このプレビューは対戦カードの過去の因縁やジンクスを掘り起こして、試合をより一層楽しむための物です。
Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第22節
2020.10.14
サンフレッチェ広島(11位/9勝4分7敗/勝ち点42/得点33 失点24)
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川崎フロンターレ(1位/19勝2分1敗/勝ち点59/得点63 失点19)
@エディオンスタジアム広島
戦績
近年の対戦成績
直近5年間の対戦で広島の4勝、川崎の7勝。
広島ホームでの成績
直近10試合で広島の5勝、川崎の4勝、引き分けが1つ。
Head-to-head
<Head-to-head①>
・直近9試合の広島戦で川崎は7勝を挙げている。
・ここ11試合の同カードはすべて勝敗がついており引き分けがない。
川崎は直近の広島戦にて好調。9試合で7勝しておりホーム、アウェイに関わらず好成績を収めている。またこのカードはここ11試合では引き分けがない。最後の引き分けは6年前。大久保嘉人と佐藤寿人の両レジェンドの得点で1-1だった試合が最後となる。
<Head-to-head②>
・2001年以降に広島が川崎に勝利している試合はすべて順位が8位より上で迎えた試合。
・しかし、直近2試合のエディオンスタジアムでの試合は対戦時の順位が低いチームが勝利している。
前回対戦時にも紹介したのだが、広島が近年川崎に勝利しているのは順位が8位より上にいるときのみである。今回も11位ということで、近年の勝ちパターンからは外れる。
しかし、直近の2試合の広島ホームでの対戦は共に順位が低いチームが勝利している。このパターンで言えば勝利するのは広島だが。
<Head-to-head③>
・エディオンスタジアムで広島が川崎に勝利した試合はすべて複数得点によるもの。
・ミッドウィークの試合は過去8回。そのうちエディオンスタジアムで開催された5回で川崎は勝利したことがない。
エディオンスタジアムでの広島の川崎戦の勝利は全て複数得点。1-0での勝利はこれまではない。川崎の攻撃力を考えてもこの試合でも複数得点が求められるはずだ。
ただ、ミッドウィークのエディオンスタジアムは川崎にとっては鬼門。過去5回の遠征で一度も勝利をしたことがない。
スカッド情報
【サンフレッチェ広島】
・永井龍、ドウグラス・ヴィエイラは前節で負傷交代。
【川崎フロンターレ】
・長谷川竜也は負傷後メンバー入りを果たしていない。
予想スタメン
Match facts
【サンフレッチェ広島】
<広島のMatch facts①>
・勝てば今季初のリーグ戦3連勝
・現在のテーブルで7位以上のチームに勝利なし(D2,L5)。
勝てば今季初の3連勝。達成すれば2019年4月以来のリーグ戦3連勝ということになる。ちなみに勝利すれば今季初のホームでの連勝も達成することになる。こちらは2019年8月以来のことである。
対戦相手の順位別の勝敗を見てみるとくっきり。7位以上のチームに勝利がない一方で、13位以下のチームには負けなし(W6,D2)とはっきりとした対戦成績である。
<広島のMatch facts②>
・直近11試合無得点試合がない。
・今季公式戦での10勝のうち8勝はクリーンシートでのもの。
直近の試合は得点が好調。11試合では無得点のゲームはなくコンスタントに得点を重ね続けている。得点を重ねている一方で点の取り合いは得意ではない模様。10試合中8勝はクリーンシートによるもので、両チームともに得点が入った試合ではなかなか勝利には結び付いていない。クリーンシート以外での勝利は2試合とも清水エスパルス相手のものである。
<広島のMatch facts③>
・東俊希が先発した試合は7戦で5勝。
・佐々木翔はここまでインターセプトが61でリーグ最多。
直近で先発が増えている東。先発した試合の戦績は好調で7戦5勝。同ポジションの柏が先発した12試合と同じ勝利数だ。
その東の後方にいる佐々木は守備面で存在感。インターセプト数がリーグ最多である。次点が酒井高徳(56)で50を超えているのはリーグでこの2人だけだ。
【川崎フロンターレ】
<川崎のMatch facts①>
・勝てばシーズン2回目のリーグ戦10連勝。
・今季公式戦で敗れた2試合はいずれも無得点。
シーズン10連勝という記録を自分たちで塗り替えたいという目標まではあと2つ。この試合に勝てばまずは今季の自分たちに並ぶことになる。
勝利の壁になりうるのは得点。今季敗れた2試合は共に無得点。ルヴァンカップの敗退時のゴールの遠さが記憶に新しいところである。湘南や仙台など下位のチームからも複数得点はなかなか挙げられず一時期の爆発的な得点力からは少々陰りが見える。
<川崎のMatch facts②>
・リーグにおいて敗れたアウェイゲーム直近6試合はいずれも名古屋より西のチーム相手。
・直近5試合のアウェイゲームは複数失点なし。
関東アウェイは自分たちの庭のように暴れまわっているが、関西遠征は非常に苦手。何しろアウェイでの直近6敗はいずれも西のチーム相手である。関東アウェイで敗れたのは2018年の埼スタが最後だ。
ただ、直近5試合のアウェイゲームでは複数失点はなし。苦手なヤンマースタジアムでも勝利を挙げるなど手堅い試合運びを見せている。
