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「EURO 2024 チーム別まとめ」~オランダ代表編~

目次

代表メンバー

▽GK
13 ユスティン・バイロウ(フェイエノールト)
23 マルク・フレッケン(ブレントフォード)
バルト・フェルブルッヘン(ブライトン)

▽DF
2 ルシャレル・ヘールトロイダ(フェイエノールト)
マタイス・デ・リフト(バイエルン)
フィルヒル・ファン・ダイク(リバプール)
ナタン・アケ(マンチェスター・C)
ステファン・デ・フライ(インテル)
15 ミッキー・ファン・デ・フェン(トッテナム)
17 デイリー・ブリント(ジローナ)
22 デンゼル・ダンフリース(インテル)

▽MF
ジョルジニオ・ワイナルドゥム(アルイテファク)
14 タイアニ・ラインデルス(ミラン)
16 ヨエイ・フェールマン(PSV)
20 イアン・マートセン(ドルトムント)
24 イェルディ・スハウテン(PSV)
26 ライアン・フラーフェンベルフ(リバプール)

▽FW
シャビ・シモンズ(ライプツィヒ)
ボウト・ベグホルスト(ホッフェンハイム)
10 メンフィス・デパイ(A・マドリー)
11 コーディ・ガクポ(リバプール)
12 ジェレミー・フリンポン(レバークーゼン)
18 ドニエル・マレン(ドルトムント)
19 ブライアン・ブロビー(アヤックス)
21 ジョシュア・ザークツィー(ボローニャ)
25 ステーフェン・ベルフワイン(アヤックス)

GS 第1節 ポーランド戦

アケとガクポが牽引するオランダのバタバタ逆転劇

 立ち上がりはオールコートマンツーっぽい挙動を見せたポーランド。しかしながら、徐々に素早い撤退から自陣に5枚のDFを置く形を作っていく。前線の細かいポジションの入れ替えで簡単にフリーの選手をオランダに作られたことが影響しているのかもしれない。序盤はベトナレク周辺が怪しさ満載だった。

 オランダ目線でズレを作れそうだったのはアケ。引いて受けるポジションを取ることでオールコートマンツーであればWBが出ていくところであるが、アケがオランダのCBと同じ高さに下がって受ける分、追いかけるのを躊躇してギャップができていた。

 ただ、この出来たギャップをオランダの周囲の選手が上手く使えている感がなかった。オープンな状況で大外のガクポに渡ればここから勝負ができるのは間違いなかったが、そのパイプ役がいなかった。前線に人を残す観点から言えば、パイプ役はできれば中盤3枚のうちの誰かにやって欲しかった感があるが、降りるデパイか逆サイドから顔をだすシモンズのどちらかがヘルプに来ることが多かった。

 スハウデンとフェールマンのCHは前半の終盤にようやく慣れてきたかなという感じではあったが、ビルドアップでの存在感やバックスが生み出したズレを使うという意味では存在感は希薄。正直に言えばフレンキーの不在は大きい感じはした。

 もう1つオランダの攻撃で少し気になるのはカウンターの大雑把感。スペースを繋ぐことに急ぎすぎている感じはした。もう少し、ポーランドの陣形を動かしながらボールを繋ぐことは意識されてもいいように思った。けどもまぁ全力で前が空いていないガクポのミドルがオランダの同点ゴールにつながっているので、そこはどこに正義があるのかはわからない。

 「オランダの同点ゴール」といったように先に点を取ったのはポーランドだった。少ない前進の機会ながらポーランドはギャップを使っての前進もちらほら。決まった場所で待ち構えるロングボールはほぼ完璧にオランダのCB陣に跳ね返されていたが、裏抜けを伴うスペース勝負はそれなりに機能していた。そして、押し下げる機会を得るとセットプレーから先制ゴールを手にする。

 以降もポーランドはギャップ勝負に出れば押し下げる展開を作れる状況。左の大外のザレフスキを希望の光としてクロスを上げることでゴールに迫っていた。

 迎えた後半、ポーランドは3センターがきっちりと自陣側のプロテクトに重きを置くスタート。自陣を固めたくなる気持ちは前半を見ればわかることはわかるが、2トップが前で孤立。味方のヘルプは期待しにくい状況でオランダのCBとバチバチはかなりしんどそうではあった。レヴァンドフスキがいればあるいは!という感じだったけども。

