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「もうプレシーズンマッチ始まってるけどな」〜アーセナル 個人レビュー2023-24 GK&DF編

 毎年恒例!選手の個人レビューだ!早速GKとDFから!

目次

GK

アーロン・ラムズデール

限られた機会で正守護神は取り戻せず

 レノからポジションを奪い、アーセナルの正GKに君臨。熱いパーソナリティとチームを救うセービングでファンの人気が根強い背番号1という来歴だが、今季はシーズンの大半においてゴールマウスをラヤに明け渡すシーズンとなった。

 レンタルの規約上、ラヤが出ることができないブレントフォード戦やカップ戦が主戦場となったが、限られた出番でも序列を覆すことはできず。レギュラーポジションを取り戻せないままシーズンを終えることとなった。

 ビルドアップに組み込まれた時の動きは試合勘の薄さも相まってややハードモード。そこの動きが強みのラヤに対して、セービングをベースとした反撃を見せることができず、アピールの機会はなかなか十分に生かし切れなかった印象だ。

 それでも時にはフラストレーションを口にしつつも前向きに切磋琢磨して姿勢は立派である。24-25シーズンがどうなるかは今のところ何とも言えないのだけども、後述するラヤと比較とすると現状では今のアーセナルへのスタイルへの適応は後手を踏んでいる感じはするため、序列を覆すのは何もなければ難しい。個人的にはゴールマウスに君臨してリーグ戦で大活躍してほしい気持ちと、アーセナルから出て行ってほしくない気持ちが半々であり、複雑な心境である。

ダビド・ラヤ

最後方からの攻撃の出発点に君臨

 電光石火でまとめたレンタルから正守護神に瞬く間に上り詰めた感がある。高いセービング力と繋ぎのスキルを併せ持つ現代的なGK。クロス対応やパスワークなどリスクを取る選択をする故のピンチはたびたび見られていたが、そうしたシーンもシーズン終盤になるにつれて落ち着くようになった。 

 自陣でのパスワークでは相手の寄せにも慌てることなく、プレスをひっくり返す繋ぎでチームの前進を促すことができる。今季はさらにバックラインでのプレス回避に注力したアーセナルにとってラヤのこの長所は見逃すことのできない要素である。

 攻撃の起点としての特殊スキルとして触れておきたいのはクロスカットからのリスタート。これまでのアーセナルには存在しなかったGKを起点としたカウンターを機能的に行うことができるという点で非常に稀有なキャラクターである。

 サイズ的には現代のGKとしてやや物足りない感もあるが、セービングの範囲は広く、ショットストップの精度も高い。リスクを犯した結果のミスが大きく増えない限りは現状ではアーセナルのスタイルにぴったり合ったGKといえるだろう。

 あえて注文を付けるとするならば、長いフィードを生かした攻撃の設計はもう少し多く見たい。ブレントフォード時代のトニーとのホットラインのように前線への正確無比なフィードは彼の武器。流れの中でこの武器をより高い頻度で使えるチームになれば、ラヤの持ち味はさらにもう1つ増えることになるだろう。

カール・ヤコブ・ハイン

契約延長おめでとう

 エストニアの長身GK。今夏はGKの若手の入れ替えが激しい中で契約延長に。再度レンタルの話もあるがどうなるだろう。

DF

ウィリアム・サリバ

フル稼働で質量ともに充実のシーズン

 終盤戦に怪我に泣いた22-23シーズンを越えて、23-24シーズンでは2人しか存在しないリーグ戦のフル出場を達成。名実ともにリーグの顔となるCBとなったシーズンだった。

 22-23シーズンがクオリティの高さで存在感を発揮したシーズンとするのであれば、今季はそのクオリティのコンスタントさで価値を高めたシーズンと位置付けられるだろう。フル出場でも高い水準を維持しながら1年を駆け抜けたシーズンだった。

 クリーンなボール奪取から素早く保持局面に転じるための組み立てのパスを行う一連の動きはまさに芸術的。フィールドにおける最後の守備者であると同時にフィールドにおける最初の攻撃者としての責務をまっとうした。 

 保持においては右サイドの後方からのフォローアップのスキルが向上。開いての後方からの押し上げや、中央のレーンでの列上げなどビルドアップにおける新たなバリエーションが見られた年でもあった。可変成分が年々増えつつあるアーセナルのビルドアップにも難なく適応するあたり、単なるストッパーとは異なるスケールの大きさを感じる。

 強いて難点を挙げるのであれば、ボールを奪った直後にたまに自信過剰なプレー選択から再びピンチを招いてしまうこと。後半戦のリバプール戦における失点などはこの一例だが、単に蹴っ飛ばしてしまえば?というシーンでもリスキーな選択をした結果、相手の攻撃を再起動してしまうことがたまにあるところである。

 さらに今季はオフシーズンもフル稼働。EUROでは序列を覆し、スターターを奪取したことで6,7月にもプレータイムはかさむこととなった。迎える来季はさらにハードになるだろう。

