
必要な要素を並べた2ゴールでW杯への切符を手にする
勝てばW杯への出場が決まる日本。ヨーロッパは予選が始まってすらいない(3/21開幕)中で「世界最速突破」という名誉なのかがよくわからない称号をやたら全面に押し出しているのはあまりピンとこないけども、ここを乗り越えれば一安心というところになるだろう。
序盤は意外と組み合いになる展開。バーレーンは前からSHがズレる形でプレスをかけていたし、CBはGKを挟む形になることでショートパスで日本のプレスを誘発する形になっていく。
というわけで序盤はショートパスからズレをどこまで作れるか勝負。日本はSHを引きつけつつ、出てきた背後のスペースを活用する形で前進。降りる堂安、サイドフローする守田などが脱出の手段の代表例となる。
バーレーンのショートパスもサイドの守備のギャップを使うという点では似ている。日本のシャドーを引き出し、WBとの距離ができているところをポイントとして縦パスを入れる。2列目は移動が比較的自由なので、左サイドのアル=フメイダーンが右サイドに流れることで日本の守備から浮こうとする。
日本がボールを持つきっかけとなったのはバーレーンの守備の意識変化だろう。バーレーンは4-4-2でのミドルブロックと5-3-2のように人を後方に埋める形を併用していたが、このシステムを行ったり来たりする中で浮きやすい堂安を起点に日本の攻撃が進んでいたことで、5バックを活用する時間帯が増加する。
日本はバックラインがボールを持つことができる反面、後ろからボールを動かさなくてはいけなくなる。堂安サイドがリトリートのカラーが特に強くなったので、ボールを持たされるのは瀬古。選手のタイプ的にも連携面的にもボールを運んで何かをやってくれ!とするのは少し厳しいところがあるのは確かだろう。瀬古の特性をどこまで把握していたかはわからないが、バーレーンのリトリート偏重のプラン調整は悪くない判断だったように思う。
それでも日本が完全に手詰まりにならなかったのは相手に捕まっている状態でもなんとかすることができる選手がいるから。代表格は上田であり、後方の早めのリリースによりマークに捕まった状態でボールを受けてもファウルをもぎ取ったり、時には前に進んで行ったりなど抜群の効果を発揮。裏抜けする南野も上田ほどでないにしても均衡をなんとかしようとしていたし、前を向けない状態で受ける前線のサポートをせっせと行い、相手の穴が空いているところに配球する守田も効果的であった。
また、5バックになったことでバーレーンのカウンターはなかなか重たくなってしまう。マルフーンは懸命にボールを運んでいたが、日本のCBの手前で門番となる遠藤の山を越えることができず、序盤以降はさらに得点の匂いがしない展開となる。
順調に日本が押し込む展開になるかと思われたが、30分を超えたところからバーレーンはポゼッションの時間を増やす。左右に振るアクションから日本のCHを中央から釣り出し、バックラインと中盤の間に楔を差し込む形でインサイドに起点を作りにいく。収められても日本のリトリートは間に合っていたので、冷や汗をかく場面は少なかったが、高い位置からボールを奪うというお題目は機能しなかった。
相手が5バック偏重になったことで日本は大外のWBを起点とした打開を期待したいが、なかなか刺さる状況を作ることができず。40分過ぎの降りる久保から三笘への横断パスが大外勝負から迎えた一番のチャンスだったかもしれないが、ベナディの体を張ったクロスで上田が潰されてしまう。
後半、日本は守田→田中への選手交代を敢行。前半の守田のパフォーマンスはあまり悪くはなかったように見えたので、怪我の状態を含めたプレータイム管理の一貫である可能性も感じさせる用兵だった。
日本は再び押し込みながらボールを動かしていくスタート。真ん中から右をフリとしつつ、横断から左にボールを運んで三笘で勝負!という写真はほんのり見えていたが、なかなかそれを実装化することができなかった印象。交代で入ってきた田中も限られたパスコースの中でどこを通すか?というところが味方と合わなかったし、三笘にボールが入ったとしてもそこからのプレーの精度は高くなく、なかなかチャンスにつながらない状況は継続。バーレーンもマルフーンを軸に薄めのカウンターの糸を手繰る膠着した展開となる。
そうした中で結果を出したのは交代選手。抜け出した鎌田が1on1から「鎌田チョップ」で先制点を決める。バーレーンは4-4-2↔︎5-3-2のシームレスな行き来が前半よりも上手くなっていたので、この場面のように5バックを面ごと壊すような崩しはまさしく求められていたもの。ライン間に差し込んだ伊藤とそこからラインブレイクに持ち込んだ上田と久保も含めて相手を崩すのに必要なものが並んだゴールだったと言えるだろう。
裏のオーストラリア×インドネシアの結果を踏まえると、この時点での日本の予選突破確定は相当に決定的に。展開的にも鎌田の投入以降は敵陣で相手の駆け引きの逆を取るような選択肢を見せることができており、先制点で試合運びは相当滑らかになったと言えるだろう。
相手の逆を取る駆け引きという意味では追加点となった久保のゴールはまさに真骨頂。内側への折り返しをケアするあまり、ニアを開けてしまったGKの隙を見逃さず、W杯への切符を確定させる2点目を決める。その久保は90分までプレスバックに奔走するなど、強度面でも別格の働きを見せた。
苦しみながらも後半は解決策に辿り着いた日本。聖地というべき埼スタでまた新しい歴史の1ページを刻むこととなった。
ひとこと
今後を見据えた話をすると、本大会も含めて冨安がフィットするかがわからないところもあり、ワイドのCB争いに注目したいところ。アジア最終予選と本大会ではおそらく同じシステムでも求められる能力は違ってくることになる。目の前の相手と異なる力量の状況でこうしたシミュレーションを繰り返さなくてはいけないのは難しいところだが、そのギャップをイメージしつつ本大会への準備を進めていって欲しいところだ。
試合結果
2025.3.20
アメリカ・メキシコ・カナダW杯
アジア最終予選 グループC 第7節
日本 2-0 バーレーン
埼玉スタジアム2002
【得点者】
JPN:66′ 鎌田大地, 87′ 久保建英
主審:アブドゥルラフマン・アルジャシム