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「EURO 2024 チーム別まとめ」~ポーランド代表編~

目次

代表メンバー

▽GK
ボイチェフ・シュチェスニー(ユベントス)
12 ウカシュ・スコルプスキ(ボローニャ)
22 マルチン・ブウカ(ニース)

▽DF
2 バルトシュ・サラモン(レフ・ポズナニ)
セバスティアン・バルキエビチ(エンポリ)
ヤン・ベドナレク(サウサンプトン)
14 ヤクブ・キビオル(スペツィア)
15 ティモテウシュ・プハチ(カイザースラウテルン)
18 バルトシュ・ベレシンスキ(エンポリ)
19 プジェミスワフ・フランコフスキ(RCランス)

▽MF
パベル・ダビドビチ(ベローナ)
6 ヤクブ・ピオトロフスキ(ルドゴレツ)
ヤクブ・モデル(ブライトン)
10 ピオトル・ジエリンスキ(ナポリ)
11 カミル・グロシツキ(ポゴニ・シュチェチン)
13 タラス・ロマンチュク(ヤギエロニア・ビャウィストク)
17 ダミアン・シマニスキ(AEKアテネ)
20 セバスティアン・シマニスキ(フェネルバフチェ)
21 ニコラ・ザレフスキ(ローマ)
24 バルトシュ・スリシュ(アトランタ・U)
26 カツペル・ウルバンスキ(ボローニャ)

▽FW
カロル・シュビデルスキ(ベローナ)
ロベルト・レバンドフスキ(バルセロナ)
16 アダム・ブクサ(アンタルヤスポル)
23 クシシュトフ・ピョンテク(バシャクシェヒル)
25 ミハウ・スクラシ(クラブ・ブルージュ)

■監督
ミハウ・プロビエシュ

GS 第1節 オランダ戦

アケとガクポが牽引するオランダのバタバタ逆転劇

 立ち上がりはオールコートマンツーっぽい挙動を見せたポーランド。しかしながら、徐々に素早い撤退から自陣に5枚のDFを置く形を作っていく。前線の細かいポジションの入れ替えで簡単にフリーの選手をオランダに作られたことが影響しているのかもしれない。序盤はベトナレク周辺が怪しさ満載だった。

 オランダ目線でズレを作れそうだったのはアケ。引いて受けるポジションを取ることでオールコートマンツーであればWBが出ていくところであるが、アケがオランダのCBと同じ高さに下がって受ける分、追いかけるのを躊躇してギャップができていた。

 ただ、この出来たギャップをオランダの周囲の選手が上手く使えている感がなかった。オープンな状況で大外のガクポに渡ればここから勝負ができるのは間違いなかったが、そのパイプ役がいなかった。前線に人を残す観点から言えば、パイプ役はできれば中盤3枚のうちの誰かにやって欲しかった感があるが、降りるデパイか逆サイドから顔をだすシモンズのどちらかがヘルプに来ることが多かった。

 スハウデンとフェールマンのCHは前半の終盤にようやく慣れてきたかなという感じではあったが、ビルドアップでの存在感やバックスが生み出したズレを使うという意味では存在感は希薄。正直に言えばフレンキーの不在は大きい感じはした。

 もう1つオランダの攻撃で少し気になるのはカウンターの大雑把感。スペースを繋ぐことに急ぎすぎている感じはした。もう少し、ポーランドの陣形を動かしながらボールを繋ぐことは意識されてもいいように思った。けどもまぁ全力で前が空いていないガクポのミドルがオランダの同点ゴールにつながっているので、そこはどこに正義があるのかはわからない。

 「オランダの同点ゴール」といったように先に点を取ったのはポーランドだった。少ない前進の機会ながらポーランドはギャップを使っての前進もちらほら。決まった場所で待ち構えるロングボールはほぼ完璧にオランダのCB陣に跳ね返されていたが、裏抜けを伴うスペース勝負はそれなりに機能していた。そして、押し下げる機会を得るとセットプレーから先制ゴールを手にする。