 それでもサリバへの期待は止まらない。リーグの看板DFから世界一のCBに飛躍するために、来季のサリバはさらに成長した姿を見せてくれることだろう。

ベン・ホワイト

頑丈さと多彩さを兼ね備えたリーグ最高峰のSBに

 ティンバー、冨安といったライバル候補が続々と離脱したこともあり、23-24シーズンもこれまでと同様にかなり重要な存在になったことは間違いなかった。今季もややグロッキーになりながらも右サイドの上下動に奔走したシーズンとなった。

 サカ、ウーデゴールと形成される右サイドは円熟味が増してきたといっていいだろう。右サイドを駆け上がるタイミングがピタッと合うシーンだけでなく、追い越してからの折り返しのクオリティも上々。アーセナルにおけるもっとも優れたサイドアタックユニットの一角を担う存在といって差し支えないだろう。

 逆サイドからの攻撃にもクロスに飛び込むなど存在感を発揮。ボックス内へ突撃して合わせることができるなど空中戦への合わせが苦手な右サイドの中では光になっていた。

 自陣低い位置での保持では23-24シーズンには絞るアクションにもトライ。短い時期ではあったが、基本的には及第点でありどうしても誰かが絞る必要があるときにはホワイトも充分にその役割をこなすことができることは証明された。

 対人守備、ビルドアップ、高い位置での攻撃参加、そしてセットプレーでの嫌がらせ。これらを長い時間こなせる頑丈さ。さらにシンプルにめっちゃかっこいいことも含めればプレミアでもっとも優秀なSBと評しても差し支えないだろう。懸念を挙げるとすれば複数年における長いプレータイムにおける勤続疲労、および代表監督が代わったことによる代表活動の負荷の発生だろう。明らかにいなくなることで重要性がわかるタイプなので、24-25シーズンもまた大きな怪我がないまま活動してほしい。

ガブリエウ・マガリャンイス

冷静さが備わりリーダーの資質がちらつく

 サリバと同じくCBのレギュラーとしてフルシーズンを完走。時折、怪我っぽいしぐさを見せる時もあるが、なんだかんだ離脱は避けられるという形でシーズンを走りぬいて見せた。

 もっとも開幕当初はベンチスタートでファンをざわつかせた挙句、サウジからのオファーがありました!という超怖いネタバラシが後から飛んでくるなど順風満帆なスタートではなかった。あのまま、ティンバーが怪我をしない世界線だった場合、アーセナルにどういう未来があったのかは少し気になるところではある。

 それでもレギュラーとして返り咲くとそこからは何も問題なく高いパフォーマンスを見せ続けた。特に目に付くのがボールと相手の間に体を入れるスキルの高さだろう。まずは相手のコントロールからボールを引き剥がすという指針は少ないタッチでスッとボールを奪うサリバとは異なるが、こちらも非常に効果が高く、どんな相手にも通用する守り方だった。

 さらに付け加えたいのは不用意にヒートアップするシーンが激減したこと。以前は不要な小競り合いからやたらと警告を受ける選手というイメージであったが、プレーに余裕が出てきたからか落ち着きも段違いに。この辺りはジャカと似た系譜なのかもしれない。

 来季は左サイドのユニットにどうやらテコ入れが入りそうな補強が迫っている様子である。ガブリエウの役割にどこまで変化があるかは現時点ではわからないが、きっちり止められるDFの需要がないわけがないので、個人的には出番の激減はそこまでイメージしていない。来季も頼りになるビッグガビの姿は変わらずにピッチで見られることだろう。

ユリエン・ティンバー

実質的な新戦力は来季を飛躍の一年に

 開幕戦のティンバーの大怪我で今季のアルテタのプランが一気に吹き飛んだと考えるアーセナルファンは非常に多い。逆に言えば、プレシーズンと開幕戦のわずかなプレーでもティンバーには確実にチームに影響を及ぼすことが期待できると見ている側は感じ取ったということかもしれない。

 というわけで多くの時期を棒に振ってしまったという点では思い通りの1年にはならなかった。シーズン最終盤には復帰を果たし、スムーズな身のこなしを見せてくれたのは朗報である。年々可変度が増えていく今のアーセナルにとって彼のキャラクターは非常に重要度が高い。実質的な補強との呼び声が高いティンバーにとっては大きく飛躍を遂げる一年にしたい。

ヤクブ・キヴィオル

「冬のMVP」が直面する伸びしろ

 おそらく、基本線としてはガブリエウのバックアッパーという位置づけだったと思われるキヴィオル。しかしながら、今季はジンチェンコ、冨安というSB候補は共に離脱の時期を経験。穴を埋めるようにSBにスライドすることで十分にプレータイムを伸ばすシーズンとなった。

