ボトムハーフ編。まぁ、ほら始まったばかりだからさ。
前編はこちら。
【11位】アーセナル
4勝4敗/勝ち点12/得点9 失点10 <4節>4位⇒<8節>11位↘
■改善しない『潔癖症』で急ブレーキ
人数をかけた守備と低いラインでの撤退でたいていの相手でもロースコアに持ち込む。それが今季のアーセナルの流儀。その手法は一定の成果を収めてはいるが、この1か月は手法そのものの是非も含めて多くの問題がアルテタを襲った形である。
シティ戦は往年のハイプレスがない相手に対してもスピーディに前進が出来ずに沈黙。続くレスター戦では決定機まではこぎつけるものの、後半に登場したヴァーディにひっくり返されてエミレーツでの久しぶりの敗北を喫した。ジリッとしたユナイテッド戦こそトーマス&エルネニーの中盤コンビを主体に勝利したが、続くアストンビラには大敗。この試合ではベースとなる「人数をかけた守備」を壊されてしまい、ローラインの悪いところばかりが出てしまった試合になった。
不調の元は前線の不振だろう。昨季はストライカーの好調さで少ないチャンスを仕留めてきたが、彼らが限られたチャンスを決めきれないもしくは限られたチャンスまでたどり着けないとなると厳しくなる。
もっとも、突き詰めれば個人のパフォーマンスよりも根深いところにそもそもの原因がある可能性も。低い位置まで戻る守備の負荷、そこからの陣地回復のための長い距離のラン。オーバメヤンのサイド起用の是非以前にゴールに近いところでプレーできていない現状を考えると、守備の仕事の過負荷さが不振を呼んでいる可能性もある。
チャンスは綺麗な形のみ。強引に引き寄せる力のない「潔癖症」のアーセナルにとっては前線のコンディション回復が急務。攻守のバランスの見直しはあるだろうか。
今月気になった人:トーマス・パーティ
さすがの違いを披露。強烈なフィジカルを持つユナイテッドの中盤に当たり負けを全くしないパフォーマンスは圧巻。苦しいチームの中で光となっている。
【12位】ウェストハム
3勝2分3敗/勝ち点11/得点14 失点10 <4節>10位⇒<8節>12位↘
■凌いだ連戦、反撃開始なるか
1勝2分1敗で確かに順位を下げたとはいえ、勝てなかった相手がトッテナム、マンチェスター・シティ、リバプールとくれば仕方ないところもある。チームの状態が低迷しているというよりはむしろ規模の大きいチーム相手に奮闘をし続けた1か月だったといえる。
トッテナム戦は3点のビハインドをラストスパートで帳消し、シティ戦はアントニオがバスケットボールのセンタープレーのようなゴールでディアスを上回り勝ち点1をゲットした。
順調だった前半2試合に比べれば後半2試合にやや懸念があったのは事実だろう。ローラインからのライン回復や、PA内のターゲットとして君臨していたアントニオの不在の影響は大きく、代役のアレは鳴かず飛ばず。相手の脅威になっていたクロスの威力はアントニオの負傷により大きく落ちてしまった。
フルハム戦ではボールの試合に四苦八苦。ルックマンの最終盤の大チョンボで助けられたが、ボールを持った時の全体の押し上げや人数をかけた攻撃には課題を残している。
とはいえ、この強豪との序盤の連戦から今季解任第一号の有力候補とされていたモイーズはひとまずなんとかしのいだといえる。主導権握りがおぼつかなかったフルハム戦は一抹の不安だが。
今月気になった人:トマシュ・ソーチェク
90分汗をかいても最終盤までPA内に顔を出せる運動量は〇。上下動で攻撃の厚みを担保している。
【13位】ニューカッスル
3勝2分3敗/勝ち点11/得点10 失点13 <4節>9位⇒<8節>13位↘
■キャラ変でぶち当たった壁