 オランダは左のガクポを起点に多彩な攻撃を披露。右の大外のダンフリーズへのクロス、自分の外を回るアケへのパス、もしくはバイタル付近の選手たちへのパスでミドルを誘発など様々な形からゴールに迫っていく。

 まずいとなったポーランドは徐々にプレスを強化して展開を前半に回帰。試合はオープンな打ち合いの流れに。オランダの前線の急ぎまくっているカウンターが再び見られるようになる。

 なかなかゴールが生まれない状況を助けたのはオランダの交代選手。ワイナルドゥムのフリーランを囮に縦パスを受けたベグホルストが殊勲の決勝ゴールをゲット。クロスからの空中戦ではなく、シンプルな崩しから貴重なゴール。アケの脱力しているのに鋭いラストパスは見事の一言である。

 終盤は左サイドを中心に攻め込むポーランド。やや息切れ気味のザレフスキに代わって交代で入ったピョトロフスキが左右のサイドで奮闘しながらクロスを上げる。これで押し下げたラインからミドルで二次攻撃。フェルブルッヘンの守るゴールを脅かす。

 多くの枠内シュートを浴びるもなんとか1失点にポーランドを抑えたオランダ。不安定な試合運びながら逆転で初戦を勝利で飾った。

ひとこと

 オランダ、中盤のもう一声感とカウンター時の急ぎすぎ感は気になるところ。負傷者絡みの中盤はどうしようもないかもしれないが、スペースがある時の攻撃はもう少し相手を動かすことを意識できるプレースピードで勝負したさがある。

試合結果

2024.6.16
EURO 2024
グループD 第1節
ポーランド 1-2 オランダ
フォルクスパルク・シュタディオン
【得点者】
POL:16′ ブクサ
NED:29′ ガクポ, 83′ ベグホルスト
主審:アルトゥール・ディアス

GS 第2節 フランス戦

またしてもバタついた終盤のオランダ

 前日のスペイン×イタリアに並び、こちらもGS屈指の好カード。連勝とGS突破をかけての大一番ということになる。

 立ち上がり、右サイドの奇襲を仕掛けたのオランダ。フリンポンの抜け出しから一気にゴールに迫る。振り返ってみればおそらくこれが前半でオランダが最もゴールに迫った瞬間のように思われる。

 フランスはすぐ左サイドのグリーズマンのミドルからすぐに応戦。これ以降はフランスがペースを握る。サイド攻撃で複数人からの抜け出しで押し下げてゴールに迫っていく。オランダは押し下げられるのを見てCHが最終ラインに入る形でカバーが入る。

 すると、その様子を見たラビオが空いた中盤に侵入。ワンツーでのパス交換からラインブレイクに成功し、グリーズマンに決定機を供給するが、チャンスを生かし切ることができない。

 オランダはこのピンチを切り抜けると2列目がインサイドに絞ることで中央を閉じることを優先。チュアメニが降りるアクションに合わせるようにラビオ、グリーズマンが中盤に動きながら撹乱するフランスと中央をどこまでこじ開けるかのマッチレースになる。間に合わずに危ういファウルを犯すシーンがちらほらデ・フライが警告を受けなかったのは幸運と言えるだろう。

 オランダがより問題だったのはやはり攻撃に出るタームだろう。カウンターは直線的に急ぐケースとタメを作れてはいるが単一ルートしかないケースが多く、このような点で合わせるアプローチだとフランスのような強固なDF陣相手に穴を開けることができない。先に挙げた二択もほぼデパイのポジション次第という感じでチームとしてどう攻めるかが共有されている感じがなく、ボールを奪う形が相当良くなければ効果的な位置でシュートを打つことすらままならない状況。前半は0-0とはいえ差がある状況というのは前日のスペイン×イタリアとそっくりである。

