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「EURO 2024 チーム別まとめ」~イタリア代表編~

目次

代表メンバー

▽GK
ジャンルイジ・ドンナルンマ(パリSG)
12 グリエルモ・ビカーリオ(トッテナム)
26 アレックス・メレト(ナポリ)

▽DF
ジョバンニ・ディ・ロレンツォ(ナポリ)
フェデリコ・ディマルコ(インテル)
アレッサンドロ・ボンジョルノ(トリノ)
リッカルド・カラフィオーリ(ボローニャ)
フェデリコ・ガッティ(ユベントス)
13 マッテオ・ダルミアン(インテル)
15 ラウル・ベッラノーバ(トリノ)
17 ジャンルカ・マンチーニ(ローマ)
23 アレッサンドロ・バストーニ(インテル)
24 アンドレア・カンビアーゾ(ユベントス)

▽MF
ダビデ・フラッテージ(インテル)
ジョルジーニョ(アーセナル)
10 ロレンツォ・ペッレグリーニ(ローマ)
16 ブライアン・クリスタンテ(ローマ)
18 ニコロ・バレッラ(インテル)
21 ニコロ・ファジョーリ(ユベントス)

▽FW
ジャンルカ・スカマッカ(アタランタ)
11 ジャコモ・ラスパドーリ(ナポリ)
14 フェデリコ・キエーザ(ユベントス)
19 マテオ・レテギ(ジェノア)
20 マッティア・ザッカーニ(ラツィオ)
22 ステファン・エル・シャーラウィ(ローマ)
25 マイケル・フォロルンショ(ベローナ)

■監督
ルチアーノ・スパレッティ

GS 第1節 アルバニア戦

立ち上がりの失態を保持ベースで巻き返しての逆転勝利

 前回王者、イタリアの開幕戦はアルバニア。同じ組にスペインとクロアチアがいることを踏まえれば、この初戦は必勝という構えになるだろう。

 だが、そんなイタリアの青写真に待ったをかけるかのようにアルバニアは開始1分で先制点をゲット。ディマルコのスローインのミスに漬け込んだバイラミが右サイドを破壊してあっという間にアルバニアにリードをもたらす。

 以降の前半はイタリアの保持がほとんど。先制点がもたらした展開への影響はわからないが、おそらくゴールがあってもなくてもイタリアがボールを持ちながら支配的に振る舞うことになったのではないかと思う。

 イタリアの保持のベースになるのは3-2-5。大外をディマルコ、キエーザの2人に託し、スカマッカの後ろにペッレグリーニとフラッテージが控える形になる。アルバニアは4-4-2で2トップがイタリアのCHであるジョルジーニョとバレッラが基準。

 大外のSHはWBロールのディマルコとキエーザに合わせて位置を下げて後ろ重心で守る。このSHの対応もThe Athleticのプレビューには書いてあったので、少なくともキエーザに対してセフェリが下がる形はスコア推移に関わらずアルバニアの頭の中にはあったように思える。

 イタリアの3-2-5はここからさらに変形する。ボールサイドの後方支援役としてアルバニアの2トップの脇にボールサイドのCBがサポートに入る。左であればカラフィオーリ、右であればディ・ロレンツォが後方からの供給役としてCH、WB、シャドーの3枚をサポートする格好である。余談だがバストーニを含めたバックラインはイタリアの系譜の中ではかなりチャラい部類になりそうだ。

 サイドに枚数を十分かけたイタリアは圧力をかけて押し下げることができるように。純粋に枚数を使った崩しもあるし、右の大外にはキエーザもいるため1on1での仕掛けから剥がしてズレを作ることも見込める状態だった。

 すると、イタリアはセットプレーから追いつく。大外に構えていたバストーニがフリーで合わせて先制点の10分後に試合は振り出しに戻ることとなった。

 さらにはその5分後にイタリアが追加点。右サイドの後方支援役のディ・ロレンツォがナポリでの日常のようにサイドからボックス内に突っ込んで深さを作ると、その恩恵を受けたのはバレッラ。見事なミドルでゴールを打ち抜き、イタリアはリードを奪うことに成功する。

