チェルシー、24-25シーズンの歩み。
第1節 マンチェスター・シティ戦(H)
先制点で試合をコントロールした王者
開幕節の大一番。マレスカを指揮官に招いて再建を図るチェルシーが王者のシティをホームに迎える一戦である。
シティはかなり積極的な立ち上がりだった。前からのプレッシングに動いてチェルシーからボールを取り上げにかかるなど、保持でボールを支配していこうというスタンスが目立つスタートとなった。潰しの観点で言えば目立っていたのはアカンジ。高い位置に出て行く潰しでエンソを封じ、ボールを即座に奪い返す姿勢を体現するプレーを見せていた。
ビルドアップではいつものようにSBのリコ・ルイスが1列前に上がるポジションどり。3バックをベースとしてボールを動かしていく。エデルソンも絡めたバックラインのパス回しではゴールライン付近スレスレの横パスをつなぐというアクロバティックなパスワークでチェルシーのプレスを回避する。
前からのプレスは難しそうなチェルシーはミドルゾーンに構える形で迎撃するが、シティはこのブロックを攻略するところから先制。左サイドからの斜めのパスの差し込みをベルナルドがすらして、最後はハーランド。少し難しいコントロールになったが、最後は押し込んでしまうのだから見事である。チェルシーはCHが守備でかなり動き回る分、斜めから入り込んだパスを消し切れない瞬間が生まれてしまった印象だ。
反撃に出たいチェルシー。GKのサンチェスも加えつつ、コルウィル、ククレジャ、フォファナの3枚をベースにビルドアップを行っていく。グストとエンクンクは1つ前で幅を取る役割で、バックスは先に挙げた3枚が目いっぱい幅を取る形になっていた。
シティのプレスに対抗できていたかは非常に微妙なところである。ラヴィアを軸に1つプレスを外すことができればワイドや前線に一気にパスが通り、ここからボックス内に向かっていけるが、プレスにハマってしまえば後方で延々とU字でポゼッションを繰り返すことも。
さらには前にボールを運べたとしても、トップ下にエンソを起用したこともあり、中盤のキャラクターが全員深い位置のゲームメイカー寄りのため、全体の重心が下がってしまう問題があった。エンクンクはサイドでのタスクがあり、ジャクソンは本来の馬力がないという状況。そんな限られたボックス内でのリソースでも全くチャンスはないことはなかったので、チェルシーの後方から出てくるボールの質は高いのだろう。
迎えた後半も前半と陸続き。前半にリードを得たシティは前プレ要素を減らしながら、堅く堅くブロックを組みながら時計の針を進めていく方向性。チェルシーはラヴィアのプレス回避を起点として、ボールを動かしていくが、前半と同じく前線の厚みが足りておらず、シティの守備に穴を開けることができない。
ギウ、ネト、デューズバリ―=ホールといった新加入組の投入で攻撃の活性化を図りたいところだが、これで前線の動きはさらに停滞。互いのプレーの理解があまり進んでおらず、探り探りでのプレーが続くことに。
70分にボール保持のカラーを強めたシティ。前に出て行けないチェルシー相手にゆったりとしたポゼッションでボールを動かしていくと、仕上げはコバチッチのスーパーゴール。2点のリードを手にして試合を完全に終わらせたシティが敵地で開幕戦を飾った。
ひとこと
チェルシー、悪くはないように思えるけども、どこが強みのどういうチームなのかという自己紹介を早めにしないと、よくわからないまま飲み込まれてしまう怖さもあるなと思った。
試合結果
2024.8.18
プレミアリーグ 第1節
チェルシー 0-2 マンチェスター・シティ
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
Man City:18‘ ハーランド, 84’ コバチッチ
主審:アンソニー・テイラー
第2節 ウォルバーハンプトン戦(A)
やまないブーイングを背にしたハットトリックが初勝利の原動力
第2節の中で唯一の開幕戦に敗戦したチーム同士の一戦。敗れた方は連敗となってしまう負けられない試合だ。
立ち上がりにリズムを掴んだのはチェルシー。キックオフ前からすでにこの試合の主役に躍り出ていたマドゥエケが右サイドでキレキレの突破を見せて押し込むと、セットプレーからジャクソンが先制ゴールをゲットする。
保持でもフィーリングは良好。グストをインサイドに入れてエンソをビルドアップから解き放つパターンと正位置でビルドアップするパターンを使い分けつつ、広いビルドアップでウルブスの前線からのチェイシングを外していく。ジャクソンが迎えた決定機のようにプレスをひっくり返してゴールに向かうのが理想である。
