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「Catch up Premier League」~ウォルバーハンプトン編~ 2024-25 season

ウォルバーハンプトン、24-25シーズンの歩み。

目次

第1節 アーセナル戦(A)

ミスにつけこませずに開幕戦を飾る

 レビューはこちら。

 昨年は最後までタイトルレースに食らいついたものの、2位という結果に終わったアーセナル。反撃を期す今季はウルブスをホームに迎えての一戦からスタートとなる。

 立ち上がりが過ぎると落ち着いてボールを持つことに成功したアーセナル。ゆったりとした保持から前進のルートを探っていく。この日のアーセナルのポイントはウルブスの4-4-2のそれぞれのライン間を広げること。特にFW-MFの間の選手が出たり入ったりすることでウルブスの2列目を動かし、意図的にスペースを空けることである。

 その中でも象徴的だったのはサイドに流れるライスやウーデゴールの動き。ライスはサイドに流れることでSHのヒチャンの背後に立つことでプレスを回避する。さらには、CHのジョアン・ゴメスを引き付けることで中央のスペースを空けてトーマスやジンチェンコにスペースを供給していた。

 ウーデゴールはレミナががっちりとマンツー。どこまでもついてくるので、むしろこちらの方がアーセナルとしては利用しやすい動きだった可能性もあるだろう。トーマスとのスイッチやサカのインサイドへの絞りを誘発し、スペースを作るウーデゴールの働きもまたアーセナルの助けになっていた。

 押し込むことができたアーセナルはシンプルなクロスから先制点をゲット。セットプレーの流れから前線に残っていたガブリエウを囮にニアに飛び込んだハヴァーツが先制ゴールを決める。

 反撃に出たいウルブスだがプレスに出て行けば全体の陣形は間延びして相手の思うツボ。高い位置から厳しくプレスに来る序盤のアーセナルも、得点を決めてラインを下げてブロックを組むアーセナルにもどちらに対しても明確なゴールに対するアプローチを打つことができず。唯一、トーマスやサリバのミスが絡めばチャンスを作れる状態だったが、貴重なラーセンの決定機はラヤのファインセーブに阻まれてしまい追いつくことができなかった。

 後半もウルブスは広く使いながらアーセナルを攻め立てに行くが、アーセナルもブロック守備からのカウンターで反撃。ミス以外にはウルブスに付け入る隙をなかなか与えないまま時計の針を進めていく。

 どちらにもなかなかクリーンなゴールチャンスが生まれないジリジリとした展開の中で先に状況を動かしたのはまたしてもアーセナル。右サイドでトーマスのクイックリスタートを受け取ったサカがカットインからニアを抜く強烈なシュートをお見舞い。決定的な2点目を決める。

 瞬間的な輝きを見せたサカが1ゴール、1アシストで勝利に大きく貢献。悲願達成の一歩目としてアーセナルは上々のスタートを切った。

ひとこと

 堅さが光るアーセナル。できれば、昨季序盤戦も苦しんだミスはもう少し減らしていきたいところだろう。

試合結果

2024.8.17
プレミアリーグ 第1節
アーセナル 2-0 ウォルバーハンプトン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:25′ ハヴァーツ, 74‘ サカ
主審:ジャレット・ジレット

第2節 チェルシー戦(H)

やまないブーイングを背にしたハットトリックが初勝利の原動力

 第2節の中で唯一の開幕戦に敗戦したチーム同士の一戦。敗れた方は連敗となってしまう負けられない試合だ。

 立ち上がりにリズムを掴んだのはチェルシー。キックオフ前からすでにこの試合の主役に躍り出ていたマドゥエケが右サイドでキレキレの突破を見せて押し込むと、セットプレーからジャクソンが先制ゴールをゲットする。

 保持でもフィーリングは良好。グストをインサイドに入れてエンソをビルドアップから解き放つパターンと正位置でビルドアップするパターンを使い分けつつ、広いビルドアップでウルブスの前線からのチェイシングを外していく。ジャクソンが迎えた決定機のようにプレスをひっくり返してゴールに向かうのが理想である。

 だが、このチェルシーのペースは途中でブレーキに。ウルブスは自陣からのポジトラが鋭くロングカウンターで反撃に出ていくことができていた。チェルシーの保持は相手のプレスをひっくり返してゴールに迫ることはできていた一方で、保持で落ち着かせる要素がまるでない。その上に中盤のネガトラの強度がかなり苦しいので、ウルブスのアタッカーがスピードに乗ると完全に後手に回る。

