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「3つのトピックスで反省会」~2021.3.6 プレミアリーグ 第27節 バーンリー×アーセナル レビュー

スタメンはこちら。

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目次

レビュー

■3つのポイントで振り返る

 立ち上がりはポンポンポンポンボールが左右に行きかう展開。あぁ、バーンリー戦がやってきたんだなと思った。

 アーセナルのボール保持は2CB+2CHでのビルドアップが主体。CHは縦関係になることが多いのが最近の特徴で、トーマスが前方、ジャカが後方に降りることが多い。ここ数試合ではトーマスとジャカの縦関係を利用する機会が多かった。ジャカが1列目を超える役割、トーマスはMF前で受けてそこからMFラインを超える役割である。

 前線の配置はやや左右対称気味。ハーフスペースは左がSHのウィリアン、右がトップ下のウーデゴールが位置し、彼らがMFラインの後方での受け手となる。

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 ハーフスペースに絞る2人のうち、より広い行動範囲を許容されているのはウィリアンの方で、列を降りる動きでMFラインの手前まで降りていくこともざらだった。

 非保持のシステムはウーデゴールが前線に加わる4-4-2のスタイルでマンマーク気味のマッチアップで受け止める。

 はい。基本的な説明はおしまい。というわけでここからはいくつかのトピックスに話を絞ってこの試合を振り返っていこうと思う。

■ポイント① 攻撃は加速できたのか?

 プレビューにおいて述べたが、バーンリーの守備において狙いたいのはDFラインを背走させた状態で左右や裏で勝負し、中央を空けるような形である。下はプレビューで使ったイメージ図。

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 これを行うにはMFのラインが自陣に戻ってDFラインをフォローする時間を与えないことが重要になる。攻撃を加速させる手法はいくつか考えられる。オーバメヤンを活用した裏抜けはその1つだろう。DFラインからのダイレクトな裏へのボールもそうだし、SBから斜めの方向へ裏へのパスが狙ったりなど。この試合のCFがラカゼットではなくオーバメヤンだったのは、ダイレクトにDFラインを動かすという役割においてオーバメヤンの方がより適任だからといえるだろう。

 もう1つは前節と同じくウィリアンのボール運びを使う形。うまくいった代表例は得点シーンになるだろうか。トーマス⇒ウィリアンへの縦パスで2列目を超えると、外に流れたオーバメヤンに。1列目の通過から2列目の通過が非常にスピーディに行われており、バーンリーのDFラインが背走する状況を作ることに成功している。

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 厳密にはこのシーンではオーバメヤンが受けた位置が大外だったため、内側に入り込む段階でMFのカバーリングは間に合ってしまっている。だが、タルコフスキーが食いつきすぎてしまったことや、ブラウンヒルが絞るのをサボってしまったためにシュートコースが空いてしまった形である。

 逆に良くなかったシーンは17分。トーマスが最終ラインに降りて開いたダビド・ルイスが持ちあがりながら出しどころを探している。このシーンではまず相手のMFラインよりもアーセナル陣側にいるアーセナルの選手がやたら多い。いわゆる後ろに重い状態である。加えて、2列目のウィリアンとウーデゴールもMFラインに張り付く。さらには最前線のオーバメヤンも降りる方向に意識が向いている段階。この状態でルイスが裏に抜けるチェンバースにパスを出す。これが通ったところでPAにはチェンバースのパスを受けられる選手がいない。

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 この状況で裏に出すルイスもルイスなのだが、一方でこの様に過剰に後ろに重たくなる陣容をプレスをかけてきている状態ではないバーンリー相手に取る必要はない。要はかける人数のバランスが悪い。

 このような形が頻発したため、アーセナルは十分に加速ができた状況を作れたとはいいがたい。特にウィリアンがばてて、後半にフォーメーション変更するまでの間は停滞感が顕著。個人のアドリブの要素が強い故の悩みのように思える。

■ポイント② 前後分断の取り扱いはどうだったか

 バーンリーの攻撃は中盤を間延びさせた状態で前後分断した状況が最も生き生きする。長いキックはうまい選手は多く、ボールキープが可能な中盤に時間とスペースを与えるのは厄介につながる。

 バーンリーにやられるチームはこの前後分断を甘く見て自陣にボールを運ばれる状況を作ってしまいやすいという共通点がある。一方で勝利したチームはこの前後分断をうまく使えたチームである。直近のトッテナムは前線の献身的なプレスバックで中盤に挟み込むようにプレッシャーをかける。ここでボール奪取ができれば、ショートカウンターでバーンリーは背走しながらのDF対応になる。間延びしたスペースはスパーズのアタッカー陣の大好物である。

 この試合のアーセナルはすでに述べた通り、4-4-2にシフトしてマンマークチックに守備を組んだ。間延びした陣形を好む相手にマンマークを行うということは、間延びした形を受け入れるということである。なので、一応バーンリーの得意な状況を受け入れる形で試合を進める選択をしたということになる。

 ただ、これがバーンリーの攻撃を受けるうえで大きな問題になることは少なかった。ボールホルダーが完全にフリーになるケースは少ないので、長いキックでのびのび前進できる状況ではなかったバーンリー。長いボールを蹴った先にもマークマンはいるので、受け手もフリーにはなれない。どうせ相手が同数でマンマークに来るならば、前線に蹴ったほうがお得。だが、ウッドは受けた後に後ろ向きのパスを選択する機会が多く、ここから加速することはなかった。超久しぶりの先発となったチェンバースも対角のロングボール跳ね返しには貢献。高さ対策の一環として起用された意義は果たしたといえるだろう。

