なりふり構わぬナーゲルスマンを救った最強のスーパーサブ
すでに突破を決めているドイツだが、この試合もフルスカッド。2位濃厚とはいえ勝ち点を重ねて突破を確実にしたいスイスにとっては迷惑な話だろう。
立ち上がりはフラットなスタートだったが、徐々にドイツがボールをもつ展開にシフト。いつも通りのレーン移動が自在な2列目とハヴァーツで左右に動き、クロースはバックスに落ちる位置を変えながらスイスのバックスと駆け引きを行う。
スイスは5-4-1の陣形を守りつつクロースに対してはリーダーが深追いするパターンを時折見せる。ただし、マンツーで絶対に捕まえる!というわけではなく、遠い場合には陣形をキープすることを優先する柔軟さを見せる。
リーダーが出て行く行かないに関わらず、中央をきっちり閉めるアクションはスイスはできていた。ムシアラの落としをギュンドアンが狙ったシーン以外は中央をこじ開けるような形をドイツが作ることができなくなっていた。
そうした中でアクセントになっていたのは左の大外のミッテルシュテット。背後をとっての左サイドからの押し下げでボックス内にスペースを作る。ファウルにより得点は無効になったが、インサイドに起点を作ることができないドイツにとっては大外からの押し下げは非常に助かるものだった。
しかし、ドイツはこのゴール取り消し以降、少しずつボールをロストする位置が低くなっていく。スイスは自陣からの長いカウンターを効かせられる状況ではなかったし、保持での変形を見せるほど時間が稼げるわけでもなかったが、高い位置から捕まえられるとなれば話は別。中盤のプッシュアップから少しずつドイツに圧力をかけていき、敵陣での時間を作る。
すると、先制点を決めたのはスイス。左サイドのシンプルな攻略でドイツの背後をとるとエンドイェが抜け出しからゴールを決めて先制する。
テンポを取り戻したいドイツだが、中央でのコンビネーションが機能不全な状況を改善できず。特にムシアラの球離れの悪さがこの試合ではマイナスに作用しているように思えた。持ち味と紙一重なので難しいところではあるが、ライン間に2列目を集約している連携がうまく機能しなかったのは確かだろう。
逆にいえばスイスのコンパクトさがムシアラを狭いスペースから締め出してタッチ数を増やすことを誘発したとも言える。それくらい中盤のスイスの守備の連携は見事。中盤で出ていって3枚になっている時のカバーリングも含めて枚数が微妙に変わっても埋める守備ができていることはドイツを苦しめて前半をリードで折り返す要因となった。
後半の頭もペースとしてはスイスが優位。高い位置からの追い込みが機能し、ドイツのビルドアップを阻害する。ブロックの中でボールを受けることができないドイツは苦戦。ヴィルツからのタッチダウンパスのようなアクロバティックなチャンスメイクからでなくてはゴールに辿り着けない。ラウムとシュロッターベックを投入する後方の左サイドのユニットチェンジも効果は限定的だった。
ここからは両チームとも選手交代によるシフトチェンジを図る。3枚替えで前線を総とっかえしたスイスはプレッシングのためのエネルギーを再チャージ。連携面ではやはり未成熟なところもあるし、エンボロのように独力で体を張って時間を作ることができる選手もいなかったが、それでも高い位置から追いかけて行く形で勝負をかけていく。
持続可能のための交代を図ったスイスに比べて、ドイツは抜本的なモデルチェンジに着手。バイアー投入による2トップ移行を皮切りに、フュルクルクなどタワー系の選手を投入。サイドにはサネを入れてワイドから起点を作る。大外からのシンプルクロスという前半とは全く異なるアプローチでひたすらスイスを殴る。ハヴァーツと交代で入った2人のFWをひたすら狙っていく。
かなりテイストの変わったドイツの攻撃が奏功したのは後半追加タイム。決めたのはフュルクルク。最強のスーパーサブであるストライカーがスイスから首位の座を奪還。フランクフルトで相見えた両チームは共にノックアウトラウンド進出を決めたが、首位での突破は開催国のドイツという結果となった。
ひとこと
フルメンバーでのスタメン+なりふり構わない首位奪還というナーゲルスマンのスタンスはグループBとの対戦となる2位だけは絶対回避!ということでいいのだろうか。あと、ジャカのミドルとノイアーのセービングは大会名勝負数歌。
試合結果
2024.6.23
EURO 2024
グループA 第3節
スイス 1-1 ドイツ
フランクフルト・アレナ
【得点者】
SWI:28′ エンドイェ
GER:90+2′ フュルクルク
主審:ダニエレ・オルサト