 さらにウルブスは徐々にプレスを成功させるように。特にカイセドのところでロストが目立つチェルシーはポゼッションの不安定さを露呈する。すると、ウルブスはこの2つのチェルシーの不安要素をついて同点に。中盤でボールを奪うと、最後はクーニャがゲット。カイセドのロストも当然痛かったが、アイト=ヌーリに対して2人がかりでプレスに行ったにも関わらず、あっさりと一番嫌なところに通される対応も苦しかった。

 これ以降もチェルシーは中盤での守備の軽さを露呈。2人で行って捕まえきれない、軽いファウルからのセットプレーの献上と自陣での守備はかなり苦しいものがあった。

 しかし、守備が不安定なのはウルブスも同じ。GKからのリスタートの守備にスカスカな対応を見せると、パルマーが技ありのゴールを仕留めてチェルシーは再びリードを奪う。

 混沌とした前半はまだまだ終わらず。セットプレーからラーセンが加入後の初ゴールを決めて同点。前半だけで4点が決まる乱戦となった。

 後半頭からチェルシーは猛ラッシュ。前半の頭に戻ったかのようなマドゥエケを使った攻めであっという間に勝ち越しに成功。ウルブスはリスタートから簡単に通されたくない箇所へのパスを連続で通されており、目を覆いたくなるような守備だった。

 これ以降もチェルシーはマドゥエケからゴールを重ねていく展開。アイト=ヌーリの背後をフリーランで蹂躙する形から得点を重ねる。あっという間にマドゥエケはハットトリック。ウルブスサポーターにまたしても嫌な気持ちを植え付けることに成功する。もっとも、それを引き起こしているのは拙いウルブスの守備なのだけども。

 終盤にはネト→フェリックスという新加入コンビが6点目を仕留めてゴールラッシュを飾る。後半のウルブスは元気がなく、カイセドにタックルに行ったモスケラの逆ギレが唯一エネルギーを感じる場面だった。

 マドゥエケのハットトリックで後半にブーストをかけたチェルシーが大勝。マレスカは就任後のリーグ戦初勝利をド派手に飾って見せた。

ひとこと

 めちゃくちゃオープン。細かいことを考えずに見たい大味な試合となった。

試合結果

2024.8.25
プレミアリーグ 第2節
ウォルバーハンプトン 2-6 チェルシー
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:27‘ クーニャ, 45+6’ ラーセン
CHE:2‘ ジャクソン, 45’ パーマー, 49′ 58′ 53′ マドゥエケ, 80′ フェリックス
主審:ダレン・イングランド

第3節 ノッティンガム・フォレスト戦(A)

無敗も未勝利も継続

 開幕2試合でいまだに勝ち点を取ることができていないウルブス。ここまで無敗のフォレストのホームに乗り込んで今季初の勝ち点を取りに行く。

 立ち上がりに安定してボールを持っていたのはウルブス。バックスの数的優位を活かしてゆったりとボールを動かすと、狙いを定めたのは左のハーフスペース。降りてくるクーニャ、時々アイト=ヌーリという感じでフォレストの2CHの脇に顔を出し、反転して前を向く。ここが完全に攻撃の起点になっていた。

 この中盤で浮く選手を捕まえられるかどうかが試合の展開を分けた感がある。捕まえられれば、フォレストはカウンターを打つことができるし、前を向ければウルブスが有利という流れであった。

 明確な保持のルートを見つけていたウルブスであったが、先制点はフォレスト。セットプレーからウッドがネットを揺らして先行する。おそらく、CKにおける最重要人物ではあると思うのだが、ウルブスはあっさりマークを離してしまったのが少し不思議だった。

 しかし、ウルブスもすぐに反撃。落ち着かない中盤のポンポンとしたボールを抑えて、ベルガルドがミドルでゴールを打ち抜き、わずか2分で試合を振り出しに戻す。以降はオープンに攻撃を撃ち合う展開を経て、交互にボールを持ちながら勝負を仕掛けるターン制の様相に。

 後半立ち上がりにボールを持ったのはウルブス。前半の頭を焼き直したかのようにゆったりとした保持からサイドにボールをつけてフォレストのブロックを壊すトライを行っていく。

 それに対して、フォレストはジリジリとファウルを奪ってのセットプレーからの反撃に打って出る。前半に得点を決めたセットプレーから少しずつチャンスを作る。しかしながら、ジョンストンがファインセーブで立ちはだかるなど、フォレストのシュートは阻まれてしまう。こちらも前半同様にウッドがネットを揺らす場面もあったが、これはゴールが認められず。前半の再現とは行かなかった。

