初めてのことなのだが、親善試合のレビューというものに挑戦してみようと思う。
【前半】
2つのパターンを中心にボールを前に進める
パナマ代表のイメージはワールドカップ以降更新されていない。ワールドカップのパナマ代表で記憶に残っているのは
・5バックを採用していること。
・5バックでブロックを低く敷いてなお、迫力のカウンターを出せるほどのアタッカーはいないこと。
・このグループに入ったイングランドとベルギーは幸運だなと思ったこと。
このくらいだろうか。ワールドカップ以降は日本×コスタリカ以外のナショナルマッチは1試合も見ていない。当然パナマ代表についてもさっぱりわからないので、日本代表の話が多くなるがご容赦いただきたい。
パナマのブロックはワールドカップと異なる4-4-2。日本はボール保持の局面においてはボランチの1枚がCB間に降りてきて3バック化する。
最終ラインは3対2で日本の数的優位。2トップでプレスをかけにくるパナマに対しては、問題なくボールが運べる状況。となると問題はその先の局面。日本の最終ラインからの球出しは主に2パターン。
1つ目はCBから大迫or2列目の縦パス。出し手として存在感を発揮していたのは、フル代表デビューとなった冨安。ちなみにボールを持った時はサイドハーフを含めた2列目が中央に陣取り、幅を取るのはSBがメインで担当していた。
縦パス後の選択肢としては、中央でショートパス主体のコンビネーションで打開かオーバーラップしたSBに預けるという2つがある。中央でのパス交換は連携面での課題がある。即興性のアイデアもそこまで豊富なメンバー構成ではなかった。したがって、縦パスの後は上がってきたSBに預けるパターンが増えてくる。
ただし、室屋も佐々木も対面したDFを抜き去るテクニックは持ち合わせていない。サイドで数的優位ができそうなものだが、パナマは同サイド2列目とボランチの帰陣を早めることで、数的優位を作られるのを防いでいた。結果的にサイドバックまでボールはわたっても、チャレンジして失敗orやり直しのどちらかを強いられるパターンが多かった。サイドハーフのハーフスペースでの裏抜けとか使えた時は、結構おもしろくなってたけども。というわけで冨安からいい縦パスは入るものの、そこから先の局面で攻めあぐねるパターンが続く。
冨安を軸とした球出しは頻度こそ多かったが、その先の決定機までの道筋が遠い。
より決定機に結び付きやすかったのは青山を軸とした裏を狙ったロングボールだ。4-4-2の陣形を片側に寄せて、オーバーラップした室屋が最終ラインの裏で受ける形が多かった。最終ラインの数的優位があるので、青山がオープンになるのは難しくなく、室屋の走力を考えると上下動を繰り返すことは苦にはならない。片側に寄せて室屋がDFの裏を完全に攻略する場面はそこまで多くなかったが、攻撃の仕上げの局面を担う室屋がより得意な形でボールを受けられるので、決定機には結び付きやすかった。23分のシーンとか。松木さんと中山さんに「シュートうて」って怒られてたやつ。
ただ、実際に青山からのロングボールを組み立てのメインにするのかは微妙。読まれやすいし、対策も打ちやすい。さらに、青山より若い世代でこの役割を任せられる選手がいないなど懸念が多々ある。アジアカップまでは森保ジャパンの中心として青山が稼働する確率は高いと思うが、その先は未知数だろう。本来はむしろこちらをフリに、冨安や槙野をメインに使った前線か2列目への楔を中心に組み立てたいのではないか。実際にはうまく機能する回数が多くなかったから、メインっぽくなったけど。CBから出るのはグラウンダー、ボランチから出るのは浮いた球が多いのは特徴的だなと感じた。
守備に目を向ければ、前線とサイドハーフはロスト後に即時奪回を行うパターン狙いが多かった。ただし、ボランチより後ろの連動はそんなに素早くできておらず、狙い通りにいかないこともしばしば。それでも、即時奪回に成功した場合はポゼッションからの組み立てよりはスペースを使った有効な攻撃ができていた。この局面では、中央で近い距離感を保っていた前線の選手のポジションがプラスになった格好。特に原口と南野のプレスバック強度は印象的だった。パナマのポゼッション時に、ボールホルダーじゃない選手があまりフォローに行ってなかったからハマったのかもしれないけど。