<川崎のMatch facts③>
・チョン・ソンリョンは直近5試合でクリーンシートが3つ。
・田中碧はタックルの勝利数が30。これより多いのは三竿健斗(33)のみ
得点力には陰りがあるが、その分失点も減っている。直近5試合ではクリーンシートが3つ。それ以前のクリーンシートの3つ達成には10試合かかっていることを踏まえれば、ペースは上がっているといえる。
中盤の守備面でのスタッツを見ると特徴的だったのは田中碧。タックルの勝利数はアルトゥール・シルバと並んでリーグ2位。昨年の35とかなり近い数になってきている。守備面での貢献も徐々に目立つようになっている証左だろう。
合わせてファウルのランキングを見てみると三竿やシルバが共に30以上を記録しているのに対して、田中碧は20ぴったり。よりクリーンにボールを奪っている形である。外国人選手相手にも当たり負けしない強さで今後も中盤の引き締めに一役買ってほしいところである。
展望
■人員入れ替えで『キャラ変』
2周目になるとプレビューも難しくなる。前半戦の対戦と変わっている部分がほとんどないチームも出てくる。そして今季は何より過密日程。チーム側も何か新しいことを仕込むのには難しい日程である。
それだけに広島には結構驚かされた。これはばっちりキャラ変である。前回対戦時はWBまで安全にボールを運び、そこからエリア内のレアンドロ・ペレイラとドウグラス・ヴィエイラの2人にクロスを上げるというのがベース。単純だがWBの突破力とCFのエリア内での強さを活かしたやり方であった。
しかし、鳥栖戦や清水戦のやり方は前回の川崎との対戦時とはガラッと変わっている。まずは人選。個人で打開ができるハイネルや柏、そしてエリア内での強力な個であるレアンドロ・ペレイラとドウグラス・ヴィエイラといったメンバーはスタメンから外れている。代わりに入ったのは茶島、東、永井、土肥or浅野といった面々である。
これによって崩しの指針は大きく変わった。中央でCHやシャドーを軸としてポジションをずらしながらパス交換をする。WBは大外だけにこだわることなく、内側に入ってきてフィニッシュワークにも絡む役割。パスワークは基本的にワンタッチかツータッチが主体でテンポを速めているのが大きな特徴。おそらく先発メンバーの機動力を生かしているのだろう。したがって、WB特攻+クロスという以前の攻撃からは大きく変化。ドリブルからのカットインやパス交換からの抜け出しが主体となっている。
得点のもう1つのパターンはハイプレスからのショートカウンター。鳥栖戦ではこれが刺さりまくっていた。アンカーにトップの永井が張り付き、大きく開くCBにはシャドーの2人で対抗。SBにはWBでふたをして、中盤が押し上げるハイプレスを敢行。ハイプレス発動時はGKにしか時間を与えない仕様である。
このハイプレス時の勢いはなかなかで今季は優れたビルドアップを見せていた鳥栖も苦戦。ボールを引っかけての失点もいくつか喫してしまい、この試合は珍しくいいところがちっともなかったように思う。機動力のある永井のトップ起用はアンカーケアに加えて、さらに前にもプレッシャーに行くことが可能なプレスにおける役割によるところが大きいだろう。
フィニッシャーとして存在感を感じるのは浅野雄也。抜け出しの鋭さに等々力で一矢報いた迫力のあるフィニッシュワークは川崎にとって引き続き脅威になり続ける。
■『未達』の部分を引きずりだせれば
懸念はハイプレスを抜けられたときの守備だ。広島のDF陣は前には強いが、スペースを管理しながらのカウンター潰しはやや怪しさを感じる。川崎はボールの出しどころを潰されて苦しめられ続けるパターンはあったが、ガッツリハイプレスに苦しんだ試合はそこまで多くない。
ショートパスで回避するチャレンジを試みてもいいだろうが川崎は長いボールでの回避が可能。ダミアンや小林は広いスペースでも広島のDF陣と勝負できるだろうし、ロングボール一手で押し下げ返す選択肢もある。
気になるのは川崎のWGのコンディションである。三笘、齋藤あたりはここ数試合でそれ以前と比べるとインパクトが落ちているように感じる。対面の相手を剥がして彼らがボールを前で運べるかは広島がハイプレスで来た時の対応の成否を分ける要素だ。
ハイプレススタイルは広島目線で見るとメンバーが変わったときに維持しにくいのも特徴。トップの永井が下がり、ペレイラが入ると機動力はどうしても落ちる。この入れ替わりは攻守どちらでもスタイルに変化を与える。史上最攻セレッソにおいて豪華メンツに囲まれながら必死に走りまくっていた永井がここに来て貴重なピースになっているのは興味深い。清水戦では永井とヴィエイラが負傷交代しており、川崎戦の前線のメンバーは不透明だ。
ハイプレスが難しい時は撤退守備を選択する広島。さすがに1か月ではここまでのスタイルチェンジは手を付けられていない。弱点は前回対戦と同じくこの撤退守備。ボールの位置よりも周辺の選手の動きについていくことを優先する形は大きく変わっておらず、川崎としては押し込んでしまえばいわゆる3人目の動きで崩すことは可能だと思う。
川崎としては『キャラ変』をした広島の前プレスを剥がし、キャラ変未達の後方守備に広島を釘付けにさせたいところだ。
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)