 チャンスが少ない試合ではないが、肝心なところでシュートが枠に飛ばないなどやや攻撃の試合が雑になってしまった印象があった。最後までゴールを狙った両チームだったが、これ以上ゴールは決まらず。試合は1-1のドローのまま幕を閉じることとなった。

ひとこと

 フォレストの無敗は継続、ウルブスの未勝利も継続という結果となった。

試合結果

2024.8.31
プレミアリーグ 第3節
ノッティンガム・フォレスト 1-1 ウォルバーハンプトン
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:10’ ウッド
WOL:12‘ ベルガルド
主審:サイモン・フーパー

第4節 ニューカッスル戦(H)

もどかしい展開をミドルで解決

 スパーズを倒し、今季ここまで無敗のニューカッスルといまだに未勝利のウルブス。ここまでの道のりが対照的な2チームによる一戦だ。

 4-4-2のウルブスに対して、ニューカッスルがボールを持って動かしながら勝負を仕掛ける立ち上がり。片側に制限をかけたいウルブスであったが、ニューカッスルの攻め手は多彩。サイドを変えながら2列目を食いつかせてその背後を使う形は基本。その上でイサクの降りるアクションの背後にマーフィーが飛び出したり、あるいはゴードンが大外から崩したりなどゴールに迫っていく。

 ウルブスとしてはこの試合はローブロックからロングカウンターを打てるアタッカーが不在。ベンチにいるヒチャンだけという事情がある。それであれば高い位置から捕まえたくなるので、ニューカッスルとしては2列目を乱してその背後を使うというところが非常に楽にできた。

 しかし、10分以降ウルブスは中盤でニューカッスルのビルドアップを引っ掛ける場面を作るように。それでも奪ってからのスピーディなカウンターに出て行ける場面は少なく、ニューカッスルとしては基本的には問題なく対応できる範疇だった。

 だが、ボールを失うことでリズムを崩し、相手の守備ブロックを壊すことができない時間が続くと、ついにカウンターから失点。右サイドから抜け出したラーセンの折り返しを最後はレミナが叩き込んでウルブスが先制する。

 いつでもいけなそうな状況のまま行くことができなかったニューカッスル。徐々に精度が落ちてきた上に相手のカウンターに沈むという最悪のしっぺ返しを食らった状態で前半を終える。

 後半は前半の焼き直しでスタート。3枚交代でリフレッシュしたニューカッスルが再び4-3-3でウルブスの4-4-2ブロックに対して押し込みながら解決策を図っていく。前半同様にそれなりに解決策に辿り着きそうな感覚もあったニューカッスル。しかし、ウルブスはプレッシングとポゼッションからスムーズに立ち直り、こちらも前半同様にやり返すことで試合の主導権を取り戻していく。

 前半と同じ展開に陥ってしまい、苦しくなるニューカッスル。その状況を解決したのは2つのスーパーなミドル。シェアの同点弾はドーソンに跳ね返ることですっぽりネットイン。これで手応えを掴み直すと、逆転の決勝弾となったバーンズの一撃は週末ナンバーワン候補の素晴らしいゴール。タイミングもコースもそこしかないミドルを威力十分で撃ち抜いて見せた。

 主導権を握るもリードを許すもどかしい展開は2つのミドルで解決。無敗のニューカッスルがさらに勝ち点を伸ばす逆転勝利でウルブスを下した。

ひとこと

 2つ目のゴールは理不尽。ウルブスもよく戦っていたので、未勝利が不思議なくらいなのだけども。

試合結果

2024.9.16
プレミアリーグ 第4節
ウォルバーハンプトン 1-2 ニューカッスル
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:36′ レミナ
NEW:75′ シェア, 80′ バーンズ
主審:クリス・カヴァナー

第5節 アストンビラ戦(A)

最高の立ち上がりも勝利はまたしてもお預けに

 ここまで敗れたのはアーセナル戦1つ。それ以外は全勝で上位に君臨するアストンビラ。今節の相手は内容こそ悪くないものの、まだここまで勝てていないウルブスだ。

 この試合はどちらのチームも保持では3-2-5、非保持では5-3-2をメインに使うというある意味鏡のような試合となった。どちらのチームにも前から追う意思はあるが、枚数を合わせる気はなくあくまで優先順位が高いのはきっちりと5レーンを埋めるという意思という感じであった。

