ダニ・オルモの奮闘がWG以後のスペインを支える
準々決勝のスタートであるとともに、最注目カードであるこの試合。だが、その注目とは立ち上がりの展開は違う方向にヒートアップ。速い展開からファウルが目立つ展開となり、特にドイツのファウルが嵩むことに。その結果、ペドリが負傷交代するなどあまり見ていて気持ちのいい序盤戦とはならなかった。
速い展開に関してはスペインの方が得意そうだった。縦に早くという流れに関してはペドリ→オルモの交代は渡りに船という感じ。トランジッションについていけるファビアンも含めて縦に速い攻撃ではドイツの中盤の戻りを上回っており、WGの仕掛けも含めてフィニッシュまでの道筋が明確に描ける展開となった。
一方のドイツはクロースのらしくない強引な縦パスがカットされたり、あるいはキミッヒの早い段階での仕掛けがアバウトだったりなど、攻撃が跳ね返される要素が満載。スペインの速い展開を呼び込むような戦いをしてしまったと言える。
時間の経過とともに試合は保持局面を重視する展開に。バックスに対して強引にプレスに行くことはしない流れだった。より対策色が明確に見えたのはスペイン。ナローに締める4バックは、2列目が絞って勝負するドイツへの対策をきっちりやっていた感がある。
そのため、ドイツのライン間の住人にとっては苦しい展開に。狭いスペースで受ける工夫をしなきゃいけないムシアラにとってはかなりハードになる一方で、降りる動きと裏抜けの両面で勝負ができるハヴァーツや機を見たオーバーラップで抜けるキミッヒが効く展開になっていた。
スペインは保持に回っても優勢。ギュンドアンがロドリ番で安定となったことを利用し、持ち上がる機会が増えたラポルトを起点にドイツ陣内に侵入していく。さらにはルイスの降りるアクションも絡めると、対面のジャンが出ていくか悩ましい駆け引きに。クロースに広大なスペースを管理させてしまうのはまずい!となった結果、右サイドの対応が遅れてしまい攻め込まれるシーンもあった。
スペインは左サイドで攻撃を完結させれば上々ではあったがクロスまで持っていくと逆サイドとのフィーリングが合わなかった感。スペインが優勢ながらも試合はタイスコアでハーフタイムを迎えることとなった。
迎えた後半、どちらも選手を入れ替えての勝負。ポジションは入れ替えず、人だけを入れ替えたのが両軍の交代の特徴であった。
優勢だったのはスペイン。前に出てくるドイツのプレスをシモンのフィードでいなしつつ、ミドルゾーンの加速で敵陣に一気に攻め込んでいく。ドイツは選手を入れ替えたものの、構造的な課題は同じ。中盤の戻りの遅れはずっと気になる展開となった。
そうした中で先制点を決めたのはスペイン。右サイドのヤマルが作った深さを利用したオルモがマイナスで受けて先制点をゲット。アンドリッヒはルイスに引き寄せられて最終ラインに吸収されてしまうという手痛い状況となった。
構造は変わらないドイツは後半も同じ形で勝負。スペインは前半ほどライン間をタイトに管理できていなかったこともあり、ライン間に縦パスを差しつつ、外の滑走路を走って一気に押し下げる。特に右サイドは裏に抜けるところからの押し下げに成功した感がある。
それでもスコアを動かすことができないドイツはハヴァーツに加えてフュルクルクを投入。さらにはここにミュラーを入れるパワープレーに移行。この根性が実を結び、ミッテルシュテットのクロスをキミッヒが根性で折り返すと、ヴィルツがゴールを叩き込む。
ウィリアムスとヤマルというファストブレイクを完結させる両翼を下げてしまったスペインはだらっと早いリスターを繰り返すツケが回ってきた形。延長戦も優位に押し込むのはバランスが取れていたドイツの方だった。
しかしながら、スペインも反撃の手段がなかったわけではない。左のハーフスペースに佇むダニ・オルモにボールを預けて徐々に押し上げの時間を作ると、ドイツの攻撃を縦に速いカウンターに抑えるようになる。
すると、このダニ・オルモからスペインは勝ち越しゴールをゲット。オルモから放たれたクロスは2人目のボックス内のターゲットとなったメリーノの元に。値千金の勝ち越しゴールはソシエダのMFから生まれることとなった。
粘りを見せたドイツだったがここで敗退が決定。スペインの二の矢に屈し、ベスト8で姿を消すこととなった。
ひとこと
WGがいなくなった時点で攻め手が危うくなったと思われたスペイン。二の足を生み出したダニ・オルモの存在は偉大だった。あと、カルバハルとククレジャやばかったぜ。
試合結果
2024.7.5
EURO 2024
Quarter final
スペイン 2-1 ドイツ
シュツットガルト・アレナ
【得点者】
ESP:51′ オルモ, 119′ メリーノ
GER:89′ ヴィルツ
主審:アンソニー・テイラー