 後半もボールを握ったのはフランス。チュアメニの降りるアクションに合わせて空いたスペースに現れるカンテとラビオの厄介さは後半も健在。痺れを切らして出ていこう!と前に出たガクポの思いをへし折るようにサリバが背後のデンベレに通してたパスはなかなかにえぐかった。

 ゴール前でも右のハーフスペースの手前のあたりにファン・ダイクを釣り出せるシーンが増えてきたフランス。最終局面から大ボスを退かすことでよりゴールに近づくことができていたが、後半もフィニッシュでグリーズマンは決定的な仕事を果たすことができない。

 すると、徐々にオランダが反撃。左の大外のガクポを起点とした攻めで敵陣に迫ると、背負ったデパイが押し下げたところに飛び込んだシモンズがネットを揺らす。が、メニャンが横飛びするコースに立っていたダンフリースがオフサイド。オランダは貴重な先制のチャンスを逃すことに。

 ガクポとデパイが互いに利用するかのようなオフザボールを見せるようになってからはフランスを押し切れそうな雰囲気になってきたオランダ。しかし、そうなった途端に早々にクーマンはベグホルストとデパイをスイッチする。さらにはその直前に投入したヘールトロイダで急にSBを絞らせるなどよくわからない工夫をスタートする。

 可変性が増したバックラインと動きながら起点になるジルーによりオランダのバックスの負荷はさらに増えることに。結果的に守備で頑張れるベグホルストがプレスバックで存在感を見せていたのは面白かった。

 試合はそのまま終了。今大会初めてのスコアレスドローにより、共に両軍の勝ち点は4。敗退が決まったポーランドに引き分け以上で突破が決まるフランスにとっては大きな1ポイントの上乗せだったと言えるだろう。

ひとこと

 オランダ、最後の15分絶対面白いのずるい。

試合結果

2024.6.21
EURO 2024
グループD 第2節
オランダ 0-0 フランス
ツェンドラール・シュタディオン
主審:アンソニー・テイラー

GS 第3節 オーストリア戦

持ち味存分のオーストリアが追い縋るオランダを振り切って首位通過

 前節終了時の段階では突破が決まっていなかったものの、グループAとBの結果を受けてオランダは試合前の時点で突破が確定。オーストリアに関してもボーダーとなるハンガリーを下回るには5点差以上の負けが必要。こちらも突破の可能性がかなり高い状況の一戦となった。

 立ち上がりからいいプレーを見せていたのはオーストリア。オランダは中盤を嚙み合わせることを優先する形で守っていたが、その奥に登場するアルナウトビッチを捕まえきれず、ここに縦パスを差し込まれて起点を作られサイドの奥へ侵入を許す。

 左サイドに展開したボールからの折り返しをきっちり決めたオーストリア。開始早々に先制する。この中央の高い位置の起点への縦パスをいかした攻撃は前節と同じ。オーストリアは鋭い縦へのパスからチャンスを作るスタートとなった。

 なかなか攻撃のスイッチが入らないオランダ。こちらも結果的には縦にパスを入れるところからチャンスを作っていくことに。サイドに逃げずに中央にパスを差し込むことで攻撃のきっかけをどこまで作ることができるか?という対決になっていた。

 オーストリアも片側のCHが前にスライドすることで中央のスペースを犠牲にしていたので、オランダはこのギャップに縦パスを入れることで前進。しかしながら、加速した状況で迎えた決定機をつかむことができず。そうこうしている間にオランダが鋭く縦に攻め入ることができる時間は終了。オーストリアがオランダを再びひっくり返す時間帯を迎えて、最後はオーストリアペースでハーフタイムを迎えることとなった。

 後半もオーストリアは強気のスタンス。CHの列上げのプレスに加えて、ザビッツァーが絞りながら同サイドへの圧縮をかけていく。ヘールトロイダがインサイドに絞るなど配置の工夫を見せたオランダだったが、そうしたところと無関係なトランジッションからゴールをゲット。やや偶発的に転がってきたカウンターの機会をガクポが一番得意な形で完結。後半早々に同点においつく。

 しかしながら、オーストリアもすぐに反撃。押し込むところからグリリッチュが左のハーフスペースの奥を取るところからの折り返しをシュミットが仕留めてすぐに再びリードを奪う。