だが、このチェルシーのペースは途中でブレーキに。ウルブスは自陣からのポジトラが鋭くロングカウンターで反撃に出ていくことができていた。チェルシーの保持は相手のプレスをひっくり返してゴールに迫ることはできていた一方で、保持で落ち着かせる要素がまるでない。その上に中盤のネガトラの強度がかなり苦しいので、ウルブスのアタッカーがスピードに乗ると完全に後手に回る。
さらにウルブスは徐々にプレスを成功させるように。特にカイセドのところでロストが目立つチェルシーはポゼッションの不安定さを露呈する。すると、ウルブスはこの2つのチェルシーの不安要素をついて同点に。中盤でボールを奪うと、最後はクーニャがゲット。カイセドのロストも当然痛かったが、アイト=ヌーリに対して2人がかりでプレスに行ったにも関わらず、あっさりと一番嫌なところに通される対応も苦しかった。
これ以降もチェルシーは中盤での守備の軽さを露呈。2人で行って捕まえきれない、軽いファウルからのセットプレーの献上と自陣での守備はかなり苦しいものがあった。
しかし、守備が不安定なのはウルブスも同じ。GKからのリスタートの守備にスカスカな対応を見せると、パルマーが技ありのゴールを仕留めてチェルシーは再びリードを奪う。
混沌とした前半はまだまだ終わらず。セットプレーからラーセンが加入後の初ゴールを決めて同点。前半だけで4点が決まる乱戦となった。
後半頭からチェルシーは猛ラッシュ。前半の頭に戻ったかのようなマドゥエケを使った攻めであっという間に勝ち越しに成功。ウルブスはリスタートから簡単に通されたくない箇所へのパスを連続で通されており、目を覆いたくなるような守備だった。
これ以降もチェルシーはマドゥエケからゴールを重ねていく展開。アイト=ヌーリの背後をフリーランで蹂躙する形から得点を重ねる。あっという間にマドゥエケはハットトリック。ウルブスサポーターにまたしても嫌な気持ちを植え付けることに成功する。もっとも、それを引き起こしているのは拙いウルブスの守備なのだけども。
終盤にはネト→フェリックスという新加入コンビが6点目を仕留めてゴールラッシュを飾る。後半のウルブスは元気がなく、カイセドにタックルに行ったモスケラの逆ギレが唯一エネルギーを感じる場面だった。
マドゥエケのハットトリックで後半にブーストをかけたチェルシーが大勝。マレスカは就任後のリーグ戦初勝利をド派手に飾って見せた。
ひとこと
めちゃくちゃオープン。細かいことを考えずに見たい大味な試合となった。
試合結果
2024.8.25
プレミアリーグ 第2節
ウォルバーハンプトン 2-6 チェルシー
モリニュー・スタジアム
【得点者】
WOL:27‘ クーニャ, 45+6’ ラーセン
CHE:2‘ ジャクソン, 45’ パーマー, 49′ 58′ 53′ マドゥエケ, 80′ フェリックス
主審:ダレン・イングランド
第3節 クリスタル・パレス戦(H)
中央集結の目的が見えてこなかったチェルシー
前節、ウルブスを粉砕してマレスカ政権での初勝利を手にしたチェルシー。しかしながら、大味の時間も少なくなく、スコアほどの強さを見せ続けた90分というわけではなかった。真価が問われるのはここからだろう。
この試合のチェルシーは保持で少し工夫を施してきた。カイセドが中盤に残り、エンソは左のハーフスペースに流れて上下動。きっちり左右対称というわけではないが、降りて受けて反転して前進を狙うパルマーと近い動きを見せたといっていいだろう。
アンカー役のカイセドは最終ラインに落ちて、実質中盤に入るのはグストという変化も見せたチェルシー。アタッキングサードの攻め手になったのはマドゥエケ。右サイドから李リチャーズの背後を取る動きを繰り返して、チェルシーの推進力となる。時にはジャクソンとレーンを変えながらの攻撃も見せており、なかなか動きとしては興味深かった。
ヘンダーソンのセーブでなんとか踏ん張るパレスだったが、再三の右サイドからの突破を狙うチェルシーについに破られてしまい失点を喫することとなった。
もっとも、チェルシーの保持のメカニズムが効きまくっていたかは怪しいところ。降りてくるパルマーとエンソの動きはやや単調な感じもあったし、左サイドの大外でレーンを重ねたネトとククレジャの縦関係が、シャドーの鎌田が引いて受ける4-4-2っぽい枚数合わせを敢行したパレス相手に何かを生み出せていたわけでもなかった。
しかしながら、パレスの前進はチェルシー以上に苦しい。左サイドに開くリチャーズから奥を狙う一発を軸とする動きを見せたが、チェルシーの迎撃のターゲットが非常に明確であり起点を作れず。我慢が効かなかったエゼがラインを下げて怖くないエリアまで降りてきてしまうというありさまだった。