 以降もポーランドはギャップ勝負に出れば押し下げる展開を作れる状況。左の大外のザレフスキを希望の光としてクロスを上げることでゴールに迫っていた。

 迎えた後半、ポーランドは3センターがきっちりと自陣側のプロテクトに重きを置くスタート。自陣を固めたくなる気持ちは前半を見ればわかることはわかるが、2トップが前で孤立。味方のヘルプは期待しにくい状況でオランダのCBとバチバチはかなりしんどそうではあった。レヴァンドフスキがいればあるいは!という感じだったけども。

 オランダは左のガクポを起点に多彩な攻撃を披露。右の大外のダンフリーズへのクロス、自分の外を回るアケへのパス、もしくはバイタル付近の選手たちへのパスでミドルを誘発など様々な形からゴールに迫っていく。

 まずいとなったポーランドは徐々にプレスを強化して展開を前半に回帰。試合はオープンな打ち合いの流れに。オランダの前線の急ぎまくっているカウンターが再び見られるようになる。

 なかなかゴールが生まれない状況を助けたのはオランダの交代選手。ワイナルドゥムのフリーランを囮に縦パスを受けたベグホルストが殊勲の決勝ゴールをゲット。クロスからの空中戦ではなく、シンプルな崩しから貴重なゴール。アケの脱力しているのに鋭いラストパスは見事の一言である。

 終盤は左サイドを中心に攻め込むポーランド。やや息切れ気味のザレフスキに代わって交代で入ったピョトロフスキが左右のサイドで奮闘しながらクロスを上げる。これで押し下げたラインからミドルで二次攻撃。フェルブルッヘンの守るゴールを脅かす。

 多くの枠内シュートを浴びるもなんとか1失点にポーランドを抑えたオランダ。不安定な試合運びながら逆転で初戦を勝利で飾った。

ひとこと

 オランダ、中盤のもう一声感とカウンター時の急ぎすぎ感は気になるところ。負傷者絡みの中盤はどうしようもないかもしれないが、スペースがある時の攻撃はもう少し相手を動かすことを意識できるプレースピードで勝負したさがある。

試合結果

2024.6.16
EURO 2024
グループD 第1節
ポーランド 1-2 オランダ
フォルクスパルク・シュタディオン
【得点者】
POL:16′ ブクサ
NED:29′ ガクポ, 83′ ベグホルスト
主審:アルトゥール・ディアス

GS 第2節 オーストリア戦

ポーランドが大会初めての敗退チームに

 ともに開幕節は敗れている両チーム。直接対決が順位決定に関わることを踏まえれば、ここは絶対に負けられない一戦である。

 立ち上がりから主導権を握ったのはオーストリア。バックスからのボール保持はビルドアップを人数をかけていく。RSBを片方上げる3-2型をベースにして、そこから降りる選手を作ることでFPが6人くらいは自陣でボールを受けることも珍しくない。

 後ろが重たいビルドアップが効いていたのはポーランドが高い位置から追いかけ回していたから。特にポーランドのWBがオーストリア陣内に入り込むことでオーストリアの前線がサイドに流れつつ、長いボールを引き出して前進の起点となっていた。

 押し込むフェーズになると左サイドからムウェネのロングスローからボックスを狙う。先制点はまさしくこの形。ムウェネのロングスローを沈めたのはトラウナーだった。以降も主導権はオーストリア。サイドの起点だけでなく、中央に絞るバウムガルトナーが縦パスを受けることもあり、インサイドでも前進のきっかけを作ることができていた。

 ポーランドは20分が過ぎたあたりから少しずつ保持で巻き返し。キヴィオルがSBに入る4バックへの変化で前進を狙っていく。きっかけはサイドへの対角パス。サイドの裏を狙うことでジリジリと前進する。

