このプレビューは対戦カードの過去の因縁やジンクスを掘り起こして、試合をより一層楽しむための物です。
Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第3節
2021.3.10
川崎フロンターレ(1位/3勝0分0敗/勝ち点9/得点10 失点2)
×
徳島ヴォルティス(12位/0勝2分0敗/勝ち点/得点2 失点2)
@等々力陸上競技場
戦績
過去の対戦成績
通算3回の対戦で川崎の3勝。
Head-to-head
<Head-to-head>
・2014年の徳島の1回目のJ1挑戦時は川崎のダブル。
・徳島は未だJ1で川崎相手に点を取っていない。
見たまんまである!これ以上は書けない!J1で記録した川崎の8得点はいずれも異なる選手(1つのOGを含む)が記録している。ちなみにアンビョンジュンが川崎で唯一決めた得点が徳島との試合である。
スカッド情報
【川崎フロンターレ】
・大島僚太はふくらはぎの負傷で離脱中。
【徳島ヴォルティス】
・宮代大聖は契約上の事由で出場不可。
予想スタメン
Match facts
【川崎フロンターレ】
<川崎のMatch facts>
・勝てばクラブ記録更新の開幕4連勝。
・今季の13得点のうち、9得点は前半に決めたもの。
・直近10試合の水曜日のリーグ戦で負けなし(W9,D1)
・昇格組との試合は直近17戦無敗(W14,D3)
・レアンドロ・ダミアンが得点を決めれば2020年9月以来のホーム2試合連続得点。
・山村和也がCBで先発したリーグ戦は直近9試合で全勝。
仙台戦の勝利でクラブ新記録となる開幕3連勝を達成した川崎。狙うは記録の更新である。今季の勝利は複数得点が特徴。得点の多くは前半に記録されているもの。前半からのプレスで畳みかけるのがパターン化している。
ミッドウィークの試合は相性が良く昨年のリーグ戦では負けなし。敗れたのは2019年7月の広島戦までさかのぼる。昇格組とも相性が良く、最後に敗れたのは2017年のC大阪戦以来負けなし。ホームに限れば2013年の湘南戦以降8年間負けなしである。
仙台戦で久しぶりの全休(2020年唯一の全試合出場したフィールドプレイヤーである)をしたダミアンは久しぶりのホーム連続得点を狙う。前回の連続得点時は5試合連続の確変状態。好調を感じさせる今季も波に乗りたいところ。出場機会が限られている山村も出場時は好調。2019年横浜FM戦以来負けはない。この試合でも出番はあるだろうか。
【徳島ヴォルティス】
<徳島のMatch facts>
・リーグ戦は2試合引き分けスタート。
・前回J1挑戦時に挙げた3勝はいずれもアウェイゲーム。
・直近のリーグ戦6試合は複数得点も複数失点もない。
・直近の公式戦の6敗は全てスコアレス。
・直近2試合のリーグ戦の敗戦はいずれも中3日のアウェイゲーム。
・垣田裕暉が得点を決めた直近14試合のリーグ戦は負けなし(W12,D2)
1回目のJ1挑戦となった2014年は9連敗スタートだったこと、そして初得点を決めたのが5試合目だったことを考えれば今季の徳島が前回の挑戦時とは異なる立場であることを示唆している。史上初のJ1残留に向けてまずは好発進といっていい。前回3勝を挙げたアウェイの地で初勝利が欲しいところだが。
チームとしては堅さがトレードマーク。J2時代も含めて直近は堅さが持ち味でロースコア決戦に持ち込んでいる。負けた試合はスコアレスのじり貧になるパターンも多いようだ。
直近のリーグで敗れている中3日のアウェイゲームというパターンがこの試合に当てはまるのは気掛かりなのだが、得点を決めれば負けていないラッキーボーイ垣田のゴールでなんとか勝ち点をつかみ取りたいところだろう。
展望
■ビルドアップのテンプレートは
恥ずかしながらリカロド政権における徳島は完全に未履修。というわけでまずは賢者たちの文献を読むところからである。
まずは徳島のボール保持から考える。どうやらアンカーを基準に菱形を形成するパターンと3-2の形でのビルドアップの2種類の形があるようである。
①菱形の場合
アンカーとなる役割を岩尾が担い、開いたCBの間に入りGKと菱形を形成する。ポイントとなるのはCHが縦関係になること。岩尾とジョエルは段差を取るようにポジションを取り、ビルドアップの先の出口を用意している形である。岩尾とジョエルは互換性はありで、ジョエルがアンカーに入り、岩尾が少しサイドに流れる形も見られる。
②3-2の形
SBの片方が上がり、SBの片方が3バックの一員を形成する左右非対称の形。ジョエルと岩尾はフラットな形に並ぶように立ち位置を取り、列を超えるための立ち位置を複数取る。①の形でフリーマンのような形だったトップ下の選手(渡井)はSBが高い位置を取らないサイドのハーフスペースに流れる。SBは右の岸本が高い位置を取り、左の吹々が3バックの一角に入る形である。
