代表メンバー
▽GK
1 カスパー・シュマイケル(アンデルレヒト)
16 マッズ・ヘルマンセン(レスター)
22 フレデリック・レノウ(ウニオン・ベルリン)
▽DF
2 ヨアキム・アンデルセン(クリスタル・パレス)
3 ヤニク・ベスターゴーア(レスター)
4 シモン・ケアー(ミラン)
5 ヨアキム・メーレ(ボルフスブルク)
6 アンドレアス・クリステンセン(バルセロナ)
13 マティアス・イェルゲンセン(ブレントフォード)
17 ビクトル・クリスティアンセン(ボローニャ)
18 アレクサンダー・バー (ベンフィカ)
25 ラスムス・クリステンセン(ローマ)
▽MF
7 マティアス・イェンセン(ブレントフォード)
8 トーマス・デラネイ(アンデルレヒト)
10 クリスティアン・エリクセン(マンチェスター・U)
15 クリスティアン・ノアゴール (ブレントフォード)
21 モルテン・ヒュルマンド(スポルティング)
23 ピエール・エミール・ホイビュア(トッテナム)
24 アンドレス・ドライヤー(アンデルレヒト)
26 ヤコブ・ブルーン・ラーセン(バーンリー)
▽FW
9 ラスムス・ホイルンド((マンチェスター・U)
11 アンドレアス・スコフ・オルセン(クラブ・ブルージュ)
12 カスパー・ドルベリ(アンデルレヒト)
14 ミッケル・ダムスゴーア(ブレントフォード)
19 ヨナス・ウィンド(ボルフスブルク)
20 ユスフ・ポウルセン (ライプツィヒ)
■監督
カスパー・ヒュルマンド
GS 第1節 スロベニア戦
エリクセンの特別なゴール
ボールを持つ側になったのはデンマーク。上のフォーメーションの図では5-3-2のような形になっているが、実際にはエリクセンがシャドーの一角のような振る舞い。ヒュルマンドとは明確な前後関係が形成されている状態で保持を行う。
一方のスロベニアは4-4-2で構える形。デンマークのバックラインはプレスに行かず、2トップは中盤を基準として守備を行っていく。前述のシャドーのエリクセンは前線に飛び出す役割を行っているのだが、その場合はスロベニアのCHは縦関係となり、片方が最終ラインに入る形でケアする。
デンマークはスロベニアの2トップの脇から進撃。ここから2トップを目掛けてボールを入れて攻撃を構築する。ホイルンドとウィンドの2トップは左右に動きながら起点となり、中盤からの飛び出しを促すようなポイントの作り方を行う。
この形が実ったのが先制点。サイドに流れてスロベニアを押し下げたホイルンドが作ったスペースに飛び込んだのはエリクセン。ウィンドのラストパスを受けて4年前のEUROの悲劇を塗り替えるようなメモリアルなゴールを決めた。
以降も主導権を握るのはデンマーク。3バックを基調とした安定したポゼッションから押し込む状況を続けていく。スロベニアもスポラルとシェシュコの2トップにボールを放り込んでいくが、なかなか起点を作ることができず。頼みのセットプレーを稼ぐために、後方を3枚にすることでボールを持つ安定感を増していこうという考えのように見えたが、デンマークほどの保持の基盤は作れなかったという印象だった。
後半の両チームはとにかくセットプレーからのチャンスメイクが目立つ流れ。互いにボックス付近でファウルを得るとここからハイボールでゴールチャンスを迎えることに。
トップに収めてチャンスを作るのが上手いのはリードをしているデンマーク。さらにはカウンターからホイビュアがボールを運び、サイドに流れるウィンドからの折り返しから決定機を作る場面もあった。同様にスロベニアもCFのサイドフローからチャンス。セットプレーもオープンプレーも似た形からチャンスを作る両チームであった。
均衡ムードの流れを変えたのはビハインドのスロベニア。シェシュコのミドルがポストを捉えたことで勇気を得ると、直後のCKからヤンザの豪快なミドルがネットを突き刺す。
このゴールで試合の流れは一変。試合の主導権はスロベニアに。サイドに流れるスポラルや中央で起点になることができるシェシュコからのチャンスメイクでデンマークのゴールに迫る。
CFを起点に使った攻撃の機能性が主導権に直結したこの試合。前半はデンマーク、後半はスロベニア優勢というコントラストがくっきりの引き分けとなった。
ひとこと
エリクセンがこの舞台でゴールを決めたこと、とにかく感慨深い。あの時のデンマークには勇気をもらったことを覚えている。
試合結果
2024.6.16