 サイドからの裏抜けに関してはやや旗色が良かったのはビラだろうか。保持で腕に覚えのあるチームらしく、サイドから押し下げて手厚いブロックを前後に揺さぶっていく。

 優勢に試合を進められてしまっていたウルブスだったが、ハイプレスから先制ゴールをゲット。とっさにコースを変えたクーニャの個人プレイが刺さってのゴール。ボール奪取からゴールまでの一連の流れが非常に素晴らしい1点だった。

 5レーンの使い方も少しずつ板についてきたウルブス。大外のアイト=ヌーリからマイナスでボールを受けたレミナなど、こちらも縦方向の揺さぶりが効いてくるように。ラーセンの右に流れる速攻など緩急のつけた攻め手で追加点に手をかけようとする。

一方のビラはやや単調になったか。捕まっている選手に対する強引な縦パスが目に付き、序盤ほど効果的な前進が見られないままハーフタイムを迎えることとなった。

 リードを許すアストンビラはボールを2枚の交代枠で流れを変えにかかる。いきなりベイリーが削られるなど不穏な立ち上がりではあったが、少なくとも幅を使う攻撃から相手を抑え込む流れまでは持っていくことができた。

 だが、ティーレマンスやパウ・トーレスのインサイドを使う意識の高さに対して、ウルブスはインサイドをクローズすることによって対応。ひっかけたところからのカウンターに出て行くことで攻撃のきっかけを作りに行く。

 だが、押し込まれるチームには押し込まれる側における税金がある。アクシデンタルなボールが相手側に転がってしまえば、なす術がないということ。ワトキンスの同点ゴールはまさしくそんな感じで、何とか中央をこじ開けようとするビラの執念が実った一撃となった。

 終盤のウルブスは差し込まれる展開に終始。ボックス内での水際の戦いが続くこととなる。ビラがウルブスのブロックの破壊に成功したのは88分。左サイドからのクロスに飛び込んだコンサが逆転弾を叩き込む。

 さらにはラッキーボーイ感のあるデュランが最後に登場して逆転勝利の締めを果たしたビラ。ウルブスはまたしてもいい内容を勝利に結びつけることが出来なかった。

ひとこと

 クーニャのゴール、奪うところからフィニッシュまでのすべてがスーパーだった。

試合結果

2024.9.21
プレミアリーグ 第5節
アストンビラ 3-1 ウォルバーハンプトン
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:73′ ワトキンス, 88′ コンサ, 90+4′ デュラン
WOL:25′ クーニャ
主審:ティム・ロビンソン

第6節 リバプール戦(H)

バクチに興じるウルブズ

 ランチタイムにシティが引き分けたため、リバプールにとっては勝てば自力で首位浮上という重要な一戦になる。今季まだ勝利のないウルブスを抑えて勝利を掴みたい。

 序盤は意外にもボール持つのはウルブス。GK、バックスでボールを落ち着けつつ、対角のフィードを使いながら広くボールを動かしていく。特にブエノの綺麗なフィードが印象的だった。

 降りるレミナもいい保持のアクセントにはなっていたが、ややバクチ気味のターンを連発していたのが気がかり。リターンも大きいがリスクも大きいプレーだ。成功してリバプールのバックスを背走させることもあるが、捕まってしまいカウンターの温床にもなっていた。

 というわけでリバプールの序盤はこのカウンターがベース。しかし、時間の経過とともにウルブスはプレッシャーを逃しつつ、戻りが遅れそうなサラーのサイドを活用しながら枚数をかけての抜け出しを図る。

 押し込まれたリバプールはアリソンを軸にピンチに対応すると、左サイドのディアスにボールを集めるように。仕上げを託されたディアスの仕掛けから少しずつリカバリーを図る。

 ウルブスも徐々に博打の頻度を晴らすことでリバプールの保持に対抗。一進一退の攻守のせめぎ合いのなかで差になったのはセットプレーのコナテからのゴール。貴重なゴールでリバプールはHT直前にリードを奪うこととなった。

 迎えた後半は前半と似た流れ。ゆったりとボールを持とうとするリバプールに対してウルブスが枚数をあわせてプレッシャーをかけると、自軍のボールを持つ際には中盤でのターン勝負に打って出るバクチである。

 自分たちのパスミスが相手のチャンスになるという危うさも感じたウルブスだったが、バクチに成功したレミナのキャリーから敵陣に入ると、最後はアイト=ヌーリがゴール。リバプールはコナテのスクリーンが甘く、ウルブスのプレーを切ることができなかった。