 キヴィオルがSBを一定水準以上にこなせるようになったというのは2024年の序盤のアーセナルにとっては非常に助かることだった。昨季、サリバの穴埋めに苦心しているうちに成績が一気に落ちてしまったことを踏まえると、まずこのポジションを卒なくこなせる選手がいけなければなんともならんよ!という状態を解決するのは最優先。キヴィオルは見事自らの仕事を果たした。

 その一方で、では来季もまたSBでレギュラーとして!となるかは別の話になってくるという印象。ある程度の試行錯誤を繰り返していたが、最終的にはインサイドでのプレーはあきらめることになったし、大外からのランや攻撃の後方支援のクオリティに関しても彼を使う決め手にはならない。クロス対応は落ち着いているが、サイドでWGに1on1でさらされると後手に回ってしまうなど、非保持面でも課題はあった。

 バイエルンとのCLなどの強度の高いゲームになると、やはり少し浮いてしまっている感は否めないので、そこは今後の伸びしろということになるだろう。問題はカラフィオーリがやってくる中でその時間をアーセナルで確保できるかどうか。貴重な左利きのCBではあるが、本人の意思次第ではこの夏に袂を分かつことになるかもしれない。

セドリック・ソアレス

SBに求められる仕事量の変化のあおりをうける

 怪我人だらけだった両SBの控えとしてたびたびベンチに入ることはあったが、さすがに出番が回ってくることは少なかった。少しプレーするシーンをみるとやはり対人は軽く、攻撃に出て行ってもできることの少なさは際立つ。以前と比べて大きくクオリティが落ちているというよりは単純にアーセナルのSBに求められることが引きあがったのだと思う。

 なので、ここでのお別れは仕方なし。新天地でもがんばっておくれ。

冨安健洋

マルチロールと吸収力で負傷を乗り越えられるか

 独自の立ち位置をチーム内で確立しつつあるなと個人的には感じている。左右のSB、そしてCBまで1枚でこなせてしまい、展開的も様々な状況で投入が考えられる冨安はやはり重要なカードとチーム内では考えられているのだと思う。だからこそ、怪我がちであるにも関わらず、契約延長を勝ち取ることができたのだし、プレータイムが少なくとも売却のうわさが立たないのだろう。

 冨安の最大の魅力はやはり吸収力だろう。新しいこと、新しいポジションを与えた時におそらくチーム内でも有数な呑み込みの早さを見せている。もちろん、内側でのプレー経験があることも大きいと思うが、キヴィオルやティアニーが散々苦しんだ絞ってのプレーに関してあっさりとこなしながら、できることを増やしていっているという順調な成長を見せているのはポテンシャルの高さとしか言いようがない。

 SBとして高い位置に攻めあがる迫力も今季は十分に改善がみられるシーズンに。抜け出しからのクロスのクオリティや自陣のボックス内への侵入意識の高さなど、一時期はホワイトを凌ぐほどのパフォーマンスを見せていた時期もあったほど。日本代表にすぐさまサイドに出ていっての大暴れが出ているのを見ると、学習と還元のサイクルをうまく回しているなと思う。

 スカッド的な話をすれば、来季はCBでのプレーが増える可能性もある。そうなればまた新しい扉を開く姿も見えてくるかもしれない。

 ただ、いうまでもなくそうした成長力は負傷によって邪魔をされている。負傷の頻度の割には復帰後のパフォーマンスにブランクを感じるタイプではないのは救い。今季もPSMでは負傷に苦しむことになったが、シーズン前に厄払いを済ませたことになってほしいなという気持ちである。

オレクサンドル・ジンチェンコ

一芸で勝負できる質を取り戻したい

 SBというよりは異能持ちの特殊技能者という感じ。ポジションにとらわれないSBという意味でアーセナルにおいてはさきがけのような存在であり、今日のアーセナルのシームレスなビルドアップの土台を築いた功労者といえるだろう。

 その一方で今季はなかなか苦しいシーズンとなった。少なくない負傷はもちろんだが、出ている時のパフォーマンスもなかなか難しいものがある。

 もちろん、非保持のパフォーマンスもそうなのだが、そこだけではない。絞るSBは多かれど、ジンチェンコには彼にしか出せないパスのルートがある。はっきり言ってしまえば、そこさえできてしまえばそれだけでジンチェンコを使うバリューはペイできているというか。ジョルジーニョを使ってあのリズムを作れれば守備範囲が目をつぶるというのと個人的には似ているのかなと思っている。

 そういう中で縦パスでのミスが先行する試合が増えたというのは状況としてはなかなかに厳しい。ティンバーやカラフィオーリなど多様なポジションチェンジに適応可能でより守備力が高い選手が控えているとなると、ジンチェンコが今後のアーセナルでのキャリアでバリューを出すならば、この一芸を極める他はないと思う。

 守備は最低限の軽さがなければ、仕方がないというか。そこでほかのライバルと争うのは到底勝ち目がないので、まずは自分のバリューを取り戻すためのシーズンにしてほしい。

続く!

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