 するとポーランドは同点ゴールをゲット。右サイドからファーへのクロスの折り返しからのこぼれをピョンテクが沈めてゴールを奪う。

 以降は展開はフラット。オーストリアはマンツー気味に前にプレスにくるポーランドをひっくり返しながらファストブレイクでチャンスを作っていたし、ポーランドはジエリンスキのFKからペンツが守るゴールマウスを脅かしてみせた。

 後半もポーランドは積極的なプレスから敵陣でのプレータイム増加を狙っていく。しかしながら、オーストリアはゆったりとひっくり返しながら互角に組み合い、少しずつポーランドを自陣側に押し込めていく。

 停滞しているポーランドは2トップを入れ替え。真打のレヴァンドフスキ登場である。しかし、この2トップ投入は起爆剤にならず。さらには守備での迷いも出てしまい、なかなか流れを変えることができない。

 オーストリアはバックラインからの組み立てがスムーズになり横断しながらボールを動かすことに成功。左サイドからインサイドに差し込むパスにバウムガルトナーがリアクションし、勝ち越しゴールを決める。

 さらにはGKからのフィードを起点とした攻撃でザビッツァーがベドナレクをおいて行き、独走するとシュチェスニーとの交錯でPKを獲得。これを仕留めて試合を決定づける。

 切り札にならなかった2トップの入れ替えとなったポーランドとは対照的にオーストラリアは試合終盤までガンガン攻め込んでいく。ポーランドは終盤まで流れを変えることができないまま試合終了。敗れたポーランドは今大会初めての敗退決定となった。

ひとこと

 ポーランドはレヴァンドフスキなしの攻撃プランの構築も間に合わなかったし、レヴァンドフスキも間に合わなかったなという感じである。

試合結果

2024.6.21
EURO 2024
グループD 第2節
ポーランド 1-3 オーストリア
オリンピア・シュタディオン
【得点者】
POL:30‘ ピョンテク
AUS:9‘ トラウナー, 66′ バウムガルトナー,78′(PK) アルナウトビッチ
主審:ウムト・メレル

GS 第3節 フランス戦

唯一の消化試合は痛み分け

 試合前の時点で3位以内と4ポイントを共に確保しているフランスは最終節の結果を待たずに通過が決定。一方のポーランドは第2節を終えた時点での唯一の敗退チーム。というわけではじめての突破と敗退が決まっている両チームによる消化試合が誕生したこととなった。

 どちらもなかなかモチベーションが難しい試合の中で積極性を見せたのはポーランドの方だった。前の5枚でフランスの中央の2CBと3CHを制圧にかかったポーランド。高い位置からのプレスに成功すると、ここから直線的に進むことで一気に敵陣に侵攻していく。中央への直線的なカウンターについては第3節にしてようやくレバンドフスキが起用できることの幸せを噛み締めていることだろう。やっぱり収まり方が段違いである。

 しかしながら、このポーランドのプレスは当然フランスのSBにはプレッシャーがかかり切らない。サイドからボールを運ぶと、そこから同サイドのWG、もしくは横断しての逆サイドのWGでの1on1の勝負に持ち込みボックス内に侵入していく。1on1で勝利できなくても大外を追い越すテオやエンバペがいる左サイドはかなり手ごたえがある形。逆サイドのフランスの選手もきっちりボックス内に飛び込んでおり、明確にチャンスを作っていく。

 意地を見せたいポーランドはWBが前方にスライドすることでフランスのSBにも圧力をかけていくが、ここはショートパスの連打で華麗に脱出。フランスが前からの守備をやる気がほぼなかったので、自陣での繋ぎが安定したのは救いだったが、やはり一瞬のキレは脅威。守勢に回るポーランドはゴールを脅かされながら前半を過ごすこととなった。

 迎えた後半、フランスが今度は右サイドからの進撃で圧力を増していく。ただし逆サイドからはエンバペがミドルを乱れ打ちという左右両面で攻撃力マシマシの恐怖仕様。ポーランドはスコルプスキが驚異的なセービングの連続でなんとか凌ぐ場面が続くことになる。