40分手前にチェルシーは少しずつ迎撃部隊の対応が怪しくなったこともあり、パレスはボールを持てるように。しかし、スコアは動かず。試合はチェルシーのリードでハーフタイムを迎える。
後半もチェルシーが仕切り直してボールを持つスタート。中央に降りるパルマーの反転はさらに見切られている感があった。
パレスの苦しさは相変わらずであったが、敵陣でのFKでのリスタートからエゼがミドルでネットを揺らして同点。一振りで試合を振り出しに戻す。このゴールから少しずつパレスはチェルシーの中盤のギャップを使ってのポゼッションができるように。
後半のチェルシーはフェリックスを投入し、さらにインサイドの起点を増やす。だが、余計に中央がごちゃごちゃした感があり、相手を動かしての攻略まではたどり着かなかった。グストの負傷からのムドリクは少しやけくそ感もあったが、中央の渋滞は選手交代では解消できず。右サイドのエンクンクとフォファナが終盤にほんのり奮闘したが、それ以上の成果を見せることはできず。チェルシーはホーム初勝利を飾ることができなかった。
ひとこと
尖りがすっかりなくなってしまったパレスも方向性を打ち出せているのかよくわからないチェルシーも少し気になる出来だった。
試合結果
2024.9.1
プレミアリーグ 第3節
チェルシー 1-1 クリスタル・パレス
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:25’ ジャクソン
CRY:53’ エゼ
主審:ジャレット・ジレット
第4節 ボーンマス戦(A)
エンクンクが苦しむチームを救う決勝点をもぎ取る
エンソが欠場となったチェルシーはスターターにヴェイガを抜擢。負傷者が目立つSBにはディザジを置くなど、チェルシーは少しスクランブルな人選でボーンマスのホームの乗り込むことに。
まずはコンパクトな中盤で様子を見る形の両チーム。チェルシーは繋いでの前進にトライ。2-2、もしくは3-2型のビルドアップから降りてくる前線にボールを当てる形。パーマーが低い位置に降りてからの反転から加速を狙うという形は前節のパレス戦を踏襲したものと言っていいだろう。ただし、ボーンマスは強気のプレスでこの保持を阻害にきており、序盤のポゼッションは安定しなかった。ディザシが低い位置をとり、3-2型が時間の経過とともに増えたのはこの影響だろう。
一方のボーンマスはドリブルのスペースを見つけてそこから加速するスタート。特に狙い目になっていたのはチェルシーの右サイドの守備の連携。明らかに統率が取れておらず、スピーディーな裏抜けからチャンスを作れる状況だった。
10分を過ぎるとチェルシーの保持で局面は安定していたが、やはりディザジやフォファナ、そしてサンチェスの連携は怪しく、互いに身振り手振りを交えて指示を出しているにもかかわらず、特に動きが見られない状況が続く。それでも前の方ではほんのりとパルマー、マドゥエケ、ジャクソンが右サイドを攻略できそうな空気もあった。
しかし、先に綻びが出たのはチェルシー。フォファナのバックパスミスを掻っ攫われてサンチェスがPKを献上。怪しかったGK-DF連携がついに爆発してしまったというワンプレーだった。だが、このPKはサンチェスがストップ。ボーンマスは絶好の先制のチャンスを逃すことに。
PKストップをしたものの、流れは変わらず前半はボーンマスがカウンターの鋭さからチャンスを作る展開だった。そのため、チェルシーはハーフタイムに選手交代でテコ入れを行う。左サイドに入ったサンチョは大外に張りながらインサイドに突撃するククレジャを使ってのチャンス創出に。本人のカットインも含めて、前半はかなり寂しかった左サイドを蘇らせた。
前半よりは失点の危険性が増えたボーンマスだが、攻め手は健在。ライン間に立つドリブラーに縦パスを入れることで攻撃を加速させると、チェルシーのバックスのシャープさの欠如が手伝い、危うい場面も作ることができるように。
オープンでフラットな後半を終盤に制したのはチェルシー。決め手になったのは交代で入ったエンクンク。左のハーフスペースからの反転からフィニッシュまで持っていく個人技で決勝点をゲット。なかなか活躍を見せられなかったエンクンクが苦しむチームを助けるゴールで勝ち点3をもたらした。
ひとこと
ボーンマスは優位に試合を進めていただけに、前半のPKは沈めておきたかったところだろう。
試合結果
2024.9.15
プレミアリーグ 第4節
ボーンマス 0-1 チェルシー
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
CHE:86′ エンクンク
主審:アンソニー・テイラー
第5節 ウェストハム戦(A)