 しかし、リバプールはすぐに勝ち越し。ジョッタがオフザボールの動き出しでセメドを出し抜きPKを獲得。これをサラーが仕留めてリードを奪う。

 以降もバクチに興じつつ、リフレッシュした前線と中盤で勝負するウルブスだったが、リバプールをこれ以上脅かすことはできず。今節も勝てなかったウルブスは未勝利記録をさらに伸ばすこととなった。

ひとこと

 追いついた押せ押せ感が悪い方向に出てしまったウルブスだった。

試合結果

2024.9.28
プレミアリーグ 第6節
ウォルバーハンプトン 1-2 リバプール
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:56′ アイト=ヌーリ
LIV:45+2′ コナテ, 61′(PK) サラー
主審:アンソニー・テイラー

第7節 ブレントフォード戦(A)

クロス対応の拙さが先行する乱打戦

 立ち上がりから仕掛けたのはブレントフォード。右サイドからムベウモのクロス起点の攻撃にバックスから突撃したコリンズが仕留めて先制ゴールを奪う。2分のゴールは普通のチームにとっては電光石火でも、今季のブレントフォードにとっては「1分遅い」ゴールという位置づけである。 

 普段と違うのは電光石火の攻撃を相手側も備えていたことだろう。ウルブスはブレントフォードと同じく右サイドから攻撃ですぐに同点ゴールをゲット。ウルブスがボックス内に入ってきたコリンズを捕まえることが出来なかったように、ブレントフォードもハーフスペースに侵入してくる相手を4バックでどのように迎え撃つかを整理できなかった。ルイス-ポッターの棒立ちはその象徴だろう。

 基本的にはこの失点シーンのように、どちらのチームも4バックでありながらハーフスペースをどのように塞ぐかという点で苦戦するという流れだった。バックスに運ばれるとまずい両チームはマンツー気味に中盤を捕まえに行く形でボールを運ぶ機会を制限しようと試みる。そうした中で縦横無尽に動き回るクーニャのマークを外そうという奮闘が目に付く展開だった。

 前半の中盤になっても展開は落ち着かない。先にスコアを動かしたのはブレントフォード。ウルブスの悪癖になっているセットプレーでのホールディングしながらの守備は今節もとがめられてしまいPKを献上する。

 それでもウルブスは再び同点に。左サイドの突破からのクロスを叩き込む。ピノックの甘い対応が目立つ失点となった。

 どっちがサイドをえぐっても有効打となる試合で抜け出したのはブレントフォード。28分にまたしても右サイドからの甘いクロスをノアゴールが叩き込むと、そのまま前プレに移行してウルブスを自陣にくぎ付けに。セットプレーから再びウルブスのファークロスの対応の甘さを突いて2点のリードでハーフタイムを迎える。

 追うウルブスは後半も高い位置からのチェイシングでスタート。ブレントフォードは外を切って内側に誘導するWGの守備でインサイドへの縦パスに誘導。少しラインを下げてブロックを組み、リードを活かす戦い方を選択。少し下がった陣形もムベウモの陣地回復能力があれば特に問題になっていないようだった。

 後半頭のウルブスの攻撃をかわしたブレントフォードは少しずつ主導権を握っていく。セットプレー、クロスと徹底したファー狙いで危ういシーンを作り出していく。

 そして、ブレントフォードは左サイドからのクロスで5点目。トティ・ゴメスの対応の悪さをついたクロスから決定的なゴールを生み出す。

 アイト=ヌーリは終盤に意地の3点目を決めるが、ウルブスの反撃もここまで。合計8得点が入り乱れる大乱戦はブレントフォードが制した。

ひとこと

 どちらも攻撃陣がすごいというか、受けに回った時のクロスの対応がやばかったなという感じ。ピノックとかゴメスとかもっとできる選手たちが淡白な対応をしていた。

試合結果

2024.10.5
プレミアリーグ 第7節
ブレントフォード 5-3 ウォルバーハンプトン
Gtechコミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:2‘ コリンズ, 20’(PK) ムベウモ, 28‘ ノアゴール, 45+2’ ピノック, 90‘ カルバーリョ
WOL:4′ クーニャ, 26′ ラーセン, 90+3′ アイト=ヌーリ
主審:アンディ・マドレー

第8節 マンチェスター・シティ戦(H)

WGのカラーが終盤に定まりなんとか間に合う

 前日にアーセナルが敗れ、後ろの時間帯ではリバプールとチェルシーが鎬を削る。上位勢が足踏みしている、もしくはする予定の状況を考えるとシティはここは落としたくないところだろう。

 序盤は保持のターンを取り合うスタート。ウルブスも右の大外のセメドへの対角パスなど保持からのチャンスを探る立ち上がりとなった。しかしながら、WGにボールを預けるシティが徐々にウルブスを押し込む展開になっていく。

