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「Catch up UEFA Champions League」~Quarter-final 1st leg+α~ 2021.4.6-4.8

目次

①レアル・マドリー×リバプール

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■課題克服のヴィニシウスが先勝の原動力

 思い切った策を取ったなと感じたのはリバプールの方。近頃はスタメン起用が目立ったチアゴをベンチにおいて、ケイタをスタメンに抜擢した。

 立ち上がりはインサイドハーフを上げて積極的なプレッシングをかけてきたマドリー。リバプールはこれに呼応するように縦に急ぎながら前進を狙う。だが、マドリーはここへの対応が素晴らしかった。モドリッチとアセンシオでうまくコースを限定すると、縦への入れどころを定めてボールハント。効いているのはリバプールが前進する際にクロースがアンカーを塞ぐためにきっちり降りてくることである。リバプール目線で言うと、シンプルに相手の目先を変えられるチアゴがいればいいなと思った。

 クロースはマドリーのボール保持においても絶大な存在感を発揮。レンジと精度のせいで降りても恐ろしいのがクロースの強み。リバプールは降りていくクロースについていかず、コンパクトなブロックを敷くことを選択する。が、これがリバプールにとっては裏目に出たか。

 ベンゼマが最終ラインに揺さぶりをかけることでヴィニシウスの裏抜けとクロースの長いパスの威力をアップ。マドリーは数回この流れで好機を創出すると先制点と2点目をこの形からゲットする。

    仮にチアゴを外すならばミルナーあたり起用してクロース番にしても面白かったと思うけども。いずれにしても、リバプールがチアゴを外した意味合いをうまく見いだせなかったのは間違いない。前半のケイタ⇒チアゴの交代はクロップ自身も先発選びをミスったことを認めた形といっていいだろう。

 後半はウォーミングアップを済ませたチアゴが躍動。前半と異なりマドリーにプレスの狙いを絞らせない。後半頭のリバプールの攻勢に面を食らうマドリーにサラーが同点弾をぶち込む。

 だがここからマドリーがもう一度立て直す。3点目を取ったヴィニシウスはこの日勝利の立役者。一昔前はゴールだけが足りないといわれた彼はこの日チームを準決勝に押し上げるゴールを決めてエンブレムを叩いている。たくましさが格段に増したヴィニシウスがマドリーの1stレグ勝利を見事に後押しした。

試合結果
レアル・マドリー 3-1 リバプール
アルフレッド・ディ・ステファノ
【得点者】
RMA: 27′ 65′ ヴィニシウス, 36′ アセンシオ
LIV: 51′ サラー
主審: フェリックス・ブリヒ

②マンチェスター・シティ×ドルトムント

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■チート+α

 シティが保持をし、ドルトムントが受けるという想像通りの展開になった。カンセロが内側に絞る変形をメインに採用したこの日のシティ。それに対してドルトムントは4-5-1で対抗。特に中盤の5枚がフラットで内を固める意識が非常に強かった。おそらくこれはシティの最短ルートを封鎖する+CBのドライブを防ぐという意味合いが強いのだろう。ドルトムントの2列目の守備における働きは際立っていた。

 一方でドルトムントもうまく内側に入り込めず、サイドから切り崩すしか策がない状況だった。シティのプレスにより狭いスペースにおいこまれたところから詰まってしまい、その打開策が見つからないという状況が続いていた。

 そうなると、互いに守備の攻略の手段は外から溶かすように切り崩すか、あるいは飛び道具でチート的に一気に加速するかである。両チームともチート的飛び道具は持っているチームだし。

 シティのチートはデ・ブライネ。ブロックの中で前を向けたら、あるいは外でも加速してブロックにドリブルで突っ込んでいくとドルトムントは止められない。恐るべきはこれが発動した時のシュートまでいく頻度の高さ。ドリブルで切り裂いた後のラストパスまでが優れているという証拠でもある。先制点もこのデ・ブライネのドリブルで切り裂いた形が起点となったところから。

 対するドルトムントのチートはハーランド。今までのシティはこういう強烈な個に対して脆さを見せることはあったのだけど、ルベン・ディアスの加入後はこういったことが格段に減った。ので、その状況でも存在感を発揮するハーランドは強烈な個の中でも最上位ということであろう。同点ゴールは彼をスイッチにロイスのシュートまで一気に加速したもの。縦に速く一気にかち割る形であっという間に得点をかすめ取ってしまった。