無秩序なプレスを前にのびのびとしたチェルシー
第5節はロンドン・ダービーからの開幕。ウェストハムがホームにチェルシーを迎える一戦だ。前節、ボーンマスに辛勝したチェルシーは大枠の戦い方をトレース。後半に素晴らしいパフォーマンスを見せたサンチョをサイドに投入しつつ、インサイドではパルマー、エンソが高い位置でターンを狙うことが基本線となっていた。
ククレジャがややインサイドに絞り気味の3-2-5のような布陣を形成するチェルシーに対して、ウェストハムは前から積極的にプレスに出て行く。だが、ウェストハムのプレスは非常に混乱しているようだった。枚数を合わせるほど前に重心をかけていないにも関わらず、プレスをかける優先順位がバラバラ。結局のところ、チェルシーの攻撃は降りてくるパルマーやエンソに反転できるスペースを与えたり、あるいはカイセドが浮いたりすることが目的になるのだけども、ウェストハムはこの目的を潰すことにフォーカスできないプレスを続けていく。
保持でつつがなく試合を進めることが出来るチェルシーは前半から余裕を持って得点を重ねていく。左サイドを破ったジャクソンがいきなりネットを揺らし、わずか4分で先制点をゲット。アレオラの対応はいささか淡白なものになってしまった。
さらには18分には先に挙げた中央の自由なパス交換からゴールに向かって加速できるルートを構築すると、これを再びジャクソンが仕留めてリードを広げる。長いレンジのパスが効いたのはウェストハムの急造ラインの乱れの影響も大きい。アルバレスを中央のCBに置くというプランはジャクソン封じの一手かもしれないが、個人でもついていけず、連携でも守れていなかったし、早々に4-2-3-1に舵を切ったことからもシンプルにうまくいかなかったという評価で問題ないだろう。
ウェストハムはサマーフィル、クドゥスというサイドから切り込むことで反撃に出たいところ。ただし、チェルシーほど中央のルートは空かないので、縦に進撃するルートを切り拓くことにはかなり差がある。ウェストハムはサイドから我慢強く押し下げての抵抗を行うもスコアを動かせなかった。
後半の主導権もチェルシー。前に出てくる鼻息の荒いウェストハムをあざ笑うかのようなカウンターでパルマーがリードを3点に広げるゴールをゲット。後半早々に試合は完全に決着してしまう。
前半は効かせていたプレスもセーフティリードを手にしたことで控えるようになったチェルシー。高さを軸に攻撃してくるウェストハムの攻撃も余裕をもって跳ね返すと
マドゥエケの抜け出しから更なる得点をちらつかせていく。ちなみに後半に入ったネトは右サイドに頻繁に顔を出していたが、こちらの方がやりやすそうだった。
最後までサイド攻撃を諦めなかったウェストハムだが、こじ開けることはできず。試合はチェルシーの一方的な勝利で幕を閉じた。
ひとこと
ウェストハムの初手の無秩序なプレスがすべてだろう。チェルシー相手にとても気持ちよくプレーをさせてしまった。
試合結果
2024.9.21
プレミアリーグ 第5節
ウェストハム 0-3 チェルシー
ロンドン・スタジアム
【得点者】
CHE:4′ 18’ ジャクソン,47‘ パルマー
主審:サム・バロット
第6節 ブライトン戦(H)
鬼のように攻略パターンがハマったチェルシー
前節はウェストハムを寄せ付けない完勝を果たしたチェルシー。今節はここまで無敗のブライトン。本格的な復調を印象付けるにはまたとない対戦相手といえるだろう。
序盤はブライトンの微妙な布陣の調整がうまくいった感があった。アンカーのウィーファーをゲームメイク役にして、SBのカディオールをライン間に出たり入ったりする役割を与える。ライン間にもともといたラターも加えて、チェルシーに縦パスの受けどころを絞らせない。
三笘もこれまでの相手に比べれば大外レーンでの固定が多かった。左サイドでグストにつっかける役割を担うと、特に序盤は馬力のあるドリブルからチャンスを作る。先制点もカディオールが縦パスのレシーバーとなり、ライン間で加速のスイッチを入れてから。ブライトンが幸先よくゴールを挙げる。
しかしながら、試合トータルで見れば攻撃のシステムが刺さったのは圧倒的にチェルシーの方だった。今のチェルシーは降りる選手が反転をすると、そこから一気に縦に進撃することができるというここ数試合際立っている攻め筋がある。
この日、ブライトンが捕まえきれなかったのはエンソ。降りるアクションから前を向くと、パーマー、ジャクソン、マドゥエケを裏抜け役にブライトンのハイラインを破壊し続ける。左サイドからポストでエンソの助けをするサンチョも非常に厄介。カディオールが1on1で止めきれないというのも含めてブライトンにとっては面倒な存在であった。
