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「出入りが激しいスタイル変更」~2021.3.3 J1 第11節 川崎フロンターレ×セレッソ大阪 BBC風オカルトプレビュー

 このプレビューは対戦カードの過去の因縁やジンクスを掘り起こして、試合をより一層楽しむための物です。

目次

Fixture

明治安田生命 J1リーグ 第11節
2021.3.3
川崎フロンターレ(昨年1位/26勝5分3敗/勝ち点83/得点88 失点31)
×
セレッソ大阪(昨年4位/18勝6分10敗/勝ち点60/得点46 失点37)
@等々力陸上競技場

戦績

近年の対戦成績

図1

直近10回の対戦で川崎の3勝、C大阪の6勝、引き分けが1つ。

川崎ホームでの戦績

図2

直近10試合で川崎の3勝、C大阪の5勝、引き分けが2つ。

Head-to-head

<Head-to-head>
・昨年は川崎のシーズンダブル。それ以前の6戦はC大阪の5勝
・川崎にとってC大阪は最もJ1で勝率の低い相手(34.2%)
・C大阪の昨季の失点のうち22%が川崎戦で喫したもの
・5月に入る前の対戦は過去に5回あるが、C大阪は無敗(W3,D2)

 川崎にとってC大阪は圧倒的な天敵だった。2014年ぶりに達成した昨季のダブルで多少は悪いイメージは緩和されたかもしれないが、依然川崎にとってはC大阪は今季のJ1で最も勝率が低い相手であることは変わりない。

 一方でC大阪サイドにも昨年のダメージの大きい負け方は傷が残っているところだろう。なんせ昨季のリーグ戦総失点(37)のうち、22%は川崎相手(8)に喫したもの。嫌な印象はあるはずである。

 だが、過去を見てみると3月や4月の対戦では過去5戦でC大阪に負けはない。やっぱり春は桜の季節なのだろうか。

スカッド情報

【川崎フロンターレ】

・大島僚太、登里享平、塚川孝輝は開幕戦負傷欠場。

【セレッソ大阪】

・新井直人、鳥海晃司、為田大貴、澤上竜二は欠場見込み。
・進藤亮佑、ダンクレーにはデビューの可能性。

予想スタメン

画像3

Match facts

【川崎フロンターレ】

<川崎のMatch facts>
・直近8年でリーグ戦2試合目の勝利は1回だけ
・直近8年でリーグ2試合目のクリーンシートはない。
・ホームのリーグ戦は4連勝中。13得点2失点。
・3月のホームでのリーグ戦は直近3試合で未勝利。この間1得点。
・家長昭博は自身初の開幕戦ゴール。
・鬼木監督はクルピ監督のチームとは過去一度だけ対戦。等々力にて川崎がクルピ監督率いるG大阪に勝利している。

 過去を振り返ってみるとホーム開幕戦がドローばっかりというのはすでに死ぬほどお知らせした通りなのだが、実はリーグ戦の2試合目も鬼門。まぁこれはホームの開幕戦が2試合目にかかっているというのもあるのだけど。それにしても勝利はここ8年で昨年だけ。そのほかは6分1敗、クリーンシートもない。

 ただ、開幕戦に勝利し、ホームでの戦績は上々。直近4試合で2失点と守備は非常に堅い。ただし、3月のリーグ戦に絞ればホームゲームは3試合連続未勝利。昨年なかったもんね、3月の試合は。

 開幕戦で得点を決めた家長には昨年の最終節から引き続いて3試合連続のリーグ戦の得点がかかっている。J1において3試合連続のリーグ戦の得点を決めれば、家長のキャリアにおいて2回目。1回目は2019年。その時の3試合目の対戦相手は今回のC大阪だ。

 そして、鬼木監督とクルピ監督は過去に一度だけ対戦がある。2018年3月のG大阪時代にクルピは等々力で2-0で敗れている。そして、これこそが川崎にとっての最後の3月のホームでのリーグ戦の勝利である。

【セレッソ大阪】

<C大阪のMatch facts>
・昨年はリーグ開幕3連勝を決めている。
・ただし、J1において関東勢とのアウェイ初戦は6回とも勝ったことがない(D2,L4)
・ロティーナ政権において複数得点を取って敗れたのは1回だけ。
・新就任監督がJ1連勝を達成すれば2001年の西村昭宏以来のこと
・クルピ監督はC大阪を率いての等々力凱旋は過去3戦無敗(W2,D1)
・大久保嘉人は2016年の一度目の川崎退団以降、川崎相手に先発した試合は2戦いずれも得点を決めている。