2つのスタイルを簡単に紹介したが、今季のリーグ戦2試合で採用されることが多かったのは②の方である。CBの3人で相手のプレス隊に数的優位を取り、ボール保持の局面をまずは落ち着けて主導権を握ることを狙う。まずは安全に1列目を超えるためのスタイル。
そこから先は大外のレーンを使って相手を動かすことが多い。ここを活用するのは大きく分けて主に3パターン。左の大外に張る藤原の1on1、右の大外に駆け上がる岸本に合わせる対角のパス、両サイドに流れてボールを引き出す垣田である。
ボールを動かして起点となる場所に運ぶというメソッドはすでに前監督の下で備わっているように思える。一方でこのサッカーにおいて起点となる大外からゴールまでたどり着く鉄板の形はまだインストールされていない。
大外の起点が個人頼みになりがちなので、徳島としてはここでまずどのくらい時間を作れるか。そして内側の選手たちが受け取った時間をどう使うかがゴールに至るポイントになりそうだ。この試合ではトップ下の宮代が契約上出場不可。出場が想定される渡井は宮代よりダイナミズムでは劣るものの、細かいテクニックに長けている選手。渡井のインサイドでの活躍が川崎相手に点を取るカギになりそうだ。
徳島の非保持はトップ下の選手をFWと並べる4-4-2がメイン。2トップがアンカーとCBの3枚を監視する前節の仙台と似た形のタスクを担うことになるだろう。彼ら2人がおなじみになってきた川崎の降りるCHの動きにどう対応するかはポイントになりそうである。
ハイプレスはスイッチが入ったときに発動。スイッチ役を担うのはSHで対面の選手にプレッシャーをかけたタイミングで全体が押し上げる。特に後方のSBが縦にスライドするように強くプレッシャーをかけるのが特徴である。新加入のジョエルはこの部分でもフィット。鋭い出足でショートカウンターの起点としての役割を担っている。
■モデルチェンジは課題克服につながるか
さて、ここからは川崎がどう戦うかである。最大のトピックは『徳島が川崎からボールを取り上げられるか否か』であろう。したがって、まずは徳島の保持の局面を川崎が咎められるかどうか?が試合の局面を大きく左右する。
川崎はまず間違いなく強気のプレスから試合を始めるはず。冒頭に紹介したビルドアップのうち、①の岩尾が最終ラインに落ちてひし形を作るパターンは相手のハイプレスが発動するときに散発的に見られた。1stプレスの後方で受ける選手を削ってでも最終ラインに数を確保する必要がある場合にこの形を取るということだろう。川崎がプレスをかければこちらのパターンを使ってくる可能性はある。
いずれにしても川崎は最終ライン+GKにプレスをかけつつ岩尾、ジョエルというビルドアップの出口になるパターンを全て押さえないといけない。徳島はリスクの大きいミッションに挑むことになる。
だが、川崎にとっては2020年に引き続き最も嫌なことは『ボールを取り上げられること』である。徳島はこの川崎にとって最も嫌なことを実現するためのポテンシャルを持っているチーム。徳島の視点で言えばCHだけでなく大胆にボールを持ち運べるCBコンビも活用し、川崎相手に自分たちの時間を作りたい。
川崎は今季どの試合でもペースを握られる時間帯は出てくるが、いずれもプレッシングからリズムを握られている。ビルドアップからテンポを握られれば今季初めてのことになる。ボールを握られてしまったらスタイルは違えど、昨季の横浜FC戦のように苦しい展開になることも考えられる。2021年モデルのアイデンティティであるハイプレスが徳島のビルドアップに通用するかどうかが序盤の見どころになる。
一方で徳島の非保持の局面ではチャンスがある。プレッシングのスイッチが入った瞬間の裏のスペースは狙い目。三笘ーシミッチのラインのダイレクトパスがハマれば徳島にとっては一気に対応が難しい状況になる。
比較的高めのラインを敷いている中でダミアンを活用するのも効果的。徳島のCB陣には体格差のあるダミアンを抑えるのはなかなかにハード。縦に速い展開の起点としてダミアンは十分活躍が期待できる。徳島はMFが最終ラインのカバーに入るのも早いわけではないので、川崎としては縦に速い今季のレパートリーを活用するチャンスはありそうだ。
縦への早い攻撃とプレッシングという2021年の旗印は2020年の課題である『ボールを取り上げる相手への対策』という部分に効果を発揮するのか。2021年モデルの力を測る試金石となる一戦になるだろう。
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)