チェルシーの得点パターンはほぼこの形。中盤で前を向くまでのパターンはいくつかあったが、フリーマンから裏抜けで加速という動きは一緒。この形であっという間に2点を奪う。
1つはPK、1つは流れの中からゴールを決めて勢いに乗るパーマー。さらに衝撃の直接FKで前半の内にハットトリックを達成。自陣でのパスミスからバレバに一点を返されるチェルシーだったが、お構いなしという火力でまたしても追加点。左サイドに顔を出したパーマーが乱れたブライトンのDFラインを攻略し、4点目を手にした。
2点のリードを手にしてもチェルシーはプレスの手を緩めず。ブライトンはこのプレスを回避して、右から左に展開し三笘までボールを入れることが出来ればひとまず押し込む形は作れそうな予感。後半の三笘は完全に大外固定だ。
しかし、チェルシーも引くことなくハイラインで応戦。バックスも敵陣に入る攻撃的な姿勢でボールを奪うと、そこから縦への進撃で決定機を作る。抜け出すアクションが効いている割には決定力が伴わなかったのは惜しまれる部分だが、それでもブライトンよりははるかに効率的なチャンスメイクだった。
終盤、さすがにチェルシーはラインを下げたが、低い位置から敵陣にスルーパスを打ち込むパーマーは最後まで脅威に。後半はスコアこそ許さなかったブライトンだがチェルシーの前向きな姿勢に苦しめられる90分だった。
ひとこと
チェルシーの攻略パターンが鬼のようにハマった試合。前節のウェストハムもそうだが、潰し切る覚悟がないわりに生半可なハイラインを強いてくるチームにはとてもプランがハマりやすい。
試合結果
2024.9.28
プレミアリーグ 第6節
チェルシー 4-2 ブライトン
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:19’ 28‘(PK) 31’ 40‘ パーマー
BHA:7’ ラター, 34’ バレバ
主審:ピーター・バンクス
第7節 ノッティンガム・フォレスト戦(H)
「勝てそう」を取り上げた2人の守護神
前節はフラムに敗れたが、今季のフォレストは好調。どこと対戦してもなかなか簡単に負けない厄介な対戦相手となっている。成績が上向きなチェルシーにとっては超えられるかどうか注目の一戦となる。
保持から押し込むスタートとなったのはチェルシー。陣形としては前節と同じくグストがインサイドに絞ることで3-2を形成。ここにエンソとパルマーが降りてボールを受けにくるという仕組みである。
フォレストは中盤中央という一番使われないところを固める4-4-2。よって、パルマーやエンソが降りる位置はいつもよりも少し外側になっていた感があった。中央は堅いのでチェルシーが削るのは外から。サンチョやマドゥエケがゴリゴリと仕掛ける形で勝負を仕掛けていく。フォレストの中で冷静さが光ったのはアイナ。好調のサンチョに対してアイナは動かされすぎずに安定した対応を見せる。
フォレストはウッドのカウンターが主体だったが、自陣からボールを持つパターンも。チェルシーも無理に追いかけることはなく、きっちりとブロックを組むことで対応。フォレストがボールを持つ時間は少なかったものの作ることが。存在感を発揮したのはムリージョ。高い位置に出て行ったのボール奪取からFWの顔負けのミドルで敵陣を脅かす。
試合は均衡。どちらもゴール前は相手に絡められており、こじ開けるのは困難。チェルシーの方がゴール前に進むことができてはいたが、ボックス内での粘りが凄まじいのが今季のフォレスト。パルマーの惜しいシーンもゴール前からギリギリで掻き出す。ムリージョのミスからマドゥエケが決定機を迎えるシーンもあったが、これもゴールを破ることができない。
後半もチェルシーが保持ベースの試合。フォレストも手数をかけてサイドからの崩しに挑む。
試合が動いたのはセットプレーから。右サイドからのFKで先制したのはフォレスト。ファーまで抜けていったボールをウッドが押し込んでリードを奪う。
チェルシーもすぐに反撃。ブロックの外からゴリゴリ部隊であるマドゥエケが外から撃ち抜くことに成功し、試合を振り出しに戻す。
後半も展開は一進一退。ラインブレイクからゴールに向かっていくと両軍のDFとGKのギリギリの対応でなんとかピンチを凌いでいく。
流れが変わったのはウォード=プラウズの退場。自らのミスをハンドでカバーするという珍しい2枚目の警告を受けて、フォレストは10人となる。
押し込みながら勝負に出るチェルシー。フォレストは5-4-0での撤退をしつつもフィールドプレイヤーの粘りから時間をなんとか作っていく。