 だが、先制点を決めたのはウルブス。ブエノがドクを引き付けて背後のセメドにパスを出すと、ここから誰も触れない素晴らしい軌道のクロスをファーに送る。これをラーセンが決めてワンチャンスをモノにする。

 失点してもシティは落ち着いて保持から押し込んでいく。3-2-5をベースに2の一角に入るルイスや3の左のグバルディオルなどが攻撃に参加する隙を伺う流れであった。

 ウルブスは大外のWGに対してダブルチーム、さらにはハーフスペース特攻に対してはCHがスライドすることで押し込まれた時のケアを準備していた様子。シティはこのウルブスの策を外せるかどうかという構図。特に左のドクがボールを持った時にハーフスペースに突撃する選手がアンドレを外すことができるかどうかは非常に重要なポイントだった。

 だが、大外のダブルチームとハーフスペースケアに奔走していたウルブスに落とし穴。CHが留守になったところをミドルで沈めたのはグバルディオル。左利きだが、ゴールは右足という彼のジンクスは今節も健在。もはやお馴染みとなった逆足でのミドルを素晴らしいコースに決めてシティは試合を振り出しに戻す。

 以降も、大外ダブルチーム、ハーフスペースケア、ミドルの三択にウルブスはかなり悩まされることに。後ろの守備に人員を割くことでカウンターの機会も時間の経過とともに減少。セメドの抜け出しとアイト=ヌーリのクロスくらいしかクリーンなカウンターを打つことができず。救いだったのは終了間際のスーパーセーブなどジョゼ・サのセービングの感覚が当たりの予感だったことだろう。

 後半もシティが押し込むという大枠は変わらず。シティはWGの左右を入れ替え、ウルブスはCHをアンドレからレミナにスイッチする。

 ドクとサヴィーニョの左右を入れ替えたことでシティは順足WGが両サイドに揃う格好に。この変更は正直あまり効果があったようには思えなかった。どちらも縦方向にプレーが制限されることで対面のWBの狙いは絞りやすくなっていたし、自身にシュートの選択肢が消えた分、トランジッション局面でウルブスのダブルチームが間に合わない時にも素早くゴールに向かう手段がなくなってしまった印象だった。

 最終的にシティはグリーリッシュとベルナルドという引き出しの多いタイプを外に置く形で味変。正直、こっちにとっととたどり着く方がベターだったと思う。ウルブスは引いて受けるアクションを続けつつ、フォーブスやベルガルドでカウンター機能を強化する。

 シティはグリーリッシュに攻め手を集約することでようやくアタッキングサードで脅威を与えるフェーズに踏み込めた感があった。90分過ぎからのセットプレーの連打からストーンズがゴールを叩き込み、ギリギリなんとか間に合わせることに成功。逆転勝ちでシティが勝ち点3を積み上げた。

ひとこと

 苦しいながらも今は勝ち点を積めればOKの時期。そういう時期にこういう形で結果を出せたのはシティにとっては大きいだろう。

試合結果

2024.10.20
プレミアリーグ 第8節
ウォルバーハンプトン 1-2 マンチェスター・シティ
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:7‘ ラーセン
Man City:33′ グバルディオル, 90+6′ ストーンズ
主審:クリス・カヴァナー

第9節 ブライトン戦(A)

明暗を分けたカウンター

 ボールを持つのはブライトン。ウルブスはブライトンに対してボールを持たれることを許容。中央をきっちりと固め、縦方向にコンパクトな守備を敷くことでブライトンの攻撃をつなげるポイントを封鎖する。

 ブライトンは外循環をしつつ、大外のWGからこじ開ける作業に着手。しかしながら、単調なクロスに終始してしまい、なかなか打開策を見出すことが出来ず再び試合は停滞する。

 ウルブスの保持は左サイドから変化をつけていく。レミナのサイドフローからアイト=ヌーリが高い位置を取って相手のSHを押し下げることでブライトンの2CH脇に起点を作っていく。

 ブライトンが人数をかけて押し込んでくる分、ウルブスはカウンターからチャンスを作りたいところ。しかしながら、3トップを軸にした前線のスピーディーなカウンターはいつもよりも割引。こちらも保持に回るとブライトン同様にジリジリとした展開が続くこととなる。

