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「Catch up Premier League」~Match week 29①+α~ 2021.3.2-3.4

目次

①マンチェスター・シティ【1位】×ウォルバーハンプトン【12位】

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■ブロックを壊すマジシャンたち

 首位に相対するウルブスのスタンスは明確。5-4-1のブロックで内側を締めての迎撃。相手に良いパスを2つ続けてつながせない!という意図がうかがえた。

 こういう相手にはいわゆる溶かすような守備が必要。サイドからの前進は大体許してくれるので、そこから前進して一つずつズレを作りながら・・・みたいな。だが、結果的にはこの日のシティにそれは不要だった。遠距離からでもピンポイントのズレを突くようなパスを入れられるマジシャンがいれば、1つのいいプレーで好機になる。先制点の場面のロドリの展開などはまさにその典型。外からのクロスを虎視眈々と狙うデ・ブライネも一撃で違いを作れる存在である。

 失点したウルブスはロドリを抑えに重心を前に傾けなければいけないのだが、その程度のプレッシャー増加ではびくともしないのが今のシティ。もう1つウルブスにとって誤算だったのは、前に出ていく機会において最前線に置いたトラオレもエースのネトも全く機能しなかったこと。特に今季絶好調のネトがここまで何もさせてもらえなかったのは非常に珍しい。リーグ最少失点は伊達ではないことがうかがえた。

 セットプレーから追いつかれたシティだったが、もう1人のマジシャンが試合を動かす。ここ数試合プレーの幅を広げて絶好調のマフレズ。直近ではサイドで対面した相手を出し抜いたピンポイントクロスで違いを作ったが、このシーンでは縦への足の長いパスで局面を一気に打開。プレーのレパートリーが増えて絶好調のマフレズ。彼を含めた攻撃陣はやることをやれば点が入ることをまるで知っているかのよう。最終的には4得点を決めたシティのイレブンからは『ほらね?』という声が聞こえてきそうだ。

試合結果
マンチェスター・シティ 4-1 ウォルバーハンプトン
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:15′ デンドンケル(OG), 80′, 90+3′ ジェズス, 90′ マフレズ
WOL:61′ コーディ
主審:クリス・カバナフ

②バーンリー【15位】×レスター【3位】

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■緊急事態突入感のある試合内容

 負傷者だらけでどうしようもないレスター。これまでも3バックで戦うことはあったレスターだが、この日のンディディ、アマーティ、ソユンクの3バックを見るとちょっと緊急事態感が伝わってくる。中盤も役割が整理できていない感は否めず、噛み合わせ的には余裕でビルドアップできる形なのだが、引っかける頻度は高め。そして、その機会をヴィドラに仕留められて早々に先手を取られてしまう。

 レスターは守備における距離感も悪く、特にWBとワイドのCBの距離が間延びすることが多く、この部分のギャップはこのシステムの穴になりそうだった。バーンリーだから、そんなにひどいことにはならなかったけど。先に挙げたビルドアップの方がこの試合では問題になりやすい内容だった。

 バーンリーのブロックは大外をあける4-4-2。そしてこの大外を起点に斜めに早く攻められることを嫌がる。イヘアナチョの同点ゴールはこの形をダイナミックに再現した例である。前節の機能不全の中心人物だったイヘアナチョだが、今節は苦しい台所事情のチームをアクロバティックに救って見せた。ただ、構造的にバーンリーの4-4-2を殴れているわけではなく、頻度の面では不十分。良く勝ち点を拾った内容ではあるものの、苦しい台所事情が浮き彫りになる試合内容だった。

試合結果
バーンリー 1-1 レスター
ターフ・ムーア
【得点者】
BUR:4′ ヴィドラ
LEI:34′ イヘアナチョ
主審:アンディ・マドレー

③シェフィールド・ユナイテッド【20位】×アストンビラ【9位】

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■レアな先制点が上位進出を阻む

 グリーリッシュ不在という命題と引き続き戦わなくてはいけないアストンビラ。前節のリーズ戦同様速い攻撃で守備ブロックの攻略に挑む。ターゲットになったのはワトキンスやエル・ガジの裏抜け。前線にシンプルな長いボールを当てて一気にゴールを目指す。対するブレイズも似たような長いボールが主体。ボールが落ち着かない展開が続く。

 それだけにブレイズの先制点の場面は意外な形だった。バードックのドリブルからのシュート性のクロスはファーサイドに待つマクゴールドリックに。今季のブレイズでもあまり見たことのないタイプの意外性あふれる先制点を得る。アストンビラは3センターの距離感がちょっと気になるところ。このシーンではニアサイドのラムジーがランドストラムのフリーランに引っ張られてしまっている分、スペースが空いてしまった。

 先制したブレイズが苦境に陥るのが50分過ぎのこと。裏を狙うエル・ガジに対してのジャギエルカのタックルはVARからの助言で一発退場に。数的不利に転じてしまう。

 その後は4-4-1で守るブレイズに対して、アストンビラがひたすら攻め立てる展開。マッギンの左足や途中から入ったバークリーなどから大外に展開してクロス攻勢でブレイズのゴールに迫る。惜しいシーンまでは作るものの、得点は決まらず。特に訪れたチャンスの数を考えればトラオレは1つくらいは決めておきたかったところだ。