 アルバニアが比較的ショートパスから繋ぎたい意思を見せたので、ボールをロストしたら即時奪回ガンガンモード!という感じのイタリアだったが、リードをしたことでアルバニアにボールを持つ時間を少し与えるように。先制点以降、ガンガンモードのイタリアに対して保持の局面では息を吐く間もないという感じであったが、ビハインドになったことで少し余裕が出る展開となった。

 保持時のアルバニアは4-4-2からCHが移動をスタートする。ラマダニが2CBの右に降りて、アスラニが中央に残りつつ必要であればサリーで列を落とすという感じ。これでイタリアのプレス隊に対応を強いるという感じである。

 しかしながら、前線にボールをとりあえず預けておけばOKという選手も居なそうであり、ボールを落ち着いて持てる時間はイタリアが後方のスペースを管理することを優先していた感があるので、あまり移動自体が効果を生むことはなかった。キエーザの仕掛けからスカマッカの背後に飛び込んだペッレグリーニが決定機を迎えるなど、保持での支配力を多少落としても試合の主導権は依然としてイタリアにある前半だった。

 迎えた後半も前半と陸続き。ハーフタイム明けの入りということでもう一度CHをプッシュアップしたプレスからイタリアが保持で試合を支配するところからスタートした序盤となった。IHの前線への飛び出しの積極性から見ても、この時間帯に追加点を取るのが理想という感じだろう。

 アルバニアもゴールが欲しいのは当然同じ。前への意識が強いイタリアのIHの背後からボールを運べば理想的であるが、なかなかそうした局面は訪れない。ということでSHが後方のスペースを埋めるのではなく、高い位置に出ていくことでボールを奪う位置を高くしようとするアプローチが見られた。

 イタリアはこれを受けてボールを落ち着かせる方向性にシフト。60分以降は試合展開が再び落ち着き、保持側に時間が与えられる展開になっていく。SHの入れ替えを行いプレスの運動量を回復しようとしたアルバニアに対して、イタリアはクリスタンテを投入。より後方の安定感を担保。左サイドのユニットに後方重心の選手が増えたことで、大外のディマルコの抜け出しがアクセントになるという展開となった。

 終盤はプレスから流れを活性化しようとするアルバニアに対して、イタリアが保持でそれを抑制する綱引きのような展開に。どちらかといえばこの綱引きはイタリアが主導権を握っていたと言えるだろう。降って湧いたムラニの抜け出しからのアルバニアの決定機は少し角度のないものながら、先制点以降最もゴールに近づいた瞬間だったが、シュートはゴールマウスを逸れていった。

 立ち上がりにミスからバタバタしたイタリアだったが、ボールを動かしながらきっちり主導権を握り返しての逆転勝利。まずはミッションである3ポイントを手にする初戦となった。

ひとこと

 イタリアのバックラインの特性を生かした保持での攻略だったように思う。アルバニアは後ろに重ためのチームだったし、より前線の破壊力があるチームに対しては少し強度面で不安がある気もするので、2節目以降のバックスの人選と役割の持たせ方に注目していきたい。

試合結果

2024.6.15
EURO 2024
グループB 第1節
イタリア 2-1 アルバニア
BVBシュタディオン・ドルトムント
【得点者】
ITA:11‘ バストーニ, 16’ バレッラ
ALB:1‘ バイラミ
主審:フェリックス・ツバイヤー

GS 第2節 スペイン戦

左サイドでこじ開けた先制点で見事に決めた首位通過

 今大会のGS屈指の注目カード。スペインとイタリアがGSの突破をかけて激突する大一番である。

 立ち上がりから攻め立てるスタートとなったのはスペイン。左サイドを軸に攻撃を構築していく。率直にニコ・ウィリアムズのキレが素晴らしかった。対面のディ・ロレンツォを手玉に取り、ボックス内に確実にチャンスを供給する。チャンスはやってくるので中盤がシュートに向けたポジションを取ることができる。マイナスでミドルを待ってもいいし、モラタの背後に忍び込んで立ち上がりに決定機を迎えたペドリのようにボックス内に入り込むのもいい。左サイドは明確な起点となった。

