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「広島のプランはコピーできるのか?」~2024.10.5 J1 第33節 FC町田ゼルビア×川崎フロンターレ プレビュー

目次

Fixture

明治安田 J1リーグ 第33節
2024.10.5
FC町田ゼルビア(3位/17勝8分7敗/勝ち点59/得点46/失点24)
×
川崎フロンターレ(11位/10勝10分11敗/勝ち点40/得点50/失点45)
@町田GIONスタジアム

戦績

対戦成績

町田の1勝。

Head-to-head

Head-to-head
  • 過去の対戦は一度だけ。今季の前半戦で町田が勝利。

スカッド情報

FC町田ゼルビア
  • 中山雄太は右膝内側側副靭帯損傷による離脱。
  • 荒木駿太、チャン・ミンギュ、安井拓也は骨折により離脱中。
川崎フロンターレ
  • ファン・ウェルメスケルケン・際は出場停止から復帰。
  • 大島僚太は肉離れにより離脱。自国での治療を終えて来日したジェジエウとともに欠場の見込み。
  • 山口瑠伊はレンタル契約の出場条項によりメンバー入りができない。

予想スタメン

Match facts

FC町田ゼルビア
  • 直近のリーグ戦では5試合で1勝(D3,L1)。
    • 平河悠が移籍して以降の10試合で3勝のみ(D4,L3)
  • 勝てば、名古屋と東京Vに続いて3チーム目のシーズンダブル。
    • 達成した2チームは180分間でクリーンシートを達成。川崎にも1戦目はクリーンシートを達成。
  • ホームでの公式戦は4戦無敗でそのうち3試合がクリーンシート。
  • リードを奪った状況から落とした勝ち点は18戦でわずかに2でありリーグ最少。17試合で逃げ切りに成功している。
    • リードを奪った回数自体は川崎(22)の方が多い。落とした勝ち点は24でリーグ最多。
  • 失点数は24で最少。リーグにおいて後半追加タイムでの失点がない唯一のチーム。
  • クロスからの失点は2でリーグで最も少ない。
川崎フロンターレ
  • 勝てば今季2回目のリーグ戦連勝。
  • 32試合消化時点で勝ち点は40。
    • 昨季はフルシーズンで50であり、34試合消化時点での勝ち点では下回ることが確定。
  • アウェイでの勝ち点はここまで15試合で14であり、降格圏の3チームを除けば一番少ない。
  • しかし、関東のアウェイに限れば5試合で3勝1敗1分。1試合平均勝ち点は2.0。
  • 直近12試合のリーグ戦では山田新が得点を決めた5試合で全勝しており、得点を決めていない7試合では勝てていない(D4,L3)
  • マルシーニョがここまでリーグ戦で得点を決めた6試合はいずれも勝利がない。

予習

第29節 浦和戦

第30節 福岡戦

第32節 広島戦

展望

タオルよりも大事な話

 リーグ戦では勝ち点40に到達。残留に対する見通しもそこそこ見えてきた勝ち点を積み上げた川崎。今節対戦するのは町田。前節、広島との天王山に敗れてしまい3位に転落。優勝争いに残るためにはなんとか踏ん張って連敗を避けることが最低条件となる。

 パブリックイメージとスタイルには乖離があるというのはサッカーあるあるであるが、町田の直近のスタイルは多くの人が想像するロングボールを主体としたスタイルと相違ないように思える。前半戦の等々力での対戦では家長周辺のスペースを攻略した仙頭によって、藤尾の決勝点がもたらされる形になっていたが、そうした相手を動かしながらボールをつないでいくという要素は少しずつ薄まっており、パワーとスピードをさらに前面に押し出すスタンスになっている。

 プレッシングはフォーメーションがハマらない相手に対しても、スイッチが入れば高い位置から枚数を合わせてプレスをすることを厭わない。ただ、CBが前に出て行って潰しに行くケースはあまり多くはない。後方の同数を受け入れるにはアジリティに不安があるという判断なのだろう。よって、前が出ていくと決めた時のプレスの時の陣形は間延びすることが多い。

 川崎もプレスの時の陣形が間延びすることが多いのでよくわかると思うが、そういう状態でものをいうのはシンプルに寄せの速さだったりする。新潟戦のように外的要因でパス回しがうまくいかない相手などに、川崎は強引さが先行するプレスで主導権を握った。プレスに行った際に後方は間延びしているので、蹴らせて回収というパターンも成功するかは不透明。高い位置で刈り取りきって、そこから攻撃につなげるというのが理想形である。

 そういう意味では広島に町田が敗れたのはある意味必然。彼らよりもパワーがあり、スピードでも十分に渡り合える。さらには前から相手を捕まえに行って、蹴らせてセカンドボールを回収するというプランをチーム全体で遂行することに迷いがなかった。天王山では町田はここで負けたら苦しいなというところで広島に上回られてしまったことになる。タオルなんかよりも何倍も重要な話だろう。あまりそういう話をしている人はいないけど。

 ボールを持った時はオ・セフン、望月を活かしたロングボールが中心。ロングボールは前進のためというよりはなるべくフィニッシュに近いところで使いたいという感じだろう。長いボールに対して、チーム全体で押し上げるのは基本的には得意。センターサークルだけでなく、敵陣のボックス内で互角以上の競り合いを期待できるセフンと望月のヘッダーがあれば、ごちゃっとした展開からでもゴールを生み出すことが出来る。

 サイドアタッカーはスピードスターぞろいではあるが、自陣からの保持で相手を動かしながらフリーマンを作るという保持にトライするケースは少ない。どちらかといえばトランジッションや相手のミスから空いたスペースを食わせることで持ち味を出している印象だ。

 上のスタッツで紹介したが、リードを奪った時の町田はめっぽう強い。自陣を固めた時、すなわちDFが狭い範囲を守ることで事足りるケースにおいては守備が相当堅い。直近で戦ったチームの中では名古屋に近いイメージかもしれない。押し込まれたとて、自陣からでもロングカウンターを放って反撃することが出来る選手は交代選手も含めて揃っている。ボックス内での高い守備力とスピードのあるアタッカーに走らせることが出来るという点では低い位置にブロックを組んでるのロングカウンターというのは町田にとって持ち味を発揮しやすい状況にあるのだろう。

広島のプランはコピーできるか?

