このプレビューは対戦カードの過去の因縁やジンクスを掘り起こして、試合をより一層楽しむための物です。
Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第13節
2021.5.8
ガンバ大阪(18位/1勝4分3敗/勝ち点7/得点2/失点5)
×
川崎フロンターレ(1位/12勝2分0敗/勝ち点38/得点37/失点10)
@パナソニックスタジアム吹田
戦績
近年の対戦成績
直近10回の対戦でG大阪の3勝、川崎の7勝、引き分けが2つ。
G大阪ホームでの戦績
直近10試合でG大阪の5勝、川崎の2勝、引き分けが3つ。
Head-to-head
<Head-to-head>
・直近の公式戦では川崎が4連勝中。
・2020年は史上初めて川崎がG大阪にシーズンダブルを達成。
・川崎はG大阪戦に通算21敗で最も敗れている相手。
・G大阪ホームでのリーグ戦において川崎は過去に2勝しかしていない。
今年に入ってからも天皇杯、ゼロックスと川崎が連勝。2020年はクラブ史上初めてのG大阪相手のシーズンダブルを達成するなど、直近の成績は川崎が圧倒的に有利である。ただし、天皇杯でダメ押しができなかったり、ゼロックスで追いすがられたりなど、優勝が決まった昨年の等々力の対戦を除けばワンサイドに終わった結果はない。
歴史を紐解けば川崎が苦戦した跡が見えてくる。通算21敗は浦和と新潟と並んで最も敗れている相手。大阪での試合においては昨年の勝利がようやくリーグ戦2勝目。ちなみに川崎が勝った2試合はいずれも1-0である。
スカッド情報
【ガンバ大阪】
・小野瀬康介は前節負傷交代。
【川崎フロンターレ】
・小林悠は広島戦で負傷の模様。
・山村和也は左大腿二頭筋肉離れで3か月の離脱。
・大島僚太も長期離脱中。
予想スタメン
Match facts
【ガンバ大阪】
<G大阪のMatch facts>
・今季のリーグ戦で1勝のみ。
・8試合中無得点試合が6つ。複数得点がここまでない。
・ホームゲームでは今季ここまで無得点。
・複数失点は今季ここまで1回だけ。
・今季ここまで前半に得点がない。
・東口順昭はセーブ率84.4%でリーグ2位。
予期しない事態に見舞われた影響で日程もコンディションもぐちゃぐちゃになってしまった序盤戦のG大阪。その結果、序盤戦はロースコアの試合を連発。得点はこの8試合でわずかに2で複数得点の試合と前半の得点がここまでない。ホームではここまで無得点である。昨年同時期と比べると勝ち点は10落ちており、いいスタートとは言えないシーズン序盤である。
ただし、失点の数も非常に少ないのが特徴。クリーンシートは半分の4試合。東口を中心とした堅守で少ないスコアで何とか逃げ切りを図った鳥栖戦が現状の勝ちパターンとなるか。
【川崎フロンターレ】
<川崎のMatch facts>
・引き分け以上でクラブのJ1連続無敗記録を更新
・得点をすればクラブのJ1連続得点記録を更新。
・後半の失点数は9。前半の3倍。
・クロスからの得点が最多。
・山根視来がこれまでに決めたJ1での9得点のうち、後半に8得点を決めている。
・三笘薫は直近3試合のスタメンで得点がない。
連続得点記録と連続無敗記録をこの試合も継続すればついに大台の20試合に到達。共にクラブ記録の更新になる。
好調が続くシーズンだが気になるのは失点のパターンと時間帯が似ていること。クロス主体の攻撃に弱く、後半に追いすがられているのが特徴となる。
そんな後半に違いを見せるのが山根。相手が慣れてきたところにプラス1として飛び出す名古屋戦のような働きで相手ゴールを脅かす。浦和戦のスーパーゴールを除けば挙げたゴールは全て後半だ。
一方でゴールから遠ざかっているのは三笘薫。ここ3試合はゴールから遠ざかっている。天皇杯で決勝点を挙げていいイメージのあるG大阪相手に久しぶりの得点を見たいところだが。
展望
■目的に対して不明瞭な手段
まずはG大阪のボール保持から見ていく。後ろは4バック。CBがPA幅に大きく開き、SBは高い位置に押し上げられる形になる。ここより前はシステムによって異なる。大阪ダービーのように4-3-3を採用する場合はアンカー役が降りるし、4-4-2の場合は両CHが中央で関与する。前者の場合は四角形、後者の場合は五角形とGKを使って多角形を使ったビルドアップを行う形である。
ポイントとなるのはCHである。チームを前進させることができる選手は決まっている。山本悠樹、もしくはチュ・セジョンのどちらか。彼らがプレーメイカーとしてラインを越えるパスを出したり、陣形を左右に振ることが出来る選手である。特に山本はボールの受け方から整っており、川崎相手でもある程度持ち味を発揮できることはすでに証明済みである。チュ・セジョンもそこまでプレータイムは長くないが、左右に自在に展開できる。
4-3-3の際は彼らの少なくともどちらか1人はスターティングメンバーに名を連ねるはずだ。4-4-2でも多くの場合はどちらか1人は先発することが多い。仮に彼らの両方が不在となる場合は中央からのボール保持は減り、サイドからの前進が中心となる。
いずれにしてもG大阪の保持のファーストステップはプレーメイカーである彼らに前を向く余裕を作ることである。そのために中央ではCHが段差を付けて縦パスを引き出し、彼らに前を向かせる。
その先の狙いはDF-MF間でフリーの選手を作ること。特にその選手が宇佐美や倉田のようなテクニシャンならばなおよい。ただし、ここに至るまでの道筋は整っていないといっていいだろう。相手のマークを引き付けるタイプのサイドアタッカーもいなければ、ロングボールを使った前進の仕方が整備されているわけではない。