 前がかりなスペインに対してイタリアはボールを奪った後は中盤にボールをつける。バレッラが浮く形があり、ディ・ロレンツォなどプレッシャーをかけられても届けられる選手が後ろにいるのがイタリアの強みなので、ここまではつなぐことができていた。ただ、その先の出口の火力はスペインには劣る形。ボールをきっちり収められるモラタや押し切れるヤマルやニコ・ウィリアムズはいないので、その点で攻撃の機能性が異なったイメージである。

 スペインはイタリアの仕掛ける早い展開に対して、こちらも早い展開で応酬。クロアチア戦でもあったような撃ち合いの流れが前節よりも早めに来たという感じである。そうした中で少し気になったのは少し激しい接触が多かったこと。接触起因での怪我人が出なかったのは良かったけども、ちょっと審判のマネジメントが大変そうな試合ではあった。

 前半の中盤が過ぎると試合は再びスペインの押し込む局面がベースとなっていく。決め手となるWGの仕掛けからMFに得点のチャンスが出てくるスペイン。ドンナルンマのセービングによって踏ん張るイタリアの構図が続く。イタリアにとってはなんとかスコアレスで折り返したという感じの前半だろう。

 後半、2枚の交代で中盤を入れ替えるイタリア。カンビアーゾは右サイドの守備のヘルプに行くことが多かったので、この辺りは非保持における手当てなのかもしれない。

 後半も引き続き押し込んでいく流れとなったスペイン。ロドリが倒れ込んだシーンはかなりヒヤッとしたが、プレーは続行。シティファンとスペインファンは胸を撫で下ろしたはずである。

 押し込む流れは前半と同じだが、後半の変化は左サイドのウィリアムズの突破にククレジャがフリーランで見事なサポートをしていたこと。内側のレーンを上下動することで揺さぶり、ウィリアムズのマーカーを1枚に限定していた。前半のウィリアムズのプレーは圧巻であったが複数枚を剥がそうとする強引さも垣間見えたので、ククレジャのサポートは上質さを感じるものだった。

 この左サイドのユニットからスペインは先制点はゲット。ウィリアムズの突破からインサイドで軌道が変わったボールはカラフィオーリに当たってオウンゴール。不運な形ではあったが、こうなってもおかしくないようなボールを入れられるくらいにはやられていたのは確かだろう。

 イタリアは保持で巻き直せないのも痛かった。ジョルジーニョを引っ込めてしまった影響がどこまであるかはわからないが、即時奪回に動いてくるスペインに対してプレスを逃しきれない場面が前半以上に目立ってしまい、陣地回復はさらに難しくなっていった印象である。

 終盤はスペインがプレスを控えたこともあり根性でのキャリーで押し返すが、サイドの決め手は不足。押し込む相手を攻略する一手が90分上下動したディマルコに1on1を託すというのは苦しいところであった。

 後半追加タイムはボックス内の守備を強いられた場面もあったが、それ以外はほぼ冷や汗をかくことなく過ごすことができたスペイン。首位を確定させた状態で2チーム目のGS突破を決めた。

ひとこと

 イタリアの火力不足はこのメンバーだと如何ともし難いところがあるなという感じ。だからこそ、後方の動的成分で補っているのは設計的にはうなづけるけども、スペインのように高い位置から引っ掛けられる相手だとバタバタした形で受けなければいけない状況が増えてしまうので、それはそれで頭が痛い感じもする。

試合結果

2024.6.20
EURO 2024
グループB 第2節
スペイン 1-0 イタリア
アレナ・アウフシャルケ
【得点者】
ESP:55′ カラフィオーリ(OG)
主審:スラヴコ・ビンチッチ

GS 第3節 クロアチア戦

2位通過を巡る大一番は後半追加タイムに劇的な幕切れ

 雌雄を決する最終節。クロアチアは引き分けでは3位通過を狙うには難しい勝ち点であり、突破を見据えるためには勝利が必要という状況である。対するイタリアが引き分けOKというのがまた状況を厄介にしている。

