塹壕戦を待ち受けたイングランドが生み出したファーへのシュートコース
スペインの待つ決勝に向けて勝負するのはイングランドとオランダ。ドルトムントの地で決勝に向けてのもう1枚の切符を争う戦いに直面する。
立ち上がりにボールを持つのはイングランド。バックラインが自由にボールを持てる状況から解決策を探る。しかしながら、中盤の守備はタイトだったオランダ。特にメイヌーとライスには厳しくチェックをかけていく。
その中盤へのチェックが効いたのがオランダの先制点の場面。ライスへのハントが成功したシモンズが素晴らしいゴールで試合のオープニングを飾る。
しかしながらオランダの中盤は前向きなタイトな人への守備は得意な一方で、後方のスハウテン周辺のスペースはかなり間延びしてる感があった。このスペースでケイン、ベリンガムといった前線の選手が降りることでポイントを作っていく。
中でも効いていたのはサカ。切れ目に顔を出すタイミングも上手いし、アケとの勝負から逃げるためにも中盤に顔を出して前を向くという形は有望。オランダはサカが持っている時のボールの雲行きが見えていない感じがしており、横パスなどの次の一手を塞ぐことができなかった。
中盤に縦パスを受けるポイントを作ることでリズムを作るイングランド。すると、ケインのシュートにアフター気味で突っ込んだダンフリースがPKを献上する。ケインがこのPKを難なく仕留めて試合は振り出しに戻る。
このゴール以降もイングランドはオランダのDFライン前に降りるアクションを見せることでポイントを作る。右のハーフスペース付近でフォーデンが生き生きし始めたのはようやくといった感じ。
オランダもデパイが降りるアクションをすることで、イングランドの中盤の背後に起点を作ることができていた。だが、そのデパイが負傷。フェールマンを入れて3センター気味に変化する。
この変化によってオランダはライン間のスペースを埋める方向性にシフト。多少はイングランドに自由を与えていた場所をケアすることができていたが、全体の重心が下がった分、自分たちも攻撃に打って出ることができない状況になっていく。
後半のオランダはベグホルストを投入。もちろん、前線のターゲットとしてという側面はあるだろうが、守備をきっちりやるというベグホルストの特性と彼が中盤からの守備基準の起点に設定したことを踏まえると、クーマンは前半の途中からのライン間を封鎖するという方向性をさらに強めるという方向性だろう。
これにより、イングランドのライン間アタックは完全に停滞。イングランドは前半頭のようなチャンスがない状態になる。
もっとも、この状態にイングランドが困っていたかは不明である。オランダが仕掛けてきた塹壕戦での我慢比べはイングランドにとっては得意分野。選手層という物量で相手を兵糧攻めにするのはサウスゲートの十八番と言ってもいいくらいである。
しかも、オランダはベグホルスト以降はノーインパクトだったベルフワインか、実績を作れていないザークツィーとブロビーくらいしかゲームチェンジャーがいないのが苦しいところ。時間経過とともに苦しくなるのはオランダの方というサウスゲートの考え方は少なくとも今日はピンとくるなという感じである。
というわけで停滞した状況を受け入れたイングランド。オランダは左サイドのガクポからベグホルスト+ダンフリース、セットプレーではここにファン・ダイクが加わる形からチャンスを狙っていく。 しかしながら、このピンチをストーンズやピックフォーtドというエバートンの血を引く者たちの活躍によって防衛すると、少しずつポゼッションを回復することで反撃に出るとワトキンスとパルマーを投入し、前線をリフレッシュする。
この交代策に応えた両者。パルマーのパスからサイドに抜け出したワトキンスが均衡を破るシュートを角度のないところからゴールを決めて後半追加タイムに試合を動かす。この試合後にはキエッリーニの下記の解説が話題になった。
逆に言えばワトキンスはこうしたゴールが多いので、角度のないところからDFを滑らせて空いた股を利用してファーに打ち切ることを狙っているということだろう。強烈な足の回転とインパクト十分のシュートが備わっているからこそのゴールであった。
土壇場のゴールで延長突入を回避したイングランド。オランダを下し、2大会連続の決勝に駒を進めた。
ひとこと
今大会でプレータイムに恵まれなかったワトキンスが一発回答を見せていた。試合勘のない状態だったと思うが、プレミアで見せる高い次元での安定感はこの日も健在。見事にチームを勝利に導いてみせた。
試合結果
2024.7.10
EURO 2024
Semi-final
オランダ 1-2 イングランド
BVBシュタディオン・ドルトムント
【得点者】
NED:7′ シモンズ
ENG:18′(PK), 90′ ワトキンス
主審:フェリックス・ツバイヤー