 交代選手をガンガン入れる時間帯を経ても両チームのゴールラッシュは止まらず。互いの速い攻撃に対して守備側の中盤がついていけずに攻撃側の優位で試合は進んでいった印象である。

 先に点を取ったのはオランダ。ベグホルストを隠れ蓑に使った形でデパイが技ありのシュートを決めて追いつく。だが直後にオーストリアは再び左サイドの攻略から勝ち越し。2点目とかなり似た形でサイドの奥を取ったザビッツァーが角度のないところから3点目を決める。とったらすぐにやり返すのがこの日のオーストリアであった。

 互いにトランジッションを緩めなかったことにより、常に攻撃側に有利な状況が続いた90分。撃ち合いを制したオーストリアは他会場の結果にも助けられ首位での死の組通過を果たすこととなった。

ひとこと

 早い展開の中でオーストリアの良さが出た一戦だった。アラバありで見たかったなぁ。

試合結果

2024.6.25
EURO 2024
グループD 第3節
オランダ 2-3 オーストリア
オリンピア・シュタディオン
【得点者】
NLD:47′ ガクポ, 75′ デパイ
AUS:6′ マレン(OG), 59′ シュミット, 80′ ザビッツァー
主審:イヴァン・クルチニャク

Round 16 ルーマニア戦

内側のルート開通に成功したオランダが順当にベスト8に

 Round 16最終日はオランダが登場。ベルギーを撃破し、一躍話題のチームとなったルーマニアがノックアウトラウンド最初の相手である。

 互いに守備のスタンスは似た入りとなっていた。相手のCBにプレッシャーをかけるのは1トップの選手のみで、それ以外は中盤をケア。マンツー色はそこまで強くはなく、コンパクトなブロックを形成して使わせたくないところに侵入させないことを優先しているように見えた。そのため、中盤は降りれば自由にボールを動かせる状態だった。

 立ち上がりにボールを持ったのは意外にもルーマニア。オランダは特にその状況を阻害しようとはしなかった。ルーマニアの保持は悪くはないけども、外循環が中心。バックスから外を経由して裏を狙うというもの。ファン・ダイクが余裕を持ってスライドを間に合わせているのが印象的だった。

 インサイドに刺すことができないことでクリティカルな攻撃を成立させられないルーマニア。その点ではオランダに明らかに一日の長があったと言えるだろう。カウンターでもインサイドのデパイ、シモンズを経由しながら前進することでルーマニアの守備を内と外に揺さぶっていく。

 先制点もやはりシモンズがインサイドで受けたことが効果覿面。外のガクポが1on1をいい形で迎える手助けができていた。角度のないところから躊躇のない思い切りのいいシュートはガクポの今大会における調子の良さを感じさせる。

 中盤が中央に起点を作られてしまうルーマニア。さらには外では1on1で劣勢。ガクポもそうだが、逆サイドのダンフリースの馬力にはかなり苦戦。同サイドのハジがあまり守備に下がらないこともあり、ダンフリースの攻め上がりは刺さりまくることになる。

 ルーマニアはこれに対してマリンが下がってバックスを埋めるなどさらに重心が後ろ方向に入っていくように。そうなるとより反撃は難しくなる。オランダの先制点以降、ルーマニアは攻めに出る機会がガクッと減ってしまった印象だ。

 それでも攻めに出る機会では横断を増やしたりインサイドに刺したりなど、少しずつ手応えが出てきたルーマニア。1点差というスコアも含めて後半に希望を繋ぐ形でハーフタイムを迎える。

 後半も流れは変わらず。中盤から攻め上がるラインデルスは見事な推進力を発揮。配球役との一人二役をこなしつつ、高い位置でも存在感を発揮する。

 ライン間の住人になっているシモンズは前半に引き続き縦パスを引き出して反転する役割。後半は交代で入ったマレンも絞って受ける役割を担っており、ルーマニアにとってはさらに厄介な状況になる。