10人と11人という割には終盤も決定機は平等に。それよりも目立っていたのは両軍GKの美技。複数得点が決まっていてもおかしくない数のピンチをファインセーブの連発で凌いでいた。どちらのチームも勝てたかもしれないという感覚を残しながら3ポイントを手にできなかったのは紛れもなく2人の守護神の貢献によるものだ。
ひとこと
見応えのあるスリリングな90分だった。
試合結果
2024.10.5
プレミアリーグ 第7節
チェルシー 1-1 ノッティンガム・フォレスト
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:57‘ マドゥエケ
NFO:49’ ウッド
主審:クリス・カヴァナー
第8節 リバプール戦(A)
迅速な反撃のリバプールがチェルシーの一手先をいく
トップ4同士の日曜ナイターのビッグマッチ。アンフィールドで激突するのはリバプールとチェルシーだ。
まず、ボールを持つ立ち上がりとなったのはチェルシー。いつもはCHの役割がかなりはっきりと分かれている印象だが、この日先発のラヴィアはエンソと比べると行動範囲は狭く、より深い位置に寄っていた。明確にエンソの役割をコピーするというよりはラヴィアらしく振る舞うことを優先した感があった。
いつもであれば、上下動するエンソかパルマーが攻撃の出口になることが多かったチェルシーだが、この日はパルマーが明確にマークされているうえにエンソ役はいなかった分、敵陣に向かっていく成分は少なめ。サンチョのアイソレーションを使いたそうな雰囲気は感じることはできたが、対面のアレクサンダー=アーノルドの粘り強い対応が光る。逆サイドのマドゥエケの方が可能性は感じられるが、こちらもリバプールの折り返しへの対応は安定であった。
リバプールはボールを奪うとカウンターに移行。縦に素早くパスを刺すことで一気にトランジッション成分を活用する構えを見せる。時間の経過ともにリバプールはGKを絡めたビルドアップの時間も増えていくが、やはりこの日効いていたのはトランジッション。前線に素早く当てる形が最もハマっていた。
逆に言えば、敵陣ではマンツー気味のハイプレスと自陣ではリトリートしての4-4-2ブロックを使い分けるチェルシーは盤面を落ち着かせればなんとかピンチを防ぐことができそうな風情であった。だが、この日のチェルシーはビルドアップにおける縦パスのミスが多く、自らリバプールのカウンターの引き金を引いてしまっていた。
ボックス内での対応がグレーなものが続いていたが、ついにコルウィルがPKを引き当ててしまうことに。これをサラーが仕留めてリバプールが先制する。以降もチェルシーのビルドアップの危うさがピンチを招くことがしばしば。ミスの少ないリバプールをこじ開けなければいけないチェルシーに比べると、リバプールの方が手軽にゴールに迫る術を持っていた印象だ。
迎えた後半は前半の頭と同じ流れ。チェルシーが3-2-5からポゼッションベースの展開をスタート。リバプールのブロックを崩しにいく。前半はサイドへの迂回が優先だったが、後半は中央をかち割ることでチェルシーは同点ゴールをゲット。ジャクソンの抜け出しはギリギリオンサイドだった。
だが、リバプールはすぐに反撃。右の大外のサラーにボールを送るとクロスに飛び込んだのはジョーンズ。難しいシュートになったが、よくゴールを決め切った。
スコア的には優位に立っているリバプールだが、自陣でのビルドアップのミスからピンチを招くことも後半はしばしば。前半のチェルシーのように隙がある内容だった。
だが、HT交代で入ったネトをはじめとして、チェルシーはアタッキングサードでの仕上げが見つからず。後半にキレを増したカイセドのゲームメイクに応えられない時間帯が続く。結局終盤まで試合は活性化せず。制御された展開の中でリバプールが逃げ切り勝利に成功した。
ひとこと
リバプール、まずは第一関門突破。いい時間帯における攻撃の破壊力のピーク値が相手よりも上だった感がある。
試合結果
2024.10.20
プレミアリーグ 第8節
リバプール 2-1 チェルシー
アンフィールド
【得点者】
LIV:29′(PK) サラー, 51′ ジョーンズ
CHE:48′ ジャクソン
主審:ジョン・ブルックス
第9節 ニューカッスル戦(H)
連敗回避の陰で浮き彫りになる課題
共に前節は負け試合を経験している両チーム。なんとか連敗は避けたいところだろう。
序盤に手応えを見出したのはチェルシー。降りてくるジャクソンを起点に、右のマドゥエケを出口としてゴールを狙いにいく。降りるジャクソンを捕まえられないのはニューカッスルにとって大きな問題。直後のパーマーがネットを揺らしたシーンもニューカッスル側は狙ってとったオフサイドではないという感じ。降りるジャクソンを捕まえきれずに前を向くことを許した時点でチェルシーが意のままにプレーすることは阻害できていないので、後はチェルシーのミス待ちという運頼みという感じだろう。