 開幕戦はホームで完封勝利という快調な滑り出しを見せたC大阪。昨年はリーグ戦は3連勝でスタートしている。ただ、関東でJ1アウェイの開幕戦を迎えた年は過去に勝利が一度もない。今年はアウェイでの開幕を関東で迎えることになるが、勝てばクラブ史上初めての関東でのアウェイ開幕戦の勝利となる。そして新監督が就任直後にJ1で連勝すれば20年ぶりのことになる。

 直近の話を引っ張ってくるとほぼロティーナの話になるので、あまり参考にならないだろうが、ここ2年間でC大阪が複数得点をとって敗れたのは川崎相手だけ。C大阪にとっても川崎は嫌なイメージがある相手といっていいだろう。

 ちなみに先ほどクルピ監督が直近で敗れた等々力の試合を紹介したが、C大阪の指揮官として等々力にやってきたときのクルピは負けなし。ただし、ホームアウェイと率いたチームを問わない状態だとクルピは直近4試合で川崎には勝っていない。

 開幕戦で得点を決めた大久保の帰還を楽しみにしている川崎ファンも多いだろう。16年の一度目の退団以降、スタメンで出た川崎戦は2戦とも得点を挙げており、川崎はまだ彼を止めることができていない。等々力では通算102試合出場で67得点。2018年の最終節で得点を取るもチームを勝利に導けなかったあの日のリベンジに大久保は間違いなく燃えているはずだ。

展望

■ロティーナ時代との違いは?

 久しぶりのホーム開幕戦の勝利を収めた川崎。休む間もなくやってくる次なる相手はクルピが帰還を果たしたC大阪だ。開幕戦を見たが、クルピ時代のC大阪を知る人たちは「あークルピっぽい」と口をそろえていっていた。自分はそこまで当時はJにどっぷりという感じではなかったので、よくわからないんだけども。

 監督が代わったことによりC大阪のファンもJリーグのファンも今季の出来を心配する向きは開幕前には多かった。だが、少なくとも攻撃面においては一定のポジティブな側面を開幕戦の柏戦では見ることが出来た。

 前提として攻撃においても、守備においてもすでに仕組みの部分ではロティーナの色はかなり薄くなっており、クルピのチームになっている印象を受けた。レビュワー仲間の川崎人君によると丸橋が高い位置を取る!というのはクルピっぽさを担う一端らしい。確かにこの日のC大阪はボール保持時に昨年に比べて両SBを高く上げる頻度が多かった。

 C大阪のビルドアップルートは基本的には外の循環が多かった。後方中央の選手から長いボールを対角に蹴りながら高い位置を取るSBにボールを届けて前進する。前進が難しければ、また後方に戻し対角にパスを蹴るという流れの繰り返しだった。やり直しの頻度や縦に進む優先度に関してはこの日前半に対戦相手の柏が退場者を出したこと、数的優位を生かして無理なくリードをとれたことが関係している可能性もあるが、少なくともビルドアップの段階で中央に無理に刺すことで相手のショートカウンターを受けそうになる場面は少なかった。

 SBに高い位置でのプレーをしてもらうという方針は間違いないだろう。後方の選手たちも原川、ジンヒョン、瀬古など長いキックを蹴れる展開力のある選手が多い。彼らにどうボールを届けるか?という部分は後方の選手の展開力に力を借りている。

 この日のC大阪の攻撃は割と右に偏在していたような気がするが、これはおそらく後方の選手たちが右利きが多いことも関係していそうな気もする。本来は松田と同じく丸橋も使いたかったと思うので、左にどうやって届けるか?という部分はもう少し向上の余地があるかもしれない。具体的には内に絞りがちな清武に原川から楔が入る頻度が増えればより大外の丸橋は活用できそうに思う。

画像5

 サイドで高い位置を取ってからの攻撃陣は割とど根性。受けて背負ったり剥がしたりなど野性味あふれる大久保や豊川の特徴を前面に押し出したスタイルになっている。終盤に2トップを組んだ加藤と奥埜のコンビの場合は早い段階でハイボールを当てに来たので、誰がFWにいるか?というのはC大阪のスタイルを変える大きなファクターなのだと思う。

 川崎ファンとして仕組み作りうまいな!と思うのは、ボールの動く経路を外循環の比率を上げることで、悪い時の大久保が陥りやすい引いて受けに来る動きを入り込む余地を減らしているところ。こういう部分もFWの特性に合わせた形になっている。

 大久保と豊川はエリア内でボールに触らせたら怖い存在。特にスペースに挙げるクロスへの嗅覚は抜群で、川崎も単純な高さだけでは簡単に跳ね返せないのが恐ろしいところ。SBが高い位置を取るセットが出来てからは比較的手早く攻撃に移り、エリア内での大久保と豊川の破壊力に賭ける。