マンチェスター・ユナイテッド戦を見て「え?どうしたの?」と思ってしまった。トッテナム戦ではアレだけ籠城した5-4-1を披露したため、てっきりそれを踏襲するものかと思っていた。しかしこの日の彼らは思ったよりもつなぐし、思ったよりもプレスに行く。
次節のウルブス戦以降もこの流れは継続。ウルブス戦はヘンドリック、アルミロン、フレイザーという全員SHやんけというぶったまげ3CHという人選も目を引いた。あの籠城5-4-1の魂はどこへ行ってしまったのだろうか。
肝心の完成度は悪くはないがめっちゃ良くもない!というのが正直なところ。中盤に攻撃的な選手を使えばパスは回せるが、特に立ち位置に工夫がみられるわけではない。そしてボールを取り返す術もない。インサイドハーフは走って死んでという役割を頑張っているが、果たしてこの役割をやるのがアルミロンで正しいのかというのは難しいところ。
サウサンプトン戦はボール保持型としてのシビアな現実を強く突き付けられた試合。低い位置からのパスミスを起点に2失点。ボール運びはサン=マクシマンが降りてきて運ぶ以外の効果的な選択肢はなかった。
再開後初戦はチェルシーとの一戦。現実を突き付けられた後の2週間の準備でどう戦うかも含めて楽しみな試合になりそうだ。
今月気になった人:アラン・サン=マクシマン
開幕からの絶好調を継続。フィニッシュが決まり始めてしまったらもう手が付けられない存在になりそう。細かいケガが多いのと高い依存度は心配だけど。てかアランってファーストネームなのね。
【14位】マンチェスター・ユナイテッド
3勝1分3敗/勝ち点10/得点12 失点14 <4節>16位⇒<8節>14位↗
■最後に一安心もぐらつく土台
プレミアでの不振をよそにCLでの躍進を続ける。そんな一か月だった。なぜかボール保持にこだわりだしたニューカッスルには終盤に立て続けに得点を決め、CLではライプツィヒ戦で大勝。大量得点を決めた2試合だが、共に点を取るまでには時間がかかった。見た目ほどの差をつけた内容ではなかったように思う。
ややおぼつかないボール保持だったチェルシーにはカウンターが刺さらず、アーセナル相手には中盤で根負け。エバートンのブロックをようやく攻略できたことでリーグ戦は最後に一安心の結果を出すことができた。
一方でそのエバートン戦でも最終ラインが釣りだされたり、危うい対応になる場面が散見される。PA内のハイクロスには強さを見せられるが、広い範囲をカバーするとなると途端にエラーの割合が増えてしまうのがマンチェスター・ユナイテッドのバックスの現状。
内容も含めて向上するには前線からのハイプレス復活が必須。ただこの日程では難しい局面というのも理解できる。プレミアで帳尻を合わせた分、CLでもイスタンブール・バシャクシェヒルに勝利を献上し、逆の帳尻も合わせてしまったユナイテッド。昨季うまくいったスタイルへの回帰するにはまだまだ厳しい日程が立ちはだかり続けることになりそうだ。
今月気になった人: ポール・ポグバ
形を作れれば輝けるし、その気になれば守備もできるのはフランス代表で証明済み。スターに守備をさせるといえばかつてはモウリーニョが凄腕だったのだけど、今のポグバはどこか噛み合わぬ。ぐぬぬ。
【15位】リーズ
3勝1分4敗/勝ち点10/得点14 失点17 <4節>8位⇒<8節>15位↘
■相手を引き込めない時の振舞いは
勝利したのは4試合中アストンビラ戦のみ。徹底したマンマークでグリーリッシュを消すことに成功したこの試合では完勝したものの、それ以外の試合では結果を残すことができなかった。
レスターには戦いの幅の広さを見せつけられて完敗。同じスコアでもあれよあれよという間に気づいたら4失点を喫していたクリスタル・パレス戦とは異なり、完全に叩きのめされた試合だった。