EURO 2024
グループC 第1節
スロベニア 1-1 デンマーク
シュツットガルト・アレナ
【得点者】
SVN:77‘ ヤンザ
DEN:17’ エリクセン
主審:サンドロ・シェーラー
GS 第2節 イングランド戦
低調なイングランドを前に勝ちきれなかったデンマーク
スロベニアとセルビアが引き分けに終わったこともあり、イングランドは勝てば首位のご祝儀がついた突破が決定する一戦となる。
デンマークは似たメンバー構成ながらもエリクセンとウィンドをシャドーのように運用する3-4-2-1に変化。少し守備の局面への重心を増やしたスタートとなった。
イングランドはベリンガムがビルドアップで低い位置から関与。フォーデンは初期位置は外に立っていたが、トリッピアーが上がるとすぐに絞り、いつものようにライン間の住人の役割に移行。サカのサポートのために右サイドに流れたシーンが前半一番のインパクトであることを踏まえれば、初期位置だけで大外ロールとしてしまうのは少し違うかなという感じもする。
先制点は右サイドから。サカばかり警戒しながらボールをプロテクトしようとしたクリスティアンセンの死角から忍び寄ったウォーカーがボールを奪取。ここからの折り返しは少し引っかかったが、最後はケインが沈めてイングランドが先制する。
これで勢いに乗ったかと思われたイングランドだが、以降は自陣で受けるシーンが増えるように。ボックス内では流石の強さを見せたイングランドであったが、デンマークのMF陣のポジションの動き直しを捕まえることができず。エリクセン、ホイビュアなどはかなり動き回っておりイングランドを撹乱していた。
撹乱役の1人であるヒュルマンドが素晴らしいミドルを決めてデンマークは同点。ケインのパスをカットしたところからイングランドが得意なボックス内の対応をスキップしてデンマークはタイスコアに引き戻す。
以降もデンマークMF陣に対して後手になるシーンが続くイングランド。奪った後のプレーの判断も悪くデンマークの即時奪回の餌食になっていたのも印象が悪い。タフなファウルの基準もイングランドの陣地回復に対しては重荷になった。先制点以降はイングランドにあまりいいところがなかった前半だったと言えるだろう。
後半の頭も展開は継続。デンマークが保持で支配をしつつ、より敵陣からのプレスを強気に行うことで圧力をかけていく。高い位置まで奪いにくる分、イングランドにはトランジッションからひっくり返すチャンスがあったが、ここはプレー精度のところで難があり、カウンターを完結することができない。
デンマークはMFを増やす交代をすることでさらに強気のプレスを敢行。交代で入ったギャラガーを狙い撃ち。自陣ではライスやウォーカーも軽率なミスが出ており、この辺りはシンプルに選手の出来の低調さを感じられた。デンマークは敵陣での細かいポゼッションでの駆け引きは少し減った分、プレスから一気に傾れ込むダイナミズム重視のスタイルになった。
悪い流れの中で思い切って前線のメンバーを入れ替えるという意外なシャッフルを試みたサウスゲート。ワトキンスの動き出しなどは確かにゲームを動かすアクセントになっていた。だが、アレクサンダー=アーノルドを下げた後に前線の動き出しに一発で合わせるフィードが要求される展開になるのはなかなかにミスマッチ感がある。
勝ち点に劣るデンマークの方が最後まで強引にゴールを狙いに行った感があるが、ボックス付近での緩いプレーが散見されるイングランドのプレーを咎めることができず。勝ち切ることができないまま、このグループ3試合目のドローゲームとなった。
ひとこと
勝って最終節に向けて優位を取りたかったのはデンマークかなという感じ。イングランドは引き分けでも最終節に向けて悪くはないので、テストも伴った交代をすること自体は悪くないが、中盤を落ち着かせるゲームメーカーと左の幅取り役がいた時の変化みたいなのは見ておきたかった感もある。
試合結果
2024.6.20
EURO 2024
グループC 第2節
デンマーク 1-1 イングランド
フランクフルト・アレナ
【得点者】
DEN:34′ ヒュルマンド
ENG:18′ ケイン
主審:アルトゥール・ディアス
GS 第3節 セルビア戦
唯一の敗戦が尾を引く結果に
引き分けが多くみられるグループC。しかしながら、グループAとグループBの3位がかなり勝ち点水準としては低め。3位を確保すれば十分に突破の可能性がある両チームの一戦である。
