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「3つ目の柱になるか」~2021.2.28 プレミアリーグ 第26節 レスター×アーセナル レビュー

スタメンはこちら。

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目次

レビュー

■マリとルイスを起用した意図

 25節から30節までの6試合のうち、5試合は順位が上の相手との対戦。アーセナルのリーグの目標がここで決まりうるといっていい6試合である。余裕のないアーセナルにとっては簡単に序盤に失点はできない!というわけなのですが、前節と同じく10分以内に失点しました。なんでだよ。

 失点シーンを少し深堀りしてみると、ジャカとウィリアンのパス交換が狭くなったところにティーレマンスとイヘアナチョが挟み込んでボール奪取。マリ、もう少し後方のサポートに早めに行っても良かったかもしれない。

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 一方で、奪取された後は結構マリの対応は難しかったかもしれない。詰めてきたら即ヴァーディの裏!という選択肢がフリーのティーレマンスにはあったので、ある程度リトリートする必要はあった。だが、おそらくレノが裏をケアできるところまでラインが下がったら前に出ていく必要があった。

 したがってマリは後ろに下がりながらヴァーディの位置、レノとの距離感、中のエルネニーのポジションなどを判断して前に出ていかなければいけなかった。上から試合を見ているわけではないので、とても難しいように思えた。ただ、まぁチャレンジしないままでの失点は悲しいよねというのはある。最後まで前に出ていく素振りをみせなかったので。

 ただ、このミスによってアーセナルのこの日の立ち上がりの取り組みが否定されるわけではない。むしろ、アーセナルの取り組みはとても効いたように思う。プレビューで触れた通り、アーセナルは2人のプレス隊に対して3人のビルドアップ隊で対処。主にジャカが最終ラインに降りて、エルネニーが中央に常駐している状態でビルドアップに挑む。久しぶりにプレビュー予言が当たった気がする。

 アーセナルがこの日まずよかったのは、CBにボールを運ぶ意識があったこと。CBもしくはジャカが2トップの脇からボールを運ぶことで、1stプレスのラインを超える。ルイスとマリのコンビはこのために使われたと思っている。そしてCBが深い位置まで運ぶ意識を持った後は内側、裏、大外にパスコースを準備する。

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 こういったパスコースの準備があるからこそ、失点のシーンと似た局面を迎えた7分には裏のティアニーにボールが出ることでプレス回避が可能になる。

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 レスターの先制点のようにイヘアナチョを効率的に動きを組み込めたらいいのだけど、1stラインを越されるのに間に合わなかったら、出てくる中盤のカバーリングにも入らないので、根性で中盤が何とかするしかない。カバーができないので、なかなか中盤が出ていけないという悪循環である。

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 奥に進まれてもいい時もあるけど、この日のレスターにとってはまずかった。なぜならペペが1対1になると対面のトーマスが彼を止められないからである。ペペを囲めなかったのはアーセナルのCBがボールを運ぶ際のパスコースに複数選択肢をとれるから。出しどころが絞れなければ追い込めない。

 加えて、アーセナルの左サイドからもボールを運ぶ手段があったのが厄介である。イヘアナチョが戻ってきてくれないけど運ばれまくっているので、いよいよティーレマンスがしびれを切らしたように出ていく場面が増える。こうなるとウィリアン、ラカゼットなど降りてくる面々の出番である。彼らがティーレマンスがあけた位置に入ってくる。

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 ここで試合中にお題箱に来ていたお題に答えます。

 アーセナルのCBが持ち上がれて、レスターの中盤も早めに食いついてくる中で、ウィリアン、ぺぺ、ラカゼットの三人とも裏というよりは降りてきがちだと思うんですがどう思いますか?

 まず、この試合のペペは印象ほど手前で受けるシーンは少なかったと思います。右サイドにおいてもワイドより裏を狙う役割を担うことが多く、無駄に降りてくるシーンはとても少なかったです。

 そしてラカゼットとウィリアンに関してはご指摘のように降りてくる頻度は多かったです。ただ、この試合では特にウィリアンが持つときはターンからボールを運ぶ動きを見せるので全体を押し上げながらボールを前に進めることができたためあまり問題になりませんでした。

 一方でラカゼットに刺した後はロストこそないものの、前進したのに後退してしまうようなパスの循環をすることが多かったです。ウィリアンに渡せれば別だったけど。いずれにしてもこの試合ではウィリアンがティーレマンスを空けた部分に降りてきてDFラインの選手を引き連れてから運ぶことで、アーセナルにとっては圧力十分でレスターにとっては苦しい対応を迫られる状況になったと思います。おしまい。