 数的優位にも関わらず最下位相手にシャットアウト負けを喫したアストンビラ。上位争いにおいて遅れを取る手痛い1敗になった。

試合結果
シェフィールド・ユナイテッド 1-0 アストンビラ
ブラモール・レーン
【得点者】
SHU:31′ マクゴールドリック
主審:ロベルト・ジョーンズ

④クリスタル・パレス【13位】×マンチェスター・ユナイテッド【2位】

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■固めた中央に沈黙、勝ち点1をもたらした明るい材料

 シティに比べて勝ちきれない試合が多く、優勝を争うには勝ち点が伸び悩んでいるユナイテッド。とはいえ、CL出場権は安泰ということでELとのリソースの配分が難しくなってくる段階でもある。

 この試合ではクリスタルパレスの守備ブロックに苦戦する。ミリホイェビッチとマッカーシーの中央は堅いのでまずはサイドから崩したいところなのだが、ユナイテッドが崩したい左サイドではタウンゼントが大奮闘。間を取りながら人をずらして勝負したいユナイテッドだが、この日のタウンゼントのプレスバックを外すことができずに苦戦する。

 気掛かりなのはいい時に見られたルーク・ショーを軸とするサイドでの旋回があまり見られなかったこと。クロスが上がることは上がるけど、中の重心が崩れた状態でのクロスではないのでダメージは小さい。

 一方のクリスタル・パレスもタウンゼント、エゼを軸にサイドからクロスを上げていくが、こちらもクリティカルなダメージを与えることはできず。特にエゼがハーフスペースに突っ込んでいった時の周りのサポートが少なく、ギャップをつく動きがあまり見られないのがクリスタル・パレスの攻撃の気になる点であった。

 後半は高い位置からのプレスで圧力を高めるユナイテッド。だが、後方からの押し上げも不十分でショートカウンターに転じるほどの武器にすることができず。互いに中央を固めた相手に対して崩せない展開が続き、最終的な枠内シュートはパレスが2本、ユナイテッドが1本と崩してのシュートはほぼなし。ユナイテッドにとっては終了間際のファン・アーンホルトの決定機に冷や汗。クリーンシートでこの試合を終えたヘンダーソンはこの試合の数少ない明るい材料といえそうだ。

試合結果
クリスタル・パレス 0-0 マンチェスター・ユナイテッド
セルハースト・パーク
主審:アンドレ・マリナー

⑤ウェスト・ブロムウィッチ・アルビオン【19位】×エバートン【7位】

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■ダイナミズム決戦に違いをもたらす精度

 4位争い真っ最中のエバートン。2連勝で4位を射程圏内の位置まで戻してきた。ロンドン勢が調子を取り戻している中でここで負けるわけにはいかないだろう。

 ウェストブロムの守備の問題点は3センターの可動域が多く、前線の守備の貢献度が高くないこと。3センターの問題点は結構ニューカッスルに似ているように見える。彼らのブロックの狙い目はアンカー脇と大外。この2か所を軸に内外を使い分けることで陣形をゆがめるのが効果的である。

 だが、エバートンの攻撃はどちらかと言うと長いボールで縦に速く攻め切る構図。右サイドの広域をカバーするドゥクレの運動量がロングボールで足りなくなりやすい攻撃の厚みをサポートする。最終ラインからはゴドフレイの持ちあがりも押し上げに貢献。この試合のように長いボールの展開が多く、陣形が間延びしやすい試合ではストライドが大きくスピードがある彼の持ちあがりはアクセントになりやすい。

 縦に速い展開の中で目立ったのはディアーニュ。ロングボールを収める際の存在感はこの試合においてはキャルバート=ルーウィン以上といってもいいくらい。体格の大きいエバートンのDF陣も彼らには苦戦。エバートンと比肩するくらいの決定機を作り出していた。

 両チームともダイナミズムはあふれているが、繊細な崩しの要素はこの試合にはあまりなかった。そんな中で大仕事をしたのがシグルズソン。交代直後、CKの流れからピンポイントのクロスをリシャルリソンに合わせてこの試合唯一の得点を演出。高さ十分なウェストブロムをクロスで崩すには高い精度が必要。差を見せる緻密さを交代直後に見せたシグルズソンの貢献でエバートンが3連勝を決めた。

試合結果
ウェスト・ブロムウィッチ・アルビオン 0-1 エバートン
ザ・ホーソンズ
【得点者】
EVE:65′ リシャルリソン
主審:ダレン・イングランド

⑥リバプール【6位】×チェルシー【5位】

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■自信の表れはゲームクローズに

 勝てば暫定4位浮上、負ければ大きく後退。他のチームも巻き込んだCL出場権をめぐる大一番となったこの試合。最終ラインを高い位置に設定した状態でのプレッシングでの互いの主導権の握りあいとなる立ち上がり。立ち上がりにメンディの飛び出しで裏への攻撃を防いだチェルシーに比べると、紙一重でヴェルナーのオフサイドで救われたリバプールの方がやや裏への対応には不安を覚えたか。