共にフォーメーションとしては3-4-2-1。ミラー型で高い位置から捕まえに行きやすい形ではあるが、スタンスは対照的。積極的にプレスに出ていくデンマークはセルビアのバックスにロングキックを誘い込み、蹴らせて回収というスタンス。ミトロビッチ目がけてのロングボールをきっちりと回収していく。
一方のデンマークの保持は比較的バックスに余裕を持たせてもらう形。ボールを持つことができた3バックから幅を使いながらズレを気にしていくアクションと、中央のホイルンドに預けながらの前進を使い分けていく。16分のバーの決定機はファーサイドに待ち構える形。前半の最も大きなデンマークのチャンスの1つだった。
主導権を握ったデンマーク。しかしながら、徐々にハイプレスの威力は減退。少しずつセルビアに保持を譲るシーンが出てくると試合の流れは変わるように。ボール保持の機会が増えたセルビアは左サイドから進撃。縦に抉る動きと横断を使い分けながら少しずつデンマークの陣内に迫っていく。
セルビアが保持をフラットに戻したところで前半は終了。ハーフタイムはスコアレスで迎えることとなった。
後半頭は前半の立ち上がりに逆戻りしたかのようなスタート。保持から押し込んでいくデンマークに対して、セルビアは前線のパワーを前面に押し出す形に逆戻りした感があった。
その前線のパワーアップ役を託されたヨビッチはネットを揺らすシーンがあるが、これはギリギリでデンマークがオフサイドをゲット。デンマークのバックラインの統率が光るシーンであった。
しかしながら、終盤は優勢だったのはセルビア。互いに前線を入れ替えながらの勝負に出たが、よりフレッシュで役割を全うできたのはセルビアの方だろう。デンマークのFW-MF間のスペースが空いてきたこともあり、徐々に前進は安定するようになったことも大きかった。
敵陣ではファーサイドのクロスを連打することによりデンマークを追い込んでいくセルビア。デンマークは引き分けをキープできれば突破ということで必死に耐える展開が続くことになる。
パワー系の前線を並べたにも関わらずこじ開けることができなかったセルビア。このグループ唯一の敗戦を喫したことが尾を引き、グループステージで姿を消すこととなった。
ひとこと
悪くはなかったデンマークだけど、このグループはもう一押し!が問われる展開がなかったので、何とかしなきゃいけない状況での火力の増し方が見えてこないのは不安要素として残るなと思った。
試合結果
2024.6.25
EURO 2024
グループC 第3節
デンマーク 0-0 セルビア
フースバル・アレナ・ミュンヘン
主審:フランソワ・ルドゥグジェ
Round 16 ドイツ戦
命運を分ける数分間をモノにしたドイツが後半を制圧
開催国のドイツは第2試合に登場。ドルトムントで迎え撃つのはデンマークである。デンマークは5-4-1の布陣を選択。まずは自陣で受けるブロック守備を敷く。
ドイツはグループステージ3試合を通して5バックとの対戦だったが、この試合でも継続。その3試合と同じようにボールを動かしながらブロック守備の攻略を狙っていく。
多少メンバーは変わっていてもドイツの仕組みは大体同じ。落ちる位置を変えながら調整するクロース、大外はSBに任せて2列目はインサイドに集結。WGタイプ寄りのサネが起用されていても、右サイドの大外を取るのはキミッヒである。
ハヴァーツのサイドに流れる攻撃など、サイドの奥を取ることでドイツが押し込む立ち上がり。特に効いていたのはセットプレー。序盤のCKはほぼドイツが先に触ることができていた。一本目のシュロッターベックがネットを揺らしたシーン(おそらくファウルで得点は無効)を皮切りに、続々とドイツの選手たちがシュートを狙っていくセットプレーの連続となった序盤戦だった。
ドイツは地上戦でも少しずつ工夫を見せる。SBを少し自陣寄りで受けさせることでデンマークのWBを手前に引き寄せつつ、CB-WBの間に選手を走らせてギャップを突く。これにより少しずつ2列目の選手が大外で働く機会が増える展開となる。
一方のデンマークも保持に回ればゆったりと。サイドからのシンプルなクロスではあったが、ファー狙いと裏へのスペースに置くようなクロスが多かったため、ドイツは対応に苦慮していた。
また、ドイツは押し込まれるところを跳ね返されるフェーズを挟むと縦に速い攻撃が増える傾向がある。この傾向により少しずつ試合はオープンに。展開としてはドイツの一方的な保持からフラットな主導権争いに移行。と言ったところで雷で試合は中断することとなる。
