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「EURO 2024 チーム別まとめ」~セルビア代表編~

目次

代表メンバー

▽GK
12 ジョルジェ・ペトロビッチ(チェルシー)
23 バンヤ・ミリンコビッチ・サビッチ(トリノ)
プレドラグ・ライコビッチ(マジョルカ)

▽DF
2 ストラヒニャ・パブロビッチ(ザルツブルク)
3 ネマニャ・ストイッチ(バチュカ・トポラ)
ニコラ・ミレンコビッチ(フィオレンティーナ)
13 ミロシュ・ベリコビッチ(ブレーメン)
15 スルジャン・バビッチ(スパルタク・モスクワ)
24 ウロシュ・スパイッチ(レッドスター)
25 フィリップ・ムラデノビッチ(パナシナイコス)

▽MF
ネマニャ・マクシモビッチ(ヘタフェ)
ネマニャ・グデリ(セビージャ)
16 スルジャン・ミヤイロビッチ(レッドスター)
17 イバン・イリッチ(トリノ)
19 ラザール・サマルジッチ(ウディネーゼ)
20 セルゲイ・ミリンコビッチ・サビッチ(アルヒラル)
21 ミヤト・ガチノビッチ(AEKアテネ)
22 サシャ・ルキッチ(フルハム)
26 ベリコ・ビルマンチェビッチ(スパルタ・プラハ)

▽FW
ドゥシャン・ブラホビッチ(ユベントス)
ルカ・ヨビッチ(ミラン)
アレクサンダル・ミトロビッチ(アルヒラル)
10 ドゥシャン・タディッチ(フェネルバフチェ)
11 フィリップ・コスティッチ(ユベントス)
14 アンドリヤ・ジブコビッチ(PAOKテッサロニキ)
18 ペタル・ラトコフ(ザルツブルク)

GS 第1節 イングランド戦

ヤキモキする「いつもの」イングランド

 イングランドの初陣はセルビア。ミトロビッチ、ルキッチなどフラムにゆかりのある面々との対戦からスタートとなった。

 セルビアの陣形は5-4-1。シャドーの2枚がかなりナローに守っているのが特徴の1つでもある。イングランドのバックラインにプレスをかけることはしなかったため、イングランドが一方的にボールを持ちながら勝負を仕掛けることができていた。

 イングランドは列を降りるアクションからズレを作ろうとする。CHのライス、アレクサンダー=アーノルドという大きな展開を持っているCHがバックスに入って自由にボールを受けたり、あるいはトップ下のベリンガムが左サイドに降りるアクションでセルビアの中盤と駆け引きをする。

 ややDF-MF間が間延びするケースはあるものの、セルビアはジリジリラインを下げつつ中央を固めることにトライ。ライン間のフォーデンやベリンガムに対しては最低限ファウルで止める対応ができていたので悪くはないなという感じだろうか。

 目先を変える必要があったイングランドはより外からの攻め手で先制。ウォーカーからの背後のパスに大外から抜け出したサカがギャップを作り、ケインの背後に侵入したベリンガムへのクロスからゴール。途中で相手選手に引っ掛けることでよりクロスがピッタリ合うという幸運も手伝いイングランドが先制する。

 クロスがあったのは幸運の手伝いがあったが、クロスのきっかけとなったサカとコスティッチの1on1はサカが完勝であり、クロスが上がったこと自体は偶然ではない。むしろ、1on1をセルビアが受け入れてくれる分、イングランドが確実に勝利を収めつつ、相手のバックスを乱しながら勝負を仕掛けられるセクションだった。左の大外を取ったところからの攻撃はうまくいっていなそうなイングランドだったので、サカのマッチアップは命綱と言っても良かった。

 失点したセルビアは少しずつボールを持つ時間が出てくるように。ただ、トップに当てるだけでは起点を作るのは難しいのは立ち上がりの15分で分かったため、ショートパスからの繋ぎでキッカケを探る。

 CHが降りて相手の中盤を引き出そうとする試みはイングランドと同じ。ただし、イングランドの中盤にはライスがいるので、彼の手が届かないところを作るとなれば、アレクサンダー=アーノルドとベリンガムの両方をきっちり自陣に引き出す必要がある。

 イングランドの中盤との駆け引き自体は行っていたセルビアだったが、ライスの背後に起点を作って進むことを機能的に行うところまでは昇華することができず。1on1で期待できそうなWBのところも左のコスティッチが負傷するなど計算外が続く。終了間際に右に流れたルキッチのクロスまで得点の匂いがするチャンスは待たなければいけない前半となった。

 後半、セルビアはグデリに変えてイリッチを投入。ミリンコビッチ=サビッチをトップ下において、ヴラホビッチをSH仕事から解放。2トップ+トップ下で敵陣からプレスをかけていくように。イングランドは相変わらず撤退ベースの非保持だったので、セルビアが保持を多く行う状況。景色は前半の終盤に近いままだったと言っていいだろう。