 ボールを持つスタートとなったのはクロアチア。4-3-3ベースでボールを動かしていく。5-3-2のイタリアに対してはSBのところが空きやすいのであるけども、攻め手になりそうなグバルディオルには早々にディ・ロレンツォがチェックに行くなど警戒ポイントに対してイタリアは抜かりがない。クロアチアとしてもなかなか前線の預けどころが豊富でないため、外のグバルディオルがチェックをかけられてしまうと苦しいところ。

 イタリアの保持に対してはクロアチアはハイプレスでマンツー気味にスタート。イタリアは背後に一発で逃がすためのロングボールはなく、パスワークでどこかにギャップを作らなければいけない状況。ただし、少しでも隙があればジョルジーニョが左右にサイドチェンジを行うことで横幅を使い、クロアチアの4-3-3を振り回すことができる。ディマルコ、ディ・ロレンツォはこの振り回すアクションをかなり意識して攻め上がりの出足が良かったように思える。

 ここにさらにイタリアはラスパドーリやペッレグリーニなど前線が手前に奥に動きながらボールを引き出すアクションが加わるように。横幅と縦のアクションが重なった前半中盤は明確にイタリアペースと言って良かった。

 クロアチアはモドリッチが左に流れるオーバーロードやクラマリッチの絞るアクションなど人の偏りをあえて作り出しているようには見えたが、フィニッシュ設計から逆算するとボックス内に人がいないというしんどい状況。サイドからマイナスの折り返しでMFがミドルを狙うという形はクロアチアが得意な形ではあるがこの試合ではあまり見られず。ドンナルンマのミドルを警戒したのかもしれないが、単調なクロスに終始するなどそれに代わる攻め手を見つけられないままハーフタイムを迎えてしまった印象だ。

 後半、クロアチアはブディミルを投入。やっぱりクロスのターゲットは必要ということになったのだろう。一方のイタリアもフラッテージを入れて互いに1枚ずつを入れ替えるHTとなった。

 基本的には前半と大きく変わらない入りをした両チームだが、ボール奪取からカウンターを演出したグバルディオルの出足のいいプレーの分、いい入りをしたのはクロアチアだっただろうか。その流れに乗ってクロアチアはPKを獲得。フラッテージのハンドで決定的なチャンスを得る。

 だが、モドリッチのPKはドンナルンマが完全に読み切ってシャットアウトして大ピンチを防ぐ。PKが止められた後は直後のプレーが流れを決める上で超大事。この直後のプレーでクロアチアが先制ゴールをゲット。ファーでクロスを合わせたモドリッチがPKのリベンジを果たした。ターゲットとしてブディミルをおいた効果も出ていいと言っていいだろう。それだけにイタリアはクロスの出し手への甘さが気になった場面だった。

 このゴールを受けてクロアチアは自陣にグッと引く形でブロックを組む形に。バックスが6枚になって受けるシーンも増えていく。イタリアは失点直後にキエーザを投入して右サイドに攻め手を作る。しかしながら、キレはあるもののパス周りの判断と精度がやや鈍く試合を変えるまでには至らず。

 初手でクロス対応にバタバタしていたクロアチアは冷静に跳ね返せるように。保持に回ればきっちり時間を作ることもできることで試合の流れは少しずつイタリアから離れてしまった感もあった。

 陣形ごときっちり5バックにシフトし、後方を固めて試合をクローズしたいクロアチア。動きの鈍いイタリアはここまでかと思われたが、ラストプレーで左サイドからボールを運んだカラフィオーリからパスを受けたザッカーニが角度のついた位置から放ったシュートはゴールに吸い込まれていった。

 2試合連続で後半ATの失点で3ポイントを逃したクロアチア。3位抜けの可能性は残っているが条件は厳しく、劇的な同点ゴールの代償は大きいものになりそうだ。

ひとこと

 クロアチアはスコア推移だけ見ればもっともっと冷酷に残り時間を過ごせ!だったのかもしれないけども、前半の時間帯における普通に攻める手立てのなさは辛い。ビルドアップに人数を後ろに重たくなる陣形はプレス回避能力の高さ的には防衛策としてはいいけど、攻撃に打って出る形に昇華できるシーンがあまりにも少なかった。