もっともロングボール自体を蹴らないわけではない。だが、割と簡単に捨てる感じで後方からキックすることが多く、なかなかマイボールにならない。左右に動くパトリックはともかく、後方範囲が限られるレアンドロ・ペレイラが起用されたときはよりこの傾向は顕著。仮にペレイラが空中戦でアドバンテージを取ったとて、全体を押し上げずに蹴り出すためにセカンドボールを拾うことが出来ない。
まとめるとG大阪の前進の狙いは以下の2つ。
1. ゲームメイカーであるCHに前を向かせる
2.ライン間でテクニックに秀でている選手たちに前を向かせる
だが、そこに至るまでの具体的なメソッドや再現性のあるボールの運び方はあまり見えてこず、ロングボールを主体にやや偶発性の高い状況の中から、彼らが前を向ける状態になった時に前に進めるという状態である。
メンバー変更、及びコンディション調整がうまくいっていない部分が完全にしわ寄せになってしまっており、現段階では箱も中身もまだまだ未完成といった風情である。ちなみにフィニッシャーを生かすパターンもまだ見えてこないのが正直なところである。
守備時でも攻撃時の配置を大きく崩さない。前線は無理にプレッシングに行かず、その分中盤に人を揃える。後方はブロックを組みつつマンマークで人を捕まえに行く。DFラインも含めてラインを乱していても、降りていく楔には出ていくことで潰しに出ていく。
プレス隊が無理に行かない場合はトップ下の宇佐美が中盤のブロックに噛み合うような位置でアンカーを監視する。したがって中盤は5枚のような形になる。形としては中盤3枚っぽくあるが、当然中盤のうち1枚は宇佐美。純粋な3枚のセンターとは勝手が違う。3センターの場合は互いの機動力を生かし、それぞれの飛び出しをカバーするイメージだ。
PA内まで迫られた際には4バックが圧縮し横にコンパクトな状況を整える。逆に言えばサイドは空いていることが多く、横の大きな展開に対して脆さが見られることもしばしばである。
■弱点を後追いで突く
宮本監督は川崎戦となるとこれまでの試合と全く異なる文脈のフォーメーションを使うことがしばしばある。例えばラインを極端に下げてベタ引きし、ロングカウンターで一発を狙ったりだとか。
ただ、これは例えばアデミウソンのような独力で陣地回復が出来る存在があってこそ。今のG大阪にはそのような選手は見当たらないので、これまでの文脈から大きく外れた形にはならないとみる。
そうなると、選択肢は2つ。4-3-3と4-4-2のどちらかである。個人的には4-3-3ではないかと予想する。理由は4日に名古屋が使った川崎対策はそれなりに応用できるはずだから。大外をSBに任せ、シャドーが絞ってシミッチの脇を狙う。3センターがマンマーク気味に相手を追いかけまわすなど要素的には使える部分はある。
3センターの場合のG大阪は流動性が増すイメージ。それをもたらすのはインサイドハーフの2人。特に非保持においては、ポジションにこだわらずに近くの選手にアプローチしていく形になるだろう。
では川崎はどのような形で迎え撃つべきか。非保持においては高い位置からのプレッシングは効きそう。距離感の遠いDFにプレッシャーをかけることでなるべくボールを捨てさせたい。ショートカウンターが刺されば最善だが、それが難しくてもボールを捨てさせて波状攻撃に移行したい。
より、セカンドボール回収を意識した位置にシャドーを置くならば、アンカーをダミアンが消して東口に長いボールを蹴らせてボールを回収するのもあり。インサイドハーフがセカンドボールを拾うように備えたいところ。
アンカーに前を向かせず、ロングボールを機能不全にすることでライン間でボールを受けるという目的の部分の根っこをつぶしていきたい。DF-MFのライン間をコンパクトにしてプレッシャーをかけてボールに触りたがる宇佐美を低い位置に追いやれればなおのことOKだ。
個人的には小野瀬が先発で出てくると厄介。オフザボールに長けている彼の存在はロングボールに奥行きをもたらす可能性がある。
ボール保持はG大阪の人基準の移動を使っていきたい。人をつぶすという能力の部分では名古屋同様、G大阪は得意な選手が多いと思う。だが、G大阪は例えば降りていく相手のFWに出ていくタイミングがやたら遅かったり、逆に中盤は決め打ちで早く動きすぎるせいでスペースを空けてしまったりなど、何となくちぐはぐなタイミングで動き出すことが非常に多い。
特に中盤の決め打ちの方は致命的で一歩先を読んで先に動いた結果、相手に二歩先に進むスペースを与えてしまったりなどが見受けられる。
したがって、川崎が狙いたいのは『後出しじゃんけん』。先に相手が動くならば、そのスペースを使う。そして相手が動かないのではあれば、シンプルに一手先から崩していく。
おそらく、等々力での名古屋戦を見て、対策をインストールするチームは多いはず。ならば、相手が敷いた対策にほころぶ隙を突き、もう一段上にのし上がるチームになればいい。これは効く!という手段でかかってきてくれるならば、川崎にとってはむしろ好都合。さらに成長するチャンスととらえて、前に進む糧にしたいところだ。
なお、このプレビューをもとに明日は下記イベントに乗り込んできます。ちくわさんとプレビューでクロストーク。ぶっとばしてやんよ!!
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)