 だが、バーンリーが効果的な時間を過ごせていないからといって、アーセナルがよかったかといわれるとまたそれは別の話。確かにバーンリーは前にはあまり進めなかったが、アーセナルのプレスは激しいものではなくボールの取りどころを定めて囲い込むような類のものではなかった。したがって、トッテナムのようにバーンリーの保持をひっくり返して得点の機会を得るような状況は少なく、有効活用とまではできなかったといえるだろう。

 むしろ、50:50のボールが増えることでバーンリーの得意な競り合いを中盤で誘発していたといえる。したがって、この中途半端なマンマークには好感は持てない。要は攻撃機会を増やすほどの守備ができなかったということである。アーセナルはご存じの通り、この試合は同点で終わってしまったので、このような攻撃機会を増やせるきっかけである守備で相手に付き合うような間延びを許容したのはもったいなく思えた。

■ポイント③ ハイプレス対応について

 引きこもってブロックを固めるイメージが強いであろうバーンリーだが、ハイプレッシングを局面で使ってくるチームでもあるのが今季の特徴である。結果的に勝ちはしたものの、まだ後方のビルドアップが今ほど成熟していないトゥヘルのチェルシーもこのプレスには苦しんだ。

 これに関してはこの試合のアーセナルは文句なしの落第だろう。失点をしてしまってはどうしようもない。もちろん直接原因はジャカの判断ミスによる部分(ダイレクトならばルイスかレノにはたくことは可能だった)が大きいのは間違いない。ただ、この判断はリスクも伴う。レノへのバックパスはかなり時間がない中でのレノへのプレーを強いるものになるし、ルイスへのキックはダイレクトで逆足でのプレーが求められる。ジャカにはヴィドラが背後に構えていたので、PAより前方にとどまればそもそもパスコースは創出できない。

 それを考えると、そもそもレノ⇒ジャカに至るまでのビルドアップが時限爆弾式になっていたと考えるのが自然である。もう少し時を戻すとこの失点は前節と同じく左サイドのビルドアップルートが詰まったところからである。

 特に4-4-2の相手に対しては自陣の深い位置のサイドはフリーで受けられるのだが、まずマリがこのスペースまでボールを引き出す動きに入らなかった。グズムンドソンがレノとマリの双方を流れの中でマークに行けたのは、マリの立ち位置が前すぎるという要素が多い。ちなみにこの動きはルイスがLCBに入ったときが上手。加えていえば、前に余裕はあったように見えるティアニーの下げる選択もどうだったか。

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 マリもティアニーもどちらも明確なミスではない。一方で彼らのこの場面でのプレーがアーセナルの前進の助けにならなかったこともまた明らかだろう。ビルドアップにこだわってきたこのチームにおいては、前進の下地になっていない無駄な後方でのパス回し自体を減らす必要がある。糾弾すべきはジャカ個人のミスだけはない。確かにこうしたミスは低い位置でボールを回すチームの税金なのだが、この日のバーンリーのプレス強度を考えればまだできることはあったはずである。

 こういった後方の人数のかけ方やパスコースの作り方が試合全体のもっさりした感じに飲まれてしまったのが残念だった。選手個人で言えば特にSBのビルドアップの貢献度は気になった。特に前半は張る位置での貢献が求められたティアニーがビルドアップへの関与が少ないのは仕方ないが、逆サイドのチェンバースがその部分で貢献できなかったのは厳しい。

 降りて受けたがるウーデゴールとの共存は難しかったように思うが、アーセナルは前線の選手が降りてきすぎて前の迫力不足に陥ることが多いことを踏まえれば、SBがより低い位置で前進を助ける役割を担うべきである。この辺りはアルテタの責任であるが。現状では列を超えるパスの引き出し方はベジェリンやセドリックの方が上であり、バーンリーのような対角への競り合いに舵を切った場合以外での先発起用は難しいのではないだろうか。ハイプレスを超えるカギはSBが握っていることはマンチェスター・ダービーの2点目を見てもわかる。

 後半左サイドでサカを出口にして、右にペペをフィニッシャーに置いた形は良かった。セバージョスはこの日誰よりも前にボールを刺す意識が高かったことも良かった。終盤は畳みかけるもネットは揺らせず。アーセナルは試合を決める追加点を奪うことができなかった。

あとがき

■より良いアーセナルになるために

 交代は良かったけど、やはり攻撃機会が不十分だったということだろう。確かにこの試合はペペやオーバメヤン、サカが決めていればという展開だったが、より勝利を今後増やしていくことを見据えればまだまだチャンスの数は足りない。PKシーンの判定は残念だったが、そこの紙一重で救われるくらいではプレミアで上位を見据える力はないと見る。この試合ではビルドアップでもプレッシングでも、より多くの頻度でより質の高い攻撃を行える余地を残している。

 『もうEL一本に絞る?』みたいな話もちらほら聞こえてくるけど、結局はやりたいことを体現できるようにならなければ、今季のEL制覇は厳しい。怪我人は非常に少ない中で、コンセプトが浸透しきらない状況は満足できるものではない。メンバーのやりくりは必要だが、捨てるとかではなく試合を哲学を根付かせる機会として活用しなければ、今季もあるいは来季も狙った目標には手が届かない。3歩進んで2.7歩下がるようなアルテタ政権下でのアーセナルでの歩みは非常にもどかしい。この日のように昼下がりのターフ・ムーアののんびりとした雰囲気に飲まれる試合はもうごめんである。次の試合は今のアーセナルがより良いアーセナルになるために活用してほしい。

試合結果
2021.3.6
プレミアリーグ
第27節
バーンリー 1-1 アーセナル
ターフ・ムーア
【得点者】
BUR:39′ ウッド
ARS:6′ オーバメヤン
主審: アンドレ・マリナー

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