 野性スタイルになったことで割を食っている感があるのは坂元。昨年のC大阪は彼にオープンな状況をどう作るか?という理詰めなビルドアップが多かったけど、今季は昨季よりも狭いスペースで背負う頻度が増えそうなので、もっと泥臭い役割を求められそう。でもこういうガツガツした部分を身に付ければアタッカーとしてより怖さが出てくるとは思うので、この1年でどういう変貌を遂げるかは個人的には楽しみでもある。

 非保持においてはシンプルに昨季よりは堅さはなくなったといっていい。まずFWの守備意識は昨季よりは明らかに低い。昨季は中盤が遅らせているうちに前線が戻っていつの間にかホルダー周りは人だらけ!という感じだったが、今季はそういったFWの献身性はそこまで見られなかった。

 したがって、1stプレスラインを超えてからは後方は4-4ブロックで守ることが多い。2トップの前線の守備に関しても、マークの受け渡しはあいまい。例えばアンカー+2CBを2人で監視しなさい!といわれたらおそらく綻びは出るはずだ。

 中盤のスペースも間延びしがちで後方が裏抜けでラインを下げられると中盤との距離が空く。前線がそこまで戻らないので縦方向にコンパクトさを維持するのは大変そうだった。後方への長いボールで相手に間延びを誘われた時の対応方法は要改善である。

 一方で単純なロングボールには強さも見せる。瀬古を軸としたバックスは対人には自信があるはずだし、ダンクレーが入ればこの部分はさらに強化されるだろう。セカンドボールに関しては原川と奥埜が抜群の回収率を見せるので、川崎が楽して単なるロングボールに終始すると簡単に跳ね返される展開は十分にあり得る。

 総じていえば、去年と比べて明らかに不確定要素が多く、出入りの激しいサッカーになるように思う。年間を通して、ファンを魅了し心を掴むような試合も増えるだろうし、歯車がかみ合わずに落胆しきりの90分になる試合も増えるのではないだろうか。

■機会を減らすか、押し切るのか

 さて、ここからは川崎がどう戦うかの話である。川崎のボール保持の局面はそこまで大きな心配はしていない。前線からの完全にはめてくるようなタイトなチェイシングをしてくるチームではないし、川崎の2CB+アンカーのどこかが空く公算は強いので、少なくともボールを全く持てない展開にはならないとみる。

 C大阪の守備を見る限り最も気にしなければいけないのはダミアンへのポストが阻まれてボールの回収どころになる可能性である。だが、仮にここを封じられても川崎にはWGの裏抜けでの勝負という武器がある。出しどころとなるシミッチは先述の通り、フリーになる可能性は高いので、横浜FM戦前半の頻度で裏抜けを仕掛けられれば攻撃を加速させる手段は十分に得られるだろう。

 問題となるのは非保持の方である。対角パスを活用したC大阪のビルドアップは川崎のプレス隊にとっては苦手分野。川崎はおそらくハイプレスで相手のSBへはSBが出ていくと思うのだが、ここの対応を誤ればC大阪にとっては一気にゴールまでの電車道が開けることになる。

画像4

 そして大久保と豊川のコンビをゴールに近づける頻度を下げることが川崎にとっては最も肝要である。そのための手段としては、ボール保持でやり直しを繰り返しながら攻撃の機会自体をC大阪から取り上げることである。そうすればビルドアップもゴール前の2トップも脅威にさらされる頻度は大きく少なくなる。

 でも多分、鬼木監督はこれはやらないと思う。横浜FM戦でのレビューでも触れた通り、今季の川崎はテンポを上げて相手を振り切るという手法でゲームを支配しようとする傾向が強い。したがって、相手の攻撃の際はボールを即時奪還しゴールに迫ることで試合を握ろうと考えるはずだ。

 C大阪にとってはまさにこの部分に付け込むのが勝利を呼び寄せるカギになると思う。速いテンポに持ち込んで振り切ろうとする川崎のスタイルを足元から崩し、増えた試行回数を大久保と豊川に届ければ開幕2連勝で一気に上昇気流に乗る道も見えてくる。

 鬼木監督は少なくともACL開幕くらいまでは、自チームへのベクトルを強めた試合の運び方を志向するような気がしている。速いテンポでの試合の支配の仕方というのは確かにC大阪の付け入るスキを与えるのかもしれない。だが、川崎がこれまでと違う持ち味を得るための伸びしろもきっとここにあるのだろう。共に出入りが激しい方向性に舵を切った感のある両チーム。水曜日は前半からバチバチの火力勝負のしばき合いが見られるかもしれない。

【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)

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