 加速の手段を増やすオランダに対して、ルーマニアは状況の改善に苦戦。横断を効率的に行うことができず、外循環のポゼッションでわずかな攻撃の機会を消費してしまう。

 あとは決めるだけ!というオランダ。だが、その決定機を決め切ることができないままズルズル進んでしまっていることだけが気がかりという感じ。あらゆるところから攻めることができている内容は文句のつけようがないのだけども、決めきれないというただ一点でルーマニアに希望を残してしまっている状況だった。

 その状況を打ち砕いたのはガクポ。エンドライン付近の見事なボディコントロールでボールをギリギリピッチに残すと、マレンへの見事なラストパスを決めた。

 途中交代で追加点を決めたマレンは後半追加タイムにドリブルからの独走でカウンターを完結。この試合を仕上げる役目を見事に全うして見せた。

 なかなか2点目を決めることができず、ややヤキモキした以外は内容的に文句なしの完勝。オランダが順当にベスト8に駒を進めた。

ひとこと

 特に前半は似た課題を保持で解決する状況だったため、余計に両チームの差が際立った一戦だったなという感じ。

試合結果

2024.7.2
EURO 2024
Round 16
ルーマニア 0-3 オランダ
フースバル・アレナ・ミュンヘン
【得点者】
NED:20′ ガクポ, 83′ 90+3′ マレン
主審:フェリックス・ツバイヤー

QF トルコ戦

シンプルなサイド攻略をベグホルストで強化したオランダが逆転勝ち

 準決勝のために残された椅子は残り1つ。PK戦での激闘を制したイングランドとの対戦を賭けて、オランダとトルコが残り1枠を争う。

 立ち上がりにペースを握ったのはオランダ。5-2-3で構えるトルコに対して、サイドから進撃。大外からシンプルに押し下げてのクロスからボックス内に迫っていく。トルコは枚数を揃えて後ろからまずは跳ね返していく形である。

 さらにはシャドーとWBの間に入り込むシモンズも厄介。浮いたライン間のシモンズからオランダの攻撃は加速する。

 ただ、全体的に急ぎすぎだった感がある。ボールを奪ってスピードに乗ったらまずそこから緩めることなくゴールに猪突猛進するオランダのアタッカー。前線だけならまだしも、後方でボールを奪ったデ・フライまで似たような基準でプレーしているのは驚いた。

 密集につっこんでいきながら攻撃を終えるオランダ。徐々に押し込むフェーズがなくなってしまい、時間の経過とともに一方的にオランダが攻める展開ではなくなってしまった。

 立ち上がりこそすぐに縦につけていたトルコだが、徐々にボールを奪うと機能的に前進。降りて揺さぶるギュレルを煙幕として、右の背後をとるユルマズを使いながら前進。ファン・ダイクとのバトルはなかなか見応えがあった。

 オランダが急ぎすぎたこともあり、押し込むフェーズを作ったトルコ。すると、またしてもセットプレーの流れから先制。右サイドに流れたボールをギュレルが逆足でファーへのピンポイントクロス。キックの質はピカイチだったが、ファーで3人が競り合っていたことを踏まえると、ここは狙い目というスカウティングがあった可能性もある。

 Round 16と同じくセットプレーで試合を動かしたトルコ。オランダをリードしてハーフタイムを迎える。

 後半、オランダは再びボールを持つフェーズに突入。左右のサイドをえぐってシンプルにクロスを入れるというスタンスは変わらないが、ベグホルストという長身のターゲットをボックス内に入れることでシンプルなスタイルの威力を増やしていた。前半に比べるとトルコのクロス対応は相当厳しいもののように見えた。

 そうした中でもトルコは少ない人数からの反撃に出る。カディオールのやりすぎと思えるようなキャリーもあったし、相変わらず右サイドで起点になり続けるユルマズには頭が下がる思いであった。

 しかしながらゴールを生み出したのは機械と圧力に優るオランダ。セットプレーからデ・フライがゴールを決めてついに追いつくことに成功する。

 さらには畳み掛けるように追加点まで。押し込みながらの攻撃が延々と続く展開の中で、右の大外を走る嫌がらせを終盤まで続けたダンフリーズが折り返したボールをファーに詰めていたガクポがゴール。一気に試合をひっくり返す。