 どちらも保持において解決策が見えない堅い展開。アヤリの前線への飛び出しなど、ブライトンの方がややアクセントをつけたかのように見えた。

 堅い展開がわかりやすいミスによって動き出すというのはよくある話。この試合も例外ではなかった。ジョゼ・サのフィードミスからブライトンがカウンターを発動。ラター→ウェルベックであっさりとゴールを陥れる。慎重に慎重に運んでいたウルブスのゲームプランが一本のパスで台無しになった瞬間であった。

 後半、ウルブスは4-4-2にシフトチェンジ。ただ、特に噛み合わせたところでプレスを強めに当てていくわけでもない。この変更はどちらかといえば攻撃で前により人をかけたいという方向性のものなのかもしれない。保持ではドイルがサリーをするが、変形のズレによって明確に前進のルートが開かれることもない。

 保持で噛み合う相手に対してジリジリとした展開がつづく両チーム。後半の時間が経過すると、ライン間に入り込むアヤリやサラビアから少しずつ前進のきっかけをつかんでいく。

 再び得点の匂いがする流れの中で次にスコアを動かしたのはブライトン。カウンターからファーガソンがゲット。久しぶりのゴールとなった若きエースの追加点でブライトンがつきはなす。

 だが、直後にアイト=ヌーリがゴールを決めると再び展開はわからなくなった状態で追加タイムに。先に絶好機を迎えたブライトン。だが、極端な数的優位を前にウィーファーが痛恨のパスミス。このパスミスからのカウンターをクーニャが沈め、ウルブスは終盤に劇的な形で追いつくことに。

 試合を決めるカウンターを失敗したところから地獄に突き落とされたブライトン。ファーガソンの久々のゴールを勝利に結びつけることはできなかった。

ひとこと

 あまりにも切ない幕切れだった。カウンターの失敗もそうだけども、そのあとのブライトンの対応はちょっともっさりしていたなぁ。

試合結果

2024.10.26
プレミアリーグ 第9節
ブライトン 2-2 ウォルバーハンプトン
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:45′ ウェルベック, 85′ ファーガソン
WOL:88′ アイト=ヌーリ, 90+3′ クーニャ
主審:マイケル・オリバー

第10節 クリスタル・パレス戦(H)

種類の違う両チームの苦しみ

 昇格組以外で結果を出すことができないチームといえば、今はこの2チームの名前が上がることになるだろう。この90分もどことなくうまくいかなさが先行する展開だった。

 チャンスをより多く作ったのはパレスの方。ハイラインで相手を捕まえにいく形はそこまでひっくり返されることはなかったし、3人のアタッカーが前を向くファストブレイクは形を作ることができていた。

 だが、エゼの欠場の影響もあり、パレスは3人が前を向く形を作った後の展開を作ることができない。この点で悪目立ちしてしまったのはエンケティア。相手の中盤の背後でボールを受けるところまではスムーズなのだが、そこから状況をさらに前に進めることができない。プレッシャーで消えることで存在感を発揮できないなら、チームとしての枠組みの形になるが、この試合ではむしろいい形は作れていた(エンケティアの受けかたが上手いのは間違いない)だけに、エンケティアのボールを持った後のプレー選択が悪く目につく格好になってしまった。

 敵陣でのスムーズな攻撃が見られないパレスは徐々に後方のポゼッションの安定感が失われるように。ボールを動かすところでミスが出ることでウルブスに攻撃の機会を渡してしまうこともしばしばだった。

 一方のウルブスは得意パターンの構築がやりきれなかった感。左のハーフスペースに落ちるクーニャのポストからの展開はもっと見たかったが、周りがこれに合わせることはできず。前半終了間際にようやくサラビアの抜け出しを演出するが、セットプレーを軸にチャンスを作ったパレスに決定機を上回られる展開となった。

 後半は両チームとも攻撃に出る機会が多いオープンな展開に。セットプレーから先に動かしたのはパレス。ファーの角度のあるところからチャロバーがスーパーなボレーを叩き込み、リードを奪う。

 前後半の出来のギャップがいい方側に大きかったウルブスは2トップを生かして反撃。サイドに流れることでチャンスメイクしたストランド=ラーセンがボールを収めてクーニャにボールを渡す。ここから左サイドに流して先制点をゲット。ちなみにこの場面もエンケティアがボールをカットされたところからだ。もちろん、チャロバーの一発タックルが失敗したのも影響が大きかった。

 同点ゴールから勢いに乗ったウルブスは一気に逆転まで。見事な横断から逆サイドまで展開し、最後はゴメスが仕留める。ウルブズの攻撃の視界が一気に開けたのは鎌田がターンを許したところからだった。