 セルビアがプレスで敵陣に出ていく頻度が増えた分、イングランドはカウンターのチャンスはありそうな感じ。ただし、背負うケインやサカへのサポートが遅く、セルビアが前に出てきた分のスペースはフイにしていた感がある。前半に優位を取っていたサカのところはCBのパヴロヴィッチが対応するようになってから圧倒するのは難しくなっていた。

 かといって、自陣での守備が固いわけではなく、サイドのハーフスペース付近から裏を覗く形でセルビアから押し下げられる形が頻発。ピックフォードの仕事はほぼエバートンと変わらなかったし、それであればブランスウェイトを呼んだ方が良かったのではないかと思った。

 セルビアで少し気になったのは左右に自由に動き回るミトロビッチ。クロスのターゲットとして中央に立っていた方がいいのではないかと思ったが、ストイコビッチは自由に動き回る役割を残して、タディッチで選手の方を最適化する道を選んだ。これで左右のサイドの崩しはさらに強化されたように思う。

 セルビアが残念だったのは早めの選手交代にも関わらず、スコアを動かせなかったこと。70分が過ぎればさすがにプレスの足が止まる。イングランドが明確にカウンターの道筋を描いたわけではないけども、中盤を入れ替えたことで出足で上回り少なくともファウルを取ることはできていた。

 多くの苦しい時間を耐え凌ぎ、なんとか勝ち点3をもぎ取ったイングランド。見る側が内容に疑問を感じながらも淡々と勝利を挙げていくいつものグループステージのイングランドの姿がそこにはあった。

ひとこと

 豪華な塹壕戦がサウスゲートの合言葉なのは間違いなさそうだけども、今大会はバックスの人選がそれにあっていなさそうなのは気になるところ。マグワイアの離脱は計算外だったのかもしれないが、それでももう少しやりようはあったように思えたが。

試合結果

2024.6.16
EURO 2024
グループC 第1節
セルビア 0-1 イングランド
アレナ・アウフシャルケ
【得点者】
ENG:13′ ベリンガム
主審:ダニエレ・オルサト

GS 第2節 スロベニア戦

柔と剛、それぞれの2トップ

 ボールを持つのはスロベニア。セルビアのプレス隊の脇でフリーでボールを持つと、ここからボールを進めていく。

 サイドから押し下げるケースもあったが、スロベニアの前進のメインは縦パスを受ける2トップ。シェシュコ、スポラルの2トップは共に動きながらボールを収めることができる機動力のあるコンビ。サイドから斜めのパスをこの2トップにボールを当てて、逆サイドに展開する。もしくは、ポストでコースを変えて攻撃の目先を変えてボックス内に侵入。狭い中央のエリアでもこじ開けることができていたため、細かいパスのベクトルの変化はセルビアの守備陣の負荷になっていたように思う。

 対するセルビアはボールを前に進めることに苦戦。立ち上がりこそ横断しながらボールを動かすことができたが、徐々に手詰まりに。WBを使って前に進みたいところだが、スロベニアの前から止めるアクションによりハーフウェイラインを超えて前に進むことができない。

 ならばボール奪取を!と行きたいところだが、セルビアはボールの奪いどころがない。CFを警戒して中央を閉めると、CBのキャリーからサイドにつけられるなど、常にスロベニアの方がセルビアの嫌なことにアプローチできていた印象である。

 前半の終盤にようやくセルビアは前進できるように。スロベニアの2トップとは異なり、ゴリゴリと体を当てて踏ん張るタイプの2トップで何とかボールを収めながらボックス内に侵入する。ボールを収めて反転したミトロビッチは決定機を迎えたが、これは最後の砦のオブラクに阻まれる。それでも、30分以降は少しずつ反撃をすることができていたセルビアだった。

 後半もミトロビッチのシュートをオブラクが止めるという前半のリプレイのようなシーンでスタート。押し込むセルビアに対して、スロベニアは軽さのあるカウンターから反撃に挑む。2トップの基準点としての機能性に加えて、後半に目立ったのは右サイドのキャリー。カルニッチニック、ストヤノビッチのドリブルからセルビアのMFを超えると、一気に押し下げていく。

 ゴールの起点となったのはカルニッチニックのドリブル。セルビアの守備網の薄いところからボールを前に進めると、逆サイドまでの横断に成功。ここからクロスを上げるとカルニッチニックが自らフィニッシャーとなり先制ゴールを決める。

 追いかけたいセルビアは以降は押し込むフェーズに。スロベニアは自陣での守備をきっちり受け入れる形でボックス内にブロックを組む。

 なかなかこじ開けられないセルビアだったが、ラストプレーで奮闘が身を結ぶことに。CKに競り勝って押し込んだヨビッチが勝ち点1の立役者になった。スロベニアの勝利を奪い取り、1ポイントを手にしたセルビア。最終節に突破の望みをつなぐことに成功した。

ひとこと

 セルビアとスロベニアの2トップのキャラクターの違いを生かした前進は面白かった。

試合結果

2024.6.20
EURO 2024
グループC 第2節
スロベニア 1-1 セルビア
フースバル・アレナ・ミュンヘン
【得点者】
SVN:69′ カルニッチニック
SER:90+5′ ヨヴィッチ
主審:イシュトヴァン・コヴァーチ

GS 第3節 デンマーク戦

唯一の敗戦が尾を引く結果に

 引き分けが多くみられるグループC。しかしながら、グループAとグループBの3位がかなり勝ち点水準としては低め。3位を確保すれば十分に突破の可能性がある両チームの一戦である。