 裏を狙う過程を見てみると、チェルシーがヴェルナーのスピードやマウントのボールの引き出し方を活かした直線的なものが多いのに対して、リバプールはやや動的な要素が強め。マネが中央に絞ったスペースにロバートソンやジョーンズが出ていってズレを活かすことを基軸にする部分が強く、チェルシーに比べると攻撃を起動するのが簡単ではないように見えた。先制したのもチェルシーの方。ボールを引き出すことで攻撃を前進させていたマウントがファビーニョを振り切りアリソンを打ち抜くというすご技を披露。軌道は楽だけど崩しは超絶難易度。これはシンプルに脱帽である。

 後半はペースをどこまで上げていけるか?という部分での勝負になっていくか?とは思ったが、前半のハイペースが祟った上にブロックを下げずに守るチェルシーに追うリバプールはなかなかペースを上げられない。ジョーンズの前線進出はこの試合のチェルシーが捕捉できていない動きだったと思うが、そのジョーンズが下がるとリバプールはやや手詰まりに。ジョーンズが担っていた動的要素を任されるには復帰戦のジョタは荷が重いし、オックスレイド=チェンバレンは停滞感を打破できなかった。

 後半のチェルシーは守備陣が頼もしさを増す。ビルドアップの立ち位置でチームを助けるアスピリクエタと逆サイドで高い位置を取ることで陣地回復に一役買ったチルウェルは攻撃面で光った。対して、守備面ではクリステンセンを中心にリバプールの反撃をなるべく早い段階で摘んでいく。

 1点差で相手がリバプールとなれば、ブロックにこもって守備をしてもおかしくないが、この試合のチェルシーは終盤までミドルゾーンを維持しながら守り切る。足をつったリュディガーを味方が積極的に抱き起す姿を見れば、時間稼ぎをする気は毛頭ないのだろうと感じる。自分たちの守り方に自信を持っていることが良く分かった。先制点を取ったのは前半だが、この試合のチェルシーで強さを感じたのはこの締めの部分。試合終盤という特殊な環境で自分たちの守り方を貫けるチェルシーがトゥヘルの下で強いチームとしての歩みを始めたように見えた一戦だった。

試合結果
リバプール 0-1 チェルシー
アンフィールド
【得点者】
CHE:42′ マウント
主審:マーティン・アトキンソン

⑦フルハム【18位】×トッテナム【8位】

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■見逃された隙、見逃されなかった隙

 いよいよ上位勢との連戦が始まってしまったフルハム。その始まりとなるこの日はホームにトッテナムを迎えての一戦。ちなみに33節の前倒し分らしい。

 トッテナム相手でもフルハムはボール保持を基調とした攻めを展開。アイナ、アダラバイオ、アンデルセンが3バック気味に後方に広がりビルドアップを行う。いつもと違うのはビルドアップの中心となるアダラバイオが左のCBに入ったこと。左のロビンソンを押し出したいこと、そしてベイルとドハーティが縦関係を組むこちらのサイドを狙い撃ちにしたいという意図があったのだろう。

 フルハムは初めは左サイドからボールをうまく運ぶシーンはあったものの、徐々にトッテナムはこれに対応。外に誘導しながらカウンターを引き起こす機会を得ることになる。フルハムにとって誤算だったのはインサイドでビルドアップの起点が期待されたリードがからっきしだったこと。リードがプレッシャーに負けて後ろ向きのプレーが選択することが多い中央と、ロビンソンがロストを繰り返すサイドでフルハムはカウンターの機会を与え続ける。

 フルハムはカウンターの対応の拙さも気になった。ソンに開かれて収められてしまうのは仕方ないとして、ケインやアリに中央の縦への揺さぶりであっけなく後手を踏むのは辛い。オウンゴールを呼んだ先制点もアンデルセンの対応の悪さが目立つ。3回も4回もこういった対応を繰り返せば、トッテナムの攻撃陣は見逃してくれないのは当然である。

 後半はルックマンを左に移したことで攻め手を得たフルハム。トッテナムに対してクロス攻勢を仕掛ける。トッテナムのクロス対応は相変わらずバタバタ。特に軽いプレーを連発したダビンソン・サンチェスは悪い意味で目についた。フィジカル的にはフルハムの攻撃陣に優位に立っていたが、奪った後のワンプレーが敵へのプレゼントになったり、不十分なクリアになったりとスイッチが切れたような質のものになってしまうのが残念だった。

 隙を見せたトッテナムの守備陣だったが、フルハムは最後までネットを揺らすことができず。チャンスは作るものの、枠から大きくそれるシュートを連発するこの日のシュート精度ではやや厳しかったか。マジャの得点がハンドで認められなかった不運(判定は妥当)を覆すほどの力は今のフルハムにはなかった。

試合結果
フルハム 0-1 トッテナム
クレイブン・コテージ
【得点者】
TOT:19′ アダラバイオ(OG)
主審:デビッド・クーテ

   おしまいじゃ!!

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