試合結果

2024.6.24
EURO 2024
グループB 第3節
クロアチア 1-1 イタリア
ライプツィヒ・スタジアム
【得点者】
CRO:55′ モドリッチ
ITA:90+8′ ザッカーニ
主審:ダニー・マッケリー

Round 16 スイス戦

前回王者を沈黙させたスイスが2大会連続のベスト8へ

 EUROはいよいよノックアウトラウンドがスタート。口火を切るのはグループAでドイツと鎬を削ったスイスと死の組をなんとか突破したイタリアである。

 大幅にメンバーを変えたのはイタリア。カラフィオーリの出場停止がどこまでプラン全体に影響を与えたかは読みにくいところではあるが、かなり多くのメンバーを変えてのノックアウトラウンドとなった。

 立ち上がりにスイスに持たせることを許容したことを踏まえると、イタリアはある程度ボールを持たせることを前提としたプランだったのかもしれない。スイスはハンガリー戦で見せた左サイドのポジションチェンジから攻めに出ていく。大外にバルガスorロドリゲスを置くことで解放されるアエビシェールはスイスの名物。

 序盤はこの左サイドの枚数をかけたスイスの攻撃に、イタリアがラインブレイクを許さないように体を張る攻防に。左サイドのラインブレイクにインサイドにエンボロに加えてフロイラーが飛び込むことでボックスに厚みを持たせていく。

 この形はスイスに軍配が上がったように見えた。ホルダーに対して複数の選択肢を提示し続けることで単一のルートをイタリアに絞らせないスイスは大外のラインブレイクもしくはバイタル付近でフリーマンを作ることに成功。イタリアの非保持は後手に回ることとなる。

 押し込んでからの崩しの工夫が見えたのもスイスとしてはかなりいい感じ。序盤はあまり崩しに使う感がなかった右サイドも同じように抜ける動きからのラインブレイクは見せていたし、トップのエンボロは表に裏に起点として大活躍。特に左サイドの可変との親和性が高く、イタリアの機を見たハイプレス破りにも一役買っていた。

 押し込むフェーズが続くスイスは33分に先制。左サイドの崩しで深さを作ると3列目から突っ込んできたフロイラーが先制ゴールを掴む。優位な時間をきっちりゴールに結びつけることに成功した。

 一方のイタリアはスイスの高い位置からのマンツーに苦戦。前線3枚で同数で受ける判断をするスイスを咎めたいところではあるが、実際のところワイドを使った攻略には至らず。スイスを一旦押し込んでから崩しのトライをする形の方がまだ有望であった。

 しかしながら、押し込むフェーズになってもなかなか解決策を見つけることができないイタリア。そもそも自陣から押し返すフェーズを安定せず、スイスの保持のトライに対してさらに手前で苦しんでいるように見えた。

 後半、イタリアはシステムを変えないまま左サイドにテコ入れ。GS通過の立役者のザッカーニを投入する。しかしながら、イタリアは後半早々に失点。デザインキックオフに失敗したファジョーリがボールを取り返そうとして躍起になり、サイドまでボールを追い回していた影響で、インサイドに穴がぽっかり。ここに侵入したのはバルガス。ひとまずアンカーを埋めていたクリスタンテがサイドにカバーに入ろうとするも間に合わず、見事なミドルを放ってみせた。

 このゴールでかなり意気消沈してしまったイタリア。非保持ではWGの無理筋なプレスからアンカー脇が空くなど構造がスカスカに。スイスが攻撃を終えても、トランジッションに向けたポジションの取り直しが遅い。速く攻撃しろとは言わないが、攻撃に向けて早く意識を切り替えることはせめてして欲しかったところである。

 2点をとってなお、スイスは意欲的なプレスから進撃。イタリアに対してなおも次の得点の可能性が高い状況をキープする。

 攻撃的な選手交代したイタリアは、非保持で撤退ベースにシフトしていったスイスに対しても手も足も出ない。高い位置から追いかけ回されようが、ブロック崩しに誘導されようが何もできないのは悲しいところ。ザッカーニとキエーザが根性でクロスをあげようと、ゴールネットを揺らすことはできなかった。