ただ、4試合の中でもっとも興味深かったのはウォルバーハンプトン戦。どんな相手でも自分のフィールドに引き込むのがリーズの特徴だが、撤退型の5-4-1を前にボールを持たされるとどうしてもテンポが上がってこないということがよくわかる試合だった。
次の相手も今季ここまで撤退型の5-4-1を使ってきているアーセナル。共にリーグでの結果をだせてない同士の一戦だが、彼らを自分たちのフィールドに引き込んで試合を進めることができるだろうか。
今月気になった人:エズジャン・アリオスキ
10番が左サイドバックというのはなかなかに珍しい光景。左足のきれいなキックが印象的。なお右足は・・・。
【16位】ブライトン
1勝3分4敗/勝ち点6/得点18 失点9 <4節>15位⇒<8節>16位↘
■ドロー沼で指一本踏みとどまり中
15位と16位の勝ち点差は4。順位表で見た時に一番勝ち点の差が開いているのはこの15位と16位の間である。開幕戦には勝利したものの、以降は未勝利。開幕から未勝利が続いていた「未勝利4」の4チームがすぐ後ろに迫ってしまっている。何とか積んだ引き分けで指一本降格圏には吸収されずに済んでいるという現状だ。
内容はそこまで悪くはない。トッテナム相手にもボール保持さえできればチャンスを作れることを証明した。特にWBの攻撃参加のクオリティが高く、RWBのランプティはチームの中でも輝きを放っている。斜め方向に入り込んでくる動きは守備陣にはついていけないことも多い。
一方でフィニッシャーがチャンスを決めきれないシーンも数多くみられる。新加入のウェルベックも含めて、崩しへの貢献度は高いのだがフィニッシュの精度が悪い。
さらにM23ダービーとなるクリスタル・パレス戦ではダンクが軽率なタックルで一発退場。すでに今季はビスマも一発退場を経験しており、スカッドの要の選手がこうした形で試合に穴をあけるのも安定感を維持できない要因の一つだ。
今月気になった人:ダニ―・ウェルベック
フィニッシュの怪しさは健在だが、裏抜けなどブライトンの流動性が求められる2トップの役割にはあっている。あとはケガがなければ。
【17位】フルハム
1勝1分6敗/勝ち点4/得点7 失点15 <4節>20位⇒<8節>17位↗
■当たり前を当たり前にこなし一足先に『卒業』
やっと勝てたよぉぉぉぉぉ!!!!!「未勝利4」同士の試合が2つあったこの1か月。2つ目のウェスト・ブロム戦で今季初勝利をゲットし、未勝利4を一足早く卒業した。
この試合での良かった点はエリア内のミトロビッチへの長いボールを積極的に使ったこと。エリア内のミトロビッチは怖いというのは当たり前なのだが、サイドに流れたりなどが頻発することで結局起点として活躍することができなかった。いわば当たり前を当たり前にやった結果である。
もう1つこの1か月の進歩としてはチャンスを作る起点を定められたこと。左シャドーのルックマンがその中核。大外を同サイドWBのロビンソンに任せて内側に絞ることでスペースを享受し、そこからドリブルで相手を剥がしていくのが攻めのパターンとして定着している。
リードやケアニーを介するボール回しは軽快になってきたが、相手を引き付けるというよりはポンポンリズムよく回していくイメージが強い。相手を見ながら使いたいスペースを空けるような意識をもう少し持ちたいところ。守備も開幕当初に比べれば、怪しい場面はやや少なくなったように見える。それでもきっとこのチームはアレオラが年間MVPを取る予感しかしないぜ。
今月気になった人:アデモラ・ルックマン
仕上げを一手に引き受けたチャンスメーカー。ウェストハム戦はなんかあのドンマイ。
【18位】ウェスト・ブロム
3分5敗/勝ち点3/得点6 失点17 <4節>17位⇒<8節>18位↘
■善戦もなくはないのだが・・・