 しかし、勝利を挙げたのはシティ。ブロックの外からのクロスを点で合わせることでフォーデンが最後にゴールを陥れる。チート以外の得点手段の部分では差を見せたシティ。だが、保持における防衛策も含めてドルトムントも2ndレグに期待が持てる内容となった。

試合結果
マンチェスター・シティ 2-1 ドルトムント
シティ・オブ・マンチェスター・スタジアム
【得点者】
Man City:19′ デ・ブライネ, 90′ フォーデン
BVB:84′ ロイス
主審:オビデウ・ハツェガン

③バイエルン×パリ・サンジェルマン

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■成熟を見せたパリが大人な一戦で先勝

 昨年のCLファイナルのカードが準々決勝で実現である。昨年のCLのファイナルと言えば、非常にフィジカル的に激しい一戦になった。個人的にはこの強度が新しいスタンダードになるのかが気になったところではあったが、今現在はあの試合に匹敵するほどの強度の試合(リバプール×シティはもしかしたら比肩するかも?)は見かけないので、基本的にはコンペティションのファイナルとコロナの中断期間が生み出した特異なものなのかなと今のところは思っている。もちろん、強度が高くなければおもしろいというわけではないけども。

 ファイナルで強度が激しくなった理由の1つはプレッシングである。特にバイエルンのプレッシングにパリが苦しみ、ムバッペの一撃にかけることになるという流れになった。この流れが縦に速い動きを助長していた。

 この試合ではパリの中盤が上手くバイエルンのプレスをいなしていたのが印象的だった。ダニーロ・ペレイラという選手はあまり知らなかったが、派手さはないものの堅実にバイエルンのプレスの網をかいくぐり、前にボールを進めることができていた。

 さらに光ったのは前線の裏を狙う動き。ディ・マリアが対面のリュカを引き出し、その裏を狙ったネイマールにパスが出たところから先制点が生み出される。ディ・マリアが面を作り、それに合わせて動き出すという流れはファイナルとは違い、切れ味で勝負している感じ。パリ、大人になった感である。追加点の2点目もバイエルンを出し抜いた形で。狡猾さでバイエルンを上回った。

 しかし、得点を取ったマルキーニョスはその後負傷交代。守備の軸が不在になることで最終ラインはやや不安定になる。加えて、バイエルンは素早い手打ち。CBを務めていたアラバを中盤にあげることで、配球面を強化。立ち上がりはパリの中盤を超えるのに苦心していたが、徐々にラインを越えて押し込む機会を得られるようになる。

 バイエルンの2得点で輝いたのはミュラー。1点目はエリア内の動きでペレイラを釣り、チュポ=モティングをフリーにすることで間接的に関与すると、2点目は自身がフリーになり合わせる形。そもそも、ラインを押し下げてクロスを上げる機会を得たのはアラバの貢献が大きいので、アラバとミュラーという古参コンビの活躍が光った同点劇だった。

 しかし、試合を決めたのは今をときめくスーパースター。この日の2点目となる得点は対面するボアテングを出し抜いた股抜きシュート。またしても静からの一瞬の切れ味という大人な仕留め方。1年前と比べると強度的にはややおとなしい展開になったファイナルのリマッチは、大人な成長が際立ったパリが先勝した。

試合結果
バイエルン 2-3 パリ・サンジェルマン
フースバル・アレナ・ミュンヘン
【得点者】
BAY:37′ チュポ=モティング, 60′ ミュラー
PSG:3′ 68′ ムバッペ, 28′ マルキーニョス
主審:アントニオ・マテウ・ラオス

④ポルト×チェルシー

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■勝負を分けた3枚替え

 ど根性4-4-2でユベントスを下したポルト。ベスト8の中で唯一のグループステージ2位通過チームとなった。とにかく原型をとどめないくらい激しく相手を追い回す4-4-2がベースなポルトはこの日も健在。後方を余らせつつ前方は1人足りないくらいの重心のかけ方でのプレスを敢行した。このプレッシングに直近の国内リーグ戦同様にチェルシーは苦しむことになる。

 保持時はオタビオが内側に絞り、3-4-3の間に立つようにしてチェルシーのゴールに迫っていく。20分を過ぎると非保持においてもオタビオは絞ってスリーセンター気味に移行する。だが、見ていてこのポジションを取る理由は結構わからなかったし、試合後の今でもイマイチ推察はできない。なんとなく中央を固めたかったのかな?くらいしか。