 延長戦のことなど考えない!という勢いで前線の選手を投入し、巻き返しを図るトルコ。終盤は受けに回ったオランダだったが、最後方を守るフェルブルッヘンの活躍もあり、なんとかトルコの追撃を抑止する。

 準々決勝唯一の90分決着はオランダに軍配。シンプルに殴り続けたことが功を奏し、粘るトルコを振り払うことに成功した。

ひとこと

 オランダ、個人的にはちょっと力技に走りすぎかなという感じを受ける。トルコには通用したけども、イングランドにはこれが効くかは微妙なところ。代えが効かないメンバーの多さも他のチームに比べると少し多いように思えるが。

試合結果

2024.7.6
EURO 2024
Quarter final
オランダ 2-1 トルコ
オリンピア・シュタディオン
【得点者】
NED:70′ デ・フライ, 76′ ミュルドゥル(OG)
TUR:35′ アカイドゥン
主審:クレマン・トゥルパン

SF イングランド戦

塹壕戦を待ち受けたイングランドが生み出したファーへのシュートコース

 スペインの待つ決勝に向けて勝負するのはイングランドとオランダ。ドルトムントの地で決勝に向けてのもう1枚の切符を争う戦いに直面する。

 立ち上がりにボールを持つのはイングランド。バックラインが自由にボールを持てる状況から解決策を探る。しかしながら、中盤の守備はタイトだったオランダ。特にメイヌーとライスには厳しくチェックをかけていく。

 その中盤へのチェックが効いたのがオランダの先制点の場面。ライスへのハントが成功したシモンズが素晴らしいゴールで試合のオープニングを飾る。

 しかしながらオランダの中盤は前向きなタイトな人への守備は得意な一方で、後方のスハウテン周辺のスペースはかなり間延びしてる感があった。このスペースでケイン、ベリンガムといった前線の選手が降りることでポイントを作っていく。

 中でも効いていたのはサカ。切れ目に顔を出すタイミングも上手いし、アケとの勝負から逃げるためにも中盤に顔を出して前を向くという形は有望。オランダはサカが持っている時のボールの雲行きが見えていない感じがしており、横パスなどの次の一手を塞ぐことができなかった。

 中盤に縦パスを受けるポイントを作ることでリズムを作るイングランド。すると、ケインのシュートにアフター気味で突っ込んだダンフリースがPKを献上する。ケインがこのPKを難なく仕留めて試合は振り出しに戻る。

 このゴール以降もイングランドはオランダのDFライン前に降りるアクションを見せることでポイントを作る。右のハーフスペース付近でフォーデンが生き生きし始めたのはようやくといった感じ。

 オランダもデパイが降りるアクションをすることで、イングランドの中盤の背後に起点を作ることができていた。だが、そのデパイが負傷。フェールマンを入れて3センター気味に変化する。

 この変化によってオランダはライン間のスペースを埋める方向性にシフト。多少はイングランドに自由を与えていた場所をケアすることができていたが、全体の重心が下がった分、自分たちも攻撃に打って出ることができない状況になっていく。

 後半のオランダはベグホルストを投入。もちろん、前線のターゲットとしてという側面はあるだろうが、守備をきっちりやるというベグホルストの特性と彼が中盤からの守備基準の起点に設定したことを踏まえると、クーマンは前半の途中からのライン間を封鎖するという方向性をさらに強めるという方向性だろう。

 これにより、イングランドのライン間アタックは完全に停滞。イングランドは前半頭のようなチャンスがない状態になる。

 もっとも、この状態にイングランドが困っていたかは不明である。オランダが仕掛けてきた塹壕戦での我慢比べはイングランドにとっては得意分野。選手層という物量で相手を兵糧攻めにするのはサウスゲートの十八番と言ってもいいくらいである。

 しかも、オランダはベグホルスト以降はノーインパクトだったベルフワインか、実績を作れていないザークツィーとブロビーくらいしかゲームチェンジャーがいないのが苦しいところ。時間経過とともに苦しくなるのはオランダの方というサウスゲートの考え方は少なくとも今日はピンとくるなという感じである。

