCBが自陣の深い位置からPA幅、もしくはその外まで開くくらい幅を取る。その前方にCHがより狭い位置を取りながら組み立てる。基本的にはGKを含めたこの5人で自陣からゆっくりと進めていく。

 サイドの幅取り役はアシンメトリー。右はSHのチュクウェゼが務めるが、左はSBのペトラザやアルベルト・モレノが務める。同サイドにおけるサイドの相方はより内側の仕事に専念。すなわち、左のSHのトリゲロスは内に絞って前線の2トップに3枚目として加わる。一方の右のSBであるガスパールやフォイスは内側に絞りながら幅を取るチュクウェゼのサポートを行う。

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 最短で直線的に進める時はそのルートを取ることもあるのだが、基本的にはビジャレアルは長いボールを軸とした早い攻撃はあまり得意ではない印象。アーセナルと同じく攻撃の加速の部分においては課題があるチームである。遅攻においてはサイドで多角形での崩しを行う。

 攻撃は右のSHのチュクウェゼを主体して相手をどのように動かすかが中心になる。したがって、彼のいるところから攻撃が始まり、なるべくいい形で得点源であるジェラール・モレノの下にボールを届けることが最終的な目的となる。

 非保持においては相手陣に強くプレスに行くフェーズとブロック守備で構えるフェーズの2つを使い分けている。2つのフェーズにおいては、守備の基準がガラッと変わることが大きな特徴。敵陣深い位置では人を捕まえるマンマーク志向の守備を行う一方で、ミドルゾーンより後ろ側では4-4-2ブロックを主体として、その中で人を捕まえるという基準になる。

■攻守の出来を左右する怪我人事情

 アーセナルが非保持に回る時に気にするべきはチュクウェゼへの対応方法である。クイックネスは非常に高く、プレミアリーグで普段のプレーテンポが早いアーセナルにとっても苦戦をする危険性はある。

 真っ先に避けたいのはカウンターで中央にスペースを空けること。先述の通り、頻度としてはあまり多くない印象。アラベス戦に比べると、バルセロナ戦の方がチュクウェゼの中央での仕事は多い印象だったので、支配的にボールを握れない相手に対しては手早く攻めていく手段を取ることが多いのかもしれない。だが、最短ルートなので当然怖さはある。

 遅攻においては右の大外からタメが効くチュクウェゼからの仕掛けがエリア内へボールを届ける手段となる。ただ、右サイドの攻撃は連携面ではそこまでスムーズとは言えない。特に、大外からインサイドにパスを送った後、チュクウェゼ自身もインサイドに特攻していく癖があり、こうなると守備側としては中央を固めてしまえば進める方向が進むことができない。

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 一方でサイドにおいてアーセナルに対して効果的なのは大外へ縦に進みながらエンドラインに旋回し、相手の最終ラインのマイナス方向を創出する動き。アーセナルとしてはこれを防がないといけない。わかりやすいのはエバートン戦で食らった失点シーンのリシャルリソン。あのように入り込まれたような形は避けていきたいということである。したがって切るのは縦側。内側に誘導しつつ人が多い中央で絡めとるイメージである。

 アーセナルは高い位置からのプレッシングもレパートリーに入れるべき。自陣の深い位置からボールを進める割には、実入りがリスクに見合うほど効果的な前進ができているかといわれると怪しいところ。もっともここはアーセナルの弱みでもある部分なのだが。ロングボールの的もないので機動力のある前線のプレッシングでかき乱せれば、ボールを捨てさせることで波状攻撃に移行できる可能性もある。

 アーセナルの攻撃においては端的に言えば相手陣に押し込めれば押し込めるほどいい。相手のマンマーク主体のハイプレスを回避して、ブロック守備モードに切り替えさせる機会をどれだけ増やせるかはアーセナルの勝利に直結する。

 4-4-2ブロックそのものはコンパクトに整えてミドルゾーンを維持しようとするが、ボールホルダーを放置することが非常に多い。したがって、狙うべきはまずは裏である。また、大外に2人並ぶことで同サイドのSBとCBを釣りだせる上に、その他の選手が連動しないことが多いので、2人を置き去りにする形で裏を取り、一気に侵攻する形は定点攻撃としてはパターンを持っておきたいところ。

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 逆に狭いスペースにショートパスを引っかけて突っ込んでいくと、手早くジェラール・モレノにボールを届ける機会を渡すことになる。したがってアーセナルとしては自陣に人数をかけてでもプレスを回避して、まずはプレッシングをあきらめさせることが第一。そして、ブロック守備に切り替えさせてからは外循環を含めた裏狙いでゴールに進んでいく。ただし、ホルダーを捕まえに来た際にはCHのカプエとパレホに段差が出来ることがかなり多いので、中央から進むチャンスも十分にある。

 まとめるとアーセナルにとってはプレッシングの回避とブロック守備攻略の仕上げにおける前線のオフザボールの動きは最重要要素といえる。サカ、スミス=ロウ、ラカゼット、ペペのように計算できる戦力に加えて、マルティネッリやエンケティアのように機動力で勝負できる前線にも活躍できる機会はあるはずだ。

 アーセナルはこの試合において多くの怪我人の復帰が示唆されているが、ビジャレアルと対峙することを踏まえると最も重要なのはキーラン・ティアニーの起用の可否だろう。できればチュクウェゼは本職SBで向き合いたいところ。エバートン戦における失点シーンのリシャルリソンの突破はジャカがSBであればある程度は覚悟しなければいけない部分だ。

 ビジャレアルのチュクウェゼへの依存度を考えると、このマッチアップでの不利は『仕方がない』で済まされるレベルではない。ティアニーであれば大外でもジャカほど簡単に振り切られることはないだろう。

 攻撃面においても大外を取るという要素が重要。なので、ティアニーがSBに入ることができれば苦も無くSBが幅取り役をかって出ることが可能になる。そうすれば同サイドのアタッカーをエリア内に送り込むことがより簡単に行うことができる。

 ティアニーの復帰に合わせてジャカが中盤に戻ることで速いカウンターに対する防波堤も期待できるし、トーマスにかかる展開力における負担も軽減できる。中盤のパススピードとレンジがアップすることでビジャレアルのブロック守備破壊の可能性は増すはずである。

 リーグ戦での不甲斐ない成績によって、アーセナルにとって残る今季の大目標はEL制覇一本になった。同じく国内経由ではCL出場が難しいビジャレアルとELに強いかつての指揮官ウナイ・エメリを乗りこえて、まずは1stレグの勝利と1つでも多いアウェイゴールを持ち帰りたいところだ。

【参考】
https://www.bbc.co.uk/sport/football/56892082

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