 イタリアの後半へのエネルギーは立ち上がりのワンプレーで鎮火。恐ろしいくらい何も起こさせなかったスイスが文句なしでベスト8進出を決めた。

ひとこと

 スイスがイタリアに負けるということは普通にあり得るかなと思っていたが、90分間ほぼ何もできないくらい一方的というのは正直驚いた。大幅に入れ替えたスターターが機能しなかったのは確かだけども、他の策があったではないか!と胸を張って言えるほどの代替案もあまり見当たらないのが辛いところでもある。

試合結果

2024.6.29
EURO 2024
Round 16
スイス 2-0 イタリア
オリンピア・シュタディオン
【得点者】
SWI:37′ フロイラー, 46′ バルガス
主審:シモン・マルチニャク

総括

コンセプトを実装しきれなかったスカッド

 やっちまったぜーーーー。アルバニア相手にずっこけ先制点を献上しながらもコツコツ押し込んで逆転勝ち。スペインには屈したけども、クロアチアには土壇場で勝ち越しゴールを決めることでギリギリでノックアウトラウンドの切符をゲット。ここまでは悪くはなかった。

しかしながら、そのノックアウトラウンドではスイス相手に手も足も出ずに敗戦。カラフィオーリの出場停止やディマルコのベンチスタートによりメンバー選びの時点で痛手があったのは確か。だが、Round16の他のカードを見渡せば、ジョージアなどの小国も敗退しながらも見せ場を作っている。後半早々の失点で意気消沈したイタリアは16強の中では最も悪いイメージで大会を去ることになってしまったかもしれない。

 バストーニ、カラフィオーリ、ディ・ロレンツォからなるバックラインには所属チームで彼らが与えられている自由度を存分に発揮してもらうことを優先したコンセプト。保持ベースでの破壊力重視。従来の受けて耐えるというプレーモデルから明らかに保持で支配して壊すという形にモデルチェンジを見せようというのが今大会のイタリアだった。

 実際のところ、このモデル自体の成果が全くでなかったわけではない。後方から+1としてバックスが支援する形は要所で得点に結びついている。アルバニア戦のディ・ロレンツォの攻め上がりや、クロアチア戦でチームを救ったカラフィオーリの持ち上がりなどはこのDFラインを採用したからこそ生まれた得点があることは間違いない。

 その一方で中盤より前がこのコンセプトの中で期待に答えられたかというと微妙なところ。中央に立つスカマッカは味方のサポートを得ることができずに徹底的に孤立し続けたし、キエーザはキレこそ見せるものの、対面相手を選ばないと優位は取れないし、味方を生かして突破をするタイプではないのでフィーリングを合わせるのは難しそうだった。

 突破力のあるWGに加えて中盤にもよりクオリティが高い選手が欲しかった。バレッラを前に集中させられる相方はもう少し中盤に求めたかったところでもある。

 総じて中盤と前線には物足りなさがあった。それでもベンチを見渡して人がいなければ仕方ないのではあるが、試合後に出てくる名前が呼ばれてすらいないロカテッリやポリターノというのはなかなか寂しさを感じるところでもある。

 スパレッテイは続投の模様。今の代表シーンを見ると好き放題やって後方からビルドを頑張りましょうというインテルオマージュのような枠組み。従来とは違うが、今のタレントを見ても方向性的には悪くないように思える。保持での後方押し上げをベースに中盤や前線などにもう少し役割を託してもいいのかなと思う。IHに前線とのつなぎ役を入れることができれば、途方に暮れるスカマッカをもう見なくてもいいのかもしれない。いずれにしてもこの枠組みの中でまだ伸びしろはありそうなチームに見えるが。

Pick up player:ジャンルイジ・ドンナルンマ
 ふがいないチームの中でセービングに奮闘。「全部止めないのが悪い」という無茶ぶりな意見をスイス戦の後に見たけども、あれはある意味誉め言葉だと思う。

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