 なお、1得点目と2得点目の得点につながる流れはいずれもウィリアンが運んで、ペペに届けたところから。ペペという終点に左からも右からも届けられたのがこの試合では非常に大きく、アーセナルの逆転の原動力になったといえるだろう。

■武器を活かす下地がない

 レスターのボールの保持の局面も非保持の局面と同じく苦しかった。アーセナルは最終ラインに強引にプレッシャーをかけに行くことはしなかったが、中盤は押し上げるようにジャカとエルネニーがティーレマンスとンディディを監視する。前への選択肢がなくなったレスターは後方にボールを下げた後、長いボールを前に送る。

 狙いとしては一発で裏のヴァーディを狙うか、右のSHのリカルド・ペレイラに長いボールを当てるしか選択肢がなかった。ティーレマンスとンディディを封じる段階でアーセナルは中盤を使い切っていたので、レスターはマディソンがいれば!という感じだったのではないだろうか。

 アーセナルはレスターに様々な選択肢を示すことができたことで、ペペという終点にたどり着くことができた。レスターはこういった前段を飛ばしてヴァーディという終点を目指したことで前進のハードルが上がってしまった形である。

 マリはスピードはプレミアの水準では厳しいものの、起こりうる事象に対しての準備ができるタイプの選手なので、ヴァーディという出口が決まっており、そこを揺さぶれることがないとなれば体を寄せて加速させない形で対応することはできる。クラブW杯でサラーと対峙したのプレー集もそんな感じだった。失点シーンのように前に引き出すかどうか?という判断を迫る状況をレスターは作らなければいけなかった。

 後半はリカルド・ペレイラを左のSBに移して守備面での手当、及びリバプール戦のようにペペの裏で受けて攻撃の起点となることが期待されていたのだろうが、ここはペペが根性で封じる。アーセナルが後半早々に3点目を取ったことや、バーンズが負傷交代をしてしまい左サイドからの翼がなくなってしまったことも打ち手が大きな実を結ばなかった要因。

 対策をした後半だったが、こうなってしまうともう2列目と最終ラインが野戦病院状態のレスターにはどうしようもなかったように思う。終盤にはエバンスも負傷交代する始末でレスターにとっては踏んだり蹴ったりな一戦となった。

あとがき

■期待がかかるウィリアンの役割

 まとめるとこの試合のアーセナルは良かった。試合の序盤から1stプレスラインを超える明確な手段(=ジャカが降りて3バック化し、数的優位を活かして相手の2トップ脇からボールを運ぶこと)を持っていた。加えて、その先のパスコースの選択肢を数多く作ることを意識できているポジションが取れたことも大きかった。

 本文中で紹介した以外にもハイプレスをかけられた際にはレノまで戻して、ダイレクトにミドルパスでDF-MFラインの間の選手にボールを送るシーンもあった。徐々に初手の手段は増えていっている。

 この試合ではペペという決定打があったことも大きかった。そしてそこに至るまでの運び役としての役割をウィリアンが果たせたことも大きかった。ただ、この部分はレスターのコンディションの悪さやディフェンス時の規律の欠如を差し引かなくてはならない。このレスターは今季ワーストクラスの不出来だったように思う。

 ペペは対面のトーマスの出来を考えなくてはいけないし、ウィリアンには簡単にターンをさせたことも考慮しなければいけない。まだ手放しで喜ぶのは早いと思う。2つ先を塞ぐようなプレスをかけてくるようなチームに出会ってなお、彼らが躍動するとしたらそれは本物である。

 チームとしての課題は1つパスを刺した後、そのあとのつなぎの局面が無駄に遠回りになりがちな部分があることだろう。1つ目のいいプレーと2つ目のいいプレーまでが遠い。1つのキーパスをダイレクトにシュートまで持って行けるシーンは少ない。安全に迂回しながらボールを回すことで攻めどきを失ってしまう場面も散見される。

 この部分では現チームではサカとスミス=ロウがとびぬけた存在のように思う。ここにこの日のウィリアンのドリブルという2.5列目からアタッキングサードまでの道筋を補える武器が加わればアーセナルの攻めはより多彩なものになる。ボールを運びつつ全体を押し上げられるこの動きはぜひともチームに組み込みたい。アルテタのデザインはこの日はウィリアンにとってはベストだったように思う。ウィリアン加入時に期待した役割をようやく披露することができた。彼がアーセナルの2列目の3本目の柱になり、終点となるオーバメヤンやペペに好機を運ぶことができれば、大逆転の欧州カップ出場権への視界は少し広がることになる。

試合結果
2021.2.28
プレミアリーグ
第26節
レスター 1-3 アーセナル
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:7′ ティーレマンス
ARS:39′ ルイス, 45+2′(PK) ラカゼット, 52′ ペペ
主審: ポール・ティアニー

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