前半に生まれたゴールシーンを演出したのは青山。この試合ではあまり見られなかった中央へのグラウンダーの縦パスを、これまたこの試合ではあまり見られなかった南野の裏への抜け出しに通した。反転力!!反転力って初めて聞いたかも。このシーンとは関係ないけど、南野がやたら引いて受けてくるときがあったけど、あれは何だったんだろう。なんかこれサンフレッチェ時代っぽいなってぼんやり思っていた。
パナマが積極的に攻略してきたのは日本の左サイド。前方に撃退に出てきやすい佐々木の裏はよく狙っていたように思う。佐々木の強みは対人の強さなのだが、人についていきやすいポジショニングはやや狙い撃ちされていたかな。あと前半に感じたのは、大迫のチャンスメイクが中央のポストより、サイドの裏抜けの頻度が上がったなってこと。クラブチームでのプレースタイルの影響とかあるのだろうか。
【後半】
2列目が徐々にリズムをつかみだす
後半はボランチのCBライン落としはやめた模様。2枚でもビルドアップできそうだし、CBに食いつくパナマのFWの後ろのスペースを青山と三竿に使わせたほうがいいという判断だろうか。それも相まって、徐々にパナマのDF-MF間の距離が空いてくる。したがって、パナマのFW-MF間で受けた日本のボランチが、パナマのMF-DF間にいる前線の選手に縦パスを入れるシーンが増えていく。こういう時に原口はとても前線で気の利いたポジションとってるなと。守備もオフザボールも要所要所でさすがだなと感じるし、風格が出てきたと思う。
その原口が「やべっ、こけた?やっちまった?」って思ったシーンが日本の2得点目につながった。こけそうになりながらも伊東につないだカットイン。中央の間のスペースでドリブルを開始し、相手を動かしたのはさすがである。前線を中央に集約しているのはこういうプレー増やしてね。っていう意図を感じるゴールだった。
このゴールシーンのポストとかこの後の73分のヒールでのチャンスの演出とか、伊東純也が徐々にフィットしだしているのも後半のポジティブな部分。インサイドをスタートポジションとするプレーはあまりイメージがなく、前半は窮屈そうだったが後半になって適応しておりよかったと思う。負傷が心配だ。
後半40分を過ぎてから柴崎が投入されたけど、森保さんがここから柴崎にどういう役割を持たせるのかは気になるところ。青山とはかなり持ち味が異なるプレイヤーなので。このプレー時間ではちょっと見えてこなかった。
3点目、表情的にどう見ても川又が決めた感があって笑った。北川の代表デビューめでたいね!
まとめ
エリア内での守備とか、非保持時のラインの押し上げの遅さとかユニットとして気になった部分はいくつかあったがここはこれからという部分だろう。青山不在の時のゲームの進め方は気になるところ。少なくともアジアカップまでは青山を軸にしたチーム作りで行くのだろうが、彼を仮に欠いた場合の組み立て方がまだわからないので、どこかで試してほしい。あと、青山を軸にするということは、恐らく浅野とのセットも考えているはず。どこで使うんだろう。トップでの起用を想定してるとしたら、この2列目との相性は悪そうだなとか思ったり。
個人の部分でポジティブだったのは2列目の3人に加えて冨安。冨安はしばらく継続してみてみたくなる動きをしていた。
同様に中盤でもう少し見てみたいと感じたのは三竿。課題も見えたが、こちらはむしろタイプ的に継続して使ったほうがパフォーマンスが上がりそうなので。
原口とか伊東はここからも継続して使われそうだけど、彼らみたいに外側で仕事ができるサイドハーフを重用するなら、もう少し内側のスペースが使えるサイドバックとのコンビも見てみたい。柏の小池とか。
室屋、運動量豊富だし無理も効くけど、攻守において最終局面の質をもう少し上げたいところ。淡白に終わることが多い気がする。
試合結果
2018/10/12
キリンチャレンジカップ
日本3-0パナマ
得点者:42′ 南野, 65′ 伊東, 85′ OG
主審:キム・ドンジン
デンカビックスワンスタジアム