ここからは勝ちなしゾーンに突入だ。チェルシー戦のように開幕当初は引きこもることが多かったが、ここ1か月はボールを持って押し込む形を増やしていく試合も。対戦相手がトッテナム以外はボトム5同士だったということも関係あったかもしれないけど、そもそも2部時代はボール保持にもう少し傾倒していたという話も聞く。本当かどうかわからないけど。もしかすると成績が出ないことにより、本来の形に戻していこう!ということかもしれない。確かにバックスもボールを持つことにはそこまでアレルギーがある感じはしなかった。
ディアンガナ、ペレイラなどドリブルではアクセントをつけられる存在はいる。PA内での起点ができればほしいところ。グラントは全くゴールを決められないわけではないけども、フルハム戦ではPA内にターゲットを持つことができるミトロビッチの有無は差になっていたように思う。
それでもトッテナム相手にあと一歩で勝ち点を取れそうだったりなど内容的に見るべき部分はあるのは確か。とにかく早く1勝を挙げたいところだが。
今月気になった人:サム・ジョンストン
ミスも見られることもあるが、セービングの雨あられを食い止めつつ毎試合存在感を発揮。彼で勝ち点を取っているしばしば。
【19位】バーンリー
2分5敗/勝ち点2/得点3 失点12 <4節>18位⇒<8節>19位↘
■沈黙の360分、停滞打破の予感が見えず
4試合で1点しかとっていないアーセナルだが、それよりも点を取っていないチームも存在するのが今のプレミアリーグ。バーンリーはこの1か月間全くもって無得点のまま4試合を経過してしまった。
なぜか点が入らない!といいたくなる試合が他のチームにはあるのだが、正直バーンリーにはなぜ!?に至るまでのシーンがほぼない。なので、下位のチームの中でも最も今後の見通しが厳しいチームだと個人的には思っている。
攻撃の起点はほぼ2トップのバーンズとウッドへのロングボールが収まるかどうかの1点に集約。これが機能しない試合はほぼノーチャンス。しかも、特段この2トップが空中戦で無双できるわけではないというのが厳しいし、セカンドボールを拾える流れもない。ブライトン戦ではパスが増える場面もあったが、相手の保持の時間を取り上げる以上の意味はなかった。
守備での粘りのおかげで引き分けで勝ち点を拾える試合は増えてきたが、攻撃における改善が見られないのは非常に苦しい。何か光が欲しいところなのだが。
今月気になった人:ニック・ポープ
先月、ウェストブロムの項でここの欄が一年間ペレイラになるかも!といったが、ポープの方が有力候補かもしれない。
【20位】シェフィールド・ユナイテッド
1分7敗/勝ち点1/得点4 失点14 <4節>19位⇒<8節>20位↘
■攻守のバランス調整はあるか
リバプール、シティ、チェルシーと強豪との連戦が続く厳しい1か月だった。とはいえ、どの試合でも見どころはあった。チェルシーとリバプール相手には先制点を取ったし、先制点を取ったシティもリードを守るのに苦心していた。勝ち点はいずれも取れなかったが「取れるかも?」とは思わせてくれる内容ではあった。
ただし、得点力不足解消として期待されたブリュースターは得点はおろか、求められた役割とどこかぼやけており即時活躍が難しいことはデビュー戦を見ただけで分かった。試合終盤のやけくそ4バック移行による前線の人員増加は効果的。マクゴールドリック、マクバーニー、シャープなど既存戦力の奮起で終盤は厚みのある攻撃ができる時間帯を作れている。
上位対決が続いた今月は仕方ないかもしれないが、ここからはもう少し攻撃にバランスを傾けた人員構成を試してみても面白いのかもしれない。
今月気になった人:ライアン・ブリュースター
プレミアでの出場がないのにクラブレコードでの移籍金というめっちゃ大変な重石を背負わされた人。時間をかけて見守ってあげてほしい。
おわり!!