 まずはインパクトの強かった広島の完勝が町田に対しての一般的な攻略法になっているかを考えたい。まず、重要だったのは広島がセフンや望月に対するロングボールを無効化したことである。ロングボールを仮に収められたとしてもセカンドボールを回収することで広島は自らのペースを崩すことをしなかった。

 そのためには、前からのプレスを効率的に行う必要がある。ホルダーに対して時間を奪うことで、苦し紛れに蹴るしかない状況を作り出し、ロングボールの精度を下げて競り合いに優勢な状況を生み出したい。

 さらにはセカンドボールを回収するためにはボールの失うことも重要だ。上で触れたように町田のCBは守備の範囲が狭く、ボックス内での守備にフォーカスすることが多い。そのため、例えばポケット攻撃に対してはCHが流れて対応することが多い。そのために、広島はバックラインで町田のSHを引き付けて、戻りを遅らせる工夫をしていた。

 ここまで押し下げれば、ボールを奪われてロングキックを蹴られたとしても町田のCHがセカンドボール争いに参加することは難しくなる。町田相手にボールを取り返すためにはボールをどのように失うかが重要になる。

 広島のゴールの決め手となったのはクロスである。多くの枚数を揃えて、それぞれ異なる位置を狙った結果、ニアに飛び込んだストライカーが中野のクロスに合わせる形でゴールを決めた。

 と、ざっくりと町田相手に広島がやったことを並べてみた。で、問題はこれが川崎でも応用が可能な一般的な町田の攻略法になるかということである。個人的な考えでは答えはNoだと思う。

 要素を並び立てれば割とできそうな気もするが、広島はとにかくこの要素をスピーディーに繰り返し並び立てていた。おそらくは言うは易く行うは難しの形になっており、サイクルの速さで町田の意図に対して先回りすることで、常に後手に回らせていた。平時でも難しいのに、ACL明けの川崎であればさらに難易度は上がるだろう。

 もう1つ懸念として提示したいのは広島の得点の形である。Match factsで述べた通り、町田のクロスからの失点は非常に少ない。広島と同じようにクロスからストライカーがマークを外して得点を決めることが出来るケースは他のチームではあまり見られないということになる。広島のストライカーはそれだけボックス内での駆け引きがうまい。パシエンシアはどんな体勢でも枠に飛ばせるのでちょっと例外だけども。

 押し込んで町田のCHをサイドに釣りだしたとしても、ボックス内で揺さぶれる公算が見えないと得点は遠い。川崎のストライカーはクロス時のポジションで相手と駆け引きしながらスペースを狙う動きはあまり得意ではない。一番得意な選手はもうヨーロッパに帰ってしまったし、山田やエリソンはどちらかといえば相手にぶち当たりながらも上回る形でクロスのターゲットになりたがる。町田はそういう相手に対する空中戦はとても強い。

 よって、サイドに素早くつけて押し下げてからクロスを狙う形は、町田のペースを乱すことはできても得点の近道にはならないように思う。ペースを乱すこと自体も重要だけども。

 川崎がより使えそうなのは、自陣でボールを動かしながら町田の陣形を縦に間延びさせることだろう。4バックであると、町田は噛み合わせやすいとは思うが、GKを活用するもしくはCHが列を落とすことで枚数を調整すれば、町田も出てくる可能性が強くなる。イメージとしてはサイドの深い位置の守備に忙殺されていた町田のSHやCHのリソースを川崎陣内に向けさせる感じである。

 こうした状況を作ったうえで縦パスを通しやすい状況を作り、町田のCHの背後を取ることが出来れば理想。川崎のCHはよく展開を落ち着けるためだけにサリーをした結果、1つ前の列でのパスコースがなくなることがあるが、あくまで重要なのは町田のCHの背後を取るための構造。以下のように、引っ張り出して出てきたスペースを使うことで一気にひっくり返したい。

 正直、今季はここまでこういう保持のプランがハマったケースは少ない。ACLでは自陣からショートパスで前進のルートを探る過程で失点したばっかりだ。けども、町田を上回るとしたら広島の踏襲で完全な強度勝負に持ち込むよりはマシかなという感じはする。正面から上回るというよりはエネルギーを利用して空転させるイメージだ。

 気を付けたいのは縦に蹴る手段をカジュアルに選択しないこと。もちろん自陣でこだわってロストするよりはマシだが、不確実なロングボールを蹴って間延びした状態で回収をされて、町田の勢いを増幅させてしまうパターンもある。予習で見た浦和と福岡はこのサイクルで完全に町田に主導権を握られていた。前線へのロングボールは手前でも奥でもオフザボールとセットで。必ず収めるのは難しいので、少なくとも一発で跳ね返させない工夫は欲しい。

 押し込まれる陣形になればセフンや望月の空中戦がゴールに直結することになる。この時間帯はなるべく減らしたい。そのためにはむやみに蹴らないこと。勝算のあるロングボールのルートを開拓したい。ACLでゲームチェンジャーになった佐々木の舵取りがキーになるだろう。

 

【参考】
transfermarkt(
https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(
https://soccer-db.net/)
Football LAB(
http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(
https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(
https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(
https://www.nikkansports.com/soccer/)

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