このアタッキングサードのスピードの優位を生かしたチャンスメイクは以降も健在。チェルシーは試合を完全に優位に進める。
ニューカッスルにとって救いだったのはポジトラに光があったこと。奪った後の前に出ていくところは目線が揃っており、枚数をかけた攻撃を仕掛けることができていた。
しかしながら、自分達が攻める機会を作っても受けに回った時のピンチが解消されるわけではない。今度こそ見事なバッグドアから抜け出したネト。折り返したジャクソンは簡単にゴールを決めて見せる。リヴラメントが裏を取られたことや前節に続き対面の相手にあっさり置いて行かれたシェアのコンディションが気になるところではあった。
リヴラメントはなんとか保持に回った際に面目躍如。彼の横断から逆サイドまでという前線のトランジッションからのフィジカル勝負とは異なるカラーのゴールで試合を戻す。
以降もチェルシーはパーマーを中心にチャンスを作るが、試合は動かず。ハーフタイムはタイスコアで折り返すこととなった。
後半の頭、早々にチェルシーは勝ち越し。トランジッションからラヴィアが繋ぎパーマーまで。ここから一気に加速すると得意のカウンターを自ら沈めてリードを得る。
ニューカッスルとしては同点ゴールのように細かいパス交換からリヴラメントを活用するイメージだったのだろうが、中央に網を張っていたチェルシー相手にはリスキー。さらにはニューカッスルは直後のプレーでも全く同じようなトランジッションからカウンターのピンチを喰らうなど、修正をしきれていなかった。
中央に強引に差し込んでも意味がないと悟ったニューカッスルは少しずつサイドに振るアクションを入れるように。左右に動きながらターゲットになるイサクもボールを引き出しては決定機を迎える。
60分を境にチェルシーは試合のテンポを落とす。しかし、シンプルにテンポを落としただけで特に試合の制御はできていない感。中盤をコンパクトに保てていたわけではないし、交代選手が入ったニューカッスルの馬力に押されるような場面も目立つ。エンソがこういう点で存在感を出せなかったことは課題になるだろう。
中盤で起点を作れるようになったニューカッスルは左のハーフスペースの奥を取るアクションからチャンスメイク。だが、ラストパスが刺さらずに試合を動かすことができない。
ニューカッスルの前線の交代選手とともに、少しずつ反撃は雑さが勝るように。危険なシーンもなくはなかったチェルシーだったが、最終ラインがきっちりと体を張ることで防衛に成功。勝ち点3をきっちりと持ち帰った。
ひとこと
基本的にはチェルシーの順当勝ちだろう。パーマーのポジトラの精度はえぐい。ただ、60分からのゲームコントロールはチームとしての課題になりそうだ。
試合結果
2024.10.27
プレミアリーグ 第9節
チェルシー 2-1 ニューカッスル
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:18′ ジャクソン, 47′ パーマー
NEW:32′ イサク
主審:サイモン・フーパー
第10節 マンチェスター・ユナイテッド戦(A)
局地戦特化の後半は痛み分けに
ロンドン・スタジアムでの悲劇的なPK判定による敗戦の末、ついにテン・ハーグ解任に踏み切ったユナイテッド。アモリム就任が決まっている中でファン・ニステルローイ暫定監督の元、チェルシーとの一戦に挑む。
序盤は激しいトランジッションの中でスタート。中盤でのデュエルを行いながら、主導権の綱引きを行っていく。しばらく時間が経つとボールを持ったのはチェルシーであった。バックスにプレスをかけないユナイテッド相手に落ち着いてポゼッションをするように。
チェルシーの保持に少し変化があったのは微妙な配置。ベースとなる形は3-2-5で固定。変化があるのはどこに誰が立つかである。いつもであれば右サイドに立つパルマーが左のハーフスペースに。右にはSBのグストが列を上げて出て行く。
左のパルマーは少し微妙な感じもしたが、降りるアクションをするアクションは前節から引き続き良好。ボールを引き出しユナイテッドのプレスの隙間から前進していく。ただ、痛かったのは右のマドゥエケが1on1の状況からゴールに向かうのに苦戦したこと。仕上げの部分でチェルシーは難をかかえる。
ボールを持つ基本はチェルシー。しかしながら、ユナイテッドも徐々にプレスでリズムを作っていくように。相手を捕まえるスライドに慣れていくようになり、チェルシーの前進を阻害していく。