 苦しくなったポーランドはついに決壊。デンベレの仕掛けにキヴィオルが屈してしまいPKを献上。これをエンバぺが沈めてリードを奪う。

 リードしたフランスは4-2-3-1に移行。このゴール以降も悠々と時計の針を進めていく。

 しかしながら、ポーランドは粘ってのゴールゲットに成功。シフィデルスキのボックス内への侵入がPKを生み出す。一度はメニャンが止めたセーブだったが、足が先に離れていたためやり直し。改めて蹴ったPKをレバンドフスキが仕留めて試合を振り出しに戻す。

 終盤はフランスもさすがに緩さが見える展開。互いにゴール前では怪しい場面ができていたが、どちらも追加点を奪うことができず。試合は1-1での引き分けで幕を閉じることとなった。

ひとこと

 どちらにしても苦しい戦いにはなっただろうが、レバンドフスキがいるといないとではその中でも違いは感じた一戦。はじめ2節にいればという思いが募る90分となった。

試合結果

2024.6.25
EURO 2024
グループD 第3節
フランス 1-1 ポーランド
BVBシュタディオン・ドルトムント
【得点者】
FRA:56’(PK) エンバペ
POL:79‘(PK) レバンドフスキ
主審:マルコ・グイダ

総括

なりふり構わないスタンスのリスクに苦しみ最速敗退

 今大会の参加国の24か国の中で最速の敗退確定。GSの第2節で敗退が決まった唯一のチームであるポーランド。今大会のポーランドはこの肩書きのように苦しい戦いになった。

 近年の国際大会でも高齢化による苦戦が際立っていたが、今大会でポーランドはそこに上乗せされた試練があった。もちろん、エースのレヴァンドフスキの不在である。崩しだけでなく収めてフィニッシュという攻撃の全局面を長年牽引していたエースの負傷欠場は大ダメージ。戻ってくる頃にはすでにグループステージ敗退が決まっていたというのはあまりにも切ない。

 敗退が決定した後のフランス戦ではそのレヴァンドフスキが先発。さすがに往年ほどの無双感はなかったが、やはりいることといないことでは大きな差があるなということを痛感せざるを得ないパフォーマンスであった。

 そのレヴァンドフスキ不在のポーランドが生み出したのはカウンターから幅を取りつつWBが縦にボールを運び、クロスを上げてセカンドボールを回収という運動量勝負のサイクル。左サイドのザレフスキはそれなりに突破の目途が立っていたし、一度押し込むことができれば波状攻撃の威力は十分というのはオランダ戦で証明したといえるだろう。

 問題はその押し下げるきっかけをどこでつかむかである。自陣からの保持は安定しているわけでなく、バックラインからの押し上げはあまり効かない。オーストリア戦が顕著なのだが、前に出て行ったとしてもボールを奪うスキルが高いわけではない。しかも、トランジッションが増えると、バックラインは穴が見える。特にベドナレクのパフォーマンスの低調さは顕著で、ハイラインでは決定的なミスにつながるレベルであった。

 そういうリスクを抱えながらの斬りあいはメリットに比べてデメリットがはるかに大きい。左右からのクロスの波状攻撃とたまに顔を出すライン間のジエリンスキの武器だけでは欧州の列強に立ち向かうのは心もとなさすぎる。背後を狙い撃ちさせたら世界一といっていいフランスや斬りあいの腕に覚えがあるオランダやオーストリアと同居というのも相性から見れば最悪に近かった。火力勝負なのに、火力の観点では格上だらけなのである。

 老朽化が激しいスカッドの中で抵抗するために捨て身の戦いが続いたポーランド。再構築への舵取りがうまくいかなければ、次のビッグトーナメントの出場権が危ぶまれる事態に陥ることもあり得そうである。

Pick up player:ニコラ・ザレフスキ
 EUROを見るたびローマ産の優秀なWBを見つけている気がする。前回はスピナッツォーラ、今回はザレフスキ。

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