しかし、パレスもセットプレーからすぐに同点。グエヒのゴールで試合を振り出しに戻す。

最後は両チームとも決め手に欠いてのドロー決着。上昇気流に乗れるきっかけを掴んだチームはこの日のモリニューにはいなかった。

ひとこと

種類の違ううまくいかなさに苦しんでいる感がある両チームだった。

試合結果

2024.11.2
プレミアリーグ 第10節
ウォルバーハンプトン 2-2 クリスタル・パレス
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:67’ ストランド=ラーセン, 72‘ ジョアン・ゴメス
CRY:60‘ チャロバー, 77’ グエヒ
主審:アンソニー・テイラー

第11節 サウサンプトン戦(H)

あっさりと抜け出したトンネル

 勝利を挙げることが出来ない2つのチームに取り残されてしまったウルブス。今節対戦するのはすぐ上の19位。前節、トッテナム相手に今季初勝利を手にしたサウサンプトンである。

 サウサンプトンはいつも通りショートパスからの組み立てにこだわっていくスタンス。ステーフェンスの列上げからの4バック化でウルブスに対して揺さぶりをかけに行く。

 しかし、ウルブスもボール保持をベースに対抗。レミナのサリーからの4バック化でサイドを押し出していく。

 先制点はトランジッション気味な流れから。クーニャが得意なゾーンである左のハーフスペースでボールを受けると、ここから一気に加速。サラビアへの裏へのパスを通してゴールを陥れる。

 サウサンプトンは3バックの連携がまずかった。クーニャに奪われた際の陣形は中央のベドナレクと左右のCBの距離がイマイチで、そこの連動の甘さが最終的に背後を取られる縦のゆがみに繋がってしまった感があった。

 反撃に出たいサウサンプトンは失点以降ボール保持をベースに戦っていく。狙いとなったのは右サイド。アームストロングとウォーカー=ピータースのセットである右からクロスを入れていく形で勝負をかけていく。

 インサイドでアリボがポイントを作れるかも重要な要素。マニングがネットを揺らして場面ではアリボが内側で受けて叩くことで、大外での深さを作ることが出来た。だが、このネットを揺らしたシーンはフェルナンデスのファウルで取り消し。ゴールは認められなかった。

 この場面以降、ウルブスは中央のクローズが非常にスムーズに。深さを作らせないために速いチェックから相手のチャンスの芽を摘んでいく。

 保持に転じればドリブルを活かしたキャリーからチャンスメイク。左サイドのジョアン・ゴメスやクーニャから逆サイドへの展開で、相手を背走させながらのクロスまで持ち込むことができていた。

 後半、サウサンプトンはマニング→ディブリングの投入という勝負手で4-4-2に移行。しかし、その分空洞化した中央のスペースをクーニャに利用されてしまいまたしても失点を重ねることに。

 サイドの攻撃に関しても菅原の投入で強化を図るものの、中央をきっちりクローズするウルブス相手に深さを作ることができず。状況は膠着する。

 結局試合はそのまま終了。ここまで未勝利と苦しんだとは思えないほどあっさりとサウサンプトンに力の差を見せつけたウルブス。11月の代表ウィーク前にようやく未勝利を脱出した。

ひとこと

 ウルブスの方が地力が上という感じの試合だった。

試合結果

2024.11.9
プレミアリーグ 第11節
ウォルバーハンプトン 2-0 サウサンプトン
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:2‘ サラビア, 51’ クーニャ
主審:トーマス・ブラモール

第12節 フラム戦(A)

第13節 ボーンマス戦(H)

第14節 エバートン戦(A)

第15節 ウェストハム戦(A)

第16節 イプスウィッチ戦(H)

第17節 レスター戦(A)

第18節 マンチェスター・ユナイテッド戦(H)

第19節 トッテナム戦(A)

第20節 ノッティンガム・フォレスト戦(H)

第21節 ニューカッスル戦(A)

第22節 チェルシー戦(A)

第23節 アーセナル戦(H)

第24節 アストンビラ戦(H)

第25節 リバプール戦(A)

第26節 ボーンマス戦(A)

第27節 フラム戦(H)

第28節 エバートン戦(H)

第29節 サウサンプトン戦(A)

第30節 ウェストハム戦(H)

第31節 イプスウィッチ戦(A)

第32節 トッテナム戦(H)

第33節 マンチェスター・ユナイテッド戦(A)

第34節 レスター戦(H)

第35節 マンチェスター・シティ戦(A)

第36節 ブライトン戦(H)

第37節 クリスタル・パレス戦(A)

第38節 ブレントフォード戦(H)

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