 この変更をきっかけにサイドからボールを運べるようになったチェルシーが押し込み始めることになる。アスピリクエタは推進だけでなく落ち着かせどころして的確に顔をだすのがうざい。中央で起点を作らせなくなかったのかもしれないポルトに対して、その分ばっちり外で浮いて保持を安定させてみせた。押し込んでいく流れになってから仕留めるのは早かった。見事に一発回答を見せたのはアトレティコ戦では不在だったマウント。チェルシーの切り札がワンチャンスをモノにしてアウェイチームが前に出る。

 それでも前半の終盤はポルトにもチャンスはあったし、後半頭からもう一度人につく根性マンマークを行うようになる。しかし、今度は中央でずらし始めるチェルシー。CHに運ばれたり、ヴェルナーが降りる役割で受けたりなど、中央からの前進の機会が増える。

 ジリジリした体のぶつかり合いが増えた終盤。勝負に出たコンセイソン監督は3人替え。攻撃的な交代で一気にペースを引き寄せにかかる。だが、この交代が大きな代償を払うことに。交代に伴い1列ポジションを下げたテカティートからチルウェルがボールをかっさらいそのままネットを揺らす大仕事をやってのけた。

 勝負に出たタイミングでしっぺ返しを食らったポルト。終了間際に食らった2点目は2ndレグに向けてあまりにも大きな十字架になってしまった。

試合結果
ポルト 0-2 チェルシー
エスタディオ・ラモン・サンチェス・ピスファン
【得点者】
CHE:32′ マウント, 85′ チルウェル
主審:スラフコ・ビンチッチ

⑤アーセナル×スラビア・プラハ

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■流れを引き寄せる手法に乏しい

 大きくいってスラビア・プラハには予習したレスター戦と似たイメージを持った。ビルドアップはアンカーが降りて、CBが大きく開く。SBが高い位置を取る分、IHがビルドアップの手助けをする。WGは絞りながらプレーするのがメインである。左サイドがストロング気味でオラインカとボリルの縦関係が強みとなる。

 非保持はマンマークが主体で、この日のアーセナルにも積極的に捕まえに行った。これに対するアーセナルのリアクションは悪くなかった。降りる動きに加えて裏に流れてプラハを縦に揺さぶりながらプレスを回避する。プレッシングに苦しむシーンはそこまで多くなかったこともあり、アーセナルとしてはまずは初期段階はクリアできたといえる。

 ただ、最終局面における迫力が足りないアーセナル。スミス=ロウやラカゼットなどがサイドに流れる意識を持ったのは悪くはなかった。だが、彼らが空けた中央のスペースを狙うのはサカただ一人。低い位置からボールを運べるウィリアンは最終局面での存在感が希薄。直近はやり玉にあがりがちなオーバメヤンのサイド起用だが、この日は彼が左サイドにいたのならば、斜めに入り込む動きは効いたのではないかと思ってしまう。

 試合の流れを沿うものとは違う部分になってしまうが、最近思うのはアーセナルは流れに乗りながら選手たちが良さを出すのは下手ではない。ただ、ギアを入れて流れを生み出したりだとか、流れをピッチの選手の特色に合わせて持ってくることはあまり得意ではない。この日もその部分は少し気になった。

 顕著なのは左のWGで、前半はアタッカー気質のオーバメヤンが欲しかったし、2人でクロスを上げることが目的になっていた後半の頭はペペが欲しくなった。交代で入ったマルティネッリには試合のテンポを上げて得点機会の頻度を上げることを求めたかったが、チームでプレスの強度を上げるアプローチは見られず、それは叶わなかった。

 アーセナルはプラハよりは個人の力は上だろう。ペペやオーバメヤンは彼らのベンチにはいない。それでも、後半は左WGのオラインカが絞り、ボリルが高い位置を取ることでベジェリンの裏を執拗に狙ったプラハの修正を見ると流れを引き寄せようという姿勢に関してはプラハの方が的確だったように思う。

 結果の話を先にしてしまえばアーセナルは勝てなかった。点を取ったけど追いつかれてしまった。決定機を決めさえすれば確かに勝った試合ではある。だが、残念ながら今季のアーセナルは昨季と違い前線の決定力で勝負するチームではない。そのためにより多くの得点機会を創出するためにもがいて駆け引きしていく必要がある。あとがなくなった2ndレグではそこに期待したい。

試合結果
アーセナル 1-1 スラビア・プラハ
アーセナル・スタジアム
【得点者】
ARS:86′ ペペ
SVP:90+3′ ホレシュ
主審:アンドレアス・エクベック

   おしまいじゃ!!

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