 というわけで停滞した状況を受け入れたイングランド。オランダは左サイドのガクポからベグホルスト+ダンフリース、セットプレーではここにファン・ダイクが加わる形からチャンスを狙っていく。 しかしながら、このピンチをストーンズやピックフォーtドというエバートンの血を引く者たちの活躍によって防衛すると、少しずつポゼッションを回復することで反撃に出るとワトキンスとパルマーを投入し、前線をリフレッシュする。

 この交代策に応えた両者。パルマーのパスからサイドに抜け出したワトキンスが均衡を破るシュートを角度のないところからゴールを決めて後半追加タイムに試合を動かす。この試合後にはキエッリーニの下記の解説が話題になった。

 逆に言えばワトキンスはこうしたゴールが多いので、角度のないところからDFを滑らせて空いた股を利用してファーに打ち切ることを狙っているということだろう。強烈な足の回転とインパクト十分のシュートが備わっているからこそのゴールであった。

 土壇場のゴールで延長突入を回避したイングランド。オランダを下し、2大会連続の決勝に駒を進めた。

ひとこと

 今大会でプレータイムに恵まれなかったワトキンスが一発回答を見せていた。試合勘のない状態だったと思うが、プレミアで見せる高い次元での安定感はこの日も健在。見事にチームを勝利に導いてみせた。

試合結果

2024.7.10
EURO 2024
Semi-final
オランダ 1-2 イングランド
BVBシュタディオン・ドルトムント
【得点者】
NED:7′ シモンズ
ENG:18′(PK), 90′ ワトキンス
主審:フェリックス・ツバイヤー

総括

破壊力上等スタイルは時には一本調子感も

 こちらもベスト4。ベスト4の4チームの中では個人的には最も評価が難しいチームな感じがする。

 インテンシティを感じさせながら早い展開についていくという基本コンセプトに関してはかなり良くコミットしていたと思う。まだ来季どこのチームでプレーするかが決まっていないシモンズがライン間でボールを受けると、ここから一気に攻撃はスピードアップ。ガクポ、ダンフリースといった選手たちの強引なプレーからゴールを陥れる形は迫力十分だったのは間違いない。スハウテン、ラインデルスといった中盤もこの速い攻撃についていく中できっちり存在感を出すことができた大会だったように思える。

 しかしながら、その強引なプレーは試合を動かす力もある反面、少し一本調子なところがあった。大会が進むにつれて攻撃はいそがしくなり、序盤戦のようなアケが後方の司令塔となって相手を動かしながら前進するといったアプローチは徐々に減っていった感がある。

 オランダのCHの2人の評価が上がったことは疑いの余地はないと思うが、テンポをコントロールする選手がいる未来は正直見ておきたかったので、個人的にはフレンキー・デ・ヨングがいればなぁという気持ちはぬぐえないところはあった。保持からテンポを整える時間があれば、イングランド戦で劣勢になる時間はもっと少なかったようにも思う。

 ベグホルスト以外のジョーカーを拡充できなかったのも大会を通して考えれば痛かったところだろう。ベルフワインはスタメン抜擢に応えることができず、ザークツィー、ブロビーといった面々は事態が相当切迫したスクランブル状態での起用のみ。特に後者の2人に関してはグループステージでもう少し見ておきたいところだった。今の24チーム制のトーナメントはグループステージで試すことと突破することを並行してナンボという感じもするので、オランダはもう少しその点で冒険してもよかったのかもしれない。

 ただ、今大会では諸々の事情で出られなかったタレントが中盤よりも後ろに結構いたのも確か。層の厚みと質の両面でもっとポテンシャルはあるチームだと思う。さらに強固になった後ろのユニットをガクポ、シモンズなどが立場をさらに強めた前線とかけ合わせれば、2年後のオランダ代表への期待はおのずと高まってくるだろう。

Pick up player:シャビ・シモンズ
 行ってこいをさせたら仕事をきっちりやってくるというのはいかにも直近で在籍したレッドブルっぽい仕上がりだなと思う。やや、振る舞いが感情的でプレーに影響しやすそうなのは気になるが、ボールを持った時にできることは順調に増えている選手なので、今後が楽しみ。あと、クラブシーンでのキャリア形成もちょっと気になるかも。

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