後追い5-4-1を攻略した日本がパリ五輪出場を掴み取る
勝てばひとまずパリ五輪出場が決定。日本代表にとって運命の大一番の対戦相手はイラクの面々であった。
試合は非常にモノトーンな展開に。5-4-1のイラクに対して日本が一方的にボールを持つ形となった。アンカー役となった藤田がイラクの1トップの守備基準に。日本のCBは自由にボールを持つことができて、ここから左右にボールを散らすことができていた。
撤退5-4-1というプラン自体は別に悪くはないと思うのだけど、イラクのこの守備ブロックのクオリティはあまり高くはなかった。よくなかった点の1つは藤田の受け渡し。1トップのアーメドが基本的には見る形になるのだけども、彼が前にスライドしていく際に特に中盤が引き取らない。こうなると日本にとってはチャンスタイム。藤田は全く制限をかけられずにボールの配球を行うことができていた。
もう1つは日本の前線の動きに対して、イラクの選手が後追いアクションで動いてくれることである。特に右のCBであるアル・リカビはこの動きが顕著。遅れて前の選手に食い付いては後方のスペースを開けていた。日本はこのように幅や間に食いつかせてできたギャップを細谷に狙わせる、もしくは大外の平河のアイソから攻めていく。
得点に繋がったのは細谷の裏抜け。中盤で浮いた藤田から細谷の裏抜け一発という日本としては「これが機能すれば一番楽だ」という形から先制点を奪い切る。
イラクは保持に回ってもなかなかリズムを掴むことができない。日本のSHはWBに合わせたポジションを取るせいか、2トップのとの距離が特に序盤はやたらと空いていたが、イラクがここを別に有効活用することはせず。ボールを持つ時間自体は時間経過とともにほんのり増えていたが、それが試合の展開に大幅な影響を与えることはなかった。
日本は前半終了前に追加点。左サイドでキープした大畑が前を向くことに成功すると、藤田の壁パスから抜け出したのは荒木。ハーフタイムを前に大きな2点目を手にする。
後半、反撃を狙うイラクはボール保持から勝負を仕掛けていく。前半よりはクリティカルなチャンスにはなってはいたが、日本の攻撃が刺さるのは前半から継続。非保持でも積極的にプレスをかけてきたイラクを特に問題にせず、空いたミドルゾーンから加速していく。ライン間の荒木はスペースをもらえる分、スピードアップに貢献。前半に比べると日本はサイドからサイドに横断する形を増やしてイラクのゴールを脅かしていく。
60分、スコアを動かせないイラクは4バックにシフト。前線の枚数を増やすことで攻撃に出ていく。右サイドの裏抜けはおそらく手応えがあったはず。木村、大畑の左サイドのDFラインのユニットは背後を突かれてしまうことがしばしば。HTに投入されたワチフィが右サイドのアクセントに。
だが、苦しい状況でも日本はボックス内で冷静に対処。高井の球際、小久保のハイボール処理が安定感をもたらす。セットプレーは細谷も体を張った守備を見せる。
ピンチを迎えることはあってもなんとかイラクをクリーンシートに抑えることに成功した日本。前半からのアドバンテージで試合をコントロールし、見事パリ五輪の出場権を確保した。
ひとこと
普段がどういうチームなのかはわからないけど、後追い穴あけ5-4-1をイラクがセットしてくれたことは日本にとっては幸運だった。
試合結果
2024.4.29
AFC U-23アジアカップ
準決勝
日本 2-0 イラク
ジャシム・ビン・ハマド・スタジアム
【得点者】
JPN:28′ 細谷真大, 42′ 荒木遼太郎
主審:エバンス・ショーン・ロベルト