中盤明けは再び押し込むドイツがセットプレーからチャンスを作り出すなど、前半の焼き直し。デンマークは再び押し込まれる機会があったが、ドイツの中盤での珍しいパスミスからホイルンドが決定機を作るが、惜しくもシュートは枠を捉えることができず、試合はスコアレスでハーフタイムを迎える。
後半、デンマークはシャドーをやや前に出す5-2-3で少し前からのプレスを強める。望んだ通りに少しオープンになった展開で先にゴールを揺らしたのはデンマーク。しかし、デラネイのオフサイドでアンデルセンのゴールは認められず。
すると、今度はドイツにゴールチャンス。左サイドからのクロスがハンドを誘発し、PKを獲得。このPKをハヴァーツがきっちりと鎮めて先制する。ハンドを犯したのはゴールを取り消されてしまったアンデルセン。天国から地獄に一気に落ちる数分間になってしまった。
以降は撤退守備の時間を増やしながらきっちりとブロックを組む時間を増やしたドイツ。自陣からのロングカウンターやデンマークのプレスを引き寄せての加速など速い攻撃を効果的にかつ自在に打てるように。ムシアラのゴールはシュロッターベックの落とすようなフィードが見事。ストロークを抑えることでGKの飛び出しを防ぐ見事な軌道であった。
2点のビハインドとなったデンマークはガンガン放り込んでいきたいところであるが、なかなかギアアップができず。もう少しシンプルに放り込んで試行回数を増やしてもいいのではと思うのだが、なかなか入れられないままドイツのカウンターから更なる失点の危機に晒されることとなった。
終わってみれば完勝だったドイツ。運命を分ける数分間で先制点を奪うと一気に試合の主導権を持っていき、ベスト8進出を決めた。
ひとこと
クロースの連戦起用がどこまで持つかは気がかりではあるが、きっちりと特徴を出しながら手堅いチームを試合運びで上回ったのは見事であった。
試合結果
2024.6.29
EURO 2024
Round 16
ドイツ 2-0 デンマーク
BVBシュタディオン・ドルトムント
【得点者】
GER:53′(PK) ハヴァーツ, 68′ ムシアラ
主審:マイケル・オリバー
総括
エリクセンのゴールが大会のピークに
開幕戦のゴールでエリクセンにまつわる4年越しの物語を完結させたデンマーク。エモーショナルなスタートを切ったデンマークのEURO2024だったが、このゴールを分岐点としてややピークアウトしてしまった感がある。
この開幕節で先制点以降も主導権を握ったのはデンマークだったが、セットプレーから同点ゴールを決められると一気に流れを持っていかれることに。不完全燃焼のまま開幕節をドローで終えることに。
以降は対戦相手がイングランドだったり、突破条件がそもそも引き分けでOKだったりと無理をしなくいいシーンばかり目立つ大会に。のらりくらりとしのぎながらグループステージはなんとか突破したが、その先に待ち受けているドイツに屈してしまった。
3バックで外をWBに任せつつ、中央ではMFが躍動する3-4-3と3-5-2のハーフのような布陣はとてもバランスが良かった。エリクセン、ヒュルマンド、ホイビュアを軸に組まれる中盤はイングランド戦のようにポジションを動かしながら相手の守備の基準点をずらすことができていたし、ドイツ戦でも直線的なカウンターから後半の頭には見せ場を作っており、ゆったりとした保持ベースでもカウンターベースでも戦うことができる好チームである。
少し物足りないところを挙げるとすれば決め手だろうか。大外のメーレは4年前の大会ではより決定的な働きをしていたように思うが、この大会では比較的大人しめ。前線の柱として期待されていたであろうホイルンドも結構引っ張らずに下げてしまう場面があり、シーズン終盤のコンディションを少し引きずっているように見えたのは気がかりだった。
代わりに入ってくる前線の選手も起爆剤になれず、追い込まれた時のもう一押しが足りなかった感があったデンマーク。変わった流れに押し流される格好となり、ベスト16で姿を消すこととなった。
Pick up player:クリスティアン・エリクセン
起きた時にはもうすべてが終わっていて、エリクセンへの祈りがTLにあふれていたのが3年前。デンマークはあの大会ほど主役にはなれなかったけども、エリクセンがEUROの物語を完結させることができたということには大きな意味があるように思える。