 共にフォーメーションとしては3-4-2-1。ミラー型で高い位置から捕まえに行きやすい形ではあるが、スタンスは対照的。積極的にプレスに出ていくデンマークはセルビアのバックスにロングキックを誘い込み、蹴らせて回収というスタンス。ミトロビッチ目がけてのロングボールをきっちりと回収していく。

 一方のデンマークの保持は比較的バックスに余裕を持たせてもらう形。ボールを持つことができた3バックから幅を使いながらズレを気にしていくアクションと、中央のホイルンドに預けながらの前進を使い分けていく。16分のバーの決定機はファーサイドに待ち構える形。前半の最も大きなデンマークのチャンスの1つだった。

 主導権を握ったデンマーク。しかしながら、徐々にハイプレスの威力は減退。少しずつセルビアに保持を譲るシーンが出てくると試合の流れは変わるように。ボール保持の機会が増えたセルビアは左サイドから進撃。縦に抉る動きと横断を使い分けながら少しずつデンマークの陣内に迫っていく。

 セルビアが保持をフラットに戻したところで前半は終了。ハーフタイムはスコアレスで迎えることとなった。

 後半頭は前半の立ち上がりに逆戻りしたかのようなスタート。保持から押し込んでいくデンマークに対して、セルビアは前線のパワーを前面に押し出す形に逆戻りした感があった。

 その前線のパワーアップ役を託されたヨビッチはネットを揺らすシーンがあるが、これはギリギリでデンマークがオフサイドをゲット。デンマークのバックラインの統率が光るシーンであった。

 しかしながら、終盤は優勢だったのはセルビア。互いに前線を入れ替えながらの勝負に出たが、よりフレッシュで役割を全うできたのはセルビアの方だろう。デンマークのFW-MF間のスペースが空いてきたこともあり、徐々に前進は安定するようになったことも大きかった。

 敵陣ではファーサイドのクロスを連打することによりデンマークを追い込んでいくセルビア。デンマークは引き分けをキープできれば突破ということで必死に耐える展開が続くことになる。

 パワー系の前線を並べたにも関わらずこじ開けることができなかったセルビア。このグループ唯一の敗戦を喫したことが尾を引き、グループステージで姿を消すこととなった。

ひとこと

 悪くはなかったデンマークだけど、このグループはもう一押し!が問われる展開がなかったので、何とかしなきゃいけない状況での火力の増し方が見えてこないのは不安要素として残るなと思った。

試合結果

2024.6.25
EURO 2024
グループC 第3節
デンマーク 0-0 セルビア
フースバル・アレナ・ミュンヘン
主審:フランソワ・ルドゥグジェ

総括

押し上げる手段の手薄さで重量級FWを生かせず

 混戦模様とされたグループCで4位での敗退をしてしまったセルビア。グループCは総じてジリジリしたチームが揃ってしまった感があり、どのチームもかなり決め手に欠ける状態が続いていたが、その中でも最も得点の数が少なかったのがセルビアであった。

 グループステージでの唯一の得点はスロベニア戦で決めた終了間際ギリギリのゴール。前に人数を増やしまくってもぎ取ったセットプレーでしか点を取れていない。よって、オープンプレーでは270分間ノーゴール。これではグループステージの突破は難しいだろう。

 やはり、前進の手段が見つからないのが苦しいところ。プレッシャーがなければそれなりに横断を駆使してボールを前に進められるのだが、相手が前向きにプレッシャーをかけてくると勢いは一気にトーンダウン。ミトロヴィッチ、ヴラホヴィッチといった前線の選手に思い切りよく入れるだけではなかなか得点の扉が開かないのは当然だろう。

 ボール奪取でも重たい前線を起用している影響もあり、前から出ていくことができずに簡単にサイドから運ばれてしまう場面もしばしば。自分たちは前進にコストがかかるのに、相手には簡単にボールを前に進めることを許してしまうのだから収支が合わずに苦しむのは当然だろう。

 総じて命綱といえるCFへのロングボールが効かなかったことが大きなダメージになってしまった感がある。CFへの長いボールを使って前進するチームは珍しいことではないが、どっしりと構えるタイプは比較的少なく、その点でトレンドと乖離していたとも言える。今の時代はもう少し最終ラインと駆け引きするようなFWが求められているのかもしれない。

 押し込むことができればボックス内での無理は効くし、前から奪い返す守備の圧力は十分に高い。セルビアの問題はそのフェーズまでチームを押し上げる手段がなかったことだろう。プレスでもビルドアップでもいいけども、全体を押し上げる機会不足が強力な前線をもってしてもわずかに1得点という結果に終わった原因かもしれない。

Pick up player:アレクサンダー・ミトロヴィッチ
 アンデルセンとか顔なじみが相手だとケンカが白熱するのが面白い。意外と人見知りなのかな。

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