ユナイテッドは前線のレーンを入れ替えながらのカウンターも繰り出していくように。チェルシーは前線のFW-MF間のコンパクトさをあまり維持できておらず、即時奪回の機会を見出すことが出来なかった。
後半、チェルシーはパーマーが右サイドに移動。いつも通りの位置に入りながら攻撃にs中する。だが、後半もマドゥエケが仕留められないのは同じである。
後半は両チーム激しいデュエルでオープン化。両チームとも相手をきっちりと捕まえる迎撃プレスを繰り出すことで局地戦の様相を増やす。
一進一退となった後半に輝きを放ったのはカゼミーロ。ボックス外からの正確なクロスがサンチェスの飛び出しの遅れを誘発。PKをうばいとるのに大きく貢献する。
先制したユナイテッドだったが、4分後にチェルシーは同点に。カイセドの枠外からの豪快なシュートであっという間に試合を振り出しに戻す。
終盤はさらなるゴールを狙ったものの両チームこれ以上に得点は生まれず痛み分け。局地戦に特化した試合は引き分けに終わった。
ひとこと
チェルシーサポーターがやたらとOTに苦手意識があったようだが、この日もその傾向は健在だった。
試合結果
2024.11.3
プレミアリーグ 第10節
マンチェスター・ユナイテッド 1-1 チェルシー
オールド・トラフォード
【得点者】
Man Utd:70’(PK) ブルーノ・フェルナンデス
CHE:74‘ カイセド
主審:ロベルト・ジョーンズ
第11節 アーセナル戦(H)
ロンドンは青にも赤にも染まらず
レビューはこちら。
共に勝ち点は18。シーズンが始まる前の下馬評では差があった両チームだが、11節では同じ勝ち点でのロンドンダービーを迎えることとなった。
まず仕掛けたのはチェルシー。普段通りの3-2-5を使いながらアーセナルのプレスを跳ね返す。ギャップを作っていったのは中盤。5のシャドー役であるパーマーにアーセナルの中盤に注意を向けて、前に立つラヴィアがボールを持てるように。
チェルシーはこの縦方向の駆け引きで主導権を握る。プレスに来ないならばバックスからの対角パス、来るならば縦に差し込んでアーセナルの中盤の背後を取る。序盤でプレスの押し引きの感覚を掴めないアーセナルを押し込んでいく。
だが、アーセナルも前半の1/3が終わるころにはチューニングを完了。高い位置からチェイシングすることでチームの方針は決定。ハイプレスで真っ向勝負を挑むことでチェルシーのバックラインからボールを引っかけてカウンターに移行するように。
一方のチェルシーも押し込んだ際にはハイプレス。アーセナルはリスクを冒しながらラヤが広げる形でプレスから逃げる。こうなると、アーセナルは攻撃を加速させるパターンなのだが、ハイラインで踏ん張るククレジャを始めとするバックラインの奮闘で何とかカウンターで加速を付けさせない。
前半の終盤は押しこむ頻度が上がったアーセナル。だが、左右のサイド攻撃で相手を上回れるかは微妙なところ。悪くはないが、決定機といえる場面はトランジッション成分高めのマルティネッリのシュートとオフサイドとなったハヴァーツの幻のゴールくらいだろう。
チェルシーもジャクソンの馬力から押し返す場面が出てくるが、仕上げの場面で頼りにしたいパーマーのボールタッチが不調。リードを奪えないままハーフタイムを迎える。
後半はアーセナルがリトリートの頻度を増やすことで試合を落ち着かせに行く。その分、前進はハードになるはずだが、そこは右サイドのサカが踏ん張って陣地を押し下げる。右サイドからのクロスと逆サイドへのサイドチェンジからアーセナルがすこしずつ主導権を握る。
すると、その右サイドのクロスからアーセナルは先制。ウーデゴールのクロスに合わせたのはマルティネッリ。角度のないところからシュートを沈めてアーセナルが試合を動かす。
だが、チェルシーもすぐに反撃。セットプレーの流れでできた守備のギャップを一瞬で突いたネトの左足によって、試合は振り出しに戻る。
終盤はメリーノが組み立てとフィニッシャーの両面で暴れる展開に。しかしながら、右サイドのサカの負傷もあり仕上げるところまではいかず。チェルシーもマルティネッリが下がって以降甘くなったアーセナルの左サイドからゴールを狙うが、こちらも実らず。ロンドンは青にも赤にも染まらないままダービーは幕を閉じることとなった。
ひとこと
どちらのチームもそれなりに手ごたえがある内容だったとは思うが、特に停滞気味のアーセナルとしては勝ち点3が欲しかった試合だったはずだ。
試合結果
2024.11.10
プレミアリーグ 第11節
チェルシー 1-1 アーセナル
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:70′ ネト
ARS:60